2015/03/09(月) - 23:04
黒い雨雲を背にしたスプリント。レンガが敷かれたストレートを先頭で駆け抜けたのは、リーダージャージを着るアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)だった。6位に絡んだ福田真平(愛三工業レーシング)がUCIポイントを獲得することに成功している。
最終日前日に登場予定だった超級山岳ゲンティンハイランドのキャンセルがレース展開や大会に影響を及ぼしている。代替案としてフレイザーズヒルの山頂フィニッシュが設定されているものの、ゲンティンハイランドと比べると難易度が低く、大きなタイム差が生まれにくいのが大方の見方。そのため中間スプリントやフィニッシュでのボーナスタイムが最終的な総合争いに響く可能性がある。
この日最初の中間スプリントでボーナスタイムを懸けて動いたのはワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)だった。2013年大会の超級山岳キャメロンハイランドで優勝し、総合5位で大会を終えたチャイニーズライダーが3秒のボーナスタイムを獲得。総合成績を上げることに成功している。
さらなる影響としては、大会メインスポンサーの一つであるゲンティンハイランドリゾートが開幕前日になって撤退。そのため、表彰台で贈られる赤い山岳賞ジャージのスポンサーロゴは白テープで目張りされている状態だ。マレーシア航空の撤退に続き、大会は主要なスポンサーをもう一つ失ってしまった。
ランカウイ島からマレー半島本土に舞台を移したレースは、マレーシア最北のケダ州の州都アロールセタールで動き出した。第2ステージはタイ国境近くの内陸部を経て、同州最大の都市スンガイペタニにフィニッシュする185km。
スプリントポイントでのボーナスタイム争いがひと段落すると、UCIコンチネンタルチームを中心とする6名の先行が決まる。主にアジアンライダーで構成された逃げグループと、リーダージャージ擁するアスタナが先頭に陣取るメイン集団のタイム差は概ね2分。
高温多湿で灼熱の太陽に照らされた一日。アブラヤシのプランテーションと天然ゴムのプランテーション、濃厚なミルクティーのような色をした川、象の像があるタイ語が書かれた寺院、マレーシア国旗にあふれた田舎町を通り過ぎるうちに、選手たちの進行方向には分厚い雨雲が現れた。
逃げグループの中でモハマドアディク・オスマン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)が積極的にボーナスタイムを加算し、アジアンライダー賞ジャージに向けた一歩を踏み出した一方で、ローテーションに全く加わらずに体力を温存していたエルチン・アサドフ(アゼルバイジャン、シナジーバクサイクリング)が残り20kmでアタック。ロー・シーキョン(マレーシア、マレーシア)だけが反応し、2人逃げが始まった。
アサドフの強力な走りによってタイム差が広がると、メイン集団ではオリカ・グリーンエッジやブルターニュ・セシェの牽引がスタート。残り15kmでタイム差は1分45秒。スンガイペタニの街が近づくとあたりはすっかり雨雲に覆われ、残り10kmから雨粒が落ち始めた。
スコールとは呼べないほどのにわか雨に終わったものの路面は完全ウェットな状態に。サウスイーストやトルクセケルスポールも集団先頭に出たことでさらにスピードが上がり、逃げていたアサドフとシーキョンは残り6kmでついに捕らえられた。
残り500mで発生した落車を避け、最速トレインを発車させたのはサウスイースト。アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)のリードアウトを受けたヤクブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)の後ろから、リーダージャージのグアルディーニが加速した。
スリップストリームに入ったカレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を振り切る勢いでスプリント。他を寄せ付けないスピードを見せたグアルディーニがステージ2勝目を示すVサインでフィニッシュした。グアルディーニはツール・ド・ランカウイにおけるステージ通算成績を16勝にまで伸ばしている。
「他のチームから助けを借りたのは残り20kmを切ってから。それまでチームは一日中ずっと逃げグループを追い続けた。フレッシュなライバルチームに対抗して、最後はヴァレリオ・アニョーリの力を借りてポジションキープ。調子が良いので問題なかった」とグアルディーニ。当然リーダージャージとポイント賞ジャージはキープしている。
2日連続2位のイワンについてグアルディーニは「彼は強い選手だけど、この2日間のレイアウトは僕向きだった。明日は山岳が登場するので彼向きかもね」とコメントする。両者はフレイザーズヒルを除く5ステージで引き続き戦いを繰り広げることになるだろう。
「残り500mから中島さんに助けられました。おかげで前が空いたラインでスプリントすることが出来た」と語る福田真平(愛三工業レーシング)がスプリントに絡んでステージ6位。スピード負けしていないことを示すとともに、UCIポイントを5ポイント獲得した。
ツール・ド・ランカウイ2015第2ステージ
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 4h30’36”
2位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ヤクブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
4位 ハリフ・サレー(マレーシア、トレンガヌサイクリング)
5位 アフメト・オルケン(トルコ、トルクセケルスポール)
6位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)
7位 ニコライ・トルソーフ(ロシア、ティンコフ・サクソ)
8位 ケン・ハンセン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
9位 フアン・モラノ(コロンビア、コロンビア)
10位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ)
個人総合成績
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 6h49’22”
2位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +08”
3位 モハマドアディク・オスマン(マレーシア、トレンガヌサイクリング) +13”
4位 マ・ガントン(中国、ヘンシャンサイクリング) +15”
5位 アヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌサイクリング) +16”
6位 パトリア・ラストラ(インドネシア、ペガサスコンチネンタル)
7位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング) +17”
8位 チャン・ウェンロン(中国、ジャイアント・シャンピオンシステム) +18”
9位 エルチン・アサドフ(アゼルバイジャン、シナジーバクサイクリング)
10位 リュー・ジャンペン(中国、ヘンシャンサイクリング)
ポイント賞
アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
山岳賞
キール・レイネン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
アジアンライダー賞
モハマドアディク・オスマン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)
チーム総合成績
アスタナ
アジアンチーム総合成績
トレンガヌサイクリング
text&photo:Kei Tsuji
最終日前日に登場予定だった超級山岳ゲンティンハイランドのキャンセルがレース展開や大会に影響を及ぼしている。代替案としてフレイザーズヒルの山頂フィニッシュが設定されているものの、ゲンティンハイランドと比べると難易度が低く、大きなタイム差が生まれにくいのが大方の見方。そのため中間スプリントやフィニッシュでのボーナスタイムが最終的な総合争いに響く可能性がある。
この日最初の中間スプリントでボーナスタイムを懸けて動いたのはワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)だった。2013年大会の超級山岳キャメロンハイランドで優勝し、総合5位で大会を終えたチャイニーズライダーが3秒のボーナスタイムを獲得。総合成績を上げることに成功している。
さらなる影響としては、大会メインスポンサーの一つであるゲンティンハイランドリゾートが開幕前日になって撤退。そのため、表彰台で贈られる赤い山岳賞ジャージのスポンサーロゴは白テープで目張りされている状態だ。マレーシア航空の撤退に続き、大会は主要なスポンサーをもう一つ失ってしまった。
ランカウイ島からマレー半島本土に舞台を移したレースは、マレーシア最北のケダ州の州都アロールセタールで動き出した。第2ステージはタイ国境近くの内陸部を経て、同州最大の都市スンガイペタニにフィニッシュする185km。
スプリントポイントでのボーナスタイム争いがひと段落すると、UCIコンチネンタルチームを中心とする6名の先行が決まる。主にアジアンライダーで構成された逃げグループと、リーダージャージ擁するアスタナが先頭に陣取るメイン集団のタイム差は概ね2分。
高温多湿で灼熱の太陽に照らされた一日。アブラヤシのプランテーションと天然ゴムのプランテーション、濃厚なミルクティーのような色をした川、象の像があるタイ語が書かれた寺院、マレーシア国旗にあふれた田舎町を通り過ぎるうちに、選手たちの進行方向には分厚い雨雲が現れた。
逃げグループの中でモハマドアディク・オスマン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)が積極的にボーナスタイムを加算し、アジアンライダー賞ジャージに向けた一歩を踏み出した一方で、ローテーションに全く加わらずに体力を温存していたエルチン・アサドフ(アゼルバイジャン、シナジーバクサイクリング)が残り20kmでアタック。ロー・シーキョン(マレーシア、マレーシア)だけが反応し、2人逃げが始まった。
アサドフの強力な走りによってタイム差が広がると、メイン集団ではオリカ・グリーンエッジやブルターニュ・セシェの牽引がスタート。残り15kmでタイム差は1分45秒。スンガイペタニの街が近づくとあたりはすっかり雨雲に覆われ、残り10kmから雨粒が落ち始めた。
スコールとは呼べないほどのにわか雨に終わったものの路面は完全ウェットな状態に。サウスイーストやトルクセケルスポールも集団先頭に出たことでさらにスピードが上がり、逃げていたアサドフとシーキョンは残り6kmでついに捕らえられた。
残り500mで発生した落車を避け、最速トレインを発車させたのはサウスイースト。アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)のリードアウトを受けたヤクブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)の後ろから、リーダージャージのグアルディーニが加速した。
スリップストリームに入ったカレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を振り切る勢いでスプリント。他を寄せ付けないスピードを見せたグアルディーニがステージ2勝目を示すVサインでフィニッシュした。グアルディーニはツール・ド・ランカウイにおけるステージ通算成績を16勝にまで伸ばしている。
「他のチームから助けを借りたのは残り20kmを切ってから。それまでチームは一日中ずっと逃げグループを追い続けた。フレッシュなライバルチームに対抗して、最後はヴァレリオ・アニョーリの力を借りてポジションキープ。調子が良いので問題なかった」とグアルディーニ。当然リーダージャージとポイント賞ジャージはキープしている。
2日連続2位のイワンについてグアルディーニは「彼は強い選手だけど、この2日間のレイアウトは僕向きだった。明日は山岳が登場するので彼向きかもね」とコメントする。両者はフレイザーズヒルを除く5ステージで引き続き戦いを繰り広げることになるだろう。
「残り500mから中島さんに助けられました。おかげで前が空いたラインでスプリントすることが出来た」と語る福田真平(愛三工業レーシング)がスプリントに絡んでステージ6位。スピード負けしていないことを示すとともに、UCIポイントを5ポイント獲得した。
ツール・ド・ランカウイ2015第2ステージ
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 4h30’36”
2位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ヤクブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
4位 ハリフ・サレー(マレーシア、トレンガヌサイクリング)
5位 アフメト・オルケン(トルコ、トルクセケルスポール)
6位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)
7位 ニコライ・トルソーフ(ロシア、ティンコフ・サクソ)
8位 ケン・ハンセン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
9位 フアン・モラノ(コロンビア、コロンビア)
10位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ)
個人総合成績
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 6h49’22”
2位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +08”
3位 モハマドアディク・オスマン(マレーシア、トレンガヌサイクリング) +13”
4位 マ・ガントン(中国、ヘンシャンサイクリング) +15”
5位 アヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌサイクリング) +16”
6位 パトリア・ラストラ(インドネシア、ペガサスコンチネンタル)
7位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング) +17”
8位 チャン・ウェンロン(中国、ジャイアント・シャンピオンシステム) +18”
9位 エルチン・アサドフ(アゼルバイジャン、シナジーバクサイクリング)
10位 リュー・ジャンペン(中国、ヘンシャンサイクリング)
ポイント賞
アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
山岳賞
キール・レイネン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
アジアンライダー賞
モハマドアディク・オスマン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)
チーム総合成績
アスタナ
アジアンチーム総合成績
トレンガヌサイクリング
text&photo:Kei Tsuji
フォトギャラリー
Amazon.co.jp