7月5日にイギリス・ヨークシャーで開幕する第101回ツール・ド・フランス。イギリスで3日間過ごし、北フランスのパヴェを経てヴォージュ山塊まで南下する前半戦のコースをダイジェストで。



7月5日(土)第1ステージ
リーズ〜ハロゲート(イギリス) 190.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第1ステージツール・ド・フランス2014第1ステージ image:A.S.O.北アイルランド(イギリス)で開幕したジロ・デ・イタリアに続いて、ツール・ド・フランスもイギリスの地でスタートを切る。ツールがイギリスの土を踏むのは1974年、1994年、2007年に続く4度目。これまで6ステージがイギリス国内で行なわれているが、未だかつてイギリス人選手が母国でステージ優勝を飾ったことはない。

第1ステージは190.5kmの平坦ステージ。中盤にかけて登場するヨークシャーデールズ国立公園の3つの低難度カテゴリー山岳を越えると、ハロゲートまで平坦路が続く。初日に逃げれば自動的にマイヨアポワ着用のチャンスが回ってくるだけに、序盤から激しいアタックが繰り返されるはず。しかし最後は、十中八九かそれ以上の確率で、大集団スプリントに持ち込まれる。マイヨジョーヌに袖を通すのは、マイヨヴェール候補のスプリンターたちだ。



7月6日(日)第2ステージ
ヨーク〜シェフィールド(イギリス) 201km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第2ステージツール・ド・フランス2014第2ステージ image:A.S.O."ヨークシャーらしい"丘陵地帯を行く一日。201kmコースには何と9つもカテゴリー山岳が詰め込まれている。難易度はいずれも3〜4級で、距離は数キロのものが多いが、平均勾配が10%を超えるものもある。アップダウンコースはさながらアルデンヌクラシック。主催者ASOによる"ミニ・リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ"という表現は納得だ。

残り5kmで登場する4級山岳ジェンキンロード(800m/10.8%)を越えた先に待つのは、数名もしくは小集団によるスプリント。登りをこなせる軽量スプリンターや、加速力を備えたパンチャー系の選手にチャンスが回ってくる。前夜マイヨジョーヌをともにしたスプリンターは何としても食らいつきたいところ。さらにこの地域名物の強い風が吹けば、マイヨジョーヌ候補のビッグネームたちにとっても気が抜けないステージになる。



7月7日(月)第3ステージ
ケンブリッジ〜ロンドン(イギリス) 155km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第3ステージツール・ド・フランス2014第3ステージ image:A.S.O.ヨークシャーでの2日間を終えたツールはロンドンまで南下。イギリス最終日はケンブリッジからロンドンまでの155km。ツールがロンドンを訪れるのは7年ぶり。マイヨジョーヌ候補やマイヨヴェール候補を揃え、現在ロードレースにおいて最も勢いのある一大強豪国に成長したイギリスの自転車熱を感じる一日になるだろう。

カテゴリー山岳は一つも設定されず、テムズ川が作り出した低地をプロトンが駆け抜ける。レース終盤はまるでロンドンの観光地巡り。テムズ川沿いから残り2km地点でビッグベンを曲がり、ウェストミンスター寺院からセントジェームス公園を通り、最後はバッキンガム宮殿前のロータリーを曲がって大通りザ・マルに突入する。2012年ロンドン五輪ロードレースと同じフィニッシュ地点で集団スプリントが繰り広げられる。ロータリーや中央分離帯などのトラップに注意が必要だ。



7月8日(火)第4ステージ
ルテュケ・パリプラージュ〜リール 163.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第4ステージツール・ド・フランス2014第4ステージ image:A.S.O.イギリスでの3ステージを終えたプロトンは休む間もなくフランスへ。移動日は設定されないが移動距離としては長くない。英仏海峡を望むオパール海岸の保養地ルテュケ・パリプラージュを第4ステージはスタートする。一帯が舞台となったノルマンディ上陸作戦は今から70年前の話だ。

2つの4級山岳を含むものの、ほぼ真っ平らと言っていい163.5kmコース。エスケープに興味を示すのは、マイヨアポワ所有者もしくは数ポイント差で山岳賞2〜3位につけるアタッカーたちだろう。終盤にかけてベルギー国境をかすめながら(一瞬だけベルギーに入る)平野を走り、残り1.3kmの最終コーナーを抜けてリールにフィニッシュ。起伏に富んだ第2ステージを含めたここまでの4ステージで最終的なマイヨヴェール候補が浮かび上がってくるだろう。



7月9日(水)第5ステージ
イーペル(ベルギー)〜アランベール・ポルトドゥエノー 155.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第5ステージツール・ド・フランス2014第5ステージ image:A.S.O.「第一次世界大戦の開戦100周年記念イベント」として開催される第101回ツール・ド・フランス。当時の激戦地であるベルギー〜北フランスにかけてをツールのプロトンが走る。第5ステージの注目は何と言っても後半にかけて9カ所登場するパヴェ(石畳)区間だ。

パヴェはパヴェでもクライマー向きの滑らかなパヴェではない。パリ〜ルーベで言うところの5つ星パヴェ区間が連続する(多くのパヴェは逆方向)。パリ〜ルーベの勝負所であるカルフール・ド・ラルブルを皮切りに、アランベールに向かって9つのパヴェをこなす。マイヨジョーヌ候補が数ヶ月前から入念に試走を行なった悪路でサプライズは起こるのか。最後は数名か小集団のスプリントに持ち込まれるはず。幸いフィニッシュ地点はアランベールの森を貫く一本道の先ではなく、森の入り口手前に位置する炭坑横だ。



7月10日(木)第6ステージ
アラス〜ランス 194km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第6ステージツール・ド・フランス2014第6ステージ image:A.S.O.石畳決戦を終え、ツールは平穏を取り戻す。まだまだクライマーの活躍は先の話であり、もうしばらくスプリンターたちの競演に酔いしれよう。第6ステージはフランス北東部のシャンパーニュ=アルデンヌ地域圏を駆ける194km。前日の石畳決戦の疲労から逃げ切りが決まる可能性もあるが、スプリンターチームは貴重な勝利のチャンスを逃さないはずだ。

いくつもの第一次世界大戦の激戦地を通過し、ランスの街が誇るノートルダム大聖堂の前を駆け抜けてすぐにフラムルージュ(残り1kmゲート)。フィニッシュラインに至る直線的な1kmでリードアウトトレインが炸裂するはず。なお、後半に緩やかに連なる丘陵地帯では横風に注意が必要だ。



7月11日(金)第7ステージ
エペルネー〜ナンシー 234.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第7ステージツール・ド・フランス2014第7ステージ image:A.S.O.今大会2番目に長い234.5kmコースは平坦基調。しかしスプリンターにはチャンスが回ってこないかも知れない。というのも、残り20kmを切ってから2つの4級山岳が連続。この2つのハードルが、逃げのスペシャリストやアタッカーにチャンスを与えるのだ。

残り17km地点の4級山岳マロン(3.2km/5%)と、残り5.5km地点の4級山岳ブッフレール(1.3km/7.9%)がステージ優勝者を導き出す。4級山岳ブッフレール通過後は下りが続き、ナンシーの凱旋門に向かって平坦路を駆ける。集団スプリントに持ち込まれたとしても、登れない&不調のスプリンターは勝負に残れない。エキサイティングなフィナーレが待っているはずだ。



7月12日(土)第8ステージ
トンブレンヌ〜ジェラールメ・ラモズレーヌ 161km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第8ステージツール・ド・フランス2014第8ステージ image:A.S.O.開幕から1週間が経過し、ツール最初の山頂フィニッシュがついに姿を現す。161kmコースの大部分は平坦だが、残り30kmを切ってからヴォージュ山塊に突入。アルプス山脈やピレネー山脈に次ぐ山場であるヴォージュ山塊でツールは山がちな3日間を過ごす。

レース終盤にかけてまずは2級山岳クロワ・デ・モワナ(7.6km/6%)と2級山岳グロス・ピエール(3km/7.5%)をクリア。そこから平均勾配10%オーバーの3級山岳ラ・モズレーヌ(1.8km/10.3%)を駆け上がってフィニッシュを迎える。フレッシュな脚が揃うプロトンは高速でこれらの登りをこなすはず。この先の山岳ステージのことを考えるとラ・モズレーヌはまだまだ前菜程度の存在だ。



7月13日(日)第9ステージ
ジェラールメ〜ミュルーズ 170km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第9ステージツール・ド・フランス2014第9ステージ image:A.S.O.ヴォージュ山塊2日目の第9ステージには6つのカテゴリー山岳が登場。スタート直後から立て続けに山岳が襲いかかる。後半には1級山岳ル・マルクシュタイン(10.8km/5.4%)も登場するため、スプリンターたちが勝負に残るのは難しいと思われる。平坦と呼べる区間が極めて短く、スプリンターたちにとっては我慢のステージが続く。つまりこの日は逃げ切りが決まりやすいステージだ。

残り43km地点で最後の3級山岳グランバロンをこなした後、ミュルーズに向かって長くテクニカルな下りと20kmほどの平坦路が待っている。これらの登りと下りでステージ優勝を懸けたエスケープバトルが繰り広げられる。ドイツとの国境に近く、歴史的にドイツの名残を残すアルザス地方をプロトンが行く。



7月14日(月)第10ステージ
ミュルーズ〜ラプランシェ・デ・ベルフィーユ 161.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第10ステージツール・ド・フランス2014第10ステージ image:A.S.O.ヴォージュ山塊の魅力を詰め込んだようなレイアウトが特徴の第10ステージ。難易度の高いカテゴリー山岳が合計7つ設定された厳しいコースであり、ヴォージュ3連戦の最後にして最大の山岳ステージだ。休息日前にマイヨジョーヌ争いが一気に加熱する。

中盤にかけて1級山岳プティ・バロン(9.3km/8.1%)と1級山岳プラツェルヴァゼル(7.1km/8.4%)を越え、その後も絶えずアップダウンをこなしながら勝負どころへ。まずは最大勾配18%の1級山岳シェーヴル峠(3.5km/9.5%)にアタックし、最後は1級山岳ラプランシェ・デ・ベルフィーユ(5.9km/8.5%)を駆け上がる。このラプランシェ・デ・ベルフィーユはコンスタントに勾配が10%を超える厳しいもの。しかも残り250mで最大勾配は20%に達する。フランス革命記念日だけに、フランス勢の奮闘に注目だ。



7月15日(火)休息日




text:Kei Tsuji

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