2015/05/14(木) - 09:04
エンデュランスバイクというカテゴリーの中でも大きな存在感を持つキャノンデールのSYNAPSE(シナプス)シリーズ。今回はその中から、シマノ105を装備したミドルグレードの完成車であるSYNAPSE CARBON 5をインプレッションしていこう。
ロードバイクをたしなむユーザーの間でも、すっかり定着した感のあるエンデュランスロードというカテゴリー。より遠くまで走り続けるために体力の消耗を抑えるべく、乗り心地を重視した設計やライディングポジションを持つバイクというのが、エンデュランスロードの定義となるだろうか。
もちろん、パリ~ルーベに代表される荒れた路面が特徴の北のクラシックのようなレースにおいて、その快適性は大きな威力を発揮することは言うまでもないし、そういう意味でSYNAPSEはデビューイヤーである2013年のヘント~ウェヴェルヘムで優勝を飾ったほか、2014年のストラーデ・ビアンケで2位、E3プライスで優勝と華々しい実績をもつレースマシンでもある。
しかし、一般のライダーにとって本当に大切なのは、石畳をどれだけ速く走ることができるかではなくて、どれだけ遠くまで楽しく走り続けられるか、そのライドでどんな素晴らしい景色や美味しい食べ物と巡り合えるか、といったこと。どんな優れた自転車でも、景色や食べ物を連れてくることはできないが、その機会を増やしてくれるのがエンデュランスロードというわけだ。
そういう意味では、SYNAPSEのラインアップのなかでもエントリーグレードを受け持つSYNAPSE CARBON 5は非常に重要な位置づけを持っている車種だ。レースモデルであるシナプスHi-modの血統を受け継ぎつつも、より一般ライダーの脚力レベルにあったカーボン素材を使用することで、よりロングライドへと適した乗り味を実現している。
上位モデルのHi-modシリーズがハイモジュラスファイバーとウルトラハイモジュラスファイバーを使用しているのに対し、スタンダードモジュラスファイバーをより高い比率で利用することにより、適度な剛性をもたらしている。キャノンデールが得意とするバリステックカーボン構造はこのモデルにも採用されており、軽量ながらも非常に頑丈なフレームとなっているため、バイクの扱いに慣れていない初心者でも安心できる。
上位モデルから変更されているのは基本的にはカーボン素材のみとなっており、フレーム形状は多くのプロレースを制したバイクそのものとなっている。横からのカタログ写真では分かりづらいかもしれないが、複雑な曲線が組み合わさって構成されるフレームは、どこをとっても路面からの振動をカットするための機能と、その結果としての艶めかしさを併せ持っている。
中間部分からギュッとねじれ絞られるフロントフォークや、螺旋形状を描きながらエンドに向かっていくシートステーやチェーンステー、25.4mmと非常に細い径のシートピラーとそのしなりを最大限に活かすべくフレームと一体化されたシートクランプ。これら全てがシームレスに連動し一体となって機能することで、最大の振動吸収性を発揮するのだ。
SYNAPSEは高いレベルの快適性を持つ一方で、走行性能もおざなりにされていない。それを象徴するのが、「パワーピラミッド」と名付けられた、双胴にシートチューブが分かれたBB付近の造形だ。加えて、従来の68mm幅のBB30を左に5mm拡大した左右非対称の規格「BB30A」を採用することで、チェーンステー間の幅を拡げタイヤクリアランスを確保するとともに、更なる剛性の向上を実現している。
より遠くまで、より速く、より快適に走るために生み出されたシナプス。今回インプレッションするのは、新型105をアセンブルされた完成車であるSYNAPSE CARBON 5だ。クランクはBB30Aに対応したFSA GOSSAMER PRO、ホイールはシマノのRS-11とされている。
エンデュランスロードらしく、タイヤは太めのシュワルベ ルガノ25cを採用しエアボリュームを稼ぐことで安定感と快適性をトータルパッケージでも演出している。このまますぐにでも、ロングライドに出かけたくなる1台だ。早速インプレッションに移っていこう。
― インプレッション
「ロードバイクの世界をより身近にしてくれる」
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
実をいうとこれまでのキャノンデールのカーボンバイクって、僕の嗜好とは少し路線が違っていたんです。なので、そのイメージで乗ってみたら、これが驚きました。すごく楽しいバイクで、思わず持って帰りたくなるくらい(笑)パワーをかけて踏む込んでいくと、キュンキュンと小気味よく前に進んでいく感覚が最高に気持ち良いです。
剛性バランスとしては、トップチューブにハリがあってダウンチューブやBB周りがしなっています。しなっているんだけど、奥の方でググッとパワーを受け止めてから、反発してくるため踏んだ力がどこかに逃げてしまっているというような柔らかさでは無いですね。
逆に、トップチューブは剛性高めです。ダンシングしてもバイク自体が捻じれず真っ直ぐ進んでいくのは、ここの剛性がかなり効果的にでているという印象をうけました。バイク全体で言えば、絶対的な剛性感は決して高くはないものの、かなり体重があるパワーライダーでなければ剛性不足と感じることはないでしょう。
エンデュランスロードとしてもっとも大切な振動吸収性能は、非の打ちどころがないですね。前からも後ろからも、きっちりと振動をいなしてくれます。驚くべきは、そのために非常に細く設計されたフロントフォークが剛性面でも全く破綻していないこと。登りでのダンシングやスプリントでもがいても、凄く安定しています。ボリュームのあるフォークを装備したバイクが増える中で、この細身のブレードでよくぞここまでの完成度に仕上げたな、と感嘆しました。
この踏んだ時の安定感と、独特のタメ感が合わさって、もがくと楽しい自転車です。剛性が高いバイクだと、スピードが乗ってからじゃないとハイギアにかけられないですが、このバイクは程良く逃がす部分があるので、低速からでも重いギアを踏んでいけます。普通の草レースだったら全く問題ないレベルの走行性能を持っていますよ。
コーナーでもしっかりとしたフィーリングでラインをトレースして曲がっていけます。下側が柔らかいといいましたが、コーナーでも捻じれるような感覚は無く、むしろ地面に食いつくような走りを見せてくれます。
実際、なにかの性能が突出しているバイクというわけではないんです。でも揚げ足をとるような欠点もなく、文句のつけづらい優等生というイメージでしょうか。直進安定性が凄く強いわけでも、踏み出しが驚くほど軽いわけでもない。でも、走り込んでいったときに死角がない。初心者が不満に思うことは絶対ないですし、上級者でもパーツ次第で十分満足できるだけのポテンシャルを持っています。
完成車のパッケージでも十分走ると思いますが、より剛性の高いホイールを入れてあげると、更にキレのある走りを見せてくれそうです。レーシングゼロやキシリウムあたりがおすすめでしょうか。クランクも、ある程度剛性の高いものに交換したいですね。BBが特殊な規格なので、純正のホログラムSIクランクなどが良いと思いますね。
ロングライドからレースまでなんでも一台でこなしたいという方にとって、すごく満足のいくバイクなのではないでしょうか。ロードバイクの世界をより身近にしてくれるだけの性能をもった1台だと思います。
「ロングライドやグランフォンドを楽しみたい人にとっては、直球ど真ん中の一台」
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
ひと言でいうと楽しい自転車ですね。スピードを出して、長い距離を楽しむサイクリングにぴったりの一台でしょう。どんな路面状況もものともせずに、びしっと走っていくことができます。上体が起き気味なポジションは、すこし腰高な感じもしますが、やはり普通に走っている分には楽でいいですね。
なんとも面白い動きをする自転車で、まるで前後方向へホイールベースが伸び縮みしているような感覚があります。フォークは前へ、シートチューブは後ろへ倒れるようなイメージですね。剛性面はそれほど高いわけではないのですが、縦方向と横方向でかなりコントロールされていることが感じられます。
横方向はしっかりと剛性が確保されていて、普通に踏む分で柔らかさを感じることはほぼありません。一方、縦方向はすごく柔軟性を示しています。路面の凸凹をフレーム内部で全部吸収しているようですね。これはジオメトリーだけでなく、素材や積層によるものだといえるでしょう。
従来の設計手法で乗り心地の良い柔らかいバイクを作ると、大抵コーナーで不自然な挙動をしたり、単にだるいだけの自転車になってしまいました。でも、このシナプスは意図的に剛性の方向性をコントロールすることで、快適性と走行性能をうまく両立していますね。もちろん、シリアスレーサーにとってはすこし物足りない部分があるとは思いますが、そこまでガツガツと走ることのない大半のサイクリストにとって不足の無い走行性能と絶対的な安定感を持っています。
基本的にはあまりパワーをかけずにケイデンス高め、ギア軽めで回していくと気持よく進んでいくと思います。ターゲットとしているスピードゾーンは35km/h程度でしょうか。45km/hを超えてくると、このバイク本来のテリトリーではないのだな、と強く感じます。
登りもギアをかけずにクルクルとペースで走っていると非常に軽快です。あえてアウターで行ける所でもインナーに落とすような、自分の限界を振り絞って踏みつけるのではなく余裕を持った大人の走りといいましょうか、そういった走り方であれば難なく峠もこなせると思います。適度なギアで、適度な回転で登っていくと、そのリズムに合わせて自転車が助けてくれます。体幹ができていない人は上体をゆすりながらのペダリングになりがちですが、そういった動きも吸収してくれます。
柔軟性に富んだバイクですが、コーナリングも非常に軽快で安心感があります。乗り手のテクニックの有無を問わず、楽しく曲がっていけます。初めてこういったロードバイクに乗るという人にとっても、このバイクであれば恐怖感は少ないでしょうね。フォークがしっかりしているのでコーナー途中でのライン変更も容易ですし、衝撃吸収性に優れているので、荒れた路面の下りの安定感も抜きんでています。
コストパフォーマンスも非常に優れているので、初めての一台としてもオススメです。いくいくはもう少し軽いホイールに変えてあげると良いでしょうね。好みもあると思いますが、長所を伸ばしていく方向でマヴィックR-SYSやスピナジーというような乗り心地に定評のあるホイールを入れてあげると面白いと思います。
あまりレース志向ではない人、こういったバイクを使って快速のロングライドやグランフォンドを楽しみたい人にとっては、直球ど真ん中な自転車だと思います。長い距離には興味はあるけど速さにはそこまで興味がない、今一番多いニーズを満たしてくれるのが、このSYNAPSEだと思います。
キャノンデール SYNAPSE CARBON 5 105
フレーム:Synapse、BallisTec Carbon、Di2 ready、SAVE PLUS、BB30A
フォーク:Synapse SAVE PLUS、BallisTec Carbon、1-1/8" to 1-1/4" taperedsteerer
メインコンポーネント:シマノ 5800系105
ホイール:シマノ WH-RS11
サイズ:48、51、54、56、58
カラー:ブラック、ホワイト
価 格:240,000円
インプレライダーのプロフィール
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
岐阜県瑞浪市にあるロードバイク専門プロショップ「サイクルショップDADDY」店主。20年間に及ぶ競輪選手としての経験、機材やフィッティングに対するこだわりから特に実走派ライダーからの定評が高い。現在でも積極的にレースに参加しツール・ド・おきなわ市民50kmで2007、09、10年と3度の優勝を誇る。一方で、グランフォンド東濃の実行委員長を努めるなどサイクルスポーツの普及活動にも力を入れている。
CWレコメンドショップ
サイクルショップDADDY
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
神奈川県厚木市に2014年にオープンしたロード系プロショップ、WALKRIDE コンセプトストアの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
CWレコメンドショップ
WALKRIDE コンセプトストア
ウェア協力:ルコックスポルティフ
text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANAO
ロードバイクをたしなむユーザーの間でも、すっかり定着した感のあるエンデュランスロードというカテゴリー。より遠くまで走り続けるために体力の消耗を抑えるべく、乗り心地を重視した設計やライディングポジションを持つバイクというのが、エンデュランスロードの定義となるだろうか。
もちろん、パリ~ルーベに代表される荒れた路面が特徴の北のクラシックのようなレースにおいて、その快適性は大きな威力を発揮することは言うまでもないし、そういう意味でSYNAPSEはデビューイヤーである2013年のヘント~ウェヴェルヘムで優勝を飾ったほか、2014年のストラーデ・ビアンケで2位、E3プライスで優勝と華々しい実績をもつレースマシンでもある。
しかし、一般のライダーにとって本当に大切なのは、石畳をどれだけ速く走ることができるかではなくて、どれだけ遠くまで楽しく走り続けられるか、そのライドでどんな素晴らしい景色や美味しい食べ物と巡り合えるか、といったこと。どんな優れた自転車でも、景色や食べ物を連れてくることはできないが、その機会を増やしてくれるのがエンデュランスロードというわけだ。
そういう意味では、SYNAPSEのラインアップのなかでもエントリーグレードを受け持つSYNAPSE CARBON 5は非常に重要な位置づけを持っている車種だ。レースモデルであるシナプスHi-modの血統を受け継ぎつつも、より一般ライダーの脚力レベルにあったカーボン素材を使用することで、よりロングライドへと適した乗り味を実現している。
上位モデルのHi-modシリーズがハイモジュラスファイバーとウルトラハイモジュラスファイバーを使用しているのに対し、スタンダードモジュラスファイバーをより高い比率で利用することにより、適度な剛性をもたらしている。キャノンデールが得意とするバリステックカーボン構造はこのモデルにも採用されており、軽量ながらも非常に頑丈なフレームとなっているため、バイクの扱いに慣れていない初心者でも安心できる。
上位モデルから変更されているのは基本的にはカーボン素材のみとなっており、フレーム形状は多くのプロレースを制したバイクそのものとなっている。横からのカタログ写真では分かりづらいかもしれないが、複雑な曲線が組み合わさって構成されるフレームは、どこをとっても路面からの振動をカットするための機能と、その結果としての艶めかしさを併せ持っている。
中間部分からギュッとねじれ絞られるフロントフォークや、螺旋形状を描きながらエンドに向かっていくシートステーやチェーンステー、25.4mmと非常に細い径のシートピラーとそのしなりを最大限に活かすべくフレームと一体化されたシートクランプ。これら全てがシームレスに連動し一体となって機能することで、最大の振動吸収性を発揮するのだ。
SYNAPSEは高いレベルの快適性を持つ一方で、走行性能もおざなりにされていない。それを象徴するのが、「パワーピラミッド」と名付けられた、双胴にシートチューブが分かれたBB付近の造形だ。加えて、従来の68mm幅のBB30を左に5mm拡大した左右非対称の規格「BB30A」を採用することで、チェーンステー間の幅を拡げタイヤクリアランスを確保するとともに、更なる剛性の向上を実現している。
より遠くまで、より速く、より快適に走るために生み出されたシナプス。今回インプレッションするのは、新型105をアセンブルされた完成車であるSYNAPSE CARBON 5だ。クランクはBB30Aに対応したFSA GOSSAMER PRO、ホイールはシマノのRS-11とされている。
エンデュランスロードらしく、タイヤは太めのシュワルベ ルガノ25cを採用しエアボリュームを稼ぐことで安定感と快適性をトータルパッケージでも演出している。このまますぐにでも、ロングライドに出かけたくなる1台だ。早速インプレッションに移っていこう。
― インプレッション
「ロードバイクの世界をより身近にしてくれる」
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
実をいうとこれまでのキャノンデールのカーボンバイクって、僕の嗜好とは少し路線が違っていたんです。なので、そのイメージで乗ってみたら、これが驚きました。すごく楽しいバイクで、思わず持って帰りたくなるくらい(笑)パワーをかけて踏む込んでいくと、キュンキュンと小気味よく前に進んでいく感覚が最高に気持ち良いです。
剛性バランスとしては、トップチューブにハリがあってダウンチューブやBB周りがしなっています。しなっているんだけど、奥の方でググッとパワーを受け止めてから、反発してくるため踏んだ力がどこかに逃げてしまっているというような柔らかさでは無いですね。
逆に、トップチューブは剛性高めです。ダンシングしてもバイク自体が捻じれず真っ直ぐ進んでいくのは、ここの剛性がかなり効果的にでているという印象をうけました。バイク全体で言えば、絶対的な剛性感は決して高くはないものの、かなり体重があるパワーライダーでなければ剛性不足と感じることはないでしょう。
エンデュランスロードとしてもっとも大切な振動吸収性能は、非の打ちどころがないですね。前からも後ろからも、きっちりと振動をいなしてくれます。驚くべきは、そのために非常に細く設計されたフロントフォークが剛性面でも全く破綻していないこと。登りでのダンシングやスプリントでもがいても、凄く安定しています。ボリュームのあるフォークを装備したバイクが増える中で、この細身のブレードでよくぞここまでの完成度に仕上げたな、と感嘆しました。
この踏んだ時の安定感と、独特のタメ感が合わさって、もがくと楽しい自転車です。剛性が高いバイクだと、スピードが乗ってからじゃないとハイギアにかけられないですが、このバイクは程良く逃がす部分があるので、低速からでも重いギアを踏んでいけます。普通の草レースだったら全く問題ないレベルの走行性能を持っていますよ。
コーナーでもしっかりとしたフィーリングでラインをトレースして曲がっていけます。下側が柔らかいといいましたが、コーナーでも捻じれるような感覚は無く、むしろ地面に食いつくような走りを見せてくれます。
実際、なにかの性能が突出しているバイクというわけではないんです。でも揚げ足をとるような欠点もなく、文句のつけづらい優等生というイメージでしょうか。直進安定性が凄く強いわけでも、踏み出しが驚くほど軽いわけでもない。でも、走り込んでいったときに死角がない。初心者が不満に思うことは絶対ないですし、上級者でもパーツ次第で十分満足できるだけのポテンシャルを持っています。
完成車のパッケージでも十分走ると思いますが、より剛性の高いホイールを入れてあげると、更にキレのある走りを見せてくれそうです。レーシングゼロやキシリウムあたりがおすすめでしょうか。クランクも、ある程度剛性の高いものに交換したいですね。BBが特殊な規格なので、純正のホログラムSIクランクなどが良いと思いますね。
ロングライドからレースまでなんでも一台でこなしたいという方にとって、すごく満足のいくバイクなのではないでしょうか。ロードバイクの世界をより身近にしてくれるだけの性能をもった1台だと思います。
「ロングライドやグランフォンドを楽しみたい人にとっては、直球ど真ん中の一台」
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
ひと言でいうと楽しい自転車ですね。スピードを出して、長い距離を楽しむサイクリングにぴったりの一台でしょう。どんな路面状況もものともせずに、びしっと走っていくことができます。上体が起き気味なポジションは、すこし腰高な感じもしますが、やはり普通に走っている分には楽でいいですね。
なんとも面白い動きをする自転車で、まるで前後方向へホイールベースが伸び縮みしているような感覚があります。フォークは前へ、シートチューブは後ろへ倒れるようなイメージですね。剛性面はそれほど高いわけではないのですが、縦方向と横方向でかなりコントロールされていることが感じられます。
横方向はしっかりと剛性が確保されていて、普通に踏む分で柔らかさを感じることはほぼありません。一方、縦方向はすごく柔軟性を示しています。路面の凸凹をフレーム内部で全部吸収しているようですね。これはジオメトリーだけでなく、素材や積層によるものだといえるでしょう。
従来の設計手法で乗り心地の良い柔らかいバイクを作ると、大抵コーナーで不自然な挙動をしたり、単にだるいだけの自転車になってしまいました。でも、このシナプスは意図的に剛性の方向性をコントロールすることで、快適性と走行性能をうまく両立していますね。もちろん、シリアスレーサーにとってはすこし物足りない部分があるとは思いますが、そこまでガツガツと走ることのない大半のサイクリストにとって不足の無い走行性能と絶対的な安定感を持っています。
基本的にはあまりパワーをかけずにケイデンス高め、ギア軽めで回していくと気持よく進んでいくと思います。ターゲットとしているスピードゾーンは35km/h程度でしょうか。45km/hを超えてくると、このバイク本来のテリトリーではないのだな、と強く感じます。
登りもギアをかけずにクルクルとペースで走っていると非常に軽快です。あえてアウターで行ける所でもインナーに落とすような、自分の限界を振り絞って踏みつけるのではなく余裕を持った大人の走りといいましょうか、そういった走り方であれば難なく峠もこなせると思います。適度なギアで、適度な回転で登っていくと、そのリズムに合わせて自転車が助けてくれます。体幹ができていない人は上体をゆすりながらのペダリングになりがちですが、そういった動きも吸収してくれます。
柔軟性に富んだバイクですが、コーナリングも非常に軽快で安心感があります。乗り手のテクニックの有無を問わず、楽しく曲がっていけます。初めてこういったロードバイクに乗るという人にとっても、このバイクであれば恐怖感は少ないでしょうね。フォークがしっかりしているのでコーナー途中でのライン変更も容易ですし、衝撃吸収性に優れているので、荒れた路面の下りの安定感も抜きんでています。
コストパフォーマンスも非常に優れているので、初めての一台としてもオススメです。いくいくはもう少し軽いホイールに変えてあげると良いでしょうね。好みもあると思いますが、長所を伸ばしていく方向でマヴィックR-SYSやスピナジーというような乗り心地に定評のあるホイールを入れてあげると面白いと思います。
あまりレース志向ではない人、こういったバイクを使って快速のロングライドやグランフォンドを楽しみたい人にとっては、直球ど真ん中な自転車だと思います。長い距離には興味はあるけど速さにはそこまで興味がない、今一番多いニーズを満たしてくれるのが、このSYNAPSEだと思います。
キャノンデール SYNAPSE CARBON 5 105
フレーム:Synapse、BallisTec Carbon、Di2 ready、SAVE PLUS、BB30A
フォーク:Synapse SAVE PLUS、BallisTec Carbon、1-1/8" to 1-1/4" taperedsteerer
メインコンポーネント:シマノ 5800系105
ホイール:シマノ WH-RS11
サイズ:48、51、54、56、58
カラー:ブラック、ホワイト
価 格:240,000円
インプレライダーのプロフィール
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
岐阜県瑞浪市にあるロードバイク専門プロショップ「サイクルショップDADDY」店主。20年間に及ぶ競輪選手としての経験、機材やフィッティングに対するこだわりから特に実走派ライダーからの定評が高い。現在でも積極的にレースに参加しツール・ド・おきなわ市民50kmで2007、09、10年と3度の優勝を誇る。一方で、グランフォンド東濃の実行委員長を努めるなどサイクルスポーツの普及活動にも力を入れている。
CWレコメンドショップ
サイクルショップDADDY
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
神奈川県厚木市に2014年にオープンしたロード系プロショップ、WALKRIDE コンセプトストアの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
CWレコメンドショップ
WALKRIDE コンセプトストア
ウェア協力:ルコックスポルティフ
text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANAO
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