断続的に雨が降り続く中開催された JシリーズXCO第4戦は国内敵なしの斉藤亮(ブリヂストンアンカー)がマッドコンディションでも安定した強さを見せつけた。2位には序盤から快走した小野寺健(ミヤタ・メリダ)が入り、復調をうかがわせた。



左側がXCOのコース、右側がDHIのコース (試走)左側がXCOのコース、右側がDHIのコース (試走) photo:Alisa.Okazaki
昨年のJ2開催に続き、今年はJ1に昇格してカレンダーに組み込まれた雫石ステージ。多くのライダーにとって長距離遠征となる東北地方でのレースであるが、コースと隣接する雫石プリンスホテルに宿泊する特別プランが用意されていたため、前日の試走から、食事、当日の準備、レース、片付け、入浴までとてもコンパクトかつ快適に過ごすことができたのではないだろうか。

会場のスキー場に隣接する雫石プリンスホテルに多くの選手達が宿泊した会場のスキー場に隣接する雫石プリンスホテルに多くの選手達が宿泊した photo:Alisa.Okazaki予想された通り、試走が行われた金曜日も朝から少し肌寒い雨模様となった。ホテルの駐車場エリアに各チームやメーカーのテントが張られ、そこからコースの1/3ほどが見渡せる。ゲレンデ中腹に設けられたスタート/ゴールゲートから右にカーブし、大きくS字を描いて登って行くと、そこから長く続く直線は泥というよりもぬかるみになっていて、トップ選手でも乗車していくことが難しい。

男子エリートのスタートラインに 54名が並ぶ男子エリートのスタートラインに 54名が並ぶ photo:Alisa.Okazaki登りが終わり左手へ曲がると木々が生い茂る細いパスを通って、シングルトラックが続く下りへと入っていく。轍に水たまりができるほど路面は緩く、乗れるラインは限られている。降り続いた雨により、一歩間違えばコースアウトや落車も避けられないテクニカルなコンディションが作り上げられていた。
少し開けたコースを下りきった後は、土質が異なる暗い林道を抜けて、細い側道を緩やかに登っていく。土手を登り返して駐車場を抜けたところにフィードゾーンが設けられており、その先でゲレンデへ。アップダウンしながらホテルの前を抜け、奥の林道を折り返してからスタート地点へと帰る全長4.2kmのレイアウトだ。

トップの斉藤亮(ブリヂストン・アンカー)でも乗車できない泥区間トップの斉藤亮(ブリヂストン・アンカー)でも乗車できない泥区間 photo:Alisa.Okazakiレース当日は天気の回復が期待されたが、朝になっても雨は気まぐれに強さを変えながら降り止むことはなかった。前日よりもさらに緩くなった路面を走ったスポーツクラスのラップタイムから、後に行われるレースの周回数が再検討され、それぞれ前日の発表より 1周回づつ少ない、女子エリート/男子エキスパート 3周回、男子エリート 5周回で行われることがアナウンスされた。

ゲレンデを押して登る2番手の小野寺健(ミヤタ・メリダ)ゲレンデを押して登る2番手の小野寺健(ミヤタ・メリダ) photo:Alisa.Okazaki男子エリートのレース前になると雨がやみ、うっすらと陽もさしてきた。定刻通りの午後2時に54名のライダーがスタートし、ゲレンデを駆け上がっていった。最初の登りで前田公平(スコット)が抜け出すが、すぐに松尾純(ミヤタ・メリダ)、小野寺が追い付き、ジュニアの平林安里(WESTBERG/ProRide)と山田将輝(Limited846/DIRTFREAK)、ここまで好調の平野星矢(ブリヂストン・アンカー)、門田基志 (ジャイアント)らが続いていく。

1周目、トップで駐車場エリアに戻ってきたのは、今シーズンここまで不調が続いている小野寺だった。すぐ後ろにつけるのは斉藤と平野のアンカー勢、少し開けて、門田、松尾、合田 正之(サイクルクラブ3UP)、山中真(マイルポストBMC)らの強豪が追う。

1,2周とランデブーが続いていた先頭の斉藤と小野寺であったが、3周目に入ると、登りで小野寺のペースが落ち、斉藤との差が開き始める。そこから再び 14分台の LAP まで上げてきた斉藤に対し、小野寺、平野は減速、4周目に入る頃には 1分ほどの差がついて勝負が見えた。ここからは「いつも通り」の独走態勢で自分との戦いを進めた斉藤、どんなコンディションでもとにかく安定したラップを刻んで後半落ちない、崩れることがない。

4位以下の後続は、周回ごとに順位の入れ替わりを繰り返し、最終周回まで勝負が続いた。途中、ゲレンデからシングルトラックへ続く長い登りは、左右でXCOとDHIのコースに分かれており、レースの横を試走のライダーが水飛沫を上げて駆け抜けていくという光景も見られた。

登りを行く門田基志(ジャイアント)登りを行く門田基志(ジャイアント) photo:Alisa.Okazaki
雫石プリンスホテルを背にぬかるんだ路面を登る選手達雫石プリンスホテルを背にぬかるんだ路面を登る選手達 photo:Alisa.Okazaki最終周回、3番手の平野星矢(ブリヂストン・アンカー)最終周回、3番手の平野星矢(ブリヂストン・アンカー) photo:Alisa.Okazaki4周目、2位小野寺の背中を捕らえそうで追いつけない平野に対し、序盤の下りで落車していたという門田が巻き返しを計り、徐々に追い上げる。逆に序盤に好調だった恩田祐一(ミヤタ・メリダ)は大きく減速し、やはりまだ泥などの特異なコンディションでの経験不足が伺えた。また、今季エリート昇格組の2名、王滝王者でもある山中はさすがの力強い走りを見せ、元愛三工業レーシングチームの品川真寛(TEAM YOU CAN)が好走していたことにも注目したい。

さすがに少し疲れた表情でゴールに現れた斉藤であったが、今回も揺るぎない強さを見せつけて今季のJ1・4連勝を飾った。少し間を空けて 2番手で戻ってきたのは小野寺。ここまで不調に苦しんできたが、本人もチームスタッフもほっとした表情を見せた。

そして、最終周回で最速ラップを叩き出すという脅威の追い上げで平野を交わした門田が3位でフィニッシュ。八幡浜から3戦連続でポディウムを守った。逆に開幕からチームでの連続表彰台を逃した平野は、悔しそうな表情でレースを終えたが、ゴールした選手達の多くは、全身泥に覆われながらも達成感のある笑顔で握手を交わしていたのが印象的であった。

次戦は1ヶ月ほど空いて、いよいよ7月19−20日に伊豆・日本サイクルスポーツセンターで開催される全日本選手権となる。

斉藤亮「チームでしっかり雨対策出来たことが勝因」
国内敵なしの斉藤亮(ブリヂストンアンカー)がマッドコンディションでも安定した強さを見せつけた国内敵なしの斉藤亮(ブリヂストンアンカー)がマッドコンディションでも安定した強さを見せつけた photo:Alisa.Okazakiここ3日間くらいずっと雨続きだったので、メカニックやサービスマンと雨対策を事前にしっかり出来たというのが 1つの勝因になったと思います。準備なくしては絶対に優勝はありえないので、当たり前の準備を当たり前にしたチームとしての組織力の勝利ではないかと思います。

ゴール後、笑顔を見せる斉藤亮(ブリヂストン・アンカー)ゴール後、笑顔を見せる斉藤亮(ブリヂストン・アンカー) photo:Alisa.Okazakiプロフィールだと4kmくらいのコースですが、登り下り合わせて3割くらいは乗れていなかったですね。いつもより筋肉にかかる負担が多いというか、今までの (走りで) 出しきった感じとは違う疲れ方にはなりました。
今シーズン初の泥レースだったので、身体が順応するのに時間がかかりましたが、周回を重ねるうちに感覚も掴めてきました。やはり細かなテクニックの積み重ねが大きなタイム差になるので、自分のスキルを含めた課題というのも見えました。周回が減ったことでちょっと物足りなさはありますが、5周という中では全てを出しきれたかと思います。

男子エリート表彰式男子エリート表彰式 photo:Alisa.Okazaki2位の小野寺健
久しぶりにレースが出来たという感じです。そして久しぶりの表彰台で、とりあえずよかったかなと思っています。ちょっとしたことなのですが、今までは自分の思い違いで、これで決まりと思って乗っていたのですが、実は意識と身体の動きが真逆になっていて、最近それにやっと気づけたので、ちょっとづつ納得の行く練習ができてきている今日このごろです。

女子エリート表彰式女子エリート表彰式 photo:Alisa.Okazaki3位の門田基志
調子は良くて、調子に乗りすぎて1周目と2周目に吹っ飛んでしまい、膝をちょっと打って出血して、一度は戦意喪失していたのですが、ここまで来て (天候不順により飛行機で17時間かけて到着した) 辞めるわけにもいかないので、最終周回にやる気スイッチを押して巻き返しました。もう 1つ前まで行けるかなと思ったのですが、そこは届きませんでした。

長距離移動からのリカバリーは、狭いところに乗った後はしんどいので、到着した夜中の12時くらいからスポーツアロマでマッサージしてもらって、だいぶ流れた感じでした。歳を取るとコンディショニングは本当に大事です。

女子エリート優勝の中込由香里
今までマッドで良い結果が出せたことが少なかったので、どうなるか心配だったのですが、思っていたよりも走れました。押した部分も結構ありましたが、下りが押しになってしまうと厳しいなと思っていたので、乗車率が良く、転ばずに行けたところが勝因になったと思います。今回はパナレーサーの「ファイア クロス」というタイヤを使ったのですが、それがベストマッチで、他のタイヤよりも下りでの安定性が良く、はまったという感じですごく良かったです。



男子エリート 4.2km x 5周回 = 21km
1位 斉藤亮 (ブリヂストン・アンカー) 1:15:53.5
2位 小野寺健 (ミヤタ・メリダ) +1:48.1
3位 門田基志 (ジャイアント) +2:04.5
4位 平野星矢 (ブリヂストン・アンカー) +2:24.2
5位 松尾純 (ミヤタ・メリダ) +5:32.0
6位 山中真 (マイルポストBMC) +6:30.2
7位 前田公平 (スコット) +6:50.1
8位 佐藤誠示 +7:10.0
9位 濱由嵩 (グローブライド/自転車) +7:34.9
10位 合田正之 (サイクルクラブ3UP) +8:14.4

女子エリート 4.2km x 3周回 = 12.6km
1位 中込 由香里 (team SY-Nak)  1:00:06.41
2位 小林 可奈子 (AZUMINO FOX) + 2:15.17
3位 中島 崚歩 (club SY-Nak) + 6:04.12

斉藤亮の全日本選手権へ向けてのインタビュー記事は追ってお伝えします。

photo&text:Alisa.Okazaki


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