2015/04/26(日) - 17:18
2015年の春もクライマックスを迎える。クラシックシーズンの最後を飾るリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(UCIワールドツアー)がベルギーで開催されるのだ。101回目の開催を迎える「La Doyenne(ラ・ドワイエンヌ=最古参)」に新城幸也(ユーロップカー)と別府史之(トレックファクトリーレーシング)も出場する。
歴史あるクラシックレースは数あれど、このリエージュほど長い歴史のあるロードレースは他に無い。
リエージュの第1回大会が開催されたのはなんと今から112年前の1892年。近代オリンピック(1896年〜)や、日本の箱根駅伝(1920年〜)よりも歴史が長い。そのため「La Doyenne(ラ・ドワイエンヌ=最古参)」という愛称で呼ばれることも多い。今年は開催101回目の記念大会だ。
「モニュメント」と呼ばれる世界5大クラシック(サンレモ、ロンド、パリ〜ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)の一つとして数えられており、格式の点ではアルデンヌ3連戦の中で際立って高い。
ベルギー西部のフランデレン地域を代表するのがロンド・ファン・フラーンデレンであれば、東部ワロン地域を代表するのがリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。レースの舞台となるのは、リエージュの南方に広がる丘陵地帯だ。
コースはレース名の通りリエージュとバストーニュの往復。丘ではなく山が連なる丘陵地帯を逆回りに8の字を描き、リエージュ近郊の街アンスにゴールする。
「アップダウンを繰り返し、最後は短い坂を駆け上がってゴール」というコースの特性は、他のアルデンヌ2戦(アムステルとフレーシュ)と同じ。しかし登り一つ一つの距離が長いのがリエージュの特徴だ。アムステルとフレーシュが「丘のレース」なら、リエージュは「山のレース」。ほとんどの登りは全長が2km以上であり、一日の獲得標高差は4500mに達する。コース全長も253kmと最も長く、難易度、距離、格式においてアルデンヌナンバーワンと呼ばれるのも頷ける。
細かい上りを数え始めるとキリが無いようなアップダウンコース。そのうち、カテゴリーが付けられた登り坂は10カ所ある。中でも、選手たちが壁をよじ上っているような光景が見られるのが、123.0km地点に登場する「コート・ド・サンロシュ(平均勾配11.1%)」だ。この難所を越え、ラスト100kmを切ってからは断続的に登り坂が襲いかかる。
毎年本格的な闘いのゴングが鳴らされるのが、フィニッシュまで30km地点の「コート・ド・ラ・ルドゥット(平均8.9%)」。フィリップ・ジルベール(ベルギー)の出身地が近く、PHILのペイントが施されたこのラ・ルドゥットの最大勾配は17%。頂上通過後は横風が吹く平坦路が続くため、毎年ここで集団は大きく人数を減らす。
道路工事によって昨年コースから外された「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(平均9.3%)」が復活。コースの難易度は昨年よりも上がっていると言えるだろう。
フィニッシュ手前で最後の難所「コート・ド・サンニコラ(平均8.6%)」を越え、アンスに至る緩やかな登りを登ってフィニッシュ。この「アンス」の登りは「カウベルグ」や「ユイ」ほど厳しくはなく、ラスト2kmから緩斜面がダラダラと続く。連続する登りで飛び出した選手、もしくは少人数のグループが平坦な最終ストレートでスプリントを繰り広げるだろう。
登場する10カ所の登り
1 70.0km コート・ド・ロッシュ・アン・アルデンヌ 長さ2.8km・平均勾配6.2%
2 123.0km コート・ド・サンロシュ 長さ1.0km・平均勾配11.1%
3 167.0km コート・ド・ワンヌ 長さ2.8km・平均勾配7.2%
4 173.5km コート・ド・ストック 長さ1.0km・平均勾配12.4%
5 179.0km コート・ド・ラ・オートルヴェ 長さ3.6km・平均勾配5.6%
6 194.0km コル・ド・ロジエ 長さ4.4km・平均勾配5.9%
7 207.0km コル・ド・マキサール 長さ2.5km・平均勾配5.0%
8 218.5km コート・ド・ラ・ルドゥット 長さ2.0km・平均勾配8.9%
9 234.0km コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン 長さ1.5km・平均勾配9.3%
10 248.0km コート・ド・サンニコラ 長さ1.2km・平均勾配8.6%
バルベルデが最有力候補?クラシックハンターが一同に会する
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの優勝者を占う上で、直前のアムステル・ゴールドレースやフレーシュ・ワロンヌの結果は重要な指標になる。つまりアムステル2位、フレーシュ1位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とアムステル1位のミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)は優勝候補筆頭だ。
特にフレーシュ最後のユイで見せたように、短距離の登坂力で言えばバルベルデの力は圧倒的。今シーズン既に5勝と波に乗っており、ナイロ・キンタナ(コロンビア)らを従え昨年2位の雪辱を晴らせるかどうかに注目が集まる。06年、08年以来の3勝目なるか。
「アルカンシエルの呪い」という言葉を過去の物にしたクヴィアトコウスキーは、フレーシュでバルベルデに食らいつき2位に入ったジュリアン・アラフィリップ(フランス)、パリ〜ルーベ2位のゼネク・スティバル(チェコ)という強力な布陣と共に、昨年大会3位からの優勝を狙っている。登坂でもスプリントでも、そして独走でも勝利を狙える存在だ。
昨年の100回記念大会で初のオーストラリア人優勝者となったサイモン・ゲランス(オリカ・グリーンエッジ)も当然のごとく連勝を狙っているが、今シーズンはここまで4レースのみの出場に留まっており、直前のアムステルでも70位とやや精彩を欠いている印象だ。フレーシュ3位のミハエル・アルバジーニ(スイス)がエースを担うこともあるだろう。
ワロン地方の大スター、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)はフレーシュでの落車リタイアを乗り越えてスタートラインに並ぶ。「もちろん本調子では無いが身体の状態は日に日に回復してきた。少なくとも出走はするし、そこから何ができるかを見ていく」と試走を終えた段階でコメントしている。BMCのエースはフレーシュで動いたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)やサムエル・サンチェス(スペイン)が担うはず。
フレーシュでは4位と勝利に届かなかった登坂の名手ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)だが、4月に入ってからパイスバスコで2勝するなど調子は良い。長年タッグを組むジャンパオロ・カルーゾ(イタリア)やダニエル・モレーノ(スペイン)と共に、間違いなく展開の中枢に絡んでくるだろう。
チーム力で言うならば、ヴィンツェンツォ・ニーバリ、ミケーレ・スカルポーニ、ファビオ・アル(全てイタリア)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク)と豪華グランツアーメンバーを揃えるアスタナはその筆頭。独走に持ち込ませれば危険なトム・ドゥムラン(オランダ)はジャイアント・アルペシンを率いて出場し、アムステル4位のルイ・コスタ(ポルトガル)も忘れてはならない存在だ。
日本からは新城幸也(ユーロップカー)と別府史之(トレックファクトリーレーシング)が出場し、新城はピエール・ローラン(フランス)を、別府はジュリアン・アレドンド(コロンビア)やバウク・モレマ(オランダ)をアシストする。
text:So.Isobe
歴史あるクラシックレースは数あれど、このリエージュほど長い歴史のあるロードレースは他に無い。
リエージュの第1回大会が開催されたのはなんと今から112年前の1892年。近代オリンピック(1896年〜)や、日本の箱根駅伝(1920年〜)よりも歴史が長い。そのため「La Doyenne(ラ・ドワイエンヌ=最古参)」という愛称で呼ばれることも多い。今年は開催101回目の記念大会だ。
「モニュメント」と呼ばれる世界5大クラシック(サンレモ、ロンド、パリ〜ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)の一つとして数えられており、格式の点ではアルデンヌ3連戦の中で際立って高い。
ベルギー西部のフランデレン地域を代表するのがロンド・ファン・フラーンデレンであれば、東部ワロン地域を代表するのがリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。レースの舞台となるのは、リエージュの南方に広がる丘陵地帯だ。
コースはレース名の通りリエージュとバストーニュの往復。丘ではなく山が連なる丘陵地帯を逆回りに8の字を描き、リエージュ近郊の街アンスにゴールする。
「アップダウンを繰り返し、最後は短い坂を駆け上がってゴール」というコースの特性は、他のアルデンヌ2戦(アムステルとフレーシュ)と同じ。しかし登り一つ一つの距離が長いのがリエージュの特徴だ。アムステルとフレーシュが「丘のレース」なら、リエージュは「山のレース」。ほとんどの登りは全長が2km以上であり、一日の獲得標高差は4500mに達する。コース全長も253kmと最も長く、難易度、距離、格式においてアルデンヌナンバーワンと呼ばれるのも頷ける。
細かい上りを数え始めるとキリが無いようなアップダウンコース。そのうち、カテゴリーが付けられた登り坂は10カ所ある。中でも、選手たちが壁をよじ上っているような光景が見られるのが、123.0km地点に登場する「コート・ド・サンロシュ(平均勾配11.1%)」だ。この難所を越え、ラスト100kmを切ってからは断続的に登り坂が襲いかかる。
毎年本格的な闘いのゴングが鳴らされるのが、フィニッシュまで30km地点の「コート・ド・ラ・ルドゥット(平均8.9%)」。フィリップ・ジルベール(ベルギー)の出身地が近く、PHILのペイントが施されたこのラ・ルドゥットの最大勾配は17%。頂上通過後は横風が吹く平坦路が続くため、毎年ここで集団は大きく人数を減らす。
道路工事によって昨年コースから外された「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(平均9.3%)」が復活。コースの難易度は昨年よりも上がっていると言えるだろう。
フィニッシュ手前で最後の難所「コート・ド・サンニコラ(平均8.6%)」を越え、アンスに至る緩やかな登りを登ってフィニッシュ。この「アンス」の登りは「カウベルグ」や「ユイ」ほど厳しくはなく、ラスト2kmから緩斜面がダラダラと続く。連続する登りで飛び出した選手、もしくは少人数のグループが平坦な最終ストレートでスプリントを繰り広げるだろう。
登場する10カ所の登り
1 70.0km コート・ド・ロッシュ・アン・アルデンヌ 長さ2.8km・平均勾配6.2%
2 123.0km コート・ド・サンロシュ 長さ1.0km・平均勾配11.1%
3 167.0km コート・ド・ワンヌ 長さ2.8km・平均勾配7.2%
4 173.5km コート・ド・ストック 長さ1.0km・平均勾配12.4%
5 179.0km コート・ド・ラ・オートルヴェ 長さ3.6km・平均勾配5.6%
6 194.0km コル・ド・ロジエ 長さ4.4km・平均勾配5.9%
7 207.0km コル・ド・マキサール 長さ2.5km・平均勾配5.0%
8 218.5km コート・ド・ラ・ルドゥット 長さ2.0km・平均勾配8.9%
9 234.0km コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン 長さ1.5km・平均勾配9.3%
10 248.0km コート・ド・サンニコラ 長さ1.2km・平均勾配8.6%
バルベルデが最有力候補?クラシックハンターが一同に会する
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの優勝者を占う上で、直前のアムステル・ゴールドレースやフレーシュ・ワロンヌの結果は重要な指標になる。つまりアムステル2位、フレーシュ1位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とアムステル1位のミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)は優勝候補筆頭だ。
特にフレーシュ最後のユイで見せたように、短距離の登坂力で言えばバルベルデの力は圧倒的。今シーズン既に5勝と波に乗っており、ナイロ・キンタナ(コロンビア)らを従え昨年2位の雪辱を晴らせるかどうかに注目が集まる。06年、08年以来の3勝目なるか。
「アルカンシエルの呪い」という言葉を過去の物にしたクヴィアトコウスキーは、フレーシュでバルベルデに食らいつき2位に入ったジュリアン・アラフィリップ(フランス)、パリ〜ルーベ2位のゼネク・スティバル(チェコ)という強力な布陣と共に、昨年大会3位からの優勝を狙っている。登坂でもスプリントでも、そして独走でも勝利を狙える存在だ。
昨年の100回記念大会で初のオーストラリア人優勝者となったサイモン・ゲランス(オリカ・グリーンエッジ)も当然のごとく連勝を狙っているが、今シーズンはここまで4レースのみの出場に留まっており、直前のアムステルでも70位とやや精彩を欠いている印象だ。フレーシュ3位のミハエル・アルバジーニ(スイス)がエースを担うこともあるだろう。
ワロン地方の大スター、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)はフレーシュでの落車リタイアを乗り越えてスタートラインに並ぶ。「もちろん本調子では無いが身体の状態は日に日に回復してきた。少なくとも出走はするし、そこから何ができるかを見ていく」と試走を終えた段階でコメントしている。BMCのエースはフレーシュで動いたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)やサムエル・サンチェス(スペイン)が担うはず。
フレーシュでは4位と勝利に届かなかった登坂の名手ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)だが、4月に入ってからパイスバスコで2勝するなど調子は良い。長年タッグを組むジャンパオロ・カルーゾ(イタリア)やダニエル・モレーノ(スペイン)と共に、間違いなく展開の中枢に絡んでくるだろう。
チーム力で言うならば、ヴィンツェンツォ・ニーバリ、ミケーレ・スカルポーニ、ファビオ・アル(全てイタリア)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク)と豪華グランツアーメンバーを揃えるアスタナはその筆頭。独走に持ち込ませれば危険なトム・ドゥムラン(オランダ)はジャイアント・アルペシンを率いて出場し、アムステル4位のルイ・コスタ(ポルトガル)も忘れてはならない存在だ。
日本からは新城幸也(ユーロップカー)と別府史之(トレックファクトリーレーシング)が出場し、新城はピエール・ローラン(フランス)を、別府はジュリアン・アレドンド(コロンビア)やバウク・モレマ(オランダ)をアシストする。
text:So.Isobe
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