2014/04/30(水) - 08:59
イタリアに本拠を構え、ハンドメイドの高品質なシューズを多数ラインナップするサイクリングシューズブランドのDMT。ソールやアッパーなどが完全に一新されたDMTの新たなフラッグシップモデルが「VEGA」だ。ジルベールも愛用するイタリアンシューズをインプレッションしていこう。
DMT VEGA (c)MakotoAYANO/cyclowiredjp
「VEGA」はこれまでのDMTシューズの系譜を受け継ぎながらも全く新しく設計されたことがうかがえるレーシングシューズだ。以前のDMTのフラッグシップモデルは3年前に発表されたPrisma2.0であり、その前のモデルは2008年のPrismaだった。モデル名からもわかるように、大幅なコンセプトの変化というものはなく、DMTのフラッグシップは継続してきた、また継続できる魅力のあるシューズであった。
その傑作シューズであるPrismaの名を過去のものとし、日本では織姫星と呼ばれること座の1等星、「VEGA」の名を新たに冠されたことからもDMTがこの新しいシューズにどれだけの力を入れているかが察せられる。それは、シューズの主要な要素であるソール・アッパー・クロージャーといった部位が全て新しく作りかえられているという事に表れている。
先端部に大きく通風孔が開けられ高い通気性を発揮するAIRTECH CARBON ソール 
かかとを包み込むように成形されるAIRTECH CARBON ソール
LOOK Position memoryシステムに対応する 
穴が開けられ通気性に配慮されたインソール
VEGAは通気性とホールド力の向上を主眼に置いて開発された新型カーボンソール”AIRTECH CARBON ソール”を採用する。航空宇宙産業でも使用されるUD FAW150カーボンを踵まで包み込むようにモノコック成形されたアウトソールは、ホールド力と剛性をアップ。ペダリングパワーを一滴も無駄にしない高い効率を実現している。
また、クリート取り付け部には、ルックのPosition memoryシステムに対応するナットが埋め込まれており、ルックのビンディングペダルユーザーであればクリート交換時に高い再現性をもって新しいクリートを装着できる。
インソールはペダリング時に圧力がかかるポイントのみ薄く加工したアナトミックシェイプに成形される。アウトソール前方の通気口からつながる位置に、5mm大のホールをいくつも設けることで通気性を確保し、蒸れやすい夏場などの過酷な状況下においても、靴内の環境を最適に整える。
MICRO1とAIR CELLが熱圧着によってシームレスにつながるアッパー 
BOAダイヤルが2つ配置されるクロージャーシステム
アッパーにはDMTが開発した新型マイクロファイバー”MICRO1”と、蜂の巣状に成形され、最高の通気性を誇るナイロンメッシュ”AIR CELL”が組み合わされる。”MICRO1”は厚さ1mmと非常に薄く、高い伸縮性を持つ画期的な素材。MICRO1とAIR CELLは熱圧着によってシームレスに成形され、継ぎ目の違和感を徹底的に排除した。そのようにして成形されたアッパーはDMTのアイデンティティである袋縫いを用いて縫製されることで、VEGAは軽く、包み込まれるようなフィット感と抜群の快適性を実現した。
フィリップ・ジルベールもDMT VEGAの愛用者だ photo:Kei Tsujiクロージャーは細かい調節が可能なBOAダイヤルを上下2つに採用。１つのBOAダイヤルのみであった、前作Prisma2.0よりも部位ごとに細かい調整を可能としている。極薄のアッパーと合わせられることで、まるでオーダーシューズのようなフィット感を生み出している。
サイズ展開も39～45までと幅広く、40～45サイズではハーフサイズが設定される、ハイエンドモデルにふさわしいきめ細やかなラインナップ。かかと部のスタッドは交換可能で、長く付き合っていけるモデルだ。カラーはブラックのみとなるが、どのようなウェアでもフィットするスタイリッシュなデザインに仕上がっているのも魅力的。
2012年世界チャンピオンのフィリップ・ジルベール（ベルギー）も愛用する、DMTの新たなフラッグシップモデルVEGA。それでは早速インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
足元が引き締まって見えるすっきりしたデザイン
まず手にとって感じるのはその軽さ。片側実測218gとかなり軽量な仕上がりとなっており、実際に履いてみても軽さが感じられるレベルだ。アッパーがかなり薄くしなやかな作りとなっているため、足を入れた瞬間から自分の体に馴染んでいくような感覚を覚える。上下に2つ配されたBOAダイヤルを締めこんでいけば、さらにフィット感は向上していく。
タンの位置がずれないようにタンとアッパーが接触する個所にベルクロが配置される シューズの内側（左シューズでは右側、右シューズでは左側）のタンとアッパーの接触部分にはベルクロが配されることで、タンが動かないように工夫されている。
今回のインプレッションでは1週間ほどシューズをお借りしており、日々の通勤でも使っていたのだが、毎朝シューズを履くたびにタンの位置を調整しなくても済むのは、非常にありがたい。
普通のシューズであれば、靴に足を差し込んで、タンの位置を調節して、ずれないように抑えながらラチェットを締めていくという動作を行っていたのが、いかに煩わしかったか。一度経験してしまうと他のシューズに戻れなくなってしまいそうなほど便利な工夫で、この点だけでもVEGAを選ぶ価値があるかもしれない。
ハイエンドモデルのレーシングシューズであるVEGAにとって、新設計のソールや新素材のアッパーといったシューズの性能に直接関わるトピックスに比べると小さな点だろう。ただ、これまで気づいていなかったシューズへの不満に気づきを与え、解決してくれているこの小さなベルクロは、いかにDMTがシューズについて真摯に取り組み、日常使用するユーザーの目線に立ったものづくりをしているのかを教えてくれる。
今まで、DMTのシューズはいわゆる欧米人向けの足型を採用しており他ブランドのシューズに比べても、幅が狭く甲が低いデザインであった。だが、そのイメージは今回のVEGAによって大きく裏切られることとなった。新しく設計されたAIRTECH CARBON ソールはかなり幅広に設計されており、個人的に所有していたDMTの従来モデル、FUSIONと比べると、もっとも広い部分で実測すると7mmの拡幅がなされている。甲部分もFUSIONと比べると余裕のあるサイズ感となっている。
アジアンフィットの足型を採用したのだろうと思われるほど、多くの日本人にフィットしやすい幅広甲高路線にガラッと足型を変えてきたDMT。今までDMTのシューズに興味はあったがサイズの関係で手を(足を？）出せなかった人も試してみてはいかがだろうか。
絶妙な剛性のソールによってペダルを回しやすい 
かかとのホールド感は非常に高いヒールカップ
実際にクリートを装着し、使用してみた印象は、包み込むようなホールド感が心地良く、足と一体になってペダリングパワーを逃さないレーシングシューズ。新開発のソールはかかとのホールド感が向上しており、積極的に引き足を使うようなペダリングをしても、しっかりとかかとを保持している。浮き上がるような感覚はなく、高い反応性を持っており急なアタックにも遅れをとる事はないだろう。
ソールの剛性感は少し抑えめにされており、長距離のライドでも足へのダメージが少なく済む。がちがちの高剛性ではなく、少しタメがあってからペダルへと踏力を伝えるイメージで、リズムを合わせて踏めばより少ない力でペダルを回すことができる。AIRTECH CARBON ソールの最大の売りともなっている通気性は申し分なく、インプレをした春先の時期では寒いと感じるほど。
アッパーはペダリング中もしなやかに足を包み込んでくれ、快適な履き心地を維持してくれる。かなり薄い素材なので、引き足時には少し頼りないのでは？などという心配も杞憂で、しなやかに甲にフィットすることで力を受ける面積が多いためか、全く不安なく力を受け止めてくれる。
しなやかに足の形に追従し形を変えるアッパー 
ダンシングのパワーもしっかりと受け止めてくれる
少し気になったのが、あまりにも薄いアッパー素材のため、クロージャーをかなり強めに締め付けた時に限り、クロージャー取り付け部が少し当たってしまい、すこし違和感を覚えるということ。ただ、実際にペダリングしている最中にはわからないぐらいの違和感であるため、フィッティング時に気になっても実使用では問題ないと思っても構わないだろう。
全体としてまとめると、高いフィット感を持つアッパーと、足を回しやすい適度な剛性と高いかかとのホールド感を持つソールを持つVEGAは、足と一体になったような感覚の、レディメイドなのにオーダーメイド感覚の高品質なサイクリングシューズだ。タンのズレ防止ベルクロに見られるような心配りは「おもてなし」の心に通じるものもあるし、足型も甲高、幅広の日本人にぴったりの型に進化しており、日本市場でも高い人気が出そうな予感だ。
DMT VEGA
カラー：ブラック
サイズ：39/40/40.5/41/41.5/42/42.5/43/43.5/44/44.5/45
ホール：ロード用3ホールソール
価 格：45,360円（税込）
text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANAO
DMT VEGA (c)MakotoAYANO/cyclowiredjp「VEGA」はこれまでのDMTシューズの系譜を受け継ぎながらも全く新しく設計されたことがうかがえるレーシングシューズだ。以前のDMTのフラッグシップモデルは3年前に発表されたPrisma2.0であり、その前のモデルは2008年のPrismaだった。モデル名からもわかるように、大幅なコンセプトの変化というものはなく、DMTのフラッグシップは継続してきた、また継続できる魅力のあるシューズであった。
その傑作シューズであるPrismaの名を過去のものとし、日本では織姫星と呼ばれること座の1等星、「VEGA」の名を新たに冠されたことからもDMTがこの新しいシューズにどれだけの力を入れているかが察せられる。それは、シューズの主要な要素であるソール・アッパー・クロージャーといった部位が全て新しく作りかえられているという事に表れている。
先端部に大きく通風孔が開けられ高い通気性を発揮するAIRTECH CARBON ソール かかとを包み込むように成形されるAIRTECH CARBON ソール LOOK Position memoryシステムに対応する 穴が開けられ通気性に配慮されたインソール VEGAは通気性とホールド力の向上を主眼に置いて開発された新型カーボンソール”AIRTECH CARBON ソール”を採用する。航空宇宙産業でも使用されるUD FAW150カーボンを踵まで包み込むようにモノコック成形されたアウトソールは、ホールド力と剛性をアップ。ペダリングパワーを一滴も無駄にしない高い効率を実現している。
また、クリート取り付け部には、ルックのPosition memoryシステムに対応するナットが埋め込まれており、ルックのビンディングペダルユーザーであればクリート交換時に高い再現性をもって新しいクリートを装着できる。
インソールはペダリング時に圧力がかかるポイントのみ薄く加工したアナトミックシェイプに成形される。アウトソール前方の通気口からつながる位置に、5mm大のホールをいくつも設けることで通気性を確保し、蒸れやすい夏場などの過酷な状況下においても、靴内の環境を最適に整える。
MICRO1とAIR CELLが熱圧着によってシームレスにつながるアッパー BOAダイヤルが2つ配置されるクロージャーシステム アッパーにはDMTが開発した新型マイクロファイバー”MICRO1”と、蜂の巣状に成形され、最高の通気性を誇るナイロンメッシュ”AIR CELL”が組み合わされる。”MICRO1”は厚さ1mmと非常に薄く、高い伸縮性を持つ画期的な素材。MICRO1とAIR CELLは熱圧着によってシームレスに成形され、継ぎ目の違和感を徹底的に排除した。そのようにして成形されたアッパーはDMTのアイデンティティである袋縫いを用いて縫製されることで、VEGAは軽く、包み込まれるようなフィット感と抜群の快適性を実現した。
フィリップ・ジルベールもDMT VEGAの愛用者だ photo:Kei Tsujiクロージャーは細かい調節が可能なBOAダイヤルを上下2つに採用。１つのBOAダイヤルのみであった、前作Prisma2.0よりも部位ごとに細かい調整を可能としている。極薄のアッパーと合わせられることで、まるでオーダーシューズのようなフィット感を生み出している。サイズ展開も39～45までと幅広く、40～45サイズではハーフサイズが設定される、ハイエンドモデルにふさわしいきめ細やかなラインナップ。かかと部のスタッドは交換可能で、長く付き合っていけるモデルだ。カラーはブラックのみとなるが、どのようなウェアでもフィットするスタイリッシュなデザインに仕上がっているのも魅力的。
2012年世界チャンピオンのフィリップ・ジルベール（ベルギー）も愛用する、DMTの新たなフラッグシップモデルVEGA。それでは早速インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
足元が引き締まって見えるすっきりしたデザイン まず手にとって感じるのはその軽さ。片側実測218gとかなり軽量な仕上がりとなっており、実際に履いてみても軽さが感じられるレベルだ。アッパーがかなり薄くしなやかな作りとなっているため、足を入れた瞬間から自分の体に馴染んでいくような感覚を覚える。上下に2つ配されたBOAダイヤルを締めこんでいけば、さらにフィット感は向上していく。
タンの位置がずれないようにタンとアッパーが接触する個所にベルクロが配置される シューズの内側（左シューズでは右側、右シューズでは左側）のタンとアッパーの接触部分にはベルクロが配されることで、タンが動かないように工夫されている。今回のインプレッションでは1週間ほどシューズをお借りしており、日々の通勤でも使っていたのだが、毎朝シューズを履くたびにタンの位置を調整しなくても済むのは、非常にありがたい。
普通のシューズであれば、靴に足を差し込んで、タンの位置を調節して、ずれないように抑えながらラチェットを締めていくという動作を行っていたのが、いかに煩わしかったか。一度経験してしまうと他のシューズに戻れなくなってしまいそうなほど便利な工夫で、この点だけでもVEGAを選ぶ価値があるかもしれない。
ハイエンドモデルのレーシングシューズであるVEGAにとって、新設計のソールや新素材のアッパーといったシューズの性能に直接関わるトピックスに比べると小さな点だろう。ただ、これまで気づいていなかったシューズへの不満に気づきを与え、解決してくれているこの小さなベルクロは、いかにDMTがシューズについて真摯に取り組み、日常使用するユーザーの目線に立ったものづくりをしているのかを教えてくれる。
今まで、DMTのシューズはいわゆる欧米人向けの足型を採用しており他ブランドのシューズに比べても、幅が狭く甲が低いデザインであった。だが、そのイメージは今回のVEGAによって大きく裏切られることとなった。新しく設計されたAIRTECH CARBON ソールはかなり幅広に設計されており、個人的に所有していたDMTの従来モデル、FUSIONと比べると、もっとも広い部分で実測すると7mmの拡幅がなされている。甲部分もFUSIONと比べると余裕のあるサイズ感となっている。
アジアンフィットの足型を採用したのだろうと思われるほど、多くの日本人にフィットしやすい幅広甲高路線にガラッと足型を変えてきたDMT。今までDMTのシューズに興味はあったがサイズの関係で手を(足を？）出せなかった人も試してみてはいかがだろうか。
絶妙な剛性のソールによってペダルを回しやすい かかとのホールド感は非常に高いヒールカップ 実際にクリートを装着し、使用してみた印象は、包み込むようなホールド感が心地良く、足と一体になってペダリングパワーを逃さないレーシングシューズ。新開発のソールはかかとのホールド感が向上しており、積極的に引き足を使うようなペダリングをしても、しっかりとかかとを保持している。浮き上がるような感覚はなく、高い反応性を持っており急なアタックにも遅れをとる事はないだろう。
ソールの剛性感は少し抑えめにされており、長距離のライドでも足へのダメージが少なく済む。がちがちの高剛性ではなく、少しタメがあってからペダルへと踏力を伝えるイメージで、リズムを合わせて踏めばより少ない力でペダルを回すことができる。AIRTECH CARBON ソールの最大の売りともなっている通気性は申し分なく、インプレをした春先の時期では寒いと感じるほど。
アッパーはペダリング中もしなやかに足を包み込んでくれ、快適な履き心地を維持してくれる。かなり薄い素材なので、引き足時には少し頼りないのでは？などという心配も杞憂で、しなやかに甲にフィットすることで力を受ける面積が多いためか、全く不安なく力を受け止めてくれる。
しなやかに足の形に追従し形を変えるアッパー ダンシングのパワーもしっかりと受け止めてくれる 少し気になったのが、あまりにも薄いアッパー素材のため、クロージャーをかなり強めに締め付けた時に限り、クロージャー取り付け部が少し当たってしまい、すこし違和感を覚えるということ。ただ、実際にペダリングしている最中にはわからないぐらいの違和感であるため、フィッティング時に気になっても実使用では問題ないと思っても構わないだろう。
全体としてまとめると、高いフィット感を持つアッパーと、足を回しやすい適度な剛性と高いかかとのホールド感を持つソールを持つVEGAは、足と一体になったような感覚の、レディメイドなのにオーダーメイド感覚の高品質なサイクリングシューズだ。タンのズレ防止ベルクロに見られるような心配りは「おもてなし」の心に通じるものもあるし、足型も甲高、幅広の日本人にぴったりの型に進化しており、日本市場でも高い人気が出そうな予感だ。
DMT VEGA
カラー：ブラック
サイズ：39/40/40.5/41/41.5/42/42.5/43/43.5/44/44.5/45
ホール：ロード用3ホールソール
価 格：45,360円（税込）
text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANAO
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