2014/05/11(日) - 13:53
ジロ・デ・イタリアの「ビッグスタート」は現地アイルランドの人々に暖かく迎え入れられている。警察の融通が利かないことと、雨が降り続いていることと、アイルランド期待のダニエル・マーティンがリタイアしたことを除けば、今のところイタリアから遠く離れた地での開幕は成功と言っていいだろう。
「アイルランドで開幕」とさんざん言っておきながら、実際の開幕地はイギリス。それもそのはず、イギリスの正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」。つまり北アイルランドはイギリスに含まれる。
そのため沿道に掲げられるのはイタリア国旗と見間違えやすいアイルランド国旗ではなくユニオンジャックだ。
ちなみにチームバスエリアに集まった観客の分散具合を見ると、やはり地元アイルランド出身のフィリップ・ダイグナン擁する地元イギリスのチームスカイが一番人気。続いて、こちらも地元アイルランドのニコラス・ロッシュ擁するティンコフ・サクソ。前日のチームTTでダニエル・マーティンを失ったガーミン・シャープにはどことなく寂しげな雰囲気が漂っていた。
ツール・ド・フランスの「グランデパール」に対抗したのかどうかは定かではないが、ジロ・デ・イタリアは北アイルランドでの開幕を「ビッグスタート」を名付けている(グランデパールの直訳)。
アイルランドらしいと言えばアイルランドらしいのだが、降り続く雨がせっかくの「ビッグスタート」に水を差す。差すと言うよりも実際に水が降っている。
例年は4月によく雨が降り、5月は比較的雨量が少ないらしい。今年に限っては4月の雨が5月にシフトしていると、現地のSIMカードを調達するために立ち寄ったVodafoneショップの店員が教えてくれる。この日は気温11度ほどの雨の中を選手たちは5時間にわたって走り続けた。
ヨーロッパ人の多くは小雨なら傘をささないが、しっかりと本降りなので沿道には所狭しと傘が並んだ。しかも当然100均で売られているような貧相な傘ではなく、しっかりとした作りの、高そうで、何年も愛用してそうな傘。地元のテレグラフ紙が配っている薄いピンクの簡易雨合羽も目立つ。
沿道に集まった観客の数はイタリア本国よりも多い印象。観光局が招致したイタリアレースが、アイルランドを魅了している。
「ジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸」としてユネスコ世界遺産に登録されているコーズウェー海岸がこの日のハイライトだ。
海沿いに玄武岩の円柱が並んだ名所「ジャイアンツ・コーズウェー」はコースから見えないが、充分にコーズウェー海岸の魅力を堪能出来るレイアウト。しかし、観光局の願いも虚しく、アイルランドらしい雨が視界を遮った。
「せっかくの北アイルランドの美しい風景が台無しだった」と別府史之(トレックファクトリーレーシング)も残念がる。荒々しい崖と草原を組み合わせた海岸線を、濡れた路面に警戒しながら、選手たちは黙々と走り続けた。
オリカ・グリーンエッジは開幕前の段階から、チームタイムトライアルでスヴェイン・タフト(カナダ)を総合首位に立たせ、第1ステージでマイケル・マシューズ(オーストラリア)にマリアローザを移す予定だったと言う。まさにその台本通りの展開で「ブリング」ことマシューズにマリアローザが渡った。
2度目のグランツール挑戦でリーダージャージを手にしたマシューズ。グランツールデビューとなった昨年ブエルタ・ア・エスパーニャではステージ2勝を飾っている。
マリアローザを着用した史上5人目のオーストラリア人となった23歳のマシューズはレース後のインタビューで「雨のレースは苦手。雨の日はトレーニングに行かないぐらい苦手」と、正直な気持ちを打ち明ける。「でもマリアローザを守るためにスプリントした。マリアローザ獲得は夢のよう。出来るだけ長い期間このジャージを着続けたい。チームとして1週間はキープ出来ると思う」。
悪天候続きで大会2日目にして疲れの色が見えるプロトンや大会関係者は、第3ステージで北アイルランドからアイルランド共和国へ。ダブリンのど真ん中で再びゴールスプリントが繰り広げられる。言うまでもなく、天気予報は雨だ。
text&photo:Kei Tsuji in Belfast, Northern Ireland
「アイルランドで開幕」とさんざん言っておきながら、実際の開幕地はイギリス。それもそのはず、イギリスの正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」。つまり北アイルランドはイギリスに含まれる。
そのため沿道に掲げられるのはイタリア国旗と見間違えやすいアイルランド国旗ではなくユニオンジャックだ。
ちなみにチームバスエリアに集まった観客の分散具合を見ると、やはり地元アイルランド出身のフィリップ・ダイグナン擁する地元イギリスのチームスカイが一番人気。続いて、こちらも地元アイルランドのニコラス・ロッシュ擁するティンコフ・サクソ。前日のチームTTでダニエル・マーティンを失ったガーミン・シャープにはどことなく寂しげな雰囲気が漂っていた。
ツール・ド・フランスの「グランデパール」に対抗したのかどうかは定かではないが、ジロ・デ・イタリアは北アイルランドでの開幕を「ビッグスタート」を名付けている(グランデパールの直訳)。
アイルランドらしいと言えばアイルランドらしいのだが、降り続く雨がせっかくの「ビッグスタート」に水を差す。差すと言うよりも実際に水が降っている。
例年は4月によく雨が降り、5月は比較的雨量が少ないらしい。今年に限っては4月の雨が5月にシフトしていると、現地のSIMカードを調達するために立ち寄ったVodafoneショップの店員が教えてくれる。この日は気温11度ほどの雨の中を選手たちは5時間にわたって走り続けた。
ヨーロッパ人の多くは小雨なら傘をささないが、しっかりと本降りなので沿道には所狭しと傘が並んだ。しかも当然100均で売られているような貧相な傘ではなく、しっかりとした作りの、高そうで、何年も愛用してそうな傘。地元のテレグラフ紙が配っている薄いピンクの簡易雨合羽も目立つ。
沿道に集まった観客の数はイタリア本国よりも多い印象。観光局が招致したイタリアレースが、アイルランドを魅了している。
「ジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸」としてユネスコ世界遺産に登録されているコーズウェー海岸がこの日のハイライトだ。
海沿いに玄武岩の円柱が並んだ名所「ジャイアンツ・コーズウェー」はコースから見えないが、充分にコーズウェー海岸の魅力を堪能出来るレイアウト。しかし、観光局の願いも虚しく、アイルランドらしい雨が視界を遮った。
「せっかくの北アイルランドの美しい風景が台無しだった」と別府史之(トレックファクトリーレーシング)も残念がる。荒々しい崖と草原を組み合わせた海岸線を、濡れた路面に警戒しながら、選手たちは黙々と走り続けた。
オリカ・グリーンエッジは開幕前の段階から、チームタイムトライアルでスヴェイン・タフト(カナダ)を総合首位に立たせ、第1ステージでマイケル・マシューズ(オーストラリア)にマリアローザを移す予定だったと言う。まさにその台本通りの展開で「ブリング」ことマシューズにマリアローザが渡った。
2度目のグランツール挑戦でリーダージャージを手にしたマシューズ。グランツールデビューとなった昨年ブエルタ・ア・エスパーニャではステージ2勝を飾っている。
マリアローザを着用した史上5人目のオーストラリア人となった23歳のマシューズはレース後のインタビューで「雨のレースは苦手。雨の日はトレーニングに行かないぐらい苦手」と、正直な気持ちを打ち明ける。「でもマリアローザを守るためにスプリントした。マリアローザ獲得は夢のよう。出来るだけ長い期間このジャージを着続けたい。チームとして1週間はキープ出来ると思う」。
悪天候続きで大会2日目にして疲れの色が見えるプロトンや大会関係者は、第3ステージで北アイルランドからアイルランド共和国へ。ダブリンのど真ん中で再びゴールスプリントが繰り広げられる。言うまでもなく、天気予報は雨だ。
text&photo:Kei Tsuji in Belfast, Northern Ireland
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