2014/03/31(月) - 11:30
80名によるゴールスプリントに持ち込まれたヘント〜ウェベルヘム(UCIワールドツアー)。相次ぐ落車を避け、ライバルたちを力で下したジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)が初優勝を飾った。
1週間後に控えたロンド・ファン・フラーンデレンに向けての脚試しとして注目を集めるヘント〜ウェベルヘム。合計9つの急坂が設定されているものの、クラシックレースの中では比較的その難易度は低い。
2013年はペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)の逃げ切りが決まったが、スプリンターにもチャンスがあるクラシックとして知られており、歴代優勝者リストにはスプリンターの名前が並んでいる。
第一次世界大戦の開戦から100年にあたる2014年は、その戦没者に敬意を表し、かつての戦場や兵士達の墓地を巡るコースが採用された。
コース全長は例年より長めの233km。後半にかけてバネベルグ、ケンメルベルグ、モンテベルグのセットを2回こなし、36kmの平坦区間を経てフィニッシュを迎える。
積雪と低温によりコース短縮を余儀なくされた2013年大会とは異なり、最高気温18度&微風という好条件の中で行なわれた2014年大会。セバスティアン・ランデル(デンマーク、BMCレーシング)やマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ・サクソ)ら5名が前半から10分リードで逃げる展開に。後半の急坂連続区間に差し掛かる頃にはタイム差が3分を割り込んだ。
逃げグループを追ってカウンターアタックが掛かる中、メイン集団内では落車が多発する。フランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)の続いてイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)やクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)が落車。相次ぐ落車と急坂によってメイン集団の人数は徐々に絞られて行った。
単独で抵抗するボアーロを追う形で、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)やトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)、サガンといった有力選手が集団前方に陣取って最後のケンメルベルグをクリアする。最大勾配20%の石畳の登りとテクニカルな下りで一時的に20名ほどが先行した。
最後の難所であるモンテベルグで先頭ボアーロは吸収。ケンメルベルグで遅れた選手の多くが復帰し、メイン集団は80名ほどに膨れ上がる。集団スプリントを免れない状況を嫌って、ここからステイン・デヴォルデル(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)、アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)、シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)がアタック。
ジャイアント・シマノやキャノンデール、オメガファーマ・クイックステップの追撃を抑え込んで、徐々にタイム差を広げたデヴォルデル、アマドール、ディリエル。この3名は40秒弱のリードをもって残り10kmに突入する。
すると残り8kmで、優勝候補の一角アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)やタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)を含む大落車が発生。鎖骨骨折を負ったグライペルのクラシックシーズンがここで終わった。
先頭デヴォルデル、アマドール、ディリエルは果敢な走りで抵抗してみせたが、残り1kmのバナー通過と同時に吸収される。どのスプリンターチームも統率がとれないまま最終ストレートへ。真っ先にディフェンディングチャンピオンのサガンがスプリントを開始した。
サガンにはデゲンコルブとアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)が対抗。別のラインで勝負したミラノ〜サンレモ覇者のアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)のスプリントは伸びない。スピードの乗ったサガンを、デゲンコルブが差しきった。
「ヘント〜ウェベルヘムのタイトルを自分の戦歴に加えることが出来て嬉しい。今日の展開はチームにとって理想的だった。デヴェナインスが集団を率いて逃げを追い、デコルトが完璧なポジショニングとタイミングでサガンのホイールまで引き上げてくれたんだ」と、2013年のパリ〜ツールやヴァッテンフォールサイクラシックスに続くワンデークラシック制覇を果たしたデゲンコルブは話す。
デゲンコルブはパリ〜ニースでステージ優勝&ポイント賞獲得の活躍を見せたが、チームの方針でミラノ〜サンレモを欠場した。「ミラノ〜サンレモの欠場はキャリアの中で一二を争うほど残念なものだった」とデゲンコルブ。「でも今日はそんな残念な気持ちを忘れてしまえるほどの勝利。次なるビッグレースに向けての良いサインだ」。
デゲンコルブは2日前のE3ハレルベークでも石畳のアタックに反応するなど好調ぶりを見せていた。なお、デゲンコルブは2013年のロンド・ファン・フラーンデレンで9位、パリ〜ルーベで28位という成績を残している。「北のクラシック」を走れるスプリンターとして注目の存在になりそうだ。
選手コメントはジャイアント・シマノ公式リリースより。
ヘント〜ウェベルヘム2014結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ) 5h34'37"
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
4位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)
5位 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 トム・ファンアスブロック(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
7位 アレクセイ・ツァテヴィツク(ロシア、カチューシャ)
8位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、FDJ.fr)
9位 トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシング)
10位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
1週間後に控えたロンド・ファン・フラーンデレンに向けての脚試しとして注目を集めるヘント〜ウェベルヘム。合計9つの急坂が設定されているものの、クラシックレースの中では比較的その難易度は低い。
2013年はペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)の逃げ切りが決まったが、スプリンターにもチャンスがあるクラシックとして知られており、歴代優勝者リストにはスプリンターの名前が並んでいる。
第一次世界大戦の開戦から100年にあたる2014年は、その戦没者に敬意を表し、かつての戦場や兵士達の墓地を巡るコースが採用された。
コース全長は例年より長めの233km。後半にかけてバネベルグ、ケンメルベルグ、モンテベルグのセットを2回こなし、36kmの平坦区間を経てフィニッシュを迎える。
積雪と低温によりコース短縮を余儀なくされた2013年大会とは異なり、最高気温18度&微風という好条件の中で行なわれた2014年大会。セバスティアン・ランデル(デンマーク、BMCレーシング)やマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ・サクソ)ら5名が前半から10分リードで逃げる展開に。後半の急坂連続区間に差し掛かる頃にはタイム差が3分を割り込んだ。
逃げグループを追ってカウンターアタックが掛かる中、メイン集団内では落車が多発する。フランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)の続いてイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)やクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)が落車。相次ぐ落車と急坂によってメイン集団の人数は徐々に絞られて行った。
単独で抵抗するボアーロを追う形で、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)やトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)、サガンといった有力選手が集団前方に陣取って最後のケンメルベルグをクリアする。最大勾配20%の石畳の登りとテクニカルな下りで一時的に20名ほどが先行した。
最後の難所であるモンテベルグで先頭ボアーロは吸収。ケンメルベルグで遅れた選手の多くが復帰し、メイン集団は80名ほどに膨れ上がる。集団スプリントを免れない状況を嫌って、ここからステイン・デヴォルデル(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)、アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)、シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)がアタック。
ジャイアント・シマノやキャノンデール、オメガファーマ・クイックステップの追撃を抑え込んで、徐々にタイム差を広げたデヴォルデル、アマドール、ディリエル。この3名は40秒弱のリードをもって残り10kmに突入する。
すると残り8kmで、優勝候補の一角アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)やタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)を含む大落車が発生。鎖骨骨折を負ったグライペルのクラシックシーズンがここで終わった。
先頭デヴォルデル、アマドール、ディリエルは果敢な走りで抵抗してみせたが、残り1kmのバナー通過と同時に吸収される。どのスプリンターチームも統率がとれないまま最終ストレートへ。真っ先にディフェンディングチャンピオンのサガンがスプリントを開始した。
サガンにはデゲンコルブとアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)が対抗。別のラインで勝負したミラノ〜サンレモ覇者のアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)のスプリントは伸びない。スピードの乗ったサガンを、デゲンコルブが差しきった。
「ヘント〜ウェベルヘムのタイトルを自分の戦歴に加えることが出来て嬉しい。今日の展開はチームにとって理想的だった。デヴェナインスが集団を率いて逃げを追い、デコルトが完璧なポジショニングとタイミングでサガンのホイールまで引き上げてくれたんだ」と、2013年のパリ〜ツールやヴァッテンフォールサイクラシックスに続くワンデークラシック制覇を果たしたデゲンコルブは話す。
デゲンコルブはパリ〜ニースでステージ優勝&ポイント賞獲得の活躍を見せたが、チームの方針でミラノ〜サンレモを欠場した。「ミラノ〜サンレモの欠場はキャリアの中で一二を争うほど残念なものだった」とデゲンコルブ。「でも今日はそんな残念な気持ちを忘れてしまえるほどの勝利。次なるビッグレースに向けての良いサインだ」。
デゲンコルブは2日前のE3ハレルベークでも石畳のアタックに反応するなど好調ぶりを見せていた。なお、デゲンコルブは2013年のロンド・ファン・フラーンデレンで9位、パリ〜ルーベで28位という成績を残している。「北のクラシック」を走れるスプリンターとして注目の存在になりそうだ。
選手コメントはジャイアント・シマノ公式リリースより。
ヘント〜ウェベルヘム2014結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ) 5h34'37"
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
4位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)
5位 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 トム・ファンアスブロック(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
7位 アレクセイ・ツァテヴィツク(ロシア、カチューシャ)
8位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、FDJ.fr)
9位 トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシング)
10位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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