2014/07/12(土) - 09:34
27名の精鋭集団によるフィニッシュ勝負に持ち込まれたツール・ド・フランス第7ステージ。ここまでの7ステージで常に5位以上の成績を残しているペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)を、27歳のマッテオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)が下した。
今大会2番目に長い234.5kmコースは平坦基調だが、決してスプリンター向きのステージではない。というのも、残り20kmを切ってから2つの4級山岳が連続。この2つのハードルが逃げのスペシャリストやアタッカーにチャンスを与える。
残り17km地点の4級山岳マロン(3.2km/5%)と、残り5.5km地点の4級山岳ブッフレール(1.3km/7.9%)がステージ優勝者を導き出す。4級山岳ブッフレール通過後は下りが続き、ナンシーの凱旋門に向かって平坦路を駆ける。アタッカーとスプリンター、そしてオールラウンダーの思惑が交錯するエキサイティングなフィナーレが待っていた。
レース時間が5時間を超える長い一日に逃げたのはマシュー・ブッシュ(アメリカ、トレックファクトリーレーシング)、アレクサンドル・ピショ(フランス、ユーロップカー)、バルトス・フザルスキー(ポーランド、ネットアップ・エンデューラ)、マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)、アントニー・ドゥラプラス(フランス、ブルターニュ・セシェ)という6名。
集団コントロールを担ったのはキャノンデールで、開幕からここまで2位、4位、2位、4位、4位、5位という成績を残してきたサガンで優勝を狙う意思を明確にアピール。逃げグループとのタイム差を2分に押さえ込む。常時タイム差に眼を配りながら、淡々とペースを刻んだ。
フィニッシュまで80kmを残してタイム差が1分を割り込んだため逃げグループは不安定な状態に。エルミガーとフザルスキーの2人がアタックして先行開始。協調体制を築いて逃げた2人だったが、残り17km地点の4級山岳マロンで結局は吸収されてしまう。ここからステージ優勝を懸けたバトルが始まった。
オリカ・グリーンエッジやオメガファーマ・クイックステップによる集団ペースアップによってマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)をはじめとするスプリンターが次々に脱落。そこからトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)がアタックを仕掛けたが決まらない。
続く最後の4級山岳ブッフレールに向かう下りで、フィニッシュまでおよそ16kmを残して総合11位のティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)が落車する。ヴァンガーデレンはすぐさまチームメイトのバイクを借りて再スタートを切ったものの、ティンコフ・サクソやオメガファーマ・クイックステップ率いるメイン集団はハイスピードを維持。BMCレーシングによる果敢な追撃も届かず、ヴァンガーデレンは1分03秒のタイムロスを被ることに。総合11位から総合18位まで順位を落とす結果となった。
ユーロップカーの積極性は4級山岳ブッフレールに入っても失われず、シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)が血気盛んに飛び出して行く。ゴティエが吸収されるとフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がアタック。ここにサガンが合流し、フィニッシュまでの下りに差し掛かった。
ナンシーの街に向かって突き進むファンアフェルマートとサガン。しかしビッグネームひしめく30名弱の集団が2人の先行を許さない。ファンアフェルマートとサガンは残り2kmで吸収。ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)がリードアウトする形でスプリント勝負が始まった。
隣の選手と接触したアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)が派手にクラッシュする中、マイヨブランのアシストを受けたトレンティンが先頭でスプリントを開始させる。逃げからスプリントに作戦を切り替えたサガンがこれに反応した。
先頭を突き進むトレンティンにサガンが並び、両者ともにハンドルを投げ込んでフィニッシュ。写真判定の結果、わずかタイヤ1本分の差でトレンティンに軍配が上がった。
「サガンに追い抜かれたと思った」というトレンティンは、レース後に無線で勝利を知らされたと言う。昨年第14ステージで逃げ切り勝利を飾っており、2年連続ステージ優勝を達成。カヴェンディッシュのリタイアで最悪のスタートを切ったオメガファーマ・クイックステップに朗報をもたらした。
「クヴィアトコウスキーの完璧なリードアウトのおかげだ。6日間バッドラックが続いたチームにとって素晴らしい勝利だと思う。ここまでパンクや落車、タイミングの悪いアタック、チェーントラブルでチャンスを失ってきたから」と、チームの勝利を喜ぶトレンティン。オメガファーマ・クイックステップの層の厚さをアピールした。
敗れたサガンは7日連続のトップ5フィニッシュ。マイヨヴェール争いでは他の追随を許さない状態だが、ことステージ優勝に関してはまだ手元にやってきていない。「マイヨヴェールだけでは物足りない。パリまでまだチャンスが残っているので、自分の一日がやってくることを願っている」とサガンはコメントしている。
選手コメントはレース公式サイトおよびキャノンデール公式サイトより。
ツール・ド・フランス2014第7ステージ結果
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
マイヨヴェール(ポイント賞)
マイヨアポワ(山岳賞)
マイヨブラン(新人賞)
チーム総合成績
ステージ敢闘賞
マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele, Makoto Ayano
今大会2番目に長い234.5kmコースは平坦基調だが、決してスプリンター向きのステージではない。というのも、残り20kmを切ってから2つの4級山岳が連続。この2つのハードルが逃げのスペシャリストやアタッカーにチャンスを与える。
残り17km地点の4級山岳マロン(3.2km/5%)と、残り5.5km地点の4級山岳ブッフレール(1.3km/7.9%)がステージ優勝者を導き出す。4級山岳ブッフレール通過後は下りが続き、ナンシーの凱旋門に向かって平坦路を駆ける。アタッカーとスプリンター、そしてオールラウンダーの思惑が交錯するエキサイティングなフィナーレが待っていた。
レース時間が5時間を超える長い一日に逃げたのはマシュー・ブッシュ(アメリカ、トレックファクトリーレーシング)、アレクサンドル・ピショ(フランス、ユーロップカー)、バルトス・フザルスキー(ポーランド、ネットアップ・エンデューラ)、マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)、アントニー・ドゥラプラス(フランス、ブルターニュ・セシェ)という6名。
集団コントロールを担ったのはキャノンデールで、開幕からここまで2位、4位、2位、4位、4位、5位という成績を残してきたサガンで優勝を狙う意思を明確にアピール。逃げグループとのタイム差を2分に押さえ込む。常時タイム差に眼を配りながら、淡々とペースを刻んだ。
フィニッシュまで80kmを残してタイム差が1分を割り込んだため逃げグループは不安定な状態に。エルミガーとフザルスキーの2人がアタックして先行開始。協調体制を築いて逃げた2人だったが、残り17km地点の4級山岳マロンで結局は吸収されてしまう。ここからステージ優勝を懸けたバトルが始まった。
オリカ・グリーンエッジやオメガファーマ・クイックステップによる集団ペースアップによってマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)をはじめとするスプリンターが次々に脱落。そこからトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)がアタックを仕掛けたが決まらない。
続く最後の4級山岳ブッフレールに向かう下りで、フィニッシュまでおよそ16kmを残して総合11位のティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)が落車する。ヴァンガーデレンはすぐさまチームメイトのバイクを借りて再スタートを切ったものの、ティンコフ・サクソやオメガファーマ・クイックステップ率いるメイン集団はハイスピードを維持。BMCレーシングによる果敢な追撃も届かず、ヴァンガーデレンは1分03秒のタイムロスを被ることに。総合11位から総合18位まで順位を落とす結果となった。
ユーロップカーの積極性は4級山岳ブッフレールに入っても失われず、シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)が血気盛んに飛び出して行く。ゴティエが吸収されるとフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がアタック。ここにサガンが合流し、フィニッシュまでの下りに差し掛かった。
ナンシーの街に向かって突き進むファンアフェルマートとサガン。しかしビッグネームひしめく30名弱の集団が2人の先行を許さない。ファンアフェルマートとサガンは残り2kmで吸収。ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)がリードアウトする形でスプリント勝負が始まった。
隣の選手と接触したアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)が派手にクラッシュする中、マイヨブランのアシストを受けたトレンティンが先頭でスプリントを開始させる。逃げからスプリントに作戦を切り替えたサガンがこれに反応した。
先頭を突き進むトレンティンにサガンが並び、両者ともにハンドルを投げ込んでフィニッシュ。写真判定の結果、わずかタイヤ1本分の差でトレンティンに軍配が上がった。
「サガンに追い抜かれたと思った」というトレンティンは、レース後に無線で勝利を知らされたと言う。昨年第14ステージで逃げ切り勝利を飾っており、2年連続ステージ優勝を達成。カヴェンディッシュのリタイアで最悪のスタートを切ったオメガファーマ・クイックステップに朗報をもたらした。
「クヴィアトコウスキーの完璧なリードアウトのおかげだ。6日間バッドラックが続いたチームにとって素晴らしい勝利だと思う。ここまでパンクや落車、タイミングの悪いアタック、チェーントラブルでチャンスを失ってきたから」と、チームの勝利を喜ぶトレンティン。オメガファーマ・クイックステップの層の厚さをアピールした。
敗れたサガンは7日連続のトップ5フィニッシュ。マイヨヴェール争いでは他の追随を許さない状態だが、ことステージ優勝に関してはまだ手元にやってきていない。「マイヨヴェールだけでは物足りない。パリまでまだチャンスが残っているので、自分の一日がやってくることを願っている」とサガンはコメントしている。
選手コメントはレース公式サイトおよびキャノンデール公式サイトより。
ツール・ド・フランス2014第7ステージ結果
1位 マッテオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
4位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・シマノ)
5位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)
7位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
8位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)
9位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)
10位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
43位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
4位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・シマノ)
5位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)
7位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
8位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)
9位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)
10位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
43位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
5h18'39"
+1'03"
+1'03"
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
2位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
4位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
6位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
7位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
10位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
2位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
4位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
6位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
7位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
10位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
29h57'04"
+02"
+44"
+50"
+1'45"
+1'54"
+2'05"
+2'11"
+02"
+44"
+50"
+1'45"
+1'54"
+2'05"
+2'11"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
2位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
259pts
146pts
137pts
146pts
137pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 シリル・ルモワンヌ(フランス、コフィディス)
2位 ブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 イェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)
2位 ブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 イェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)
6pts
5pt
4pt
5pt
4pt
マイヨブラン(新人賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
2位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
2位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
29h57'48"
+06"
+1'27"
+06"
+1'27"
チーム総合成績
1位 アスタナ
2位 ベルキン
3位 チームスカイ
2位 ベルキン
3位 チームスカイ
89h52'20"
+4'18"
+6'31"
+4'18"
+6'31"
ステージ敢闘賞
マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele, Makoto Ayano
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