3年連続で終着地を迎え入れるトレンガヌ州にツール・ド・ランカウイが到達した。第8ステージはマレー半島の東海岸を一路北上。落車が発生し、選手が「危険すぎる」と声を揃えるゴールスプリントでテオ・ボス(オランダ、ベルキン)が再び勝利した。



カラフルな服を着た学生達の声援を受けるカラフルな服を着た学生達の声援を受ける photo:Kei Tsuji
スタート最前列に並ぶリーダージャージのミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)スタート最前列に並ぶリーダージャージのミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) photo:Kei Tsuji反応性を重視してボーラウルトラ50をチョイスした西谷泰治(愛三工業レーシング)反応性を重視してボーラウルトラ50をチョイスした西谷泰治(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji


歓声を受けながら走るプロトン歓声を受けながら走るプロトン photo:Kei Tsujiツール・ド・ランカウイ第8ステージはクアンタンからマランまでの202.6km。海岸線と並行してひたすら直線的に北上する。単調と言えば単調だが、どのチームも後半の海風に警戒した。

逃げるチョンフアット・ゴー(シンガポール、OCBCシンガポール)やモルガン・ラモワソン(フランス、ユーロップカー)ら4名逃げるチョンフアット・ゴー(シンガポール、OCBCシンガポール)やモルガン・ラモワソン(フランス、ユーロップカー)ら4名 photo:Kei Tsujiクアンタンのスタート地点は意外にも気温は低め。しかしレースが始まってすぐに熱い太陽が姿を見せた。空は雨を降らせるそぶりさえ見せず、大地はからからに乾ききっている。この日もコース周辺で山火事が発生し、白い煙が平野のあちこちで上がっていた。

バナナと愛三工業レーシングの選手たちバナナと愛三工業レーシングの選手たち photo:Kei Tsujiこの日も沿道には多くの学生たちが詰めかけた。そこで振られるのはカラフルなマレーシア国旗と、黒地に白の星と月が描かれたトレンガヌ州の州旗。大会スポンサーの一つであり、終着地として定着したトレンガヌ州にレースは入った。人口90万人足らず(13州の中で10番目)の州だが、これまで通過してきた州の中で一番州意識が強いと感じさせる。

そんなトレンガヌ州の名前を冠したトレンガヌサイクリングのエース、アヌアル・マナン(マレーシア)がレース序盤の逃げに乗った。

例年よりもふっくらとしていて絞れてない感のあるマナンは、モルガン・ラモワソン(フランス、ユーロップカー)とともにエスケープを試みる。ここにホゥイジ・ジャン(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム)、チョンフアット・ゴー(シンガポール、OCBCシンガポール)、エルチン・アサドフ(アゼルバイジャン、シナジーバクサイクリング)が合流した。

しかし地元での勝利を狙うトレンガヌサイクリングは、エーススプリンターのマナンに逃げを離れるよう指示。こうしてラモワソン、ジャン、ゴー、アサドフという4名の先行が決まった。

前日と比べて総合に影響の少ない逃げ。リーダージャージ擁するタブリスペトロケミカルは落ち着いてメイン集団を率いて後半へ。タイム差は4分に抑え込まれた。



チームメイトに率いられながら平坦路を行くミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)チームメイトに率いられながら平坦路を行くミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) photo:Kei Tsuji交通規制によりストップしたバイクのドライバーたちがレースを見守る交通規制によりストップしたバイクのドライバーたちがレースを見守る photo:Kei Tsuji
巨大な製油所の前を通過するプロトン巨大な製油所の前を通過するプロトン photo:Kei Tsuji
終盤に差し掛かってなお固まって走る平塚吉光、福田真平、西谷泰治(愛三工業レーシング)終盤に差し掛かってなお固まって走る平塚吉光、福田真平、西谷泰治(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsujiタブリスペトロケミカルにベルキンが協力を開始タブリスペトロケミカルにベルキンが協力を開始 photo:Kei Tsuji


青い川を渡るプロトン青い川を渡るプロトン photo:Kei Tsuji前日の第7ステージではボーラウルトラ80を投入した西谷泰治(愛三工業レーシング)のバイクには、この日の朝、ボーラウルトラ50が装着されていた。西谷曰く、高速域でのスピードの伸びは80が勝るが、コーナーの立ち上がりの反応性を重視して50をチョイス。この日も西谷の狙いはゴールスプリントだ。

コロンビアも集団コントロールに合流コロンビアも集団コントロールに合流 photo:Kei Tsuji海風が横から吹き付ける直線区間に入っても極端なペースアップは行なわれず、ベルキンがジャック・ボブリッジ(オーストラリア)を集団先頭交代に送り込んでスプリント狙いの意志をアピール。コロンビアやオリカ・グリーンエッジもこれに加わり、逃げは残り11kmで吸収される。

単独で逃げ続けるモルガン・ラモワソン(フランス、ユーロップカー)単独で逃げ続けるモルガン・ラモワソン(フランス、ユーロップカー) photo:Kei Tsujiベルキンはアタックを仕掛けることでライバルチームにプレッシャーを与えたが、スピードが上がりきった集団から完全に抜け出す選手は現れない。

先頭でスプリントに持ち込むテオ・ボス(オランダ、ベルキン)先頭でスプリントに持ち込むテオ・ボス(オランダ、ベルキン) photo:Kei Tsuji残り2kmを切り、大集団がマランの街に差し掛かったタイミングで落車が発生。多くの選手がここで足止めを食らい、リーダージャージを着るミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)も巻き込まれてしまう(残り3km以内の落車のため救済措置により集団同タイム)。

スプリント3勝目を飾ったテオ・ボス(オランダ、ベルキン)スプリント3勝目を飾ったテオ・ボス(オランダ、ベルキン) photo:Kei Tsuji集団はばらけながらゴールスプリントに向かい、グレーム・ブラウン(オーストラリア)に発射されたテオ・ボス(オランダ、ベルキン)が先頭でスプリント。アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)らの懸命の追い上げは届かず、ボスのスプリントが最後まで伸びた。

2日連続で軽くガッツポーズしたボスは「最後の左コーナー手前で落車が発生。自分も巻き込まれそうになったけど、何とか転ばずに済んだ。グレーム・ブラウンに連れられてポジションを戻し、スプリントに持ち込んだんだ」と、危険なスプリントを振り返る。また、「チームの目標であったステージ3勝に届いて嬉しいよ」と、ハットトリックを喜んだ。

「フィニッシュのレイアウトがちょっと危険すぎる。200kmにわたって直線路が続いて、残り300mでコーナーがあるなんて」と口調を荒げたのは、スプリント2位のグアルディーニ。ここ数日、フィニッシュ手前にコーナーが連続する危険なコースレイアウトが続いている。厳密に言うと、この日の最終ストレートはUCIルールに沿わない下り基調だった。

西谷泰治は落車を避けたものの、単独でポジションを上げきることが出来ずに18位。集団後方でフィニッシュになだれ込む形となった。「今日もこんな(コーナーが連続する)コースだったので、隙があればロングスパートを仕掛けようと思ったんですが、そんな次元のスピードじゃなかった。スピードが上がりきっていて、どのチームも前に出れていなかった。そのまま最終コーナーに入って、もう前に出れませんでした」。

西谷は第2ステージでマークした9位という成績を更新出来ずにいる。「他のチームは残り500mの時点でまだ2〜3名の選手を残しているので余裕がある。そこに割って入ることは出来るのですが、(それまでに力を使っているため)そこから勝負となると厳しい。力のあるチームが揃っているので隙が生まれない。普通のスプリントではなだれ込んで終わるだけになるので、スピードが出きった状態からロングスパートを仕掛けたい」。ツール・ド・ランカウイは残り2ステージ。冷静に、自分の力でどこまで出来るかを研究し、残るチャンスを狙っている。

レースの模様はフォトギャラリーにて!



18番手でフィニッシュラインを切る西谷泰治(愛三工業レーシング)18番手でフィニッシュラインを切る西谷泰治(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji3勝目を飾ったテオ・ボス(オランダ、ベルキン)らが表彰台に上がる3勝目を飾ったテオ・ボス(オランダ、ベルキン)らが表彰台に上がる photo:Kei Tsuji



ツール・ド・ランカウイ2014第8ステージ結果
1位 テオ・ボス(オランダ、ベルキン)                    5h01'58"
2位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
3位 ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、アンドローニ・ベネズエラ)
4位 ミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ)
5位 ロベルト・フェルスター(ドイツ、ユナイテッドヘルスケア)
6位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)
7位 ダニエル・クレンメ(ドイツ、シナジーバクサイクリング)
8位 ヤニック・マルティネス(フランス、ユーロップカー)
9位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、ネーリソットリ・イエローフルオ)
10位 オマール・ベルタッツォ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ)
18位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシング)
78位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング)                   +1'54"
87位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)                   +00"(集団同タイム)

個人総合成績
1位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)  30h19'00"
2位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、MTNキュベカ)               +08"
3位 イサーク・ボリバル(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)           +11"
4位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)          +20"
5位 ペトル・イグナテンコ(ロシア、カチューシャ)                 +36"
6位 ジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)        +40"
7位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ベルキン)               +52"
8位 ジャンフランコ・ジリオーリ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ)      +1'09"
9位 ガファリ・ヴァヒド(イラン、タブリスペトロケミカル)            +1'27"
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ)            +1'41"

アジアンライダー賞
1位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)  30h19'00"
2位 ガファリ・ヴァヒド(イラン、タブリスペトロケミカル)            +1'27"
3位 アミール・コラドザグ(イラン、タブリスペトロケミカル)           +3'03"

スプリント賞
1位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)       71pts
2位 ミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ)             69pts
3位 テオ・ボス(オランダ、ベルキン)                     62pts

山岳賞
1位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング)       34pts
2位 イサーク・ボリバル(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)          31pts
3位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)    25pts

チーム総合成績
1位 MTNキュベカ                              90h59'47"
2位 タブリスペトロケミカル                           +1'38"
3位 アンドローニ・ベネズエラ                          +8'52"

text&photo:Kei Tsuji in Kuala Terengganu, Malaysia

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