2015/01/24(土) - 09:03
今回テストするのはデローザ2015ラインナップにおける注目モデルの1つ「PLANET」。かつての人気モデルの車名を冠し、同社史上初めてシマノパーツを装備するカーボンフレーム完成車だ。多くのサイクリストが憧れを抱くハートマークのイタリアンブランドを身近な存在にしてくれるミッドレンジの実力をチェックする。
アメリカンメーカーの台頭によって、チクリと呼ばれる伝統のイタリアンブランドの多くが勢いを失う中、デローザは多くのサイクリストにとって憧れの存在であり続けている。バイク自体の優れた性能や美しいデザインもさることながら、時代のチャンピオン達から深く愛され、多くのビッグレースで勝利に貢献し、レーシングブランドとして積み重ねてきた実績もその主たる理由である。
史上最強の自転車選手と呼ばれる”ハンニバル”ことエディ・メルクスを筆頭にエフゲニー・ベリツィン、ステファノ・ガルゼッリ、アレッサンドロ・ペタッキなどそうそうたる面々がデローザに乗って活躍してきた。しかしながらここ数年はトップカテゴリーでの露出が減少。それでもイタリアに根ざすチームへのサポートは地道に継続し、2015シーズンはダミアーノ・クネゴ(イタリア)をキャプテンに迎えた新プロコンチーム「NIPPOヴィーニファンティーニ」がデローザを使用することに。既に同チームの出場が確定したジロ・デ・イタリアを始め、今年は久しぶりにビッグレースでデローザが走る姿を見ることができそうだ。
そんな伝統と実績のレーシングブランドであるデローザだが、近年は変革の時期にあるといえる。PROTOSなどのレーシングモデルや、TITANIOをはじめとした芸術とさえ形容できるほどの美しい金属フレームなど、これまではハイエンドモデルを中心としてきた。しかし、2011年に比較的手頃なカーボンバイク「R848」を発表して以来、エントリーグレードの充実化を図ってきた。
そして、もう1つ大きな変化がシマノパーツへの対応だ。1960年台より長きに渡って同郷のカンパニョーロと蜜月の関係を築き、近年では電子式変速EPSのみに対応するフレームを発表しているほど、カンパニョーロとは切っても切れないデローザ。しかしながら、2015ラインナップではトップレンジの1つである新モデルKING XSに、シマノが推し進めるダイレクトマウントブレーキを導入。それに続き、初のシマノコンポーネント搭載の完成車を2モデル発表した。その内の1つが今回インプレッションを行う「PLANET(プラネット)」。そう、古くからのファンには懐かしい名車が復活したのである。
アルミ+カーボンバックフレームであった先代のPLANETは1999年から4年間に渡ってトップレンジのレーシングマシンとしてラインナップされていた。デダチャイ製のデローザオリジナルチューブ「7003」を採用した点や、継ぎ目がわからないほどスムーズなカーボンとアルミの接続部分、そしてイタリアンブランドらしい美しいグラフィックなどがその特徴だ。なお、当時は1stディヴィジョンチームのリーゾ・スコッティにも供給され、ジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスなどを走っていた。
一方、新型PLANETは昨年までラインナップされていた「R838」の後継にあたるミディアムレンジモデルだ。全体的にシャープな印象のフレームは、一部に軽量なユニディレクショナルカーボンを使用。ボリューム感あるダウンチューブや長方形断面が貫かれたチェーンステー、新たに採用されたBB30-46規格のオーバーサイズBBの組み合わせが、デローザらしい剛性感高い踏み味を実現している。
ヘッドチューブには段差が設けられたデザインや、下側ベアリング径が1-1/2インチのテーパードデザインをR838から受け継ぐ。一方でフロントフォークは緩やかにベンドしている点こそ変わらないが、全体的にシンプルなフォルムに。この見直しによって剛性を抑えつつも優れた操縦性を確保した。
快適性については、現代的な設計のトレンドにならってフレーム上部が担う。一見して直線的なトップチューブはヘッドチューブ側を大径とした一方で、シートチューブ側に向かって絞られる。そこから滑らかに接続するシートステーは内側に向かってベンドし、横剛性やねじれ剛性を損なうことなく縦方向の柔軟性を高めている。
ケーブル類は基本的に内蔵としながらも、ルーティングを考慮した挿入口の位置やグロメットの造り、一部外装化によってスムーズなレバーの引きを可能としている。なお、後々のアップグレードを考慮して機械式のみならず電動/電子式コンポーネントにも対応し、シマノDi2やカンパニョーロEPSのケーブル及びバッテリーの内蔵が可能だ。
販売パッケージはリア11速のシマノ 105完成車のみ。ホイールもシマノで、WH-RS11がアッセンブルされている。ハンドル、ステム、シートポストは全てFSA製で統一感高い仕上がりに。セライタリア製サドルと標準で1つ付属するボトルケージにはデローザのロゴが配されている。サイズは47cm、50cm、53cm、55cm、58cmの5種類展開で、いずれもスローピングデザイン。乗り味の要となるジオメトリーは標準的だ。
伝統を打ち破り、シマノコンポーネントを装備したミッドレンジの完成車「PLANET」は果たしてどの様な乗り味を持ったバイクなのだろうか。早速インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「レースからロングライドまで幅広く楽しめる軽快な乗り味の1台」山崎敏正(シルベストサイクル)
非常に素直な乗り心地で、いつまでも楽に走り続けられる気持ちの良いバイクというのが第1印象です。かと言って体重75kgとスプリンター体型の私が乗っても決して踏み負けることはなく、剛性が不十分だという印象はありません。前と後、上と下、縦の柔軟性と横剛性、フォークとヘッドチューブ周りと総合的に剛性バランスが優れていることがその理由なのでしょう。やはり、カーボンのレイヤリングを始め、長年にわたって蓄積された設計に関するノウハウがエントリーグレードにも活かされていると感心してしまいました。
登りについては、際立って優れているというわけでは無いですが、シッティングに加えダンシングについても軽快ですので、高いレベルにあるといえるでしょう。完成車状態では重量のあるホイールが装着されていますが、より軽量なモデルに変更することで、フレームの持つポテンシャルを更に引き出すことができるはずですから、「どのホイールがマッチするかな」と悩みながらカスタマイズして頂いて楽しんでもらいたいですね。
下りでは思い通りのラインをトレースすることができます。PLANETに乗ったのは今回が初めてでしたが、いきなりアンダーステアになったり急に切れ込んだりと不安に感じる様な挙動がなく、登り性能に通じる軽快さがありましたね。どの様なレベルのライダーが乗っても「あぁ、これは良いなぁ」と納得して貰えるはずです。フロントフォークがしっかりとしているため、ブレーキング性能も良好で、ビビリが発生せずにしっかりと止まってくれました。
快適性については日本の舗装状態にマッチした必要十分な仕上がりだと感じました。コンフォートバイクの様に快適性に特化している訳ではないので、石畳が延々と続く路面では厳しいでしょうが、国内においてはそういったシチュエーションは少ないですし、純粋な走行性能を重視した分が走りの軽さにしっかりと繋がっています。
これからレースに参加してみたいという方から、ロングライドはまで、純粋にスポーツとしての自転車を楽しみたい幅広い層の方にオススメですね。レースでの使用に限って言えば、ヒルクライムから短距離のクリテリウムまで何でもこなせてしまうオールラウンダーといえるでしょう。これは仕入れとかなアカンと思わせてくれました(笑)
デローザにおいては普及モデルという位置付けですが、現行のシマノ105は先代のDURA-ACEに匹敵するだけの性能がありますから、過不足ない内容といえるでしょう。また、ブレーキやクランク、チェーンが社外製ということも無く、サドルにはデローザのロゴが入ったものが採用されるなど良心的なパッケージングですね。強いて言えば、ハンドル幅が狭いのが気になります。高いほど広く、低いほど狭くとハンドル幅は高さに比例することを考えると、比較的ハンドルを高めに設定することが多いので、1サイズ広めが良いのではと思いました。
また上記でホイールについて言及しましたが、標準のシマノWH-RS11も即交換が必要というわけではありません。完成車状態で乗り込んで、いざレースやハードなロングライドに挑むという時だけホイールを交換してあげると良いでしょう。思い切って近年トレンドとなっているカーボンディープクリンチャーで、リムハイトが50mm程度のモデルを装着してあげれば、非常に戦闘力の高い1台に仕上がるはずです。
「キレのあるロードレーサー然とした1台 細部の造りにノウハウが活きている」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
ミッドレンジながら上位グレードに匹敵する優れた走行性能をもった1台です。デローザと言えばクロモリというのが個人的なイメージで、カーボンについては他ブランドよりもやや遅れているという印象がありましたが、今回PLANETに乗ったことで、それは払拭されました。強く踏み込んでもしっかりと反応してくれるなど、キレのあるロードレーサー然としたバイクですね。
デローザは硬いというのが昔からの常ですが、それはPLANETにも通じていますね。大口径のBBや太く一直線なチェーンステーなどによって全体的にカッチリとした乗り味に仕上がっていました。加えて、完成車価格に対して比較的グレードの高いホイールが装着されていることもあってか、パワーロスしている感覚が希薄です。登りは軽やかにこなしてくれ、メーカーが意図する乗り味が実現できているのではないでしょうか。
ハンドリング性能についても良好です。キレのある乗り味は下りやコーナリングにも共通していて、下りコーナーではすっと曲がっていってくれました。どちらかと言えば、体を倒すというよりはハンドルを切って曲がっていく印象でしょうか。フロントフォークを緩やかにベンドさせ、ストレートブレードにありがちな癖をうまく打ち消せていることがその理由だと考えられます。突っ張る印象もありませんでした。
レーシーな乗り味ということもあり、快適性は決して高くないですが、必要にして充分といった印象です。近年流行のコンフォートモデルの様には行きませんが、荒れた路面を走ってもポンポンと跳ねることはありません。
細部の造りを見てみると、デローザが長年にわたって蓄積してきたノウハウが活かされていることがわかります。中でも細くて太ももに当たりづらいトップチューブのデザインには感心しました。そして、メーカーによって大きな差がでるワイヤリングについても非常に扱い易く、セッティングが出しやすそうですね。リアブレーキのワイヤーは、小さいサイズで外装式だとワイヤーに引っかかってしまうことがあります、メンテナンス性を落としてでも内装式としたのは賢明な判断では無いでしょうか。さすがはデローザと思わせてくれる造り込みですね。
価格面については、105完成車ながら30万円台前半ということで、他のブランドと比較すると割高感を覚える方も少なく無いでしょう。しかし、デローザという伝統あるブランドに見合うだけの性能があり、イタリアンブランドらしくルックス面での仕上げも良好ですね。実物を目の前にして、一度乗ってみれば、それだけ価値あるバイクであると多くの方に感じて貰えるはずです。
総じて、デローザというブランドに乗りたい方にオススメで、憧れだけで買っても満足できるはずです。正しくロードバイクという乗り味ですから、レースに参加してみたいというビギナーさんはもちろんのこと、ロングライドユースにしてもより速く走って疾走感を味わいたいという使い方にもピッタリではないでしょうか。パーツをアップグレードすれば、更にフレームのポテンシャルが引き立つはずです。ミッドレンジでも、上位モデルに迫る走行性能が実現できる時代になったんだなと改めて感心させられました。
デローザ PLANET(完成車)
フレーム素材:カーボン uni-directional super high-modul carbonium
BBシェル:BB30-46
ヘッドセット:FSA(1 1/8" - 1.5")
コンポーネント:シマノ 105
ホイール:シマノ RS-11
カラー:Blue Black White(Glossy)、Black White Red(Glossy)、Black Grey Red(Matt)
サイズ:47SL、50SL、53SL、55SL、58SL(いずれもスローピング)
価 格:318,000円(税別)
山崎敏正(シルベストサイクル)
「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在もロードレースで現役で、実業団ロードで入賞する好調ぶり。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供している。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。
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鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
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ウエア協力:reric
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photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
アメリカンメーカーの台頭によって、チクリと呼ばれる伝統のイタリアンブランドの多くが勢いを失う中、デローザは多くのサイクリストにとって憧れの存在であり続けている。バイク自体の優れた性能や美しいデザインもさることながら、時代のチャンピオン達から深く愛され、多くのビッグレースで勝利に貢献し、レーシングブランドとして積み重ねてきた実績もその主たる理由である。
史上最強の自転車選手と呼ばれる”ハンニバル”ことエディ・メルクスを筆頭にエフゲニー・ベリツィン、ステファノ・ガルゼッリ、アレッサンドロ・ペタッキなどそうそうたる面々がデローザに乗って活躍してきた。しかしながらここ数年はトップカテゴリーでの露出が減少。それでもイタリアに根ざすチームへのサポートは地道に継続し、2015シーズンはダミアーノ・クネゴ(イタリア)をキャプテンに迎えた新プロコンチーム「NIPPOヴィーニファンティーニ」がデローザを使用することに。既に同チームの出場が確定したジロ・デ・イタリアを始め、今年は久しぶりにビッグレースでデローザが走る姿を見ることができそうだ。
そんな伝統と実績のレーシングブランドであるデローザだが、近年は変革の時期にあるといえる。PROTOSなどのレーシングモデルや、TITANIOをはじめとした芸術とさえ形容できるほどの美しい金属フレームなど、これまではハイエンドモデルを中心としてきた。しかし、2011年に比較的手頃なカーボンバイク「R848」を発表して以来、エントリーグレードの充実化を図ってきた。
そして、もう1つ大きな変化がシマノパーツへの対応だ。1960年台より長きに渡って同郷のカンパニョーロと蜜月の関係を築き、近年では電子式変速EPSのみに対応するフレームを発表しているほど、カンパニョーロとは切っても切れないデローザ。しかしながら、2015ラインナップではトップレンジの1つである新モデルKING XSに、シマノが推し進めるダイレクトマウントブレーキを導入。それに続き、初のシマノコンポーネント搭載の完成車を2モデル発表した。その内の1つが今回インプレッションを行う「PLANET(プラネット)」。そう、古くからのファンには懐かしい名車が復活したのである。
アルミ+カーボンバックフレームであった先代のPLANETは1999年から4年間に渡ってトップレンジのレーシングマシンとしてラインナップされていた。デダチャイ製のデローザオリジナルチューブ「7003」を採用した点や、継ぎ目がわからないほどスムーズなカーボンとアルミの接続部分、そしてイタリアンブランドらしい美しいグラフィックなどがその特徴だ。なお、当時は1stディヴィジョンチームのリーゾ・スコッティにも供給され、ジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスなどを走っていた。
一方、新型PLANETは昨年までラインナップされていた「R838」の後継にあたるミディアムレンジモデルだ。全体的にシャープな印象のフレームは、一部に軽量なユニディレクショナルカーボンを使用。ボリューム感あるダウンチューブや長方形断面が貫かれたチェーンステー、新たに採用されたBB30-46規格のオーバーサイズBBの組み合わせが、デローザらしい剛性感高い踏み味を実現している。
ヘッドチューブには段差が設けられたデザインや、下側ベアリング径が1-1/2インチのテーパードデザインをR838から受け継ぐ。一方でフロントフォークは緩やかにベンドしている点こそ変わらないが、全体的にシンプルなフォルムに。この見直しによって剛性を抑えつつも優れた操縦性を確保した。
快適性については、現代的な設計のトレンドにならってフレーム上部が担う。一見して直線的なトップチューブはヘッドチューブ側を大径とした一方で、シートチューブ側に向かって絞られる。そこから滑らかに接続するシートステーは内側に向かってベンドし、横剛性やねじれ剛性を損なうことなく縦方向の柔軟性を高めている。
ケーブル類は基本的に内蔵としながらも、ルーティングを考慮した挿入口の位置やグロメットの造り、一部外装化によってスムーズなレバーの引きを可能としている。なお、後々のアップグレードを考慮して機械式のみならず電動/電子式コンポーネントにも対応し、シマノDi2やカンパニョーロEPSのケーブル及びバッテリーの内蔵が可能だ。
販売パッケージはリア11速のシマノ 105完成車のみ。ホイールもシマノで、WH-RS11がアッセンブルされている。ハンドル、ステム、シートポストは全てFSA製で統一感高い仕上がりに。セライタリア製サドルと標準で1つ付属するボトルケージにはデローザのロゴが配されている。サイズは47cm、50cm、53cm、55cm、58cmの5種類展開で、いずれもスローピングデザイン。乗り味の要となるジオメトリーは標準的だ。
伝統を打ち破り、シマノコンポーネントを装備したミッドレンジの完成車「PLANET」は果たしてどの様な乗り味を持ったバイクなのだろうか。早速インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「レースからロングライドまで幅広く楽しめる軽快な乗り味の1台」山崎敏正(シルベストサイクル)
非常に素直な乗り心地で、いつまでも楽に走り続けられる気持ちの良いバイクというのが第1印象です。かと言って体重75kgとスプリンター体型の私が乗っても決して踏み負けることはなく、剛性が不十分だという印象はありません。前と後、上と下、縦の柔軟性と横剛性、フォークとヘッドチューブ周りと総合的に剛性バランスが優れていることがその理由なのでしょう。やはり、カーボンのレイヤリングを始め、長年にわたって蓄積された設計に関するノウハウがエントリーグレードにも活かされていると感心してしまいました。
登りについては、際立って優れているというわけでは無いですが、シッティングに加えダンシングについても軽快ですので、高いレベルにあるといえるでしょう。完成車状態では重量のあるホイールが装着されていますが、より軽量なモデルに変更することで、フレームの持つポテンシャルを更に引き出すことができるはずですから、「どのホイールがマッチするかな」と悩みながらカスタマイズして頂いて楽しんでもらいたいですね。
下りでは思い通りのラインをトレースすることができます。PLANETに乗ったのは今回が初めてでしたが、いきなりアンダーステアになったり急に切れ込んだりと不安に感じる様な挙動がなく、登り性能に通じる軽快さがありましたね。どの様なレベルのライダーが乗っても「あぁ、これは良いなぁ」と納得して貰えるはずです。フロントフォークがしっかりとしているため、ブレーキング性能も良好で、ビビリが発生せずにしっかりと止まってくれました。
快適性については日本の舗装状態にマッチした必要十分な仕上がりだと感じました。コンフォートバイクの様に快適性に特化している訳ではないので、石畳が延々と続く路面では厳しいでしょうが、国内においてはそういったシチュエーションは少ないですし、純粋な走行性能を重視した分が走りの軽さにしっかりと繋がっています。
これからレースに参加してみたいという方から、ロングライドはまで、純粋にスポーツとしての自転車を楽しみたい幅広い層の方にオススメですね。レースでの使用に限って言えば、ヒルクライムから短距離のクリテリウムまで何でもこなせてしまうオールラウンダーといえるでしょう。これは仕入れとかなアカンと思わせてくれました(笑)
デローザにおいては普及モデルという位置付けですが、現行のシマノ105は先代のDURA-ACEに匹敵するだけの性能がありますから、過不足ない内容といえるでしょう。また、ブレーキやクランク、チェーンが社外製ということも無く、サドルにはデローザのロゴが入ったものが採用されるなど良心的なパッケージングですね。強いて言えば、ハンドル幅が狭いのが気になります。高いほど広く、低いほど狭くとハンドル幅は高さに比例することを考えると、比較的ハンドルを高めに設定することが多いので、1サイズ広めが良いのではと思いました。
また上記でホイールについて言及しましたが、標準のシマノWH-RS11も即交換が必要というわけではありません。完成車状態で乗り込んで、いざレースやハードなロングライドに挑むという時だけホイールを交換してあげると良いでしょう。思い切って近年トレンドとなっているカーボンディープクリンチャーで、リムハイトが50mm程度のモデルを装着してあげれば、非常に戦闘力の高い1台に仕上がるはずです。
「キレのあるロードレーサー然とした1台 細部の造りにノウハウが活きている」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
ミッドレンジながら上位グレードに匹敵する優れた走行性能をもった1台です。デローザと言えばクロモリというのが個人的なイメージで、カーボンについては他ブランドよりもやや遅れているという印象がありましたが、今回PLANETに乗ったことで、それは払拭されました。強く踏み込んでもしっかりと反応してくれるなど、キレのあるロードレーサー然としたバイクですね。
デローザは硬いというのが昔からの常ですが、それはPLANETにも通じていますね。大口径のBBや太く一直線なチェーンステーなどによって全体的にカッチリとした乗り味に仕上がっていました。加えて、完成車価格に対して比較的グレードの高いホイールが装着されていることもあってか、パワーロスしている感覚が希薄です。登りは軽やかにこなしてくれ、メーカーが意図する乗り味が実現できているのではないでしょうか。
ハンドリング性能についても良好です。キレのある乗り味は下りやコーナリングにも共通していて、下りコーナーではすっと曲がっていってくれました。どちらかと言えば、体を倒すというよりはハンドルを切って曲がっていく印象でしょうか。フロントフォークを緩やかにベンドさせ、ストレートブレードにありがちな癖をうまく打ち消せていることがその理由だと考えられます。突っ張る印象もありませんでした。
レーシーな乗り味ということもあり、快適性は決して高くないですが、必要にして充分といった印象です。近年流行のコンフォートモデルの様には行きませんが、荒れた路面を走ってもポンポンと跳ねることはありません。
細部の造りを見てみると、デローザが長年にわたって蓄積してきたノウハウが活かされていることがわかります。中でも細くて太ももに当たりづらいトップチューブのデザインには感心しました。そして、メーカーによって大きな差がでるワイヤリングについても非常に扱い易く、セッティングが出しやすそうですね。リアブレーキのワイヤーは、小さいサイズで外装式だとワイヤーに引っかかってしまうことがあります、メンテナンス性を落としてでも内装式としたのは賢明な判断では無いでしょうか。さすがはデローザと思わせてくれる造り込みですね。
価格面については、105完成車ながら30万円台前半ということで、他のブランドと比較すると割高感を覚える方も少なく無いでしょう。しかし、デローザという伝統あるブランドに見合うだけの性能があり、イタリアンブランドらしくルックス面での仕上げも良好ですね。実物を目の前にして、一度乗ってみれば、それだけ価値あるバイクであると多くの方に感じて貰えるはずです。
総じて、デローザというブランドに乗りたい方にオススメで、憧れだけで買っても満足できるはずです。正しくロードバイクという乗り味ですから、レースに参加してみたいというビギナーさんはもちろんのこと、ロングライドユースにしてもより速く走って疾走感を味わいたいという使い方にもピッタリではないでしょうか。パーツをアップグレードすれば、更にフレームのポテンシャルが引き立つはずです。ミッドレンジでも、上位モデルに迫る走行性能が実現できる時代になったんだなと改めて感心させられました。
デローザ PLANET(完成車)
フレーム素材:カーボン uni-directional super high-modul carbonium
BBシェル:BB30-46
ヘッドセット:FSA(1 1/8" - 1.5")
コンポーネント:シマノ 105
ホイール:シマノ RS-11
カラー:Blue Black White(Glossy)、Black White Red(Glossy)、Black Grey Red(Matt)
サイズ:47SL、50SL、53SL、55SL、58SL(いずれもスローピング)
価 格:318,000円(税別)
山崎敏正(シルベストサイクル)
「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在もロードレースで現役で、実業団ロードで入賞する好調ぶり。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供している。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。
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鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
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BiciSupport(ビチサポート) ART 54 DEROSA BLK
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BiciSupport(ビチサポート) ART 54 DEROSA BLU(ハートマーク)
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