新生キャノンデール・ガーミンのエースの一人、ダニエル・マーティン(アイルランド)。アップダウンのあるクラシックを得意とし、アップダウンのあるシーズンを送ったアイリッシュライダーにインタビューを行った。



チームプレゼンテーションに登場したダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)チームプレゼンテーションに登場したダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン) photo:Kei Tsuji


キャノンデール・ガーミンのジャージを着た選手たちが登場キャノンデール・ガーミンのジャージを着た選手たちが登場 photo:Kei Tsujiチームリーダーの一人、ダニエル・マーティンは28歳。ジャパンカップにも4回出場(2010年優勝)していることから日本でもお馴染みの存在だ。穏やかに見えるが、その走りはアグレッシブそのもの。周囲を驚かすアタックでこれまで数々のタイトルを手にしてきた。20分間のインタビュー中にも、本人の座右の銘に近い「アグレッシブ」という単語が20回は出た。

こちらから聞く前にジャパンカップとの相性の良さや日本への思いを語り始めたマーティンに、2015年シーズンとチームの新体制について聞いた。開幕迫るシーズンに心を躍らせている様子がひしひしと伝わってきた。



ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン) photo:Kei Tsuji


2014年シーズンはアップダウンの連続でしたね

2010年ジャパンカップ 優勝したダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)2010年ジャパンカップ 優勝したダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ) photo:Kei Tsuji自分の性格的に、あまり過去を振り返るのは好きじゃない。でも悪いシーズンなんてないんだ。いつでも変化があって、どのシーズンも違って当たり前だから。2014年シーズンは落車や怪我の連続だったけど、そこで経験したものが必ず先のシーズンに繋がっていく。勝つことも大切だけど、苦しい期間を耐え抜いて表舞台に戻り、再び勝つことが出来たのはファンタスティックだった。「良い」か「悪い」かで聞かれると、「重要な」シーズンだったと答えるかな。

2014年のブエルタ・ア・エスパーニャについて

落車もしたけど自分の中で最高位となる総合7位でレースを終えることが出来た。しかも総合5位や総合6位も狙えるポジションだったんだ。グランツールで総合トップ10を狙えることも分かった。次の目標は、次のレースで勝つこと。出場する全てのレースで全力を出すのが僕のポリシーなんだ。1つのレースに集中するのではなくて、1つのシーズンに集中するのが自分の性格でもある。

好きなグランツールについて

2014年リエージュ 最終コーナーでスリップダウンしたダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)2014年リエージュ 最終コーナーでスリップダウンしたダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) photo:Cor.Vosツールはツール。偉大なレースだ。2012年と2013年は出場したけど、2014年は欠場した。そこで気付いたんだ。家のテレビでレースを見ていると、自然にアドレナリンが出て興奮している自分がいた。あれほどエキサイティングなレースは他に無い。2015年に再び出場することを本当に楽しみにしている。ジロは…うーん、どうかな。アイルランドで開幕したのに初日に鎖骨を折ってリタイアしたりと、あまり良い思い出がない(笑)

ブエルタは好き。美しい大会だし、誰もがリラックスしている。でもレース自体はアグレッシブなんだ。サプライズが起こりにくいツールと違って展開がコロコロと変わる。例えばツールで総合8位につけていたとして、そこから1つでも順位を上げるのは難しいし、守りの走りに徹してしまいがち。でもブエルタであれば誰もがアグレッシブに攻撃する。そして攻撃すれば順位アップが可能なんだ。そんなアグレッシブなレースが自分に向いている。距離が短くて山岳の比率が高いことも自分向きだし。


2015年のツール・ド・フランスは?

実はまだツールのコースを詳しくチェックしていない。1週目はアルデンヌクラシックのようなアップダウンコースがあるので嬉しい。タイムトライアルがないことも朗報だ。でも最初から総合順位を狙う考えはないよ。毎日ステージ優勝を狙う走りに徹する。総合狙いのアンドリュー(タランスキー)がチームリーダーとしてプレッシャーを背負ってくれるから、リラックスしてレースに挑めると思う。ステージ優勝を狙っていくうちに、落車や怪我がなければ総合順位は上がると思う。とにかくアグレッシブに走ること。それが自分の役割だ。

2008年からチームに所属している中で今回が一番大きな変化なのでは?

2014年ブエルタ アタックを仕掛けるダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)2014年ブエルタ アタックを仕掛けるダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) photo:Unipublicクールなバイクとチームキットで生まれ変わった。でも実際チームの内部は変わっていないというのが正直なところ。チームの哲学や雰囲気はガーミン・シャープのままだ。変化と言えば、若い選手が増えたので、自分がチームに合流した2008年当時の雰囲気に戻ったことかな。2009年以降メンバーの平均年齢が上がり続けていたけど、2015年は再び平均年齢がダウンする。

実際にUCIワールドツアーの中で最も若いチームであり、チームキャンプでテーブルを囲んだ時に周りの若さに驚いたよ(笑)勢いとエネルギーに溢れている。アグレッシブでモチベーションの高い選手の集まりになった。「そんな戦略は無理だって」なんて文句を言うベテランはいない。「とにかくやってみよう!」というやる気に満ちあふれている。家族のような存在のチームが若返るのは少し変な気分でもあるけど。

チームの中で注目している若手は?

まだ一緒に走る機会がないので断言はできないけど、ダヴィデ・フォルモロは才能に溢れたクールな選手だ。モホリッチやモゼール、他にも優秀な若手が大勢いる。でも誰がスターになるかどうかは判断しかねる。若い時にある程度のところまで登り詰めながらその先に進めない20歳もいれば、今はまだ目立たないけど大きくステップアップする20歳もいる。誰が次世代を担う選手になるのか、それを見るのが楽しみでもある。ジョナサン(ヴォータース)には見る目があるので間違いないと思うけど。

そう言うあなたもまだ20代(28歳)ですよね

2014年ロンバルディア 優勝したダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)2014年ロンバルディア 優勝したダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) photo:Tim de Waele自分はまだ28歳だけど凄く歳をとったような気分だ(笑)経験を伝えるような、これまでと違う役割を担うことになる。自分よりも年上の選手としてはライダー(ヘシェダル)らがいる。彼とは一緒に育った仲であり、アンドリューを含めて非常に良い関係を築けている。

新体制で挑む2015年シーズンに向けて

12月に入ってからオフシーズンのトレーニングをスタート。ここまでのトレーニングには満足している。今シーズンから新しくセバスティアン・ウェーバーのコーチングを受けていることもあり、今までのシーズンとは違う手応えがある。今住んでいるのは(スペイン・カタルーニャ州の)ジローナとアンドラの間ぐらい。周りに高い山があるので山岳トレーニングに打ってつけ。必然的に自分の持ち味である山岳力を伸ばせている。とは言えこの季節は山が雪に閉ざされているけどね(笑)

束の間のニューヨーク滞在を楽しみましたか?

新ジャージでトレーニングを行なうダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)ら新ジャージでトレーニングを行なうダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)ら photo:Cannondale Garminニューヨークに来るのは2回目。でもあまり観光する時間がないので、シーズンが終わったらまた来ようと思っている。街がエネルギーに溢れている。街全体がアクセル全開で動いているので、なかなか寝付けない。東京も同じくエネルギーの塊だ。オリンピックの影響で大好きな築地市場が移転すると聞いてとても悲しい。あの良い雰囲気の市場をなくしてしまうなんて馬鹿げている。

従兄弟の結婚式が2015年10月にあるから確定ではないけど、ジャパンカップには是非ともまた出場したい。ホリデー気分の選手も多いけど、自分は全力で、アグレッシブに走ると約束するよ。ツアー・オブ・北京が無くなったのでフレッシュな状態で挑めると思う。だってツアー・オブ・北京の期間中に口にするのはヨーロッパから持ち込んだツナ缶と白米だけ。そんな状態で1週間を過ごすんだから、レースが終わった時点で身体が終わってしまうんだ。

text&photo:Kei Tsuji

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