2009/07/25(土) - 21:19
ツールの関心はすでにモンバントゥーへ。しかしだからといって"つなぎステージ"とはならない。もはや数少ないチャンスに掛ける逃げ屋とスプリンターたちの駆け引きが衝突しあった。フミの7位に驚愕。そしてランスは4秒をしっかり獲得し、レース勘がずば抜けていることを証明した。
誰もが逃げたいステージ
沿道で盛り上がる観客たち photo:Makoto Ayanoピレネーとアルプス山岳を越えたツールも残り3ステージ。例年ならパリへ向けて北上するはずが、第19ステージにしてなお南下する。20ステージのモンヴァントゥーへ向かうためだ。
最終個人タイムトライアルと最終決戦モンバントゥーに挟まれた、アップダウンのあるコースのつなぎステージ。主役は総合争いから逃げ屋やスプリンターたちに移る。
太陽が照りつけ、気温は上昇した photo:Makoto Ayanoスタートすぐに4級の丘があり、すぐ軽いアップダウンの続く丘陵地帯に突入するとあって0km地点からアタック合戦が勃発するのは火を見るより明らか。
ブルゴワン・ジャリュのスタート地点になった市街では、スタート直前までアップに励む選手たちの姿がちらほら見受けられる。確認しただけでジュリアン・ディーン(ガーミン・スリップストリーム)にスタフ・クレメント(ラボバンク)、レオナルド・ドゥケ(コフィディス)...。コースを走ったり、裏道でスプリントを掛けたり。こっそり練習しているように見えてしまうので滑稽だ。チームバス周辺にはメディアやファンも多いからローラー台を使うのも難しいのだろうが。
誰もが逃げたい、どう見ても逃げやすいコースとなれば、誰もが逃げようとする。結果逃げはかえって決まりにくくなる。
フースホフトorフレイレ?
マイヨヴェールを着るトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ) photo:Makoto Ayano「また大逃げを演じて中間ポイントを狙う?」スタートを待つフースホフトに訊いた。「狙えるものは狙うけれど、今日は誰もが逃げを狙っているので中間スプリントは展開次第になる。今日が先頭でのゴールスプリントになるか分からない。今日もチャンスだが、シャンゼリゼで勝つことを考えている。調子がとてもいいのでカヴェンディッシュを倒すことは可能だと思う。30ポイントは安心していられる差だけれど、ミスをしないように走りたい」。
ゴール手前に2級山岳エスクリネ峠があることで、カヴェンディッシュがメイン集団では上れないと判断する人も多い。上れるスプリンターとしてオスカル・フレイレ(ラボバンク)に期待が集まる。
フレイレは言う「今日は皆が逃げたがるから難しいステージになる。カヴエンディッシュが最後の山を登れるかどうかは分からない。彼に聞いてよ。相手はカヴェンディッシュだけじゃないよ」。
相手はカヴだけじゃない、は最近のフレイレの口癖になっている。
フミは第3の地元をスタート
スタート前に意気込みを聞かれる別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Makoto Ayanoマルセイユから転居し、今はスタート地点に近い町に住んでいるフミ。「ちょっと疲れがでてきている気がするけれど、シャンゼリゼには両親も来ることになったので元気な身体で完走したい」と話す。
スタート台でアナウンサーのマンジャスさんがフミとユキヤのツール史上初の日本人初(ダブル)完走が実現しそうだということを紹介したものだから、今日も海外メディアが取材に頻繁に訪れる。フミもユキヤも語る目標は「完走よりも何か結果を出すこと」だ。今日も頼もしい。フミはニコニコ笑顔でリラックス、ユキヤは逃げを狙って集中した顔つきだ。
7人のステージ優勝経験者が逃げる
メイン集団からアタックするシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)ら photo:Makoto Ayano誰もが逃げたい。だから逃げが決まらない。ツールのステージを狙える数少ないチャンスに殺到する選手たち。もはや総合をあきらめたエヴァンスやキルシェンら大物たちさえ逃げたがった。最初の1時間、2時間、3時間とスピードが落ちないまま、ついに3時間経過後の平均時速は48.7km/hに。気温も35度オーバーへ。
そして決まった20人の逃げ。そのなかには、エヴァンス、キルシェン、ポポヴィッチ、ミラー、シャバネル、LLサンチェス、ベンナーティ....じつに7人のツールのステージ優勝経験者が含まれた。
ラボバンクとミルラムが集団の前に出て追走。フレイレとチオレックのチャンスに掛ける。しかしカヴは難なく山を越えた。コロンビアの列車は、まず山でカヴを助けるべく牽引した。そして世界チャンプのバッランと、ツールのベテラン、ルフェーブルのコンビの逃げも許しはしなかった。
山を越えたカヴ「チーム全員が犠牲になってくれた」
ステージ5勝目を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC) photo:Cor Vosカヴは言う「もし山で助けてくれたら、最後は素敵なことが待っている。そうチームメイトには約束したんだ。彼らの仕事は素晴らしかった。彼らはまったくエゴが無い」
序盤の逃げに乗るのはキルシェンの仕事。最後の山岳は残ったチームコロンビアのメンバー総出でカヴを助けた。
「ラボバンクは僕が山を越えるだろうとは思ってなかったんだろう。フレイレで勝つつもりの彼らは僕を振り落とすために全力で闘ってきた。マキシム(モンフォール)、ジョージ(ヒンカピー)、トニー(マルティン)ら僕のために全力を尽くして助けてくれたんだ。明日モンヴァントゥーが控えているのに、タンクが空になるまで働いてくれた。まったくすごいことだよ。彼らは僕のためにすべてを犠牲にしてくれた」。
すべてをカヴェンディッシュのスプリントにかけたチームコロンビアの狙い通りの結果になった。
カヴはこれでバリー・ホーバンのもつイギリス人によるツールでのステージ優勝数記録の8を9に更新したことになる。ホーバンの記録は1967年から1975年の8年間に掛けて。当時ホーバンは53歳で8勝を残したが、カヴは24歳ですでに9勝目を挙げた。たった2度目のツール参戦にして。
フミ渾身のスプリント
レース後にインタビューを受ける別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Makoto Ayanoゆるい上り坂になっているオベナのゴール。カヴェンディッシュが「今までのキャリアの中でもベストなスプリントのひとつ」と表現した完璧なスプリントを演じる後ろで、スキル・シマノのジャージがひとり先頭に続いていた。アームストロングとサイド・バイ・サイドでスプリントに臨むフミ。ゴールラインを割った瞬間、7位であることはフミ自身も確認したという。第3ステージの8位に続く快挙! トップスピードで勝負するスプリントではなく、地脚が必要な上りスプリントだった。
「自分の力で前に出てポジションを取るのは当たり前。触っても押してもない。負け惜しみで文句言ってるんじゃなくて...」フミの第一声だ。7位でなお満足しない。勝てる可能性にかけてスプリント勝負に挑んだのだ。
「カヴェンディッシュにフースホフト、フレイレら前に並んだ世界のトップスプリンターたちの前には出ることは出来なかったけれど、その後ろでできるだけいいポジションにいるようにした。最後の最後で見せる走りが出来てよかった」。
トップ争いこそスプリンターの闘いになったが、ステージ上位は総合力のあるタフな選手が名前を連ねるスプリントになった。このステージ7位は単なる集団ゴールの順位としてだけでなく、素直に順位で語られるべき、価値が大きいステージ順位だ。
ひとり正しい位置にいたアームストロング
人をかき分けてスタート地点に向かうランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ) photo:Cor Vosゴールスプリントで勝負したカヴェンディッシュらスプリンター、そしてフミとアームストロングを含む前の12人と、13位以下の選手の間にわずかに中切れが発生した。ついた差は4秒。総合上位争いを繰り広げる選手たちのなかではアームストロングだけが前に入り、貴重な4秒をライバルたちに対して取り返した。このあたりの勘所はさすが。集団分裂の危険を察知するとすばやく前に上がるのはアームストロングが「プロトンいち頭が良い」「判断力が正確」といわれる所以だ。
アンディ&フランク・シュレク、ウィギンスらは中切れの後方。アームストロングに取り返された4秒は、僅差の闘いになることが予想されるモンバントゥーを前に手痛いミスだ。ゴールスプリントの混戦は危険と隣り合わせ。リスクを負うか、安全をとるか。アームストロングは少しリスクを負ったが、貴重な4秒を脚で稼いだ。
コンタドールの余裕
コンタドールはリスクを避けた。「混乱した一日だったよ。序盤はたくさんの選手が逃げようとしてスピードが速かったし、山ではいくつかのチームがカヴェンディッシュを振り落とそうとしてスピードを上げていた。最後は落車が心配だった。リスクを負いたくなかったんだ。ツールは毎日失う危険がある。4秒失ってももぼくは大丈夫。マイヨジョーヌはちゃんと僕のもとにある。最後はゆっくり行ったよ。このツールは究極的に難しい。いつものレースの倍は神経を使っているよ」
モンバントゥー決戦へ「風が難しくする」
スタート前に笑顔を見せるビャルヌ・リース監督 photo:Makoto Ayanoコンタドールの持つ2位アンディ・シュレクとの総合タイム差は4分11秒。大崩れしない限り十分なマージンだろう。
コンタドールは言う「明日、モンバントゥーでシュレク兄弟がアタックしてくることは分かっている。厳しい上りだけど、僕は好き。でもアタックできるかどうかは分からない。最後の6kmはいつも強い風に吹かれて、ひとりでゴールに向かうことは難しいんだ。
フランクが必ずアタックしてくるだろうね。彼にとっては表彰台に向けて最後のチャンスだから。僕らと彼らの戦争みたいになるだろう。でも表彰台の順位を変えるのは難しいと思うよ。僕は必ず苦しむだろうね。長いステージで、難しいレースになると思う。準備は出来ているよ。このレースを楽しめるのはパリに着いてからだけだろうね」。
モンヴァントゥーのランスの走りに注目
シャンゼリゼの表彰台で、コンタドールの両脇に上るのはいったい誰だ? カギを握るのはアームストロングの上りの出来次第だろう。コンタドールを最後まで助けられるのはアームストロングとクレーデン。アームストロングは今日4秒縮めたことで、ライバルたちとのタイム差を見ながらの戦いになる。
アームストロングがもっているアドバンテージを改めれば、アンディ・シュレクに対して1分10秒。ウィギンスに対して15秒。クレーデンに対して17秒。フランク・シュレクに対して23秒。ここのところ不安定なアームストロングだけに、どのようにでも変動する可能性があるタイム差だ。
アームストロングはモンバントゥーをかつて2度経験している。リシャール・ヴィランク(当時ドモ・ファルムフリッツ)の独走勝利を許した2002年ツールでは、後続集団からアタックを掛けて力を誇示する2位。2000年ツールはパンターニとテールツゥー・ノーズの闘いにもちこみ、パンターニにゴールを譲った。いずれもマイヨジョーヌを着ての2位だった。つまりアームストロングはモンヴァントゥーで力を誇示しながらも、勝ったことが無い。そして7年越しの勝負へ。コンタドールの総合優勝が硬い今、表彰台を左右するのはアームストロングがどう走れるかだ。
希望を捨てないウィッゴ
総合4位につけるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン) photo:Makoto Ayanoアームストロングと15秒差にいる総合4位のウィギンス。咲くステージのタイムトライアルでタイム差を返したことには満足。しかしモンバントゥーでアームストロングとの差を逆転できるかという質問には困った様子だ。スタート前の朝のコメントから。
「正直、ランスが分からない。ロムとコロンビエール峠のステージはとても強かった。だからそれが今のランスなんだろう。もしランスがあのままだったら、僕にとっては難しいレースになる。でも希望は捨てていない。楽しみにしていて欲しい。
コンタドールはすべてのステージを通じてちょっと別の次元にいる。モンバントゥーで表彰台めがけてアタックしてくるのはフランクだね。そしてニーバリもだんだん強くなっている。僕が今4位だからといって、彼らから安全圏にいるとはまったく思っていない。もしまったくダメなら、僕は7位だろう。それが最悪のシナリオだね」。
誰もが逃げたいステージ
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ブルゴワン・ジャリュのスタート地点になった市街では、スタート直前までアップに励む選手たちの姿がちらほら見受けられる。確認しただけでジュリアン・ディーン(ガーミン・スリップストリーム)にスタフ・クレメント(ラボバンク)、レオナルド・ドゥケ(コフィディス)...。コースを走ったり、裏道でスプリントを掛けたり。こっそり練習しているように見えてしまうので滑稽だ。チームバス周辺にはメディアやファンも多いからローラー台を使うのも難しいのだろうが。
誰もが逃げたい、どう見ても逃げやすいコースとなれば、誰もが逃げようとする。結果逃げはかえって決まりにくくなる。
フースホフトorフレイレ?
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ゴール手前に2級山岳エスクリネ峠があることで、カヴェンディッシュがメイン集団では上れないと判断する人も多い。上れるスプリンターとしてオスカル・フレイレ(ラボバンク)に期待が集まる。
フレイレは言う「今日は皆が逃げたがるから難しいステージになる。カヴエンディッシュが最後の山を登れるかどうかは分からない。彼に聞いてよ。相手はカヴェンディッシュだけじゃないよ」。
相手はカヴだけじゃない、は最近のフレイレの口癖になっている。
フミは第3の地元をスタート
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7人のステージ優勝経験者が逃げる
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ラボバンクとミルラムが集団の前に出て追走。フレイレとチオレックのチャンスに掛ける。しかしカヴは難なく山を越えた。コロンビアの列車は、まず山でカヴを助けるべく牽引した。そして世界チャンプのバッランと、ツールのベテラン、ルフェーブルのコンビの逃げも許しはしなかった。
山を越えたカヴ「チーム全員が犠牲になってくれた」
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すべてをカヴェンディッシュのスプリントにかけたチームコロンビアの狙い通りの結果になった。
カヴはこれでバリー・ホーバンのもつイギリス人によるツールでのステージ優勝数記録の8を9に更新したことになる。ホーバンの記録は1967年から1975年の8年間に掛けて。当時ホーバンは53歳で8勝を残したが、カヴは24歳ですでに9勝目を挙げた。たった2度目のツール参戦にして。
フミ渾身のスプリント
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トップ争いこそスプリンターの闘いになったが、ステージ上位は総合力のあるタフな選手が名前を連ねるスプリントになった。このステージ7位は単なる集団ゴールの順位としてだけでなく、素直に順位で語られるべき、価値が大きいステージ順位だ。
ひとり正しい位置にいたアームストロング
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コンタドールの余裕
コンタドールはリスクを避けた。「混乱した一日だったよ。序盤はたくさんの選手が逃げようとしてスピードが速かったし、山ではいくつかのチームがカヴェンディッシュを振り落とそうとしてスピードを上げていた。最後は落車が心配だった。リスクを負いたくなかったんだ。ツールは毎日失う危険がある。4秒失ってももぼくは大丈夫。マイヨジョーヌはちゃんと僕のもとにある。最後はゆっくり行ったよ。このツールは究極的に難しい。いつものレースの倍は神経を使っているよ」
モンバントゥー決戦へ「風が難しくする」
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コンタドールは言う「明日、モンバントゥーでシュレク兄弟がアタックしてくることは分かっている。厳しい上りだけど、僕は好き。でもアタックできるかどうかは分からない。最後の6kmはいつも強い風に吹かれて、ひとりでゴールに向かうことは難しいんだ。
フランクが必ずアタックしてくるだろうね。彼にとっては表彰台に向けて最後のチャンスだから。僕らと彼らの戦争みたいになるだろう。でも表彰台の順位を変えるのは難しいと思うよ。僕は必ず苦しむだろうね。長いステージで、難しいレースになると思う。準備は出来ているよ。このレースを楽しめるのはパリに着いてからだけだろうね」。
モンヴァントゥーのランスの走りに注目
シャンゼリゼの表彰台で、コンタドールの両脇に上るのはいったい誰だ? カギを握るのはアームストロングの上りの出来次第だろう。コンタドールを最後まで助けられるのはアームストロングとクレーデン。アームストロングは今日4秒縮めたことで、ライバルたちとのタイム差を見ながらの戦いになる。
アームストロングがもっているアドバンテージを改めれば、アンディ・シュレクに対して1分10秒。ウィギンスに対して15秒。クレーデンに対して17秒。フランク・シュレクに対して23秒。ここのところ不安定なアームストロングだけに、どのようにでも変動する可能性があるタイム差だ。
アームストロングはモンバントゥーをかつて2度経験している。リシャール・ヴィランク(当時ドモ・ファルムフリッツ)の独走勝利を許した2002年ツールでは、後続集団からアタックを掛けて力を誇示する2位。2000年ツールはパンターニとテールツゥー・ノーズの闘いにもちこみ、パンターニにゴールを譲った。いずれもマイヨジョーヌを着ての2位だった。つまりアームストロングはモンヴァントゥーで力を誇示しながらも、勝ったことが無い。そして7年越しの勝負へ。コンタドールの総合優勝が硬い今、表彰台を左右するのはアームストロングがどう走れるかだ。
希望を捨てないウィッゴ
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コンタドールはすべてのステージを通じてちょっと別の次元にいる。モンバントゥーで表彰台めがけてアタックしてくるのはフランクだね。そしてニーバリもだんだん強くなっている。僕が今4位だからといって、彼らから安全圏にいるとはまったく思っていない。もしまったくダメなら、僕は7位だろう。それが最悪のシナリオだね」。
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