2014/07/18(金) - 17:14
ツールも折り返しを過ぎた12ステージ。昨日10日目にしてツールに初めて訪れた好天は今日も続いた。気温も30度を越える暑い日になった。プロトンはボジョレー地方を通りサンテティエンヌへ向かう。
涼しいを通り越して寒かったツール序盤から一転、急に暑くなって体調を壊していたのが世界チャンピオンのルイ・コスタ(ランプレ・メリダ)だ。寒暖差の大きさからか、気管支炎の症状が出てしまったという。昨日のステージでは終盤の山岳で遅れてしまい、総合争いから遠ざかってしまった。
コスタは言う。「暑さのせいだと思っていたけど、深刻な気管支炎と診断されたんだ。呼吸がうまくできなくて、たぶん寒かった序盤と今との気温差のせいだと思う。昨日の走りにも満足していない。治療はしっかり受けているのでうまく回復するといいんだけれど」。
コスタはジェラールメ・ラマドレーヌにフィニッシュする第8ステージで終盤チェーンを外して脱落する不運もあり、総合争いではニーバリからは5分34秒遅れの14位につけている。
ランプレ・メリダのもう一人のエース、クリス・ホーナーは17位につけている。「僕の出番はこれから。だんだんと調子は上がってきているよ。落車が多いのはいつものことともう慣れっこなんだ。自分の身に起こらないように願うだけだね」とホーナーはベテランの味で淡々と準備をする。
昨日大きく遅れながらも頑張って最後まで走り切ったアンドリュー・タランスキー(ガーミン・シャープ)だが、今日スタートを切ることはできなかった。序盤に続いた2度の落車の影響はツールを続けられないほど深刻だった。
朝、チームから声明のリリースが出された。「ツールを去らなくてはいけないなんて本当にハートブレイク。ツールのためにシーズンを組み立ててきた。チームは僕のためにステップを踏んでサポートしてくれたのに。休息日で回復できると思ったけど、だめだった」。ツール優勝候補に挙げられるドーフィネの覇者がツールを去る。怪我で優勝候補の居なくなるツールだ。
怪我からの回復を順調に果たしているのがジョン・デゲンコルブ(ジャイアント・シマノ)だ。パヴェの第5ステージで落車した際に臀部の筋肉に断絶を起こして以来、回復するのを期待しながら毎日を過ごしてきた。そして今日は後半アップダウンが多く、やや上り気味のゴールスプリントになることが予想されており、それはすなわちデゲンコルブ向きのステージ。「怪我の回復状態は完璧ではないけど、昨日の走りは自信になった。今日は自分の勝利に向けてトライする」と、勝利に向けて意欲的だ。
ボジョレーの丘を超えて進むプロトン
スタートの町ブールカンブレスから約30kmは西に向けてほぼ一直線の道が続く。今日は丘が続くもののスプリンターにとってチャンスのあるステージ。
アタックに出たセバスティアン・ラングヴェルト(ガーミン・シャープ)、グレゴリー・ラスト(トレックファクトリーレーシング)、サイモン・クラーク(オリカ・グリーンエッジ)、ダビ・デラクルス(ネットアップ・エンデューラ)、フロリアン・ヴァション(ブルターニュ・セシェ)の5人の逃げは早めに容認された。
プロトンが南へ進路を取ると、葡萄畑の連なる丘陵地帯へと入る。ローヌの北、ボジョレーヌーボーで知られるBeaujolaisだ。赤茶けた土と古い町並み、丘の上には古城跡。コースは葡萄畑の間を縫って走るように設定され、選手たちも風景を堪能しただろうか?
メイン集団の前方にはジャイアント・シマノが集結し、その先頭にはほぼ固定状態でジ・チェンが引く。ブレーカウェー・キラー(逃げ殺し)のあだ名が人気のランタンルージュ(総合順位最下位選手に与えられる名称)のチェンは、スプリントステージでは今や話題の人だ。
暑さが過酷になる午後。葡萄畑を下り終えた街でデラクルスが落車。”プリート”ロドリゲスと同郷のカタルーニャ出身のデラクルス。初めてのツール経験は鎖骨骨折で12ステージにて終わる。
ゲームを仕掛けたユーロップカー クリストフの勝利はノルウェー人として3年ぶり
落車の影響が少なくチームがいまだフレッシュな状態のユーロップカーは、序盤に逃げに選手を送り込めなかった代わりに後半にゲームを仕掛けてきた。ペリグ・ケムヌールとシリル・ゴティエのコンビで攻撃を仕掛けた。
今日は後半まで温存しているキャノンデール。デゲンコルブで勝利すべく着々と準備するジャイアント・シマノ。最終盤はジャイアント・シマノがハイペースを刻み、ゴールへ向けてデゲンコルブの勝利のお膳立てをした。しかしトレンティンに進路を塞がれ、デゲンコルブは前に出れず。
勝ったのはアシストのいないアレクサンダー・クリストフ(カチューシャ)だった。春のクラシック、”ミラノ〜サンレモ”に続く、ツールでのステージ初勝利。ノルウェー人選手が勝ったのは2011年のエドアルド・ボアッソンハーゲン(チームスカイ)のピネローロ(イタリア)での勝利以来のこと。
「ツールでの勝利はミラノ〜サンレモでの勝利に次ぐもの」。クリストフは春に獲得したビッグタイトルに次ぐ自身初のグランツールでの勝利を喜ぶ。ノルウェー選手は今ツール出場選手の中で自分ただひとり。
「ノルウェーでは今頃ビッグパーティになっていると思う。ノルウェーの人にとってツールがどれだけ大きなイベントか知っている。誰でも知っているし、僕はそのツールでステージ優勝を挙げることを夢見てきた。今日はここで勝てて本当に嬉しい」。
クリストフは今日の勝利のポイントは昨日のステージからの走り方にあることを明かした。
「今日勝てるチャンスがあると知っていたから、昨日のステージでは今日のためにイージーに走ったんだ。それが今日の成功のキーになったと思う。上りで脚を貯めるように走った。だから今日はとても調子良く登ることができて、限界に達しなかった。でも、スプリントでは最後に何があるかわからない。すぐに囲まれてしまったりするから、最後は少しナーバスになっていたんだ」。
チームでトライしたユーロップカー ユキヤは暑さを歓迎
ケムヌールが離脱してからはゴティエとクラークの2人に。しかしスタートから逃げたクラークはすでに脚がなく、ゴティエが先頭交代を促すもクラークは首を横に振るシーンが見られた。ゴールまで連れて行きたくなかったゴティエはクラークを振り切ろうとする。そうするうち、2人は集団に飲まれた。チームのトライは実らず。
新城幸也は言う。「今日はチームが果敢にチャレンジしたが、勝つことはできなかった。自分は最後までピエールの側にいる役目として、集団コントロールや、ボトル運びにまわった。いきなり暑くなったので、ボトル運びは重要。でも、やっとツールらしい気候になって、自分は問題なく対処できているし、これだけトラブルや落車が多い中、無事に走れている。引き続き気をつけなければ。今日は昨日より良く走れていた。暑くなるのは自分にとっていいですね。」
ジロを勝った時と同じベスト体重のニーバリ
マイヨジョーヌを難なく守ったヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)には、レース後の記者会見で「なぜ過去のあるアレクサンドル・ヴィノクロフやジュゼッペ・マルティネッリ監督がいるアスタナを選んだのか? どうしてチームを信頼できるのか?」という質問が飛んだ。常にドーピング問題を追いかけているへラルドトリビューン紙の記者からだ。
ニーバリはヴィノクロフについてのコメントは避けたが、チームがイタリア人のスタッフをコアに体制を入れ替え、変化していることを例に挙げた。ニーバリのコーチとしてついている人物は元キャノンデールで一緒だったパオロ・スロンゴ氏、そしてイタリアナショナルチームでコーチとして活躍したアントニオ・フジ氏。選手だけでなくスタッフ体制もニーバリを囲むイタリア人で固めるようになった。
ニーバリは「アスタナを選んだのは、このチームが僕を中心としてジロ、ブエルタ、そしてツールといったビッグレースを闘う布陣を固めてくれるから」と答えた。
ニーバリは今ツールの好調はベスト体重をキープしていることも要因のひとつであることを明かした。スタート時には1.5kg少ないことが公表されたが、今は昨年ジロを制したときと同じ体重の64kgをキープしているという。
「これが運命」もはや悟りの境地のサガン
4度目の2位。「これが運命だ」とサガンは苦笑いしながら、感情を押し殺したように話す。「でも2位はいいものだ。すべてOKだった。チームは僕をラスト3kmで完璧な位置に上げてくれた。僕は良いポジションに居た。クリストフのほうが今日は良かっただけだ。彼は最後の上りで苦しんでいるように見えたのだけど、最後のスプリントではとても良かった。人生はフラストレーションだね。2位を4度とって喜ぶ選手もいるだろうね…。でもマイヨヴェールを着れて嬉しいよ」。
そしていよいよアルプス山岳ステージへ。サンテティエンヌ近郊のロメン・バルデの出身地をかすめて、山頂フィニッシュのシャムルースへ。
天気予報では日曜までは晴れ予報、しかしその後の山岳ステージでは再び雨になりそうだという。
明日のサンテチエンヌの気温は34度、グルノーブルは36度の、暑い暑い一日になるようだ。
photo&text:Makoto.AYANO in FRANCE
photo:CorVos,TimDeWale,A.S.O,
※新城幸也のコメントはユキヤ通信より
涼しいを通り越して寒かったツール序盤から一転、急に暑くなって体調を壊していたのが世界チャンピオンのルイ・コスタ(ランプレ・メリダ)だ。寒暖差の大きさからか、気管支炎の症状が出てしまったという。昨日のステージでは終盤の山岳で遅れてしまい、総合争いから遠ざかってしまった。
コスタは言う。「暑さのせいだと思っていたけど、深刻な気管支炎と診断されたんだ。呼吸がうまくできなくて、たぶん寒かった序盤と今との気温差のせいだと思う。昨日の走りにも満足していない。治療はしっかり受けているのでうまく回復するといいんだけれど」。
コスタはジェラールメ・ラマドレーヌにフィニッシュする第8ステージで終盤チェーンを外して脱落する不運もあり、総合争いではニーバリからは5分34秒遅れの14位につけている。
ランプレ・メリダのもう一人のエース、クリス・ホーナーは17位につけている。「僕の出番はこれから。だんだんと調子は上がってきているよ。落車が多いのはいつものことともう慣れっこなんだ。自分の身に起こらないように願うだけだね」とホーナーはベテランの味で淡々と準備をする。
昨日大きく遅れながらも頑張って最後まで走り切ったアンドリュー・タランスキー(ガーミン・シャープ)だが、今日スタートを切ることはできなかった。序盤に続いた2度の落車の影響はツールを続けられないほど深刻だった。
朝、チームから声明のリリースが出された。「ツールを去らなくてはいけないなんて本当にハートブレイク。ツールのためにシーズンを組み立ててきた。チームは僕のためにステップを踏んでサポートしてくれたのに。休息日で回復できると思ったけど、だめだった」。ツール優勝候補に挙げられるドーフィネの覇者がツールを去る。怪我で優勝候補の居なくなるツールだ。
怪我からの回復を順調に果たしているのがジョン・デゲンコルブ(ジャイアント・シマノ)だ。パヴェの第5ステージで落車した際に臀部の筋肉に断絶を起こして以来、回復するのを期待しながら毎日を過ごしてきた。そして今日は後半アップダウンが多く、やや上り気味のゴールスプリントになることが予想されており、それはすなわちデゲンコルブ向きのステージ。「怪我の回復状態は完璧ではないけど、昨日の走りは自信になった。今日は自分の勝利に向けてトライする」と、勝利に向けて意欲的だ。
ボジョレーの丘を超えて進むプロトン
スタートの町ブールカンブレスから約30kmは西に向けてほぼ一直線の道が続く。今日は丘が続くもののスプリンターにとってチャンスのあるステージ。
アタックに出たセバスティアン・ラングヴェルト(ガーミン・シャープ)、グレゴリー・ラスト(トレックファクトリーレーシング)、サイモン・クラーク(オリカ・グリーンエッジ)、ダビ・デラクルス(ネットアップ・エンデューラ)、フロリアン・ヴァション(ブルターニュ・セシェ)の5人の逃げは早めに容認された。
プロトンが南へ進路を取ると、葡萄畑の連なる丘陵地帯へと入る。ローヌの北、ボジョレーヌーボーで知られるBeaujolaisだ。赤茶けた土と古い町並み、丘の上には古城跡。コースは葡萄畑の間を縫って走るように設定され、選手たちも風景を堪能しただろうか?
メイン集団の前方にはジャイアント・シマノが集結し、その先頭にはほぼ固定状態でジ・チェンが引く。ブレーカウェー・キラー(逃げ殺し)のあだ名が人気のランタンルージュ(総合順位最下位選手に与えられる名称)のチェンは、スプリントステージでは今や話題の人だ。
暑さが過酷になる午後。葡萄畑を下り終えた街でデラクルスが落車。”プリート”ロドリゲスと同郷のカタルーニャ出身のデラクルス。初めてのツール経験は鎖骨骨折で12ステージにて終わる。
ゲームを仕掛けたユーロップカー クリストフの勝利はノルウェー人として3年ぶり
落車の影響が少なくチームがいまだフレッシュな状態のユーロップカーは、序盤に逃げに選手を送り込めなかった代わりに後半にゲームを仕掛けてきた。ペリグ・ケムヌールとシリル・ゴティエのコンビで攻撃を仕掛けた。
今日は後半まで温存しているキャノンデール。デゲンコルブで勝利すべく着々と準備するジャイアント・シマノ。最終盤はジャイアント・シマノがハイペースを刻み、ゴールへ向けてデゲンコルブの勝利のお膳立てをした。しかしトレンティンに進路を塞がれ、デゲンコルブは前に出れず。
勝ったのはアシストのいないアレクサンダー・クリストフ(カチューシャ)だった。春のクラシック、”ミラノ〜サンレモ”に続く、ツールでのステージ初勝利。ノルウェー人選手が勝ったのは2011年のエドアルド・ボアッソンハーゲン(チームスカイ)のピネローロ(イタリア)での勝利以来のこと。
「ツールでの勝利はミラノ〜サンレモでの勝利に次ぐもの」。クリストフは春に獲得したビッグタイトルに次ぐ自身初のグランツールでの勝利を喜ぶ。ノルウェー選手は今ツール出場選手の中で自分ただひとり。
「ノルウェーでは今頃ビッグパーティになっていると思う。ノルウェーの人にとってツールがどれだけ大きなイベントか知っている。誰でも知っているし、僕はそのツールでステージ優勝を挙げることを夢見てきた。今日はここで勝てて本当に嬉しい」。
クリストフは今日の勝利のポイントは昨日のステージからの走り方にあることを明かした。
「今日勝てるチャンスがあると知っていたから、昨日のステージでは今日のためにイージーに走ったんだ。それが今日の成功のキーになったと思う。上りで脚を貯めるように走った。だから今日はとても調子良く登ることができて、限界に達しなかった。でも、スプリントでは最後に何があるかわからない。すぐに囲まれてしまったりするから、最後は少しナーバスになっていたんだ」。
チームでトライしたユーロップカー ユキヤは暑さを歓迎
ケムヌールが離脱してからはゴティエとクラークの2人に。しかしスタートから逃げたクラークはすでに脚がなく、ゴティエが先頭交代を促すもクラークは首を横に振るシーンが見られた。ゴールまで連れて行きたくなかったゴティエはクラークを振り切ろうとする。そうするうち、2人は集団に飲まれた。チームのトライは実らず。
新城幸也は言う。「今日はチームが果敢にチャレンジしたが、勝つことはできなかった。自分は最後までピエールの側にいる役目として、集団コントロールや、ボトル運びにまわった。いきなり暑くなったので、ボトル運びは重要。でも、やっとツールらしい気候になって、自分は問題なく対処できているし、これだけトラブルや落車が多い中、無事に走れている。引き続き気をつけなければ。今日は昨日より良く走れていた。暑くなるのは自分にとっていいですね。」
ジロを勝った時と同じベスト体重のニーバリ
マイヨジョーヌを難なく守ったヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)には、レース後の記者会見で「なぜ過去のあるアレクサンドル・ヴィノクロフやジュゼッペ・マルティネッリ監督がいるアスタナを選んだのか? どうしてチームを信頼できるのか?」という質問が飛んだ。常にドーピング問題を追いかけているへラルドトリビューン紙の記者からだ。
ニーバリはヴィノクロフについてのコメントは避けたが、チームがイタリア人のスタッフをコアに体制を入れ替え、変化していることを例に挙げた。ニーバリのコーチとしてついている人物は元キャノンデールで一緒だったパオロ・スロンゴ氏、そしてイタリアナショナルチームでコーチとして活躍したアントニオ・フジ氏。選手だけでなくスタッフ体制もニーバリを囲むイタリア人で固めるようになった。
ニーバリは「アスタナを選んだのは、このチームが僕を中心としてジロ、ブエルタ、そしてツールといったビッグレースを闘う布陣を固めてくれるから」と答えた。
ニーバリは今ツールの好調はベスト体重をキープしていることも要因のひとつであることを明かした。スタート時には1.5kg少ないことが公表されたが、今は昨年ジロを制したときと同じ体重の64kgをキープしているという。
「これが運命」もはや悟りの境地のサガン
4度目の2位。「これが運命だ」とサガンは苦笑いしながら、感情を押し殺したように話す。「でも2位はいいものだ。すべてOKだった。チームは僕をラスト3kmで完璧な位置に上げてくれた。僕は良いポジションに居た。クリストフのほうが今日は良かっただけだ。彼は最後の上りで苦しんでいるように見えたのだけど、最後のスプリントではとても良かった。人生はフラストレーションだね。2位を4度とって喜ぶ選手もいるだろうね…。でもマイヨヴェールを着れて嬉しいよ」。
そしていよいよアルプス山岳ステージへ。サンテティエンヌ近郊のロメン・バルデの出身地をかすめて、山頂フィニッシュのシャムルースへ。
天気予報では日曜までは晴れ予報、しかしその後の山岳ステージでは再び雨になりそうだという。
明日のサンテチエンヌの気温は34度、グルノーブルは36度の、暑い暑い一日になるようだ。
photo&text:Makoto.AYANO in FRANCE
photo:CorVos,TimDeWale,A.S.O,
※新城幸也のコメントはユキヤ通信より
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