2015/02/12(木) - 10:16
アジア選手権大会ロード2日目でまたも日本が金メダルを獲得。積極的に動いた小石祐馬が逃げ切り勝利で男子U23アジアチャンピオンに輝いた。女子エリートの日本人最高位は萩原麻由子の10位だった。田中苑子による現地レポートをお届けします。
大会2日目を迎えたタイ・ナコンラチャシマでのアジア選手権ロードレース。昨日よりやや蒸し暑さを感じるものの、不快なものではなく、大会関係者たちは運営に慣れたのが、昨日より少し早く、コース上は交通規制がかかった。この日、最初のレースとなるのは、アンダー23の男子。大会初日の日本勢の活躍により、日本ナショナルチームは非常にいい雰囲気で、10周回、81.4kmのレースはスタートした。
アンダー23の代表選手は、アジア選手権に合わせて、補欠選手を含めたメンバーでタイで事前合宿を行い、最終的にコンディションの良い徳田優(鹿屋体育大学/チャンピオンシステム)、小石祐馬(チャンピオンシステム)、面手利輝(EQADS)、岡篤志(EQADS)、以上4名のヨーロッパでのレース経験も豊富なメンバーが選ばれた背景があり、みな口々に調子の良さを話す。
レース前は「集団スプリントの展開になるのではないか?」それが大概の関係者の読みだった。浅田顕監督は「いろんなチームの選手や思惑を分析して、選手全員でミーティングをした結果、攻撃には小石と徳田が入る。そして、面手と岡はスプリントに備えて、集団に残るという作戦を立てました」と話す。そしてレースが始まると、序盤から小石祐馬が積極的な攻撃を見せ、小石を含む主要チームがすべて乗った8名ほどの先頭集団が作られた。
「キーとなるチームはカザフスタンやイランでした。さらにそれ以外の5チームくらいが乗ったいいメンバーの逃げで、逃げ切れる可能性もあると思いました」と小石は振り返る。しかし、途中でカザフスタンの選手がパンクして離脱。すると先頭集団のペースが乱れ、後続集団ではカザフスタンがペースアップを図り、レース中盤に逃げは一度吸収され、レースは振り出しに戻った。
すると、その直後にアタックが決まり、今度は徳田優を含む先頭集団が作られた。そして、小石が単独でブリッジをかけて先頭集団への合流を成功させる。先頭集団には、イランと日本が2選手を送り込み、彼らが有利な立場でレースは進んでいった。ラスト2周回でイラン人選手が単独で先行すると、またしてもそこに小石が単独で追いついた。
「後ろの集団は(徳田)優が止めてくれていたので、イラン人と2人で逃げ切りをめざしました。そして気がついたら、最終周回では、後続と30秒もの差ができていて、そこからは勝つことを考えました。イランの選手はスプリント力はないと思ったけど、自分としては100%勝ちたかったので、ラスト2kmくらいから逃げ切りたかったですが、それはうまくいかず、ラスト500メートルで早掛けして、そこからイランの選手をちぎって勝つことができました」。
こうして、大きなガッツポーツを掲げて、ゴールラインを横切った小石。アンダー23カテゴリー4年目、これまでベルギーやイタリアを拠点に活動し、今大会で自身初となる大きなタイトルを獲得した。
勝利の感想を、「素直に嬉しいですね。去年の夏から早めにオフをとり、今日のアジア選手権に向けて準備をしてきました。アジア選手権はUCIポイント、ネイションズカップポイントを獲得できるU23の選手には大切な大会。それで優勝することができ、また1年のスタートを最高の形で切ることができ、本当に嬉しく思います。今回の結果で、世界選手権出場が見えてきたので、そこをシーズン最後の目標と考えて、アンダーカテゴリー最後のシーズンになるので、来季につながるように、大きなレースで結果を出していきたいと思います」とコメントする。
アンダー23カテゴリーでは、過去2年間、日本ナショナルチームは世界選手権への出場枠を獲得できていなかった。昨年もあと少しのところで、悔しさを味わう出来事が多く、今回の勝利で、ようやく世界選手権や“アンダー23カテゴリー版ツール・ド・フランス”と呼ばれる「ツール・ド・ラブニール」への出場が見えてきた。
浅田監督は「本当に嬉しいですね。これで世界選手権に行けるので、今はみんなで喜んでいます。今日、カザフは失敗してしまいましたが、仮に彼らが追い上げてきたときに、獲得ポイントがゼロ点では困るので、賭け的なレースはできない状況だった。しかし、どういう形でも点は取れたコンディションであったし、展開であったと思っています」と、レース後に笑顔を見せた。
アンダー23男子の表彰式が長引くなかで、慌ただしくスタートを切ったのは、エリート女子カテゴリー。日本からは、西加南子(LUMINARIA)、萩原麻由子(ウィグルホンダ)、針谷千紗子(Live GARDEN BICI STELLE)、與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)が出走した。
9周回、73.3kmで開催されたレースは、決定的な逃げが決まらず、「単発的にアタックはかかるんですけど、韓国とかが組織だってチェックして、集団に戻すという動き。何度かアタックを試みたんですが、タイミングが悪かったり、今日は脚もあまり良くなかったですね」と、全日本チャンピオンの萩原麻由子は振り返る。終始、スローペースでレースは進み、終盤になってから、ゴールスプリントに向けて、集団が活性化し始めた。
香港、カザフスタン、韓国、台湾など、集団スプリントに持ち込みたいチームが前方に上がり始め、日本ナショナルチームは、萩原が最後にアタックを決めようと残り2周回目でトライをするも失敗。最後の局面でもチームメートが集団内でうまくまとまれず、連携してゴールスプリントに持ち込むことはできなかった。スプリントを制して優勝したのは台湾のファン・ティンイン。チームメートのメイユー・ヒシャオとの見事なワンツーフィニッシュとなった。
日本ナショナルチームの最高位は萩原の10位。結果を出すことはできなかったが、萩原は「1ついい点があるとすれば、即席のチームで、みんな合宿もバラバラで、事前練習もなかったんですけど、一度だけ連携をして攻撃をしかける場面がありました。他のカテゴリーから見たら笑われてしまうかもしれないんですが、ミーティングで話しをして、やろうとしたことが1つでもできたのは良かったです」
「具体的には、連携して攻撃をしかけました。1人で行くのではなく、2人で行くことによって、効果的に二段階に攻撃をしかけることができる。これができたということは、進歩として捉えたいですね。失敗ばっかりではあるけど、来年の日本で開催されるアジア選手権に向けて、また今後につなげていけたらいいと思います」とコメントする。
大会3日目の12日は、男子エリートのロードレースが20時から予定されており、日本からは佐野淳哉(那須ブラーゼン)、新城幸也(ユーロップカー)、内間康平(ブリヂストンアンカー)、中島康晴(愛三工業レーシングチーム)が出場する。
第35回アジア自転車競技選手権大会/第22回アジア・ジュニア自転車競技選手権大会
男子アンダー23個人ロードレース(81.4km)
1位 小石 祐馬(京都・CHAMPION SYSTEM)1時間46分33秒
2位 CHAICHI RAGHIMI, Mohammadesmaeil IRI 1時間46分37秒
3位 PENG Yuan Tang TPE 1時間47分59秒
9位 徳田 優(京都・鹿屋体育大学/CHAMPION SYSTEM)1時間48分03秒
18位 岡 篤志(茨城・EQADS)1時間49分37秒
24位 面手 利輝(神奈川・EQADS)1時間49分37秒
女子エリート個人ロードレース(73.3km)
1位 HUANG Ting Ying TPE 1時間50分34秒
2位 HSIAO Mei Yu TPE 1時間50分34秒
3位 MENG Zhaojuan HKG 1時間50分34秒
10位 萩原麻由子(群馬・Wiggle Honda pro team)1時間50分34秒
17位 西 加南子(千葉・LUMINARIA)1時間50分45秒
22位 與那嶺恵理(茨城・サクソバンクFX証券)1時間50分45秒
37位 針谷千紗子(栃木・Live GARDEN BICI STELLE)1時間57分09秒
text&photo:Sonoko.Tanaka
大会2日目を迎えたタイ・ナコンラチャシマでのアジア選手権ロードレース。昨日よりやや蒸し暑さを感じるものの、不快なものではなく、大会関係者たちは運営に慣れたのが、昨日より少し早く、コース上は交通規制がかかった。この日、最初のレースとなるのは、アンダー23の男子。大会初日の日本勢の活躍により、日本ナショナルチームは非常にいい雰囲気で、10周回、81.4kmのレースはスタートした。
アンダー23の代表選手は、アジア選手権に合わせて、補欠選手を含めたメンバーでタイで事前合宿を行い、最終的にコンディションの良い徳田優(鹿屋体育大学/チャンピオンシステム)、小石祐馬(チャンピオンシステム)、面手利輝(EQADS)、岡篤志(EQADS)、以上4名のヨーロッパでのレース経験も豊富なメンバーが選ばれた背景があり、みな口々に調子の良さを話す。
レース前は「集団スプリントの展開になるのではないか?」それが大概の関係者の読みだった。浅田顕監督は「いろんなチームの選手や思惑を分析して、選手全員でミーティングをした結果、攻撃には小石と徳田が入る。そして、面手と岡はスプリントに備えて、集団に残るという作戦を立てました」と話す。そしてレースが始まると、序盤から小石祐馬が積極的な攻撃を見せ、小石を含む主要チームがすべて乗った8名ほどの先頭集団が作られた。
「キーとなるチームはカザフスタンやイランでした。さらにそれ以外の5チームくらいが乗ったいいメンバーの逃げで、逃げ切れる可能性もあると思いました」と小石は振り返る。しかし、途中でカザフスタンの選手がパンクして離脱。すると先頭集団のペースが乱れ、後続集団ではカザフスタンがペースアップを図り、レース中盤に逃げは一度吸収され、レースは振り出しに戻った。
すると、その直後にアタックが決まり、今度は徳田優を含む先頭集団が作られた。そして、小石が単独でブリッジをかけて先頭集団への合流を成功させる。先頭集団には、イランと日本が2選手を送り込み、彼らが有利な立場でレースは進んでいった。ラスト2周回でイラン人選手が単独で先行すると、またしてもそこに小石が単独で追いついた。
「後ろの集団は(徳田)優が止めてくれていたので、イラン人と2人で逃げ切りをめざしました。そして気がついたら、最終周回では、後続と30秒もの差ができていて、そこからは勝つことを考えました。イランの選手はスプリント力はないと思ったけど、自分としては100%勝ちたかったので、ラスト2kmくらいから逃げ切りたかったですが、それはうまくいかず、ラスト500メートルで早掛けして、そこからイランの選手をちぎって勝つことができました」。
こうして、大きなガッツポーツを掲げて、ゴールラインを横切った小石。アンダー23カテゴリー4年目、これまでベルギーやイタリアを拠点に活動し、今大会で自身初となる大きなタイトルを獲得した。
勝利の感想を、「素直に嬉しいですね。去年の夏から早めにオフをとり、今日のアジア選手権に向けて準備をしてきました。アジア選手権はUCIポイント、ネイションズカップポイントを獲得できるU23の選手には大切な大会。それで優勝することができ、また1年のスタートを最高の形で切ることができ、本当に嬉しく思います。今回の結果で、世界選手権出場が見えてきたので、そこをシーズン最後の目標と考えて、アンダーカテゴリー最後のシーズンになるので、来季につながるように、大きなレースで結果を出していきたいと思います」とコメントする。
アンダー23カテゴリーでは、過去2年間、日本ナショナルチームは世界選手権への出場枠を獲得できていなかった。昨年もあと少しのところで、悔しさを味わう出来事が多く、今回の勝利で、ようやく世界選手権や“アンダー23カテゴリー版ツール・ド・フランス”と呼ばれる「ツール・ド・ラブニール」への出場が見えてきた。
浅田監督は「本当に嬉しいですね。これで世界選手権に行けるので、今はみんなで喜んでいます。今日、カザフは失敗してしまいましたが、仮に彼らが追い上げてきたときに、獲得ポイントがゼロ点では困るので、賭け的なレースはできない状況だった。しかし、どういう形でも点は取れたコンディションであったし、展開であったと思っています」と、レース後に笑顔を見せた。
アンダー23男子の表彰式が長引くなかで、慌ただしくスタートを切ったのは、エリート女子カテゴリー。日本からは、西加南子(LUMINARIA)、萩原麻由子(ウィグルホンダ)、針谷千紗子(Live GARDEN BICI STELLE)、與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)が出走した。
9周回、73.3kmで開催されたレースは、決定的な逃げが決まらず、「単発的にアタックはかかるんですけど、韓国とかが組織だってチェックして、集団に戻すという動き。何度かアタックを試みたんですが、タイミングが悪かったり、今日は脚もあまり良くなかったですね」と、全日本チャンピオンの萩原麻由子は振り返る。終始、スローペースでレースは進み、終盤になってから、ゴールスプリントに向けて、集団が活性化し始めた。
香港、カザフスタン、韓国、台湾など、集団スプリントに持ち込みたいチームが前方に上がり始め、日本ナショナルチームは、萩原が最後にアタックを決めようと残り2周回目でトライをするも失敗。最後の局面でもチームメートが集団内でうまくまとまれず、連携してゴールスプリントに持ち込むことはできなかった。スプリントを制して優勝したのは台湾のファン・ティンイン。チームメートのメイユー・ヒシャオとの見事なワンツーフィニッシュとなった。
日本ナショナルチームの最高位は萩原の10位。結果を出すことはできなかったが、萩原は「1ついい点があるとすれば、即席のチームで、みんな合宿もバラバラで、事前練習もなかったんですけど、一度だけ連携をして攻撃をしかける場面がありました。他のカテゴリーから見たら笑われてしまうかもしれないんですが、ミーティングで話しをして、やろうとしたことが1つでもできたのは良かったです」
「具体的には、連携して攻撃をしかけました。1人で行くのではなく、2人で行くことによって、効果的に二段階に攻撃をしかけることができる。これができたということは、進歩として捉えたいですね。失敗ばっかりではあるけど、来年の日本で開催されるアジア選手権に向けて、また今後につなげていけたらいいと思います」とコメントする。
大会3日目の12日は、男子エリートのロードレースが20時から予定されており、日本からは佐野淳哉(那須ブラーゼン)、新城幸也(ユーロップカー)、内間康平(ブリヂストンアンカー)、中島康晴(愛三工業レーシングチーム)が出場する。
第35回アジア自転車競技選手権大会/第22回アジア・ジュニア自転車競技選手権大会
男子アンダー23個人ロードレース(81.4km)
1位 小石 祐馬(京都・CHAMPION SYSTEM)1時間46分33秒
2位 CHAICHI RAGHIMI, Mohammadesmaeil IRI 1時間46分37秒
3位 PENG Yuan Tang TPE 1時間47分59秒
9位 徳田 優(京都・鹿屋体育大学/CHAMPION SYSTEM)1時間48分03秒
18位 岡 篤志(茨城・EQADS)1時間49分37秒
24位 面手 利輝(神奈川・EQADS)1時間49分37秒
女子エリート個人ロードレース(73.3km)
1位 HUANG Ting Ying TPE 1時間50分34秒
2位 HSIAO Mei Yu TPE 1時間50分34秒
3位 MENG Zhaojuan HKG 1時間50分34秒
10位 萩原麻由子(群馬・Wiggle Honda pro team)1時間50分34秒
17位 西 加南子(千葉・LUMINARIA)1時間50分45秒
22位 與那嶺恵理(茨城・サクソバンクFX証券)1時間50分45秒
37位 針谷千紗子(栃木・Live GARDEN BICI STELLE)1時間57分09秒
text&photo:Sonoko.Tanaka
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