みやだクリテリウムは今年も劇的な勝利が待っていた。宇都宮ブリッツェンとTeam UKYOの隙を突き、ロイック・デリアック(フランス、TeamJBCF)が最終局面で渾身のアタックを敢行。躊躇する集団を尻目にゴールまで逃げ切り、待望の勝利を飾ってみせた。



2組の予選を通過した50名の選手がP1決勝に臨んだ2組の予選を通過した50名の選手がP1決勝に臨んだ photo:So.Isobeレースを重ねるごとに増す存在感。ロイック・デリアックの力はやはり本物だった。

コース中には直角コーナーが多数設けられるコース中には直角コーナーが多数設けられる photo:So.Isobe今年で6回目の開催を迎えた「JBCF みやだクリテリウム」。例年暑さ厳しいこの大会だが今年の最高気温は30℃ほど。湿度も低く、晩夏・初秋を感じさせる清々しい気候の下でのレースとなった。

「みやだクリテ」の舞台は⻑野県上伊那郡宮田村の一般公道を封鎖した1周3.2kmの特設コース。緩斜面に広がる田園の中を駆け巡るため、コースはホームストレートを除いたほぼ全周が緩い登りか下りで構成されている。コース再奥部には5〜6%の短いアップダウンも控えるため展開が生まれやすく、昨年も逃げ切りが決まったように一般的なクリテリウムレースとはイメージが異なる。

Jプロツアー決勝のスタートラインに並んだのは2組の予選から勝ち上がった50名の選手たち。短いローリングスタートを経て13時30分、コースを10周回する短期決戦の幕が切って落とされた。

スタート直後から一列棒状のハイペースが続く中、登りでペースアップした狩野智也(Team UKYO)の動きをきっかけに、マトリックスパワータグや那須ブラーゼンらが次々をアタックを掛けるものの、逃げの展開には繋がらず。2周目には野中竜馬(シマノレーシング)が、3周目には阿部嵩之と堀孝明(共に宇都宮ブリッツェン)が僅かなリードを得たが、これら有力チームの動きを集団は容認せず。人数を減らしつつ、決定的な逃げが生まれないままレースは中盤戦へと移行していく。



1周目 狩野智也(Team UKYO)が登りでペースアップ1周目 狩野智也(Team UKYO)が登りでペースアップ photo:So.Isobe3周目 阿部嵩之と堀孝明(共に宇都宮ブリッツェン)が逃げるも吸収3周目 阿部嵩之と堀孝明(共に宇都宮ブリッツェン)が逃げるも吸収 photo:So.Isobe

。鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)、土井雪広(TeamUKYO)、小坂光(那須ブラーゼン)そしてエドワード・プラデス(ポルトガル、マトリックスパワータグ)が逃げる。鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)、土井雪広(TeamUKYO)、小坂光(那須ブラーゼン)そしてエドワード・プラデス(ポルトガル、マトリックスパワータグ)が逃げる photo:So.Isobe


エドワード・プラデス(ポルトガル、マトリックスパワータグ)とホセ・ビセンテ(スペイン、Team UKYO)が抜け出しに成功するエドワード・プラデス(ポルトガル、マトリックスパワータグ)とホセ・ビセンテ(スペイン、Team UKYO)が抜け出しに成功する photo:So.Isobe初めて複数名の逃げが確立されたのは5周目。鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)、土井雪広(TeamUKYO)、小坂光(那須ブラーゼン)そしてエドワード・プラデス(マトリックスパワータグ)という強力な4名が10秒弱のリードで先行したが、畑中勇介(シマノレーシング)の全力追走によって再び集団は一つになる。するとカウンターでエドワード・プラデス(ポルトガル、マトリックスパワータグ)とホセ・ビセンテ(スペイン、Team UKYO)が抜け出した。

集団内で登りをこなす窪木一茂(Team UKYO) 集団内で登りをこなす窪木一茂(Team UKYO)  photo:So.Isobeプラデスとビセンテは着実にタイム差を広げ、10〜20秒弱ほどの差を持って最終周回突入直前まで逃げ続ける。この強力な動きを警戒し、メイン集団では鈴木譲と大久保陣というスプリンター2名を抱える宇都宮ブリッツェンが組織だった追走を開始。その後ろはTeamUKYO勢がぴったりとマークし、2つの有力チームによる攻防が熱を帯びていく。

集団内で静かに走るロイック・デリアック(フランス、TeamJBCF)集団内で静かに走るロイック・デリアック(フランス、TeamJBCF) photo:So.Isobe一時は逃げ切りも匂わせるリードを稼いだプラデスとビセンテのエスケープは、ブリッツェンの牽きによって最終周回のジャンと共に終了する。その後もブリッツェンのリードは揺るがず集団スプリントへの機運が高まっていくかのように見えた。

しかし、最後の登りでリカルド・ガルシア(スペイン、TeamUKYO)がロイック・デリアックを引き連れて渾身のアタックを敢行。この動きは決定打を欠いたもののブリッツェンの優位は崩れ、ここからエース級選手同士による最後の打ち合いが開始されていく。

そして残り1km。「過去にここで福島晋一さんが独走勝利した時の動きを動画で確認していた」というデリアックがコーナー直前でアタック。一方でその後ろにつけていた窪木一茂(Team UKYO)は一瞬追走を躊躇してしまう。この思惑の違いがレースの結果を左右した。

これまで息を潜めていたデリアックの強力なアタックは、一気に5〜10mほどのリードを生み出した。緩斜面の登りでも、最終ストレートでもその勢いは留まらず、TeamUKYO勢が必死の追走を見せたもののその差は縮まらない。スプリントで伸びる窪木の前で大きなガッツポーズが決まった。



プラデスとビセンテをフルメンバーで追い上げる宇都宮ブリッツェンプラデスとビセンテをフルメンバーで追い上げる宇都宮ブリッツェン photo:So.Isobeリカルド・ガルシア(スペイン、TeamUKYO)がロイック・デリアック(TeamJBCF)と共にアタックリカルド・ガルシア(スペイン、TeamUKYO)がロイック・デリアック(TeamJBCF)と共にアタック photo:So.Isobe

早掛けしたロイック・デリアック(フランス、TeamJBCF)が独走勝利を飾る早掛けしたロイック・デリアック(フランス、TeamJBCF)が独走勝利を飾る photo:JBCF事務局/So.Isobe


ロイック・デリアック(フランス、TeamJBCF)とチームの関係者が喜びを分かち合うロイック・デリアック(フランス、TeamJBCF)とチームの関係者が喜びを分かち合う photo:JBCF事務局/So.Isobeゴール後、歓喜の表情でチームの仲間と抱き合ったロイック。所属するキナンAACAが開催する「AACAカップ」で頭角を現し、東日本ロードで6位、先月の石川ロードでは2位とレースを経る毎に存在感を増してきたが、この宮田クリテで遂にJプロツアー優勝。その快進撃にチーム代表の加藤康則氏も「いつかはやってくれると信じていましたが、こんなに早いタイミングとは」と喜びを隠さない。

P1表彰式 ロイック・デリアック(フランス、TeamJBCF)を窪木一茂(Team UKYO)と入部正太朗(シマノレーシング)が囲むP1表彰式 ロイック・デリアック(フランス、TeamJBCF)を窪木一茂(Team UKYO)と入部正太朗(シマノレーシング)が囲む photo:So.Isobe25歳のデリアックは昨年までフランスのコンチネンタルチーム「ルーベ・リールメトロポール」に所属し、ヨーロッパツアーのレースで経験を積んできた生粋のパンチャー。キナンAACAの加藤代表が国内レース活性化の為に日本に呼び、プロ選手として6月から活動中。チームがJプロツアーに登録していないため、推奨枠を使ってTeamJBCFとして実業団レースを走っている。加藤代表は「すごく頭の良い選手。強力なのはもちろんですが、とにかくタイミングを読むのが上手い」と太鼓判を押す。

優勝したロイック・デリアック(フランス、TeamJBCF)と、キナンAACA代表の加藤康則氏優勝したロイック・デリアック(フランス、TeamJBCF)と、キナンAACA代表の加藤康則氏 photo:So.Isobe一方、「チームのことを考えて躊躇してしまい、集団も少し混乱してしまっていた。自分から行けなかったのが敗因です。」振り返るのは窪木。「やっぱり日本人が勝たないといけません。本当に悔しいですが、今日はデリアック選手の上手さにやられました。次は見返します。」と加えた。

またこの日、Fクラスは長らく怪我で戦線を離れていた豊岡英子(パナソニックレディース)を含む7名によるゴールスプリントに持ち込まれ、西加南子(LUMINARIA)との一騎打ちを智野真央(NEILPRYDE-MEN'S CLUB JFT)が制して優勝。ユースクラスは序盤から持ち前の独走力を発揮した小野康太郎(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)が単独でゴールに飛び込んだ。

ポイントレース形式で争われたエリートクラスでは、E1を川田優作(HONDA栃木)が、E2を安立和貴(チームフィンズ)が、そしてE3は菊池誠晃(ボンシャンス)がそれぞれ優勝している。



F 智野真央(NEILPRYDE-MENS CLUB JFT)を祝福するチームメイトF 智野真央(NEILPRYDE-MENS CLUB JFT)を祝福するチームメイト photo:So.IsobeY 独走勝利を収めた小野康太郎(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)Y 独走勝利を収めた小野康太郎(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ) photo:So.Isobe

E1 ゴール周回E1 ゴール周回 photo:So.IsobeE2 ゴール周回E2 ゴール周回 photo:So.Isobe



P1結果 32.00km(3.2km×10周)
1位 ロイック・デリアック(フランス、TeamJBCF) 
2位 窪木一茂(Team UKYO)
3位 入部正太朗(シマノレーシング)
4位 ホセ・ビセンテ(スペイン、Team UKYO)
5位 サルヴァドール・グアルディオラ(スペイン、Team UKYO)
6位 リカルド・ガルシア(スペイン、Team UKYO)
7位 土井雪広(Team UKYO)
8位 城田大和(宇都宮ブリッツェン)
9位 ベンジャミン・プラデス(スペイン、マトリックスパワータグ)
10位 大場政登志(CROPS×championsystem)
47'28"
+01"










Jプロツアーリーダー 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
U23リーダー 雨澤 毅明(那須ブラーゼン)

F結果 16.00km(3.2km×5周)            
1位 智野真央(NEILPRYDE-MEN'S CLUB JFT)
2位 西加南子(LUMINARIA)
3位 栗林ひろみ(バルバレーシング)
29'41"




Jフェミニンリーダー 棟近陽子(EURO-WORKS Racing)

Y結果 22.40km(3.2km×7周) 
1位 小野康太郎(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)
2位 椙田明仁(ARAIMURACA)                
3位 越智崇裕(湘南ベルマーレクラブ)            
4位 蠣崎優仁(EQUADS)
5位 西寅太郎(PARABOLAイワイシーガル) 
6位 小野寺慶(ブラウブリッツェン)
36'54"
+16"
+31"





Yユースリーダー 藤田拓海(横浜高校自転車競技部)

E1クラスタ
1位 川田優作(HONDA栃木)
2位 澤野敦志(竹芝サイクルレーシング)
3位 奥村隆平(DESTRA)
4位 郷津勝之(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)
5位 米谷隆志(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)
6位 大野二美雄(ACQUA TAMA)
90(Pts)
63
59
54
50
45


E2クラスタ
1位 安立和貴(チームフィンズ)
2位 奥田瑛史(BC ANELLO)
3位 坂大恵太(チームオーベスト)
4位 大島理彦(ラヴニールあづみの)
5位 小長谷剛(HONDA栃木)
6位 大津将史(WE LOVE O2)
54(Pts)
45
41
36
32
27


E3クラスタ
1位 菊池誠晃(ボンシャンス)
2位 鬼塚志洋(チパポンズ)
3位 平松幸紘(日本研実業団トライアスロン部)
4位 石塚祥吾(日本研実業団トライアスロン部)
5位 中井雄策(TRCパナマレッズ)
6位 濱野克悠(バルバレーシングクラブ)
36(Pts)
32
27
23
18
14


text&photo:So.Isobe

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