2014/07/07(月) - 06:06
2014年7月6日、ツール・ド・フランス第2ステージ。まるでアルデンヌクラシックを思わせる丘陵コースでビッグネームたちがアタック。残り2kmで精鋭集団から抜け出したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がステージ優勝を飾ると同時にマイヨジョーヌを手にした。
ヨークからシェフィールドまでの201kmには何と9つもカテゴリー山岳が詰め込まれている。難易度はいずれも3〜4級で、距離こそ短いものの平均勾配が10%を超えるものも。一日の獲得標高差は3400mを超える。
道が細く、勾配のあるアップダウンが続く様子はさながらアルデンヌクラシック。主催者ASOによる"ミニ・リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ"という表現は的を得ている。
しかも残り5km地点に登場する4級山岳ジェンキンロードは短いながらも最も急勾配(800m/10.8%)。スプリンターが勝負に残れるのか否か。その答えは、事前に試走した新城幸也(ユーロップカー)が予言した通り、明確に"NO"だった。
前日のフィニッシュで落車し、鎖骨脱臼を負ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)はスタートせず。スタート地点に姿を現したカヴは改めて落車の原因を作ったことを謝罪するとともに、母国イギリスで活躍のチャンスを失ったことを悔やんだ。
ヨーク競馬場を発ち、ヨークの旧市街や大聖堂前をパレード走行後、先陣を切ってアタックしたのはワイルドカードで出場しているブルターニュ・セシェ。
アルマンド・フォンセカ(フランス、ブルターニュ・セシェ)がまず飛び出すと、ペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)とマシュー・ブッシュ(アメリカ、トレックファクトリーレーシング)、ブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール)、ダビ・デラクルス(スペイン、ネットアップ・エンデューラ)、シリル・ルモワンヌ(フランス、コフィディス)がすぐさま反応。ここにバルト・ デクレルク(ベルギー、ロット・ベリソル)が単独ブリッジを成功させて合流する。
こうして7名の先頭グループが形成され、メイン集団ではマイヨジョーヌ擁するジャイアント・シマノのコントロールが始まる。4分まで拡大したタイム差は2〜3分を推移。ここからティンコフ・サクソをはじめとする総合系チームがコントロールを受けもった。
集団内では落車が多発し、マイヨジョーヌのマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)やバウク・モレマ(オランダ、ベルキン)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)らが相次いで地面に投げ出されるシーンも。幸いどの選手も大怪我を負うことなく集団に戻っている。
レース前半から山岳ポイントを稼いだコフィディスのルモワンヌが暫定山岳賞トップに。やがてフィニッシュまで57kmを残した2級山岳ホルムモス(4.7km/7%)に差し掛かると逃げグループは崩壊する。同時にメイン集団から後方から接近。キッテルをはじめとして、ほとんどのスプリンターはこの時点でメイン集団から脱落した。
最後まで粘り強く逃げたのはAG2Rラモンディアールのカドリで、ここにメイン集団から飛び出したトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)が合流。続いてトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)やマークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシング)らが先頭に追いついて強力なグループを形成する。しかしこの動きはキャノンデールによって封じ込められる。
絶えずアップダウンを繰り返すうちにメイン集団は人数を減らして行き、チームスカイ率いる集団からピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)やジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)がアタックするも決まらない。チームスカイやアスタナ、キャノンデール率いる集団がロランを飲み込み、最後の4級山岳ジェンキンロードに差し掛かった。
急勾配の登りでオリカ・グリーンエッジとキャノンデールがペースを上げ、そこからアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が更にもう一段ペースアップ。続いてクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)までアタックしてイギリスの観衆を沸かす。登りでのアタックは決まらず、およそ20名の精鋭集団がフィニッシュまでの下り&平坦路に差し掛かった。
ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)やヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)のアタックも決まらず、牽制状態の中から残り2kmでニーバリがアタック。ライバルをチェックするフグルサングとのコンビネーションで、ニーバリが独走に持ち込んだ。
フルームやルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)の懸命の追撃も届かず、ニーバリが胸元のトリコローレをアピールしながら2秒差でフィニッシュ。イタリア選手権ロードレースに続くシーズン2勝目を飾るとともに、マイヨジョーヌまで手にしてみせた。
ニーバリにとってマイヨジョーヌ着用はこれが初めて。ジロとブエルタでは総合優勝を経験しており、全てのグランツールでリーダージャージに袖を通したのは史上18人目。
「アタックのタイミングは完璧だったと思う。これまでの犠牲が一気に報われた気分だ。シーズン前半は勝利から遠ざかったものの、このツールに合わせて厳しいトレーニングを積んできた。イタリア選手権とこのステージ優勝が大きなモチベーションに繋がる」と勝者は語る。同時に「でも現実を見誤ってはいけない。ツールは厳しいレースだ。まだ何も決まったわけじゃない」と、気を引き締めた。
2秒遅れのメイン集団内でフィニッシュしたのは20名。4級山岳ジェンキンロードで遅れたティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)やフランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)、ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)らは16秒を失ってしまった。ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)に至っては15分近く遅れてフィニッシュしている。
ツール・ド・フランス2014第2ステージ結果
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
マイヨヴェール(ポイント賞)
マイヨアポワ(山岳賞)
マイヨブラン(新人賞)
チーム総合成績
ステージ敢闘賞
ブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール)
text:Kei Tsuji in Sheffield, UK
photo:Kei Tsuji, Makoto Ayano, Tim de Waele
ヨークからシェフィールドまでの201kmには何と9つもカテゴリー山岳が詰め込まれている。難易度はいずれも3〜4級で、距離こそ短いものの平均勾配が10%を超えるものも。一日の獲得標高差は3400mを超える。
道が細く、勾配のあるアップダウンが続く様子はさながらアルデンヌクラシック。主催者ASOによる"ミニ・リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ"という表現は的を得ている。
しかも残り5km地点に登場する4級山岳ジェンキンロードは短いながらも最も急勾配(800m/10.8%)。スプリンターが勝負に残れるのか否か。その答えは、事前に試走した新城幸也(ユーロップカー)が予言した通り、明確に"NO"だった。
前日のフィニッシュで落車し、鎖骨脱臼を負ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)はスタートせず。スタート地点に姿を現したカヴは改めて落車の原因を作ったことを謝罪するとともに、母国イギリスで活躍のチャンスを失ったことを悔やんだ。
ヨーク競馬場を発ち、ヨークの旧市街や大聖堂前をパレード走行後、先陣を切ってアタックしたのはワイルドカードで出場しているブルターニュ・セシェ。
アルマンド・フォンセカ(フランス、ブルターニュ・セシェ)がまず飛び出すと、ペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)とマシュー・ブッシュ(アメリカ、トレックファクトリーレーシング)、ブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール)、ダビ・デラクルス(スペイン、ネットアップ・エンデューラ)、シリル・ルモワンヌ(フランス、コフィディス)がすぐさま反応。ここにバルト・ デクレルク(ベルギー、ロット・ベリソル)が単独ブリッジを成功させて合流する。
こうして7名の先頭グループが形成され、メイン集団ではマイヨジョーヌ擁するジャイアント・シマノのコントロールが始まる。4分まで拡大したタイム差は2〜3分を推移。ここからティンコフ・サクソをはじめとする総合系チームがコントロールを受けもった。
集団内では落車が多発し、マイヨジョーヌのマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)やバウク・モレマ(オランダ、ベルキン)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)らが相次いで地面に投げ出されるシーンも。幸いどの選手も大怪我を負うことなく集団に戻っている。
レース前半から山岳ポイントを稼いだコフィディスのルモワンヌが暫定山岳賞トップに。やがてフィニッシュまで57kmを残した2級山岳ホルムモス(4.7km/7%)に差し掛かると逃げグループは崩壊する。同時にメイン集団から後方から接近。キッテルをはじめとして、ほとんどのスプリンターはこの時点でメイン集団から脱落した。
最後まで粘り強く逃げたのはAG2Rラモンディアールのカドリで、ここにメイン集団から飛び出したトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)が合流。続いてトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)やマークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシング)らが先頭に追いついて強力なグループを形成する。しかしこの動きはキャノンデールによって封じ込められる。
絶えずアップダウンを繰り返すうちにメイン集団は人数を減らして行き、チームスカイ率いる集団からピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)やジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)がアタックするも決まらない。チームスカイやアスタナ、キャノンデール率いる集団がロランを飲み込み、最後の4級山岳ジェンキンロードに差し掛かった。
急勾配の登りでオリカ・グリーンエッジとキャノンデールがペースを上げ、そこからアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が更にもう一段ペースアップ。続いてクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)までアタックしてイギリスの観衆を沸かす。登りでのアタックは決まらず、およそ20名の精鋭集団がフィニッシュまでの下り&平坦路に差し掛かった。
ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)やヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)のアタックも決まらず、牽制状態の中から残り2kmでニーバリがアタック。ライバルをチェックするフグルサングとのコンビネーションで、ニーバリが独走に持ち込んだ。
フルームやルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)の懸命の追撃も届かず、ニーバリが胸元のトリコローレをアピールしながら2秒差でフィニッシュ。イタリア選手権ロードレースに続くシーズン2勝目を飾るとともに、マイヨジョーヌまで手にしてみせた。
ニーバリにとってマイヨジョーヌ着用はこれが初めて。ジロとブエルタでは総合優勝を経験しており、全てのグランツールでリーダージャージに袖を通したのは史上18人目。
「アタックのタイミングは完璧だったと思う。これまでの犠牲が一気に報われた気分だ。シーズン前半は勝利から遠ざかったものの、このツールに合わせて厳しいトレーニングを積んできた。イタリア選手権とこのステージ優勝が大きなモチベーションに繋がる」と勝者は語る。同時に「でも現実を見誤ってはいけない。ツールは厳しいレースだ。まだ何も決まったわけじゃない」と、気を引き締めた。
2秒遅れのメイン集団内でフィニッシュしたのは20名。4級山岳ジェンキンロードで遅れたティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)やフランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)、ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)らは16秒を失ってしまった。ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)に至っては15分近く遅れてフィニッシュしている。
ツール・ド・フランス2014第2ステージ結果
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
2位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
5位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
6位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
7位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
8位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)
9位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
10位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
22位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
27位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)
28位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
68位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
75位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
134位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
2位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
5位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
6位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
7位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
8位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)
9位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
10位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
22位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
27位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)
28位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
68位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
75位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
134位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5h08'36"
+02"
+16"
+4'34"
+7'05"
+14'48"
+02"
+16"
+4'34"
+7'05"
+14'48"
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
4位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
6位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)
7位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
9位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
4位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
6位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)
7位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
9位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
9h52'43"
+02"
+02"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
2位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
69pts
47pts
45pts
47pts
45pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 シリル・ルモワンヌ(フランス、コフィディス)
2位 ブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 イェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)
2位 ブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 イェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)
6pts
5pt
4pt
5pt
4pt
マイヨブラン(新人賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
9h52'45"
チーム総合成績
1位 チームスカイ
2位 アスタナ
3位 BMCレーシング
2位 アスタナ
3位 BMCレーシング
29h38'15"
+12"
+14"
+12"
+14"
ステージ敢闘賞
ブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール)
text:Kei Tsuji in Sheffield, UK
photo:Kei Tsuji, Makoto Ayano, Tim de Waele
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