オランダを駆け抜けたブエルタ・ア・エスパーニャ。203kmに渡る平坦コースの先に待っていたのは、混戦のスプリント勝負だった。チームメイトのサポートを受け、力技で活路を見出したゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)がグランツール初勝利を飾った。

オランダならではの運が横を通過するメイン集団オランダならではの運が横を通過するメイン集団 photo:Cor Vosモーターサーキットでの個人タイムトライアルから一夜明け、ついにブエルタがオランダを駆け巡る日がやってきた。第2ステージはアッセンからエメンまでの真っ平らな203km。“山岳賞ジャージ着用者を決めるためだけの”4級山岳や、パヴェ(石畳)区間が登場するブエルタらしくないステージだ。

曇り空のアッセンをスタート後、山岳賞ジャージ獲得と逃げ切りを目指して3km地点で飛び出したのは以下の5名。

メイン集団をコントロールするサクソバンクメイン集団をコントロールするサクソバンク photo:Unipublicリエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ)、ドミニク・ロエルス(ドイツ、ミルラム)、ダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)、フランシスコホセ・マルティネス(スペイン、アンダルシア)、トム・リーザー(オランダ、ラボバンク)。

この逃げグループは最大7分のリードを稼ぎ出し、4級山岳を先頭で通過したリーザーが山岳賞ジャージ獲得を確約。マイヨオロ擁するサクソバンクがコントロールしていたメイン集団は、レース後半にかけてガーミンとクイックステップの統治下に置かれた。

逃げに乗って4級山岳を先頭通過したトム・リーザー(オランダ、ラボバンク)逃げに乗って4級山岳を先頭通過したトム・リーザー(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vosゴール28km手前で登場したパヴェ区間ではラボバンクが集団ペースアップを図ったが、決定的な集団分裂も起こらず。慣れないオランダの道では落車が多発したが、幸い大怪我を負う選手はいなかった。

逃げグループとのタイム差は縮まり続け、逃げグループから諦めずに飛び出したヴェストラも、ゴールまで10kmを残して吸収。ここからはスプリンターチームによる熾烈なポジション争いが繰り広げられた。

メイン集団のスピードを上げるガーミンとクイックステップメイン集団のスピードを上げるガーミンとクイックステップ photo:Unipublicガーミンとクイックステップに加えて、リクイガスやチームコロンビア・HTCが集団先頭で競り合い、ラスト3kmからコロンビアトレインが発進。しかしガーミンとクイックステップの抵抗によりチームコロンビア・HTCはスプリントを掌握出来ず。

コロンビアトレインに牽かれたアンドレ・グライペル(ドイツ)が後方で手こずる中、ラスト200mで真っ先に仕掛けたのは、隣国ベルギーのチャンピオンジャージを着るトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)だった。

パヴェ区間をクリアするファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)パヴェ区間をクリアするファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Cor Vosボーネンにはタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)が対抗したが、エネコ・ツアーでステージ優勝を飾ったこの二大スプリンターは伸びずに失速していく。代わってチオレックとファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス)が先頭に立ち、肩を突き合わせた状態でゴール。チオレックが僅かに先着した。

チオレックは、18歳の若さで挑んだ2005年のドイツ選手権ロードで名手エリック・ツァベル(ドイツ)を破り、一躍注目を浴びた現在22歳の若手スプリンター。2006年にはロード世界選手権U23で優勝している。

最終ストレートで繰り広げられた混戦のスプリントバトル最終ストレートで繰り広げられた混戦のスプリントバトル photo:Cor Vos今年はチームコロンビア・HTCからミルラムに移籍してエースの座を得たが、勝利数はチャレンジ・マヨルカでの1勝止まり。ツール・ド・フランスではトップ10に7回入ったが、昨年までのチームメイト、カヴェンディッシュに阻まれて勝利には至らず。スパルカッセン・ジロで2位、ヴァッテンフォール・サイクラシックスでは3位だった。

念願のグランツール初勝利を手にしたチオレックは語る。「ツール・ド・フランス以降ずっとトップコンディションを維持していたけど、なかなか結果に結びつかなかった。ようやく手にした勝利に満足しているよ」。

グランツールでステージ初優勝を飾ったゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)グランツールでステージ初優勝を飾ったゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム) photo:Cor Vos集団内でゴールしたファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)はマイヨオロをキープ。しかしボーナスタイム20秒を獲得したチオレックが、8秒差の総合2位に浮上した。チオレックは「ステージ優勝を飾った今、数日のうちにマイヨオロに手が届く可能性はある。とにかくマイヨオロ獲得に全力を尽くすよ」と、リーダージャージ初着用に向けての意気込みを語った。

現在ミルラムのコーチを務めるラルフ・グラブシュはチーム公式サイトの中で「ロエルスが逃げに乗っていたので、終盤にかけていい展開に持ち込めた。集団を完全に率いるような強力なトレインを形成出来ない分、ラスト5km以降は集団前方でタイミングを待ち続けたんだ。最後はビョルン・シュレーダーがゲラルド・チオレックを好ポジションまで引き上げてくれた。チームとして申し分無い動きだったと思う。3週間の闘いに向けて士気を高めてくれる勝利だ」とチームの勝利を賞賛した。

またこの日、スプリントに向けてスピードの上がった集団は中切れが起こり、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)やサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)が18秒遅れでゴール。アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)に至っては30秒失った。総合成績が期待される選手たちが、平坦ステージでタイムを失う結果に。

翌第3ステージはカテゴリー山岳無しの平坦な189kmで行なわれる。途中パヴェ区間が数カ所登場し、隣国ドイツにも入国。2日連続で集団スプリントに持ち込まれる可能性は高い。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第2ステージ結果
1位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)4h43'12"
2位 ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス)
3位 ロジャー・ハモンド(イギリス、サーヴェロ)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
5位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)
6位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)
7位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、サイレンス・ロット)
8位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)
9位 ダヴィデ・ヴィガーノ(イタリア、フジ・セルヴェット)
10位 セバスティアン・シャヴァネル(フランス、フランセーズデジュー)

マイヨオロ(個人総合成績)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)4h48'32"
2位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)+08"
3位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)+09"
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)+12"
5位 イェンス・モーリス(オランダ、ヴァカンソレイユ)+14"
6位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)+16"
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+17"
8位 ダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+18"
9位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
10位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)

モンターニャ(山岳賞)
1位 トム・リーザー(オランダ、ラボバンク)

プントス(ポイント賞)
1位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)28pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)28pts
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)25pts

コンビナーダ(複合賞)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)4pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)4pts
3位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)6pts

チーム総合成績
1位 リクイガス 14h26'27"
2位 サクソバンク +03"
3位 ガーミン +06"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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