2014/07/15(火) - 07:56
最後の1級山岳ラプランシェ・デ・ベルフィーユでのアタックを計画していたであろうアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がレース前半に落車リタイアするという波乱のツール・ド・フランス第10ステージ。最後に強さを見せつけたのはイタリアチャンピオンだった。
ヴォージュ山塊の魅力を詰め込んだようなレイアウトが特徴の第10ステージ。難易度の高いカテゴリー山岳が合計7つ設定された厳しいコースであり、ヴォージュ3連戦の最後にして最大の山岳コースが設定された。
中盤にかけて1級山岳プティ・バロン(9.3km/8.1%)と1級山岳プラツェルヴァゼル(7.1km/8.4%)を越え、その後も絶えずアップダウンをこなしながら勝負どころへ。最大勾配18%の1級山岳シェーヴル峠(3.5km/9.5%)にアタックし、最後は1級山岳ラプランシェ・デ・ベルフィーユ(5.9km/8.5%)を駆け上がる。
このラプランシェ・デ・ベルフィーユはコンスタントに勾配が10%を超える厳しいもの。しかも残り250mで最大勾配は20%に達する。一日の獲得標高差は3900mで、この日こそがクイーンステージ(最難関ステージ)であると断言する選手も多い。
フランス革命記念日のこの日、レース序盤に形成された逃げグループにトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)やクリストフ・リブロン(フランス、AG2Rラモンディアール)ら4名のフランス人選手がジョイン。マイヨジョーヌを明け渡したアスタナはリエーベ・ヴェストラ(オランダ)を逃げに送り込み、他にも山岳賞狙いのホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)やポイント賞狙いのペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)が逃げに乗った。
39km地点のスプリントポイントを先頭通過したサガンは20ポイント獲得後に大人しくメイン集団へと戻って行く。すると前日のステージ優勝者トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)が、チームメイトでマイヨブランを着るミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)を連れてアタック。しばらくの追走の後、マルティン&クヴィアトコウスキーのグループは先頭に追いついた。
冷たい雨が降り続き、濃霧注意報が出るほどのヴォージュ山塊を登っては下るジェットコースターコースで落車が多発する。残り100kmを切ったところで総合3位のティアゴ・マシャド(ポルトガル、ネットアップ・エンデューラ)が落車。続いて1級山岳プティ・バロンの下りで背中ポケットに手を伸ばしていた総合9位アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がバランスを崩し、ハイスピードで地面に叩き付けられた。
マシャドは再スタートを切って何とかフィニッシュにたどり着いた(特例によりタイムオーバーは免除された)が、治療のため4分間完全にストップしたコンタドールのペースは上がらない。スペアバイクに跨がったコンタドールは、チームメイトの力を借りて集団復帰を目指したものの、残り77km地点でリタイアを選択した。コンタドールはレース後のX線検査で右脛骨の骨折が判明している。また一人ビッグネームが山場を待たずしてツールを去った。
コンタドール落車に際してメイン集団はしばらくペースを落としていたものの、総合6位・4分遅れのクヴィアトコウスキーが逃げていたためアスタナが追撃を再開する。
マルティンがほぼ先頭固定で引き続けた逃げグループは3〜4分のリードでエスケープを続行。カテゴリー山岳の頂上が近づく度にロドリゲスとヴォクレールが血気盛んに飛び出し、ロドリゲスが先頭通過するシーンが繰り返される。
2日連続で敢闘賞を獲得することになるマルティンの奮闘によってメイン集団とのタイム差が急激に縮まることはなかったが、新城幸也(ユーロップカー)も加わるメイン集団の位置取り合戦によってじわりじわりとタイム差は縮小。タイム差2分で最後から2つ目の1級山岳シェーヴル峠に差し掛かった。
残り20kmで逃げグループからマルティンが力尽きて脱落すると、急勾配の登りで先頭はクヴィアトコウスキーとロドリゲスの2人に絞られる。独走に持ち込んだロドリゲスが先頭山頂通過を果たしてバーチャル山岳賞トップに。ここに下りでクヴィアトコウスキーが追いつき、2人で最後の1級山岳ラプランシェ・デ・ベルフィーユに向かう。
一方、アスタナがハイペースを刻むメイン集団からはマイヨジョーヌのトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)らが脱落。強力なペースで集団を絞り込んだミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)が頂上通過後すぐの濡れたコーナーで曲がりきれずに落車するシーンも。
そして迎えた1級山岳ラプランシェ・デ・ベルフィーユ。急勾配の登りでロドリゲスがクヴィアトコウスキーを振り切って独走を開始する中、1分半後方のメイン集団では落車から復帰したスカルポーニが再びペースを上げる。残り3kmでスカルポーニが役目を終えると、そこからニーバリが強烈なアタックを繰り出した。
ライバルたちを一瞬のうちに引き離したニーバリは、残り1km手前で先頭ロドリゲスに合流。リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)率いる追走グループから20秒リードで最後の急勾配区間に入って行く。
ロドリゲスを振り切ったニーバリが力強いダンシングで20%エリアをこなし、追い上げたティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)を15秒振り切ってフィニッシュ。ステージ2勝目を飾るとともにマイヨジョーヌに返り咲いた。
「今まで経験したグランツールの中で一番厳しいステージだった」と振り返るニーバリ。前半戦の山場を終えて総合2位ポートとのタイム差は2分23秒。ニーバリは「このアドバンテージを武器にマイヨジョーヌを最後まで守り抜きたい」とコメント。また、コンタドールの落車に関しては「目の前アルベルトが落車して、自分も巻き込まれそうになった。どうして落車したのかは分からないが、酷い落車だった。本当に彼の離脱を残念に思う」と語っている。
2日連続で逃げたロドリゲスがマイヨアポワに袖を通し、マイヨアポワはステージ5位ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)の手に。最後まで諦めずに走ったマイヨジョーヌのギャロパンは総合5位に残った。
選手コメントはレース公式サイトより。
ツール・ド・フランス2014第10ステージ結果
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
マイヨヴェール(ポイント賞)
マイヨアポワ(山岳賞)
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
チーム総合成績
ステージ敢闘賞
トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele, Makoto Ayano
ヴォージュ山塊の魅力を詰め込んだようなレイアウトが特徴の第10ステージ。難易度の高いカテゴリー山岳が合計7つ設定された厳しいコースであり、ヴォージュ3連戦の最後にして最大の山岳コースが設定された。
中盤にかけて1級山岳プティ・バロン(9.3km/8.1%)と1級山岳プラツェルヴァゼル(7.1km/8.4%)を越え、その後も絶えずアップダウンをこなしながら勝負どころへ。最大勾配18%の1級山岳シェーヴル峠(3.5km/9.5%)にアタックし、最後は1級山岳ラプランシェ・デ・ベルフィーユ(5.9km/8.5%)を駆け上がる。
このラプランシェ・デ・ベルフィーユはコンスタントに勾配が10%を超える厳しいもの。しかも残り250mで最大勾配は20%に達する。一日の獲得標高差は3900mで、この日こそがクイーンステージ(最難関ステージ)であると断言する選手も多い。
フランス革命記念日のこの日、レース序盤に形成された逃げグループにトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)やクリストフ・リブロン(フランス、AG2Rラモンディアール)ら4名のフランス人選手がジョイン。マイヨジョーヌを明け渡したアスタナはリエーベ・ヴェストラ(オランダ)を逃げに送り込み、他にも山岳賞狙いのホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)やポイント賞狙いのペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)が逃げに乗った。
39km地点のスプリントポイントを先頭通過したサガンは20ポイント獲得後に大人しくメイン集団へと戻って行く。すると前日のステージ優勝者トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)が、チームメイトでマイヨブランを着るミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)を連れてアタック。しばらくの追走の後、マルティン&クヴィアトコウスキーのグループは先頭に追いついた。
冷たい雨が降り続き、濃霧注意報が出るほどのヴォージュ山塊を登っては下るジェットコースターコースで落車が多発する。残り100kmを切ったところで総合3位のティアゴ・マシャド(ポルトガル、ネットアップ・エンデューラ)が落車。続いて1級山岳プティ・バロンの下りで背中ポケットに手を伸ばしていた総合9位アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がバランスを崩し、ハイスピードで地面に叩き付けられた。
マシャドは再スタートを切って何とかフィニッシュにたどり着いた(特例によりタイムオーバーは免除された)が、治療のため4分間完全にストップしたコンタドールのペースは上がらない。スペアバイクに跨がったコンタドールは、チームメイトの力を借りて集団復帰を目指したものの、残り77km地点でリタイアを選択した。コンタドールはレース後のX線検査で右脛骨の骨折が判明している。また一人ビッグネームが山場を待たずしてツールを去った。
コンタドール落車に際してメイン集団はしばらくペースを落としていたものの、総合6位・4分遅れのクヴィアトコウスキーが逃げていたためアスタナが追撃を再開する。
マルティンがほぼ先頭固定で引き続けた逃げグループは3〜4分のリードでエスケープを続行。カテゴリー山岳の頂上が近づく度にロドリゲスとヴォクレールが血気盛んに飛び出し、ロドリゲスが先頭通過するシーンが繰り返される。
2日連続で敢闘賞を獲得することになるマルティンの奮闘によってメイン集団とのタイム差が急激に縮まることはなかったが、新城幸也(ユーロップカー)も加わるメイン集団の位置取り合戦によってじわりじわりとタイム差は縮小。タイム差2分で最後から2つ目の1級山岳シェーヴル峠に差し掛かった。
残り20kmで逃げグループからマルティンが力尽きて脱落すると、急勾配の登りで先頭はクヴィアトコウスキーとロドリゲスの2人に絞られる。独走に持ち込んだロドリゲスが先頭山頂通過を果たしてバーチャル山岳賞トップに。ここに下りでクヴィアトコウスキーが追いつき、2人で最後の1級山岳ラプランシェ・デ・ベルフィーユに向かう。
一方、アスタナがハイペースを刻むメイン集団からはマイヨジョーヌのトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)らが脱落。強力なペースで集団を絞り込んだミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)が頂上通過後すぐの濡れたコーナーで曲がりきれずに落車するシーンも。
そして迎えた1級山岳ラプランシェ・デ・ベルフィーユ。急勾配の登りでロドリゲスがクヴィアトコウスキーを振り切って独走を開始する中、1分半後方のメイン集団では落車から復帰したスカルポーニが再びペースを上げる。残り3kmでスカルポーニが役目を終えると、そこからニーバリが強烈なアタックを繰り出した。
ライバルたちを一瞬のうちに引き離したニーバリは、残り1km手前で先頭ロドリゲスに合流。リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)率いる追走グループから20秒リードで最後の急勾配区間に入って行く。
ロドリゲスを振り切ったニーバリが力強いダンシングで20%エリアをこなし、追い上げたティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)を15秒振り切ってフィニッシュ。ステージ2勝目を飾るとともにマイヨジョーヌに返り咲いた。
「今まで経験したグランツールの中で一番厳しいステージだった」と振り返るニーバリ。前半戦の山場を終えて総合2位ポートとのタイム差は2分23秒。ニーバリは「このアドバンテージを武器にマイヨジョーヌを最後まで守り抜きたい」とコメント。また、コンタドールの落車に関しては「目の前アルベルトが落車して、自分も巻き込まれそうになった。どうして落車したのかは分からないが、酷い落車だった。本当に彼の離脱を残念に思う」と語っている。
2日連続で逃げたロドリゲスがマイヨアポワに袖を通し、マイヨアポワはステージ5位ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)の手に。最後まで諦めずに走ったマイヨジョーヌのギャロパンは総合5位に残った。
選手コメントはレース公式サイトより。
ツール・ド・フランス2014第10ステージ結果
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
2位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
4位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)
5位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
6位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
7位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
10位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)
2位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
4位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)
5位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
6位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
7位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
10位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)
4h27'26"
+15"
+20"
+22"
+25"
+50"
+52"
+54"
+15"
+20"
+22"
+25"
+50"
+52"
+54"
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
4位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
5位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
6位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
7位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
8位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)
9位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
10位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
4位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
5位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
6位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
7位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
8位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)
9位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
10位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)
42h33'38"
+2'23"
+2'47"
+3'01"
+3'12"
+3'47"
+3'56"
+3'57"
+3'58"
+4'08"
+2'23"
+2'47"
+3'01"
+3'12"
+3'47"
+3'56"
+3'57"
+3'58"
+4'08"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
2位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
287pts
156pts
146pts
156pts
146pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
2位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)
3位 トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
2位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)
3位 トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
51pts
34pts
26pts
34pts
26pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
2位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
2位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
42h36'39"
+46"
+1'38"
+46"
+1'38"
チーム総合成績
1位 AG2Rラモンディアール
2位 アスタナ
3位 ベルキン
2位 アスタナ
3位 ベルキン
114h22'53"
+22"
+53"
+22"
+53"
ステージ敢闘賞
トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele, Makoto Ayano
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