平均勾配10.5%・登坂距離5.7kmのジャバル・アル・アクダル(通称グリーンマウンテン)を、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が独走で駆け上がった。登りで歴代最速タイムを記録したフルームが優勝し、総合リーダージャージを獲得。大会連覇に王手をかけた。



内陸に広がるジェットコースターのようなコース内陸に広がるジェットコースターのようなコース photo:A.S.O.


ツアー・オブ・オマーン2014第5ステージツアー・オブ・オマーン2014第5ステージ photo:A.S.O.ツアー・オブ・オマーン名物のグリーンマウンテン山頂フィニッシュ。標高1235mのフィニッシュラインに向かって、平均勾配10.5%・登坂距離5.7kmの登りが続く。序盤から10%オーバーが続き、ゴール手前2kmの平均勾配が13%を超える難易度の高い登りがオマーンの総合優勝者を導き出す(ステージ5位のヘーシンクのSTRAVAログはこちら)。

グリーンマウンテンに向かって内陸部を進むプロトングリーンマウンテンに向かって内陸部を進むプロトン photo:Tim de Waele総合敢闘賞狙いのプレベン・ファンヘッケ(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)ら4名が序盤から逃げたものの、この日もタイム差は抑え込まれる。総合リーダーチームのキャノンデールに加え、昨年グリーンマウンテンを制したホアキン・ロドリゲス(スペイン)擁するカチューシャが集団を牽引した。

残り2kmで飛び出したセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)残り2kmで飛び出したセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) photo:A.S.O.グリーンマウンテンが近づくとメイン集団ではチームスカイやオメガファーマ・クイックステップのペースアップが始まる。先頭4名は集団を振り切ってグリーンマウンテンに突入したが、1分のリードは小さすぎた。

ライバルたちを振り切るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ライバルたちを振り切るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele逃げグループを残り7km地点で吸収しながらハイペースを刻むメイン集団。リーダージャージのペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)に続いて、2012年のグリーンマウンテン覇者ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やシュレク兄弟(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)らが残り3km地点で脱落した。

先頭でフィニッシュラインに姿を現したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)先頭でフィニッシュラインに姿を現したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleチームスカイの牽引によって15名ほどに絞られた集団から、勾配が増した残り2km地点でセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)がアタック。急勾配の登りをダンシングで進むエナオモントーヤが吸収されると、カウンターで本命が飛び出す。フルームが急加速でライバルたちを置き去りにした。

楕円チェーンリングを高回転で回し続けたフルームは、追いすがるリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)とティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)を振り切って突き進む。結局フルームはヴァンガーデレンを22秒、ウランを33秒引き離してフィニッシュ。ステージ優勝と総合リーダージャージを同時に手にした。

「毎回同じフレーズだけど、今日もチームは目を見張る走りをしたよ」と、今シーズン初勝利をフルームは振り返る。「完璧なトレインを組んで登りでペースを作ることが出来た。ダニー(ペイト)とベン(スウィフト)が登り口までペースを作って、ダビ(ロペスガルシア)とミケル(ニエベ)が登りでペースアップ。その時点で集団は絞られて、残り2kmの勾配が増すポイントでセルジオ(エナオモントーヤ)が予定通りのアタック。必死で前を追うロバート(ヘーシンク)やティージェイ(ヴァンガーデレン)をマークしながら体力を温存し、残り1.5kmでセルジオが吸収されたタイミングでアタックしたんだ」。グリーンマウンテンの登坂タイムは歴代最速の18分33秒。それまでトップだったロドリゲスの19分14秒のタイムを大幅に塗り替えた。

平坦ステージを残して総合首位に立ったフルームは「本当にファンタスティックな気分だ。レースが始まるまで自分の調子について半信半疑だったものの、この勝利でコンディショニングが上手く行っていることを証明出来た。再びリーダージャージに袖を通すことが出来て嬉しい。シーズンを通して良い結果を残せそうだ」とコメントしている。

ステージ2位のヴァンガーデレンは「フルームがアタックしたとき、自分のペースを保つべきだと判断した。あのペースについていくと自滅していたと思う」と白旗を上げる。3位のウランは「正直言ってもう少し良い結果を残せると思っていた。でもシーズン初戦にしては悪くない結果だと思う。総合でも3位につけているので、良い感触をもってヨーロッパに帰りたい」とコメント。ツアー・オブ・オマーンは残すところ平坦基調の第6ステージのみ。フルームは大会連覇をほぼ確実なものにしている。

選手コメントは各チーム公式サイトより。



両手を広げてフィニッシュするクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)両手を広げてフィニッシュするクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:A.S.O.リーダージャージを獲得したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)リーダージャージを獲得したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele




ツアー・オブ・オマーン2014第5ステージ結果
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)               3h49'53"
2位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)          +22"
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)      +33"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)                +38"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)                  +47"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)       +51"
7位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ.fr)                  +56"
8位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)              +59"
9位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)        +1'09"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)           +1'15"

個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)               18h36'45"
2位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)          +26"
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)      +31"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)                +48"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)                  +57"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)      +1'01"
7位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)        +1'19"
8位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)            +1'25"
9位 ヨハン・チョップ(スイス、IAMサイクリング)                +1'32"
10位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               +1'34"

ポイント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)

ヤングライダー賞
ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)

総合敢闘賞(中間スプリント賞)
プレベン・ファンヘッケ(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)

チーム総合成績
チームスカイ

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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