2014/03/01(土) - 01:50
またもや落車が発生。車両減速用のバンプやコーナーが連続するゴール前で落車が多発し、愛三工業レーシングの盛一大や福田真平をはじめ、多くの選手が地面に投げ出された。「落車した選手のことを思うと、勝利を祝う気分じゃなかった」と言うテオ・ボス(オランダ、ベルキン)がガッツポーズすることなく先頭でフィニッシュしている。
初日の第1ステージが午前中に完結したのに対し、2日目の第2ステージはスタートが午後3時というかなり遅めのスケジュール。これは金曜日がイスラム教の礼拝の日にあたるため。ちなみに翌週の金曜日(第9ステージ)のスタートも午後3時だ。
ランカウイ島からマレー半島に移動したことで、大会関係車両の数が一気に増えた。ランカウイ島には上陸しなかった立派なキャラバン隊の車列も登場。リゾートアイランドを抜け出して、ツール・ド・ランカウイが本格的に始まった感がある。
タイ国境に近いスンガイプタニから一路内陸部を南下する第2ステージ。ツール・ド・ランカウイのコースプロフィールの特徴として、かなり大げさにアップダウンが描かれている。タイピンに至る132.5kmの道のりも一見勾配のあるアップダウンが連続だが、よく見ると71km地点のKOM(4級)は標高61mしかない。山ではなく、いくつもの丘を越えていくイメージだ。
第1ステージに落車し、クアラルンプールの病院に搬送された伊藤雅和を除く5名でスタート地点にやってきた愛三工業レーシング。ゴール前で落車した綾部勇成は「昨日は歩けないほど股関節が痛みましたが、今日はだいぶマシになりました」と話しながらスタートの準備を整える。
どのチームの選手も身支度を整えると、すぐに陰のある場所へと逃げ込んでいく。マレー半島本土は、海風が吹くランカウイ島よりもずっと暑く感じる。照りつける太陽によって気温は40度近くまで上がった。
レースは開始後すぐにUCIコンチネンタルチームやナショナルチーム所属の5名が飛び出し、メイン集団がこれを容認する展開となる。ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)、エルチン・アサドフ(アゼルバイジャン、シナジーバクサイクリング)、トゥラル・イスガンダロフ(アゼルバイジャン)、ジュンロン・ホー(シンガポール、OCBCシンガポール)、ホゥイジ・ジャン(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム)の5名は、最大5分半のリードで南に向かった。
メイン集団はコロンビアがコントロール。ドゥベル・キンテロ(コロンビア)を安全な位置で走らせるとともに、逃げグループとのタイム差を慎重に詰めていく。スプリンターチームのサポートを受けて、メイン集団は残り10kmで逃げを捉えた。
「穏やかで、美しいタイピン・レイクガーデンズが選手たちのフィニッシュを迎えます」。レースブックの第2ステージの紹介にはそう記されている。マレーシア政府がバックアップしている大会だけに、ツール・ド・ランカウイは観光地アピールを欠かさない。
第2ステージは、タイピン随一の観光地であるレイクガーデンズ(錫の採掘場跡地を利用した緑地公園)をグルッと回ってフィニッシュする。しかし、レイクガーデンズの周辺には自動車の減速用に作られたバンプやタイトコーナーが点在。残り2kmを切ったところで、位置取りを繰り広げるスプリンターたちが絡み合う大落車が発生した。
20名ほどが重なりあうように倒れ込み、ここに愛三工業レーシングのエーススプリンター福田真平が巻き込まれてしまう。更に残り400mの鋭角コーナーで落車が発生。その被害者の中には盛一大(愛三工業レーシング)の姿があった。
二度の落車を切り抜けて先頭でスプリントに持ち込んだのは、開幕前から注目を集めていたベルキンプロサイクリングだった。リードアウト役のグレーム・ブラウン(オーストラリア)の後ろから、テオ・ボス(オランダ)が腰を上げることなく前に出る。そのままボスとブラウンがワンツー体制でフィニッシュした。
「スタート前にコースマップで危険なレイアウトを確認していた。だから危険を避けるために出来るだけ早めに主導権を握ることにしたんだ。落車した選手のことを思うと、勝利を祝う気分じゃなかった」。今シーズン初勝利を飾りながらも、低いトーンの声で記者会見に臨むボス。ステージ2位のブラウンは両手を広げたが、ボスは喜びを表現することなくフィニッシュラインを切った。
愛三工業レーシングの最高位は西谷泰治の9位。「最初の大きな落車に(福田)真平が巻き込まれて、その時点で盛と2人になりました。そのままゴールスプリントに向かったところで、今度は盛がコーナーで落車した」と西谷は振り返る。前年度のチーム最高位に並ぶステージ9位という成績を残したものの、それを祝うような雰囲気は微塵もない。
肘や腰、背中から血を流してゴールした福田をチームメイトが迎え、協力してペットボトルの水で鮮血を洗い流す。腰の下部に深い擦過傷を負った福田。しかしそれ以上に深刻だったのはリードアウト役の盛で、自力で再スタート出来ず、救急車で病院に搬送された。骨折は免れたものの、盛は肘に強い打撲を負ったとの情報だ。
大会2日目を終えて、愛三工業レーシングは伊藤と盛を失い、綾部と福田が怪我を負った。昨年ステージ優勝を飾っているアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)やフランチェスコ・キッキ(イタリア、ネーリソットリ・イエローフルオ)も落車で負傷。愛三工業レーシングに限らず、どのチームも負傷者が続出しているため雰囲気は重い。
しかし、ツール・ド・ランカウイはまだ始まったばかり。翌日は首都クアラルンプールに至る166.5kmの平坦ステージ。レースは立ち止まることなく進んでいく。
その他の写真はフォトギャラリーにて!
ツール・ド・ランカウイ2014第2ステージ結果
1位 テオ・ボス(オランダ、ベルキン) 3h11'11"
2位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ベルキン)
3位 マルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ)
4位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)
5位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
6位 ディーントーマス・ロジャース(ニュージーランド、OCBCシンガポール)
7位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)
8位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング)
9位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシングチーム)
10位 パヴェル・コチェトコフ(ロシア、カチューシャ)
94位 綾部勇成(日本、愛三工業レーシング) +1'29"
98位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング) +2'16"
113位 福田真平(日本、愛三工業レーシング) +00"
DNF 盛一大(日本、愛三工業レーシング)
個人総合成績
1位 ドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア) 5h32'32"
2位 ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア) +22"
3位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング) +24"
4位 チョンフアット・ゴー(シンガポール、OCBCシンガポール) +33"
5位 テオ・ボス(オランダ、ベルキン) +1'27"
6位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) +1'28"
7位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ベルキン) +1'31"
8位 エルチン・アサドフ(アゼルバイジャン、シナジーバクサイクリング)
9位 ホゥイジ・ジャン(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム) +1'35"
10位 ジュンロン・ホー(シンガポール、OCBCシンガポール) +1'36"
アジアンライダー賞
1位 チョンフアット・ゴー(シンガポール、OCBCシンガポール) 5h33'05"
2位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) +55"
3位 ホゥイジ・ジャン(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム) +1'02"
スプリント賞
1位 ドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア) 30pts
2位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング) 23pts
3位 ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア) 20pts
山岳賞
1位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング) 20pts
2位 ドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア) 8pts
3位 ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア) 5pts
チーム総合成績
1位 コロンビア 16h41'09"
2位 シナジーバクサイクリング +11"
3位 ユナイテッドヘルスケア
text&photo:Kei Tsuji in Ipoh, Malaysia
初日の第1ステージが午前中に完結したのに対し、2日目の第2ステージはスタートが午後3時というかなり遅めのスケジュール。これは金曜日がイスラム教の礼拝の日にあたるため。ちなみに翌週の金曜日(第9ステージ)のスタートも午後3時だ。
ランカウイ島からマレー半島に移動したことで、大会関係車両の数が一気に増えた。ランカウイ島には上陸しなかった立派なキャラバン隊の車列も登場。リゾートアイランドを抜け出して、ツール・ド・ランカウイが本格的に始まった感がある。
タイ国境に近いスンガイプタニから一路内陸部を南下する第2ステージ。ツール・ド・ランカウイのコースプロフィールの特徴として、かなり大げさにアップダウンが描かれている。タイピンに至る132.5kmの道のりも一見勾配のあるアップダウンが連続だが、よく見ると71km地点のKOM(4級)は標高61mしかない。山ではなく、いくつもの丘を越えていくイメージだ。
第1ステージに落車し、クアラルンプールの病院に搬送された伊藤雅和を除く5名でスタート地点にやってきた愛三工業レーシング。ゴール前で落車した綾部勇成は「昨日は歩けないほど股関節が痛みましたが、今日はだいぶマシになりました」と話しながらスタートの準備を整える。
どのチームの選手も身支度を整えると、すぐに陰のある場所へと逃げ込んでいく。マレー半島本土は、海風が吹くランカウイ島よりもずっと暑く感じる。照りつける太陽によって気温は40度近くまで上がった。
レースは開始後すぐにUCIコンチネンタルチームやナショナルチーム所属の5名が飛び出し、メイン集団がこれを容認する展開となる。ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)、エルチン・アサドフ(アゼルバイジャン、シナジーバクサイクリング)、トゥラル・イスガンダロフ(アゼルバイジャン)、ジュンロン・ホー(シンガポール、OCBCシンガポール)、ホゥイジ・ジャン(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム)の5名は、最大5分半のリードで南に向かった。
メイン集団はコロンビアがコントロール。ドゥベル・キンテロ(コロンビア)を安全な位置で走らせるとともに、逃げグループとのタイム差を慎重に詰めていく。スプリンターチームのサポートを受けて、メイン集団は残り10kmで逃げを捉えた。
「穏やかで、美しいタイピン・レイクガーデンズが選手たちのフィニッシュを迎えます」。レースブックの第2ステージの紹介にはそう記されている。マレーシア政府がバックアップしている大会だけに、ツール・ド・ランカウイは観光地アピールを欠かさない。
第2ステージは、タイピン随一の観光地であるレイクガーデンズ(錫の採掘場跡地を利用した緑地公園)をグルッと回ってフィニッシュする。しかし、レイクガーデンズの周辺には自動車の減速用に作られたバンプやタイトコーナーが点在。残り2kmを切ったところで、位置取りを繰り広げるスプリンターたちが絡み合う大落車が発生した。
20名ほどが重なりあうように倒れ込み、ここに愛三工業レーシングのエーススプリンター福田真平が巻き込まれてしまう。更に残り400mの鋭角コーナーで落車が発生。その被害者の中には盛一大(愛三工業レーシング)の姿があった。
二度の落車を切り抜けて先頭でスプリントに持ち込んだのは、開幕前から注目を集めていたベルキンプロサイクリングだった。リードアウト役のグレーム・ブラウン(オーストラリア)の後ろから、テオ・ボス(オランダ)が腰を上げることなく前に出る。そのままボスとブラウンがワンツー体制でフィニッシュした。
「スタート前にコースマップで危険なレイアウトを確認していた。だから危険を避けるために出来るだけ早めに主導権を握ることにしたんだ。落車した選手のことを思うと、勝利を祝う気分じゃなかった」。今シーズン初勝利を飾りながらも、低いトーンの声で記者会見に臨むボス。ステージ2位のブラウンは両手を広げたが、ボスは喜びを表現することなくフィニッシュラインを切った。
愛三工業レーシングの最高位は西谷泰治の9位。「最初の大きな落車に(福田)真平が巻き込まれて、その時点で盛と2人になりました。そのままゴールスプリントに向かったところで、今度は盛がコーナーで落車した」と西谷は振り返る。前年度のチーム最高位に並ぶステージ9位という成績を残したものの、それを祝うような雰囲気は微塵もない。
肘や腰、背中から血を流してゴールした福田をチームメイトが迎え、協力してペットボトルの水で鮮血を洗い流す。腰の下部に深い擦過傷を負った福田。しかしそれ以上に深刻だったのはリードアウト役の盛で、自力で再スタート出来ず、救急車で病院に搬送された。骨折は免れたものの、盛は肘に強い打撲を負ったとの情報だ。
大会2日目を終えて、愛三工業レーシングは伊藤と盛を失い、綾部と福田が怪我を負った。昨年ステージ優勝を飾っているアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)やフランチェスコ・キッキ(イタリア、ネーリソットリ・イエローフルオ)も落車で負傷。愛三工業レーシングに限らず、どのチームも負傷者が続出しているため雰囲気は重い。
しかし、ツール・ド・ランカウイはまだ始まったばかり。翌日は首都クアラルンプールに至る166.5kmの平坦ステージ。レースは立ち止まることなく進んでいく。
その他の写真はフォトギャラリーにて!
ツール・ド・ランカウイ2014第2ステージ結果
1位 テオ・ボス(オランダ、ベルキン) 3h11'11"
2位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ベルキン)
3位 マルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ)
4位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)
5位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
6位 ディーントーマス・ロジャース(ニュージーランド、OCBCシンガポール)
7位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)
8位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング)
9位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシングチーム)
10位 パヴェル・コチェトコフ(ロシア、カチューシャ)
94位 綾部勇成(日本、愛三工業レーシング) +1'29"
98位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング) +2'16"
113位 福田真平(日本、愛三工業レーシング) +00"
DNF 盛一大(日本、愛三工業レーシング)
個人総合成績
1位 ドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア) 5h32'32"
2位 ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア) +22"
3位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング) +24"
4位 チョンフアット・ゴー(シンガポール、OCBCシンガポール) +33"
5位 テオ・ボス(オランダ、ベルキン) +1'27"
6位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) +1'28"
7位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ベルキン) +1'31"
8位 エルチン・アサドフ(アゼルバイジャン、シナジーバクサイクリング)
9位 ホゥイジ・ジャン(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム) +1'35"
10位 ジュンロン・ホー(シンガポール、OCBCシンガポール) +1'36"
アジアンライダー賞
1位 チョンフアット・ゴー(シンガポール、OCBCシンガポール) 5h33'05"
2位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) +55"
3位 ホゥイジ・ジャン(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム) +1'02"
スプリント賞
1位 ドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア) 30pts
2位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング) 23pts
3位 ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア) 20pts
山岳賞
1位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング) 20pts
2位 ドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア) 8pts
3位 ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア) 5pts
チーム総合成績
1位 コロンビア 16h41'09"
2位 シナジーバクサイクリング +11"
3位 ユナイテッドヘルスケア
text&photo:Kei Tsuji in Ipoh, Malaysia
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