3月8日、パリ郊外で第73回パリ〜ニース(UCIワールドツアー)が開幕する。ツール・ド・フランスと同じA.S.O.が主催する春のステージレースにはグランツールやクラシックを見据えるトップレーサーが集結。開幕前にコースの特徴と注目選手をチェックしておこう。



総合の鍵は第4ステージの1級山岳フィニッシュと最終山岳TT

まだ葉をつけていない森の間を進んで行くまだ葉をつけていない森の間を進んで行く photo:Tim de Waele
パリ〜ニース2015コース全体図パリ〜ニース2015コース全体図 image:A.S.O.毎年3月に開催されるパリ〜ニースは、ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポール・オルガニザシオン)が主催。3日遅れてイタリアで開幕するティレーノ〜アドリアティコとともに、春のヨーロッパを代表する中級ステージレースだ。

パリ〜ニース2015第4ステージパリ〜ニース2015第4ステージ image:A.S.O.「パリからニースまで」という名前が示すように、レースはフランス北部のパリ近郊から地中海沿岸のニースまでひたすら南下する。まだまだ寒さの厳しいフランス内陸部をスタートし、比較的温暖な太陽を求めて地中海のコートダジュールに向かうその行程から、ときに「太陽へのレース(La Course au Soliel)」と呼ばれる。フランスを駆け抜けるその様子から「ミニ=ツール・ド・フランス」とも。

パリ郊外のモルパで行われる初日のプロローグ(6.7km個人TT)を除いて、前半はスプリンター向きの平坦ステージが続く。ツールと同じ黄色いマイヨジョーヌをかけた争いが本格化するのは第4ステージだ。

合計8つのカテゴリー山岳が設定された204kmコースの最後に待つのは1級山岳クロワ・ド・ショブレ山頂フィニッシュ。標高1201mのスキー場に向かう登坂距離10km・平均勾配6.7%の登りが今大会最大の山場だ。

最終日前日の第6ステージはニースにフィニッシュする山岳コース。3つの2級山岳と2つの1級山岳、そしてテクニカルかるハイスピードなダウンヒルを経てニースの海岸通へ。登りだけではなく、最後の下りに全神経を集中しなければパリ〜ニース制覇は見えてこない。

最後を締めくくるのはニースから1級山岳エズ峠まで登る個人タイムトライアル。美しいコートダジュールの海岸を見下ろす登坂距離9.6km・平均勾配4.7%の山岳TTが2013年以来2年ぶりに復活した。後半にかけて勾配が緩む20分前後の登坂が総合優勝者を導き出す。



パリ〜ニース2015第6ステージパリ〜ニース2015第6ステージ image:A.S.O.パリ〜ニース2015第7ステージパリ〜ニース2015第7ステージ image:A.S.O.


パリ〜ニース2015ステージリスト
3月8日(日)プロローグ モルパ〜モルパ 6.7km(個人TT)
3月9日(月)第1ステージ サンレミ・レ・シュヴルーズ〜コントル 196.5km
3月10日(火)第2ステージ サンテニャン・ボーバル〜サンタマン・モントロン 172km
3月11日(水)第3ステージ サンタマン・モントロン〜サンプルセン・シュル・シウル 179km
3月12日(木)第4ステージ ヴァレンヌ・シュル・アリエ〜クロワ・ド・ショブレ 204km
3月13日(金)第5ステージ サンテティエンヌ〜ラストー 192.5km
3月14日(土)第6ステージ ヴァンス〜ニース 180.5km
3月15日(日)第7ステージ ニース〜コル・デズ 9.6km(山岳TT)



チームスカイやBMCレーシングを中心にしたマイヨジョーヌ争い

シーズン序盤から過密なスケジュールをこなしているリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)シーズン序盤から過密なスケジュールをこなしているリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) photo:TDWsportTTステージの走りに注目が集まるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)TTステージの走りに注目が集まるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:CorVosディフェンディングチャンピオンのカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)が同時期にイタリアで開催されるティレーノ・アドリアティコに出場する中、2013年大会の覇者リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)は強力なアシストを従えての出場だ。

オマーンを総合2位で終えたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)オマーンを総合2位で終えたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Tim de Waele昨年ツールを盛り上げたジャンクリストフ・ペローやロマン・バルデ(フランス)がAG2Rラモンディアールのエースを担う昨年ツールを盛り上げたジャンクリストフ・ペローやロマン・バルデ(フランス)がAG2Rラモンディアールのエースを担う photo:Makoto.AYANOツアー・ダウンアンダーを僅差の総合2位で終えたポートは、昨年パリ〜ニースでマイヨジョーヌを着たゲラント・トーマス(イギリス)や新加入のニコラス・ロッシュ(アイルランド)、そして実質的に現役最後のパリ〜ニース出場となるブラドレー・ウィギンズ(イギリス)らにバックアップされる。パリ〜ルーベに照準を合わせているウィギンズは100%ポートのアシストに徹する。

波に乗るアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)はスプリントステージで注目の存在波に乗るアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)はスプリントステージで注目の存在 photo:Tim de Waeleツアー・ダウンアンダーでポートを押さえ込んだローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)は、ツアー・オブ・オマーンで調子の良さを見せたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)をアシストする。北米勢としては2013年大会総合2位のアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)にも注目だ。

ベタンクールに代わってチームとして連覇を狙うのは、昨年ツールを盛り上げたジャンクリストフ・ペローとロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)の2人。地元フランス勢としてはクライマーのワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)の活躍にも期待がかかる。

世界チャンピオンのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)はトニ・マルティン(ドイツ)とともにスタートラインに並ぶ。前世界チャンピオンのルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)はツアー・オブ・オマーン覇者のラファエル・バルス(スペイン)をアシストすることになるだろう。

ライセンス問題で揺れるアスタナはファビオ・アル(イタリア)の他、ルイスレオン・サンチェス(スペイン)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク)、レイン・ターラマエ(エストニア)を揃える。他にもティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)やウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)、ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)らが総合上位に絡んでくるだろう。

前半ステージで勝利を狙うのはミラノ〜サンレモに照準を合わすスプリンターたちだ。今シーズンすでに4勝を飾っているアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)やアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)ら、ピュアスプリンターがフィニッシュ前を支配するはず。フレンチスプリンターとして台頭するアルノー・デマール(FDJ)、ブライアン・コカール(ユーロップカー)、ナセル・ブアニ(コフィディス)らが海外勢を迎え撃つ。

登坂力を備えたパンチャー系スプリンターとしてはジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)らも注目。昨年ツアー・オブ・ジャパン東京ステージを制し、GPルガーノで優勝した21歳のニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ)もスタートリストに入っている。

text:Kei Tsuji
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