第78回フレーシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー)が、4月23日、ベルギー南東部のバストーニュをスタートする。「ユイの壁」で決するワンデークラシックで、好調フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)とライバルたちのバトルに注目したい。



バストーニュをスタートする199kmのアップダウンコース

フレーシュ・ワロンヌ2014フレーシュ・ワロンヌ2014 image:ASOアルデンヌ・クラシックの一つに数えられ、毎年アムステル・ゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに挟まれた水曜日に開催されるフレーシュ・ワロンヌ。ツール・ド・フランスやリエージュと同じA.S.O.(アモリー・スポルト・アルガニザシオン)が主催するワンディレースだ。

残り5kmコースプロフィール残り5kmコースプロフィール image:ASOレースの舞台となるのはベルギー南東部のワロン地域。「北のクラシック」の舞台である北西部のフランデレン地域ではフラマン語が話されているが、このワロン地域ではフランス語が公用語として話されている。

観客をかきわけてユイの壁を進む観客をかきわけてユイの壁を進む photo:Kei Tsujiなお、「フレーシュ」はフランス語で「矢」を意味しており、レース名は「ワロンを貫く矢」の意味。

距離の短い上りが連続して登場するコースレイアウトはアルデンヌ・クラシックならでは。これまでシャルルロワやバンシュをスタートして東に進むルートが採用されてきたが、今年はアルデンヌ最終戦「リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ」の100回目の開催を記念し、同大会の折り返し地点である南部のバストーニュをスタートして北上する。言うならば「バストーニュ〜ユイ」だ。

例年同様、ワロン特有の丘陵地帯を駆け抜けてユイへ。スタート地点の移動はレースに大きな影響を及ぼさないだろう。2つの登りを越えたのちに1回目の「ユイの壁」を越え、そこからユイを起点とした大小2種類の周回コースに入る。

2回目の「ユイの壁」を通過するとフィニッシュまで残り23.5km。2回目の「ユイの壁」とフィニッシュの距離が例年よりも10kmほど短縮されているのが特徴だ。

「エルッフ」の登りや吹き付ける風によってセレクションがかけられた集団が、最後の「ユイの壁」に突入する。長さ1300m、高低差121m、平均勾配9.3%の登りが「壁」と呼ばれる由縁は、最大勾配が26%(公称19%)に達する激坂ぶりにある。

登りの全長は1300mだが、前半は比較的幅の広い緩斜面が続く。ラスト800mで幹線道路から右に曲がって脇道に入ると「壁」がスタート。登りが進むにつれて勾配が増し、ラスト400mから始まる急勾配区間で勝負が決まる。スローモーションのようなプロトンの中から勢い良く飛び出した選手が表彰台のてっぺんに登る。



登場する11カ所の上り(登坂距離・平均勾配)

1 84.0km地点 Cote de Bellaire
2 101.0km地点 Cote d'Ahin
3 111.5km地点 Mur de Huy(1回目)
4 124.5km地点 Cote d'Ereffe 
5 143.5km地点 Cote de Bellaire
6 151.0km地点 Cote de Bohisseau
7 154.0km地点 Cote de Bousalle
8 165.0km地点 Cote d'Ahin
9 175.5km地点 Mur de Huy(2回目)
10 188.5km地点 Cote d'Ereffe 
11 199.0km地点 Mur de Huy(フィニッシュ)
1000m・6.8%
2100m・5.9%
1300m・9.3%
2200m・5.9%
1000m・6.8%
1300m・7.6%
1700m・4.9%
2100m・5.9%
1300m・9.3%
2200m・5.9%
1300m。9.3%


フレーシュ・ワロンヌ2014フレーシュ・ワロンヌ2014 image:ASO


ジルベールやバルベルデ、モレーノ、ゲランスらが激坂の栄光を狙う

フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waele昨年「ユイの壁」で飛び出してフレーシュ・ワロンヌの栄冠を手にしたのはダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)だった。モレーノは、アムステル・ゴールドレースで落車リタイアした2012年大会の優勝者ホアキン・ロドリゲス(スペイン)を従えての出場。激坂の名手2人のタッグは強力だ。

サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waele「カウベルグ」で抜群のアタックを仕掛け、アムステル・ゴールドレースで3度目の優勝を果たしたフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)は優勝候補の筆頭だ。地元ワロンの期待を背負うジルベールは、2011年にアルデンヌクラシック3連勝(アムステル、フレーシュ、リエージュ)という偉業を成し遂げており、今年もその勢いを感じさせる。

ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vos2006年大会の優勝者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)や、近年アルデンヌ・クラシックで表彰台の常連となっているサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)らがジルベールの動きをマークするはず。

地元ベルギーに次ぐ多くの優勝者を輩出しているイタリアからは、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)やディエゴ・ウリッシ(ランプレ・メリダ)らが出場。昨年のリエージュ覇者ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)や、アムステル・ゴールドレースで2位を射止めたイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)といったアウトサイダーも虎視眈々と勝利を狙っている。

コロンビアのカルロスアルベルト・ベタンクール(AG2Rラモンディアール)とジュリアン・アレドンド(トレックファクトリーレーシング)の他、昨年ブエルタ・ア・エスパーニャでブレイクしたワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)や、台頭著しいミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)といった若手にも注目だ。

text:Kei Tsuji

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