2014/08/17(日) - 09:10
分離可能なレールと、TUNERと呼ばれる部品により、座面の張り具合を調整可能とした唯一無二のサドル、フィジーク「KURVE(クーヴァ)」がモデルチェンジを果たした。軽量なカーボンブレイデッドモデルを加え、その内容は確かなアップグレードと言うべきものとなっている。
「KURVE」は、サドルトップの前後を一体成型されたサドルレール「MOBIUS(メビウス)」で支える「RE:FLEX構造」を用い、ベース自体をしならせることで衝撃吸収性を高めたサドル。経年劣化が少なく、長期間使用しても購入当初の快適性を維持できるのが特徴だ。
座面形状はフィジークの提唱する「スパインコンセプト」による3タイプが用意されている。
・スネーク:アリオネ/ツンドラを基調としたフラット&ナロー形状、脊椎の柔軟性が高いライダー向け
・カメレオン:アンタレス/ゴビを基調としたフラット&ワイド形状、中間の柔軟性のライダー向け
・ブル:アリアンテ基調のウェーブ&ワイド形状、脊椎の柔軟性が低く、骨盤を回転させにくいライダー向け
これらのベースは、いずれもフィジーク独自のテクノロジー「TWIN FLEX」と「WING FLEX」を備える。3枚の樹脂製シェルに極めて薄いフォームパッド(表皮)を圧着させた「TWIN FLEX」構造によって、部位ごとに接触圧を変化させ、身体への圧迫を軽減。それと並行して、しなりによってサドルを脚の動きに追従させる「WING FLEX」構造がスムーズなペダリングをサポートする。
アップグレードを果たしたKURVEは、パっと見の印象は前モデルとあまり変わらないが、ベース素材が従来のファイバーグラスを用いたRe:FLEXコンポジットから、フィラメントとケブラーを編み込んだ、柔軟なサーモプラスチック・コンポジットへと変更された。このハンモックのような構造によってライダーの軟部組織や神経組織、陰部動脈を柔軟にサポートしてくれる。
一体成型されたMOBIUSレールは、従来の鍛造アルミニウム製レールに加え、軽量なカーボンブレイデッド製レールが登場したことが大きな変化だ。カーボンによるシートクランプとの接合部分の補強などを踏襲しつつ、アルミニウムレールにも改良が加えられている。後方に補強用のブリッジを設けることで強度と剛性を高めつつ、全体で衝撃吸収性を高める基本構造はどちらも同じだ。
さらにレールとベースの先端側には「TUNER」と呼ばれるレール固定用パーツがあり、「SOFT」「HARD」の2種類を交換することで座面の張り具合を変化させ、乗り心地を調整できる。
それではインプレッションに移ろう。今回は新しく加わったカーボンブレイデッドレールのカメレオンタイプをテストした。(製品の情報やスパインコンセプトに基づいた各座面形状の写真はこちらの記事をご覧ください)
インプレッション
―「快適性の向上と軽量化によってトータルバランスを極めたサドル」細田雄一郎(cyclowired.jp)
まず、KURVEにあって他にはないサドル調整機能である「TUNER」について触れたい。これはTUNER KITと呼ばれるパーツとツールのセットが購入時に付属してくるため、別途買い求める必要はない。「HARD」のTUNERと、T-20トルクスビット、それを装着するレンチ兼TUNERを持ち上げるためのハンドル、予備のボルトがその内訳で、必要であればすぐにTUNERの交換が可能だ。
「HARD」に関してはレールのテンションが高くなるため、はめ込みに力が必要で、TUNERを押さえながらトルクスレンチを回すのに少々苦労した。非力な方はボルトを締め込む間、TUNER部分が持ち上がらないように押さえてくれる人が必要かもしれない。その分座面もビシっと張るので、「SOFT」では柔らかすぎると感じる方にはこちらをオススメしたい。
私の場合「HARD」は若干硬さを覚えたので、ライドの中盤からは「SOFT」へとTUNERを切り替えた。この辺り、従来ならサドルを丸ごと交換するようなケースだが、たった1つのパーツで乗り心地を変えられるのはKURVEならではの利便性と言える。
ベースは先端部分までやや幅広かつ側面が薄いため、私のように小柄で股関節の幅が狭いライダーには内腿とサドルの側面がわずかに擦る感触がある。しかしエッジは滑らかな弧を描いている上、ペダリング自体は「WING FLEX」を採用したベースのリズミカルなしなりによって快適に行えるため、ライドに集中し始めるとさほど気にならなくなった。
また、ベース裏面から見ると分かる通り、尿道と臀部が当たる部分計3箇所の樹脂が抜かれ、他の部位より若干沈みやすくなっている。サドル全体の柔軟性に加え、この加工が体圧分散をさらに促進する。ポイントで支えがちな穴あきサドルでは痛みを感じてしまう私だが、KURVEはしっかり面で支えてくれるため、適度なフィット感を与えてくれた。
今回のインプレッションはポジションの微調整を兼ねた初日に21km、2日目に53kmと少々短いライドとなった。その中でも荒れた路肩に乗り上げることはもちろん、ダートを走ったりもしており、そこで感じたのはやはり衝撃吸収性の高さ。音で言えば「ゴツッ」と来た硬い衝撃が、「ボクッ」と言った鈍い音に変わる印象だ。このためテストライドの間、不快感を覚えず走り終えることが出来た。
これは様々なテクノロジーを詰め込んだベースに加え、MOBIUSレールも前後の軸がある程度自由度を持っていることで、常にしなって変形し続けるベースを違和感なく支持してくれていることも大きいようだ。
KURVEはカーボンブレインデッドモデルの登場によって180〜185gと軽量化を果たし、より軽さを求めるライダー達の要求も満たしている。元々210〜220g程度あるサンマルコ「コンコール・ライト」を使う私は、ダンシングしてもKURVEの重量を感じることはなかった。
これ以上の軽さを求めるならベースからレールまでカーボンだけのサドルなどがあるにはあるが、使用はヒルクライムやTTなど特定条件に限られるはずだ。長距離を乗るためのトータルバランスではKURVEが1歩も2歩も上を行っている。
あとはライダー個々にフィットするのか、と言ったところだが、ライダーの柔軟性に応じてベースにスネーク/カメレオン/ブルの3種類の選択肢が用意されているため、その受け皿は大きい。フィッティングをしっかりと行い、正しいベースの選択さえ行えば、多くのライダーがKURVEの提供する高い快適性能の恩恵を受けられるはずだ。
フィジーク KURVE カーボン
レール:カーボンブレインデッド
座面形状(重量):SNAKE(180g)、CHAMELEON(185g)、BULL(185g)
価 格:36,820円(税抜)
フィジーク KURVE アルミニウム
レール:アルミニウム
座面形状(重量):SNAKE(220g)、CHAMELEON(225g)、BULL(225g)
価 格:29,100円(税抜)
「KURVE」は、サドルトップの前後を一体成型されたサドルレール「MOBIUS(メビウス)」で支える「RE:FLEX構造」を用い、ベース自体をしならせることで衝撃吸収性を高めたサドル。経年劣化が少なく、長期間使用しても購入当初の快適性を維持できるのが特徴だ。
座面形状はフィジークの提唱する「スパインコンセプト」による3タイプが用意されている。
・スネーク:アリオネ/ツンドラを基調としたフラット&ナロー形状、脊椎の柔軟性が高いライダー向け
・カメレオン:アンタレス/ゴビを基調としたフラット&ワイド形状、中間の柔軟性のライダー向け
・ブル:アリアンテ基調のウェーブ&ワイド形状、脊椎の柔軟性が低く、骨盤を回転させにくいライダー向け
これらのベースは、いずれもフィジーク独自のテクノロジー「TWIN FLEX」と「WING FLEX」を備える。3枚の樹脂製シェルに極めて薄いフォームパッド(表皮)を圧着させた「TWIN FLEX」構造によって、部位ごとに接触圧を変化させ、身体への圧迫を軽減。それと並行して、しなりによってサドルを脚の動きに追従させる「WING FLEX」構造がスムーズなペダリングをサポートする。
アップグレードを果たしたKURVEは、パっと見の印象は前モデルとあまり変わらないが、ベース素材が従来のファイバーグラスを用いたRe:FLEXコンポジットから、フィラメントとケブラーを編み込んだ、柔軟なサーモプラスチック・コンポジットへと変更された。このハンモックのような構造によってライダーの軟部組織や神経組織、陰部動脈を柔軟にサポートしてくれる。
一体成型されたMOBIUSレールは、従来の鍛造アルミニウム製レールに加え、軽量なカーボンブレイデッド製レールが登場したことが大きな変化だ。カーボンによるシートクランプとの接合部分の補強などを踏襲しつつ、アルミニウムレールにも改良が加えられている。後方に補強用のブリッジを設けることで強度と剛性を高めつつ、全体で衝撃吸収性を高める基本構造はどちらも同じだ。
さらにレールとベースの先端側には「TUNER」と呼ばれるレール固定用パーツがあり、「SOFT」「HARD」の2種類を交換することで座面の張り具合を変化させ、乗り心地を調整できる。
それではインプレッションに移ろう。今回は新しく加わったカーボンブレイデッドレールのカメレオンタイプをテストした。(製品の情報やスパインコンセプトに基づいた各座面形状の写真はこちらの記事をご覧ください)
インプレッション
―「快適性の向上と軽量化によってトータルバランスを極めたサドル」細田雄一郎(cyclowired.jp)
まず、KURVEにあって他にはないサドル調整機能である「TUNER」について触れたい。これはTUNER KITと呼ばれるパーツとツールのセットが購入時に付属してくるため、別途買い求める必要はない。「HARD」のTUNERと、T-20トルクスビット、それを装着するレンチ兼TUNERを持ち上げるためのハンドル、予備のボルトがその内訳で、必要であればすぐにTUNERの交換が可能だ。
「HARD」に関してはレールのテンションが高くなるため、はめ込みに力が必要で、TUNERを押さえながらトルクスレンチを回すのに少々苦労した。非力な方はボルトを締め込む間、TUNER部分が持ち上がらないように押さえてくれる人が必要かもしれない。その分座面もビシっと張るので、「SOFT」では柔らかすぎると感じる方にはこちらをオススメしたい。
私の場合「HARD」は若干硬さを覚えたので、ライドの中盤からは「SOFT」へとTUNERを切り替えた。この辺り、従来ならサドルを丸ごと交換するようなケースだが、たった1つのパーツで乗り心地を変えられるのはKURVEならではの利便性と言える。
ベースは先端部分までやや幅広かつ側面が薄いため、私のように小柄で股関節の幅が狭いライダーには内腿とサドルの側面がわずかに擦る感触がある。しかしエッジは滑らかな弧を描いている上、ペダリング自体は「WING FLEX」を採用したベースのリズミカルなしなりによって快適に行えるため、ライドに集中し始めるとさほど気にならなくなった。
また、ベース裏面から見ると分かる通り、尿道と臀部が当たる部分計3箇所の樹脂が抜かれ、他の部位より若干沈みやすくなっている。サドル全体の柔軟性に加え、この加工が体圧分散をさらに促進する。ポイントで支えがちな穴あきサドルでは痛みを感じてしまう私だが、KURVEはしっかり面で支えてくれるため、適度なフィット感を与えてくれた。
今回のインプレッションはポジションの微調整を兼ねた初日に21km、2日目に53kmと少々短いライドとなった。その中でも荒れた路肩に乗り上げることはもちろん、ダートを走ったりもしており、そこで感じたのはやはり衝撃吸収性の高さ。音で言えば「ゴツッ」と来た硬い衝撃が、「ボクッ」と言った鈍い音に変わる印象だ。このためテストライドの間、不快感を覚えず走り終えることが出来た。
これは様々なテクノロジーを詰め込んだベースに加え、MOBIUSレールも前後の軸がある程度自由度を持っていることで、常にしなって変形し続けるベースを違和感なく支持してくれていることも大きいようだ。
KURVEはカーボンブレインデッドモデルの登場によって180〜185gと軽量化を果たし、より軽さを求めるライダー達の要求も満たしている。元々210〜220g程度あるサンマルコ「コンコール・ライト」を使う私は、ダンシングしてもKURVEの重量を感じることはなかった。
これ以上の軽さを求めるならベースからレールまでカーボンだけのサドルなどがあるにはあるが、使用はヒルクライムやTTなど特定条件に限られるはずだ。長距離を乗るためのトータルバランスではKURVEが1歩も2歩も上を行っている。
あとはライダー個々にフィットするのか、と言ったところだが、ライダーの柔軟性に応じてベースにスネーク/カメレオン/ブルの3種類の選択肢が用意されているため、その受け皿は大きい。フィッティングをしっかりと行い、正しいベースの選択さえ行えば、多くのライダーがKURVEの提供する高い快適性能の恩恵を受けられるはずだ。
フィジーク KURVE カーボン
レール:カーボンブレインデッド
座面形状(重量):SNAKE(180g)、CHAMELEON(185g)、BULL(185g)
価 格:36,820円(税抜)
フィジーク KURVE アルミニウム
レール:アルミニウム
座面形状(重量):SNAKE(220g)、CHAMELEON(225g)、BULL(225g)
価 格:29,100円(税抜)
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