2014/02/03(月) - 11:57
ゼネク・スティバル(チェコ)とスヴェン・ネイス(ベルギー)の一騎打ち。両者一歩も退かない攻防戦は最終周回に持ち込まれ、小さなミスを突いたスティバルが勝利した。全日本チャンピオンの竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ)は5分54秒遅れのフルラップで37位完走。
泥に覆われたホーヘルハイデの全長3300mコース。2014年のシクロクロス世界選手権を締めくくるエリートレースが行なわれる頃には天候が回復したものの、路面の状態が好転することはなく、粘性の高い泥との闘いとなった。
スタートダッシュで弾丸のように飛び出していったのは、泥に覆われたUCIワールドカップ第4戦ナミュールで優勝しているフランシス・ムレー(フランス)。ここにスヴェン・ネイス(ベルギー)やゼネク・スティバル(チェコ)、ラルス・ファンデルハール(オランダ)を含むパックが合流して1周目を完了する。
2周目に入るタイミングでスティバルがスパートを仕掛けると、すぐさまネイスが合流。積極的にレースをリードするこの2人に食らいつくことが出来たのはファンデルハールとムレーだけ。その後方に、ケヴィン・パウエルス(ベルギー)やクラース・ヴァントルノート(ベルギー)を含むベルギートレインが続く展開で周回を重ねる。
8周回のうち、ちょうど中盤の4周目でスティバルとネイスが再び先行すると、ファンデルハールとムレーが失速する。コーナーでのミスが続いたファンデルハールにはパウエルスが追いつき、追い抜く。今シーズン調子を上げることが出来ていなかったパウエルスが復活の兆しを見せたが、先頭2人の背中は遠すぎた。
ベルギー人ファンが大挙して詰めかけたコースで、フィニッシュまで3周を残してネイスがペースアップを開始する。テクニカルな区間で仕掛けるネイスと、舗装路や泥の直線路で仕掛けるスティバル。手の内を知った2人がそれぞれのタイミングで仕掛けたが決まらない。
7周目の中盤でスティバルがコーナリングに失敗して落車し、ネイスが先行したが決まらない。逆に先行するネイスも落車し、スティバルがペースアップするシーンも。両者一歩も退かない攻防の末、最終周回を迎えた。
フィニッシュまでおよそ2kmを残して、周回中盤にペースアップを試みたのはスティバル。上半身を前後に揺らしながら加速するスティバルを追うネイスは、泥のコーナーでラインをミスして下車してしまう。ここぞとばかりにスティバルが猛烈にペースを上げると、両者のギャップが数十メートル開いた。
最終ストレートで後方を確認しながら片手を挙げるスティバルと、肩を落としながらも大きな歓声に応えるネイス。接戦の末、スティバルが2010年と2011年に続く3度目の世界タイトルを獲得した。
2012年からロードレースに本格参戦し、2013年にはエネコツアー総合優勝を果たしたスティバル。ブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージではフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)との一騎打ちを制して優勝を飾っている。ロードレースでトップ選手の地位を築いた28歳は、昨年末からシクロクロス5レースにスポット参戦していた。
「ポイントの関係で後方からのスタートになるので、3日前の時点では出走するかどうか迷っていた。でもコースを試走して考えが変わったんだ。チャレンジしない理由は無いと。過去と比べてプレッシャーは少なかったよ。自分が好きな雨が降らない天気も味方した」と、3年ぶりにアルカンシェルに袖を通したスティバル。
スティバルはネイスとの攻防について、レース後のインタビューで以下のように語っている。「ネイスとのギャップが開いたとき、全開でペースを上げた。すると、いつも自分が差を開けられていた泥のコーナーで彼がミス。あのコーナーまでに絶対前に出ていないと勝てないと思っていた。最終周回は沿道から(ベルギーファンから)ビールが飛んできたよ」。
日本代表の竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ)はトップと同周回の37位でフィニッシュ。小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)はマイナス2ラップの51位でレースを終えている。シーズン最後にして最大の闘いを終えた2人は以下のように語っている。
37位・5分54秒差 竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ)
先週のUCIワールドカップ出場時に体調が悪かったので、どこまで調子を戻せているか心配していたものの、予想よりはしっかりと走れました。スタート後は前の選手をフォローして行くのが精一杯。前の選手のトラブルを処理しながら序盤を終えて、選手の位置が落ち着いてからはずっとラップタイムを刻んで走れました。前半の1〜2周を良いポジションを終えることが出来れば、後半のラップタイムはトップの選手とそこまで大きく変わらないはず。前半の掛かりの良さをこの1年間で磨きたいと思います。そうすれば順位を上げられると思います。
順位(37位)を見ると、調子の良い時の走りが出来たと思います。去年はここまでの走りが出来ていなかった。優勝したスティービーのように、ロードレースとシクロクロスを上手く走りたい。彼の走りが良い刺激になりました。来週のシクロクロス東京を走ってから、またヨーロッパに戻ってロードシーズンがスタートです。
51位・-2Lap 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)
前の選手が轍で詰まったりと、小さなミスが続いたものの、前半は良いペースのパックで走れていました。でも後半に単独になってから集中力が途切れてしまい、森の中のコーナーでミスが続いてしまった。完走出来なかったので、まだまだだと感じました。ですが、先週のUCIワールドカップでも、ちょっとずつステップアップしていることを感じました。
今回のコースは、轍を抜けるテクニックや、スピードを繋いで登る箇所など、コーナリング以外のテクニックが重要でした。そういったレースはまだ日本には無くて、なかなか経験出来ない。後半に余裕が無くなってくると、そういう箇所でミスをしてしまう。そういうスキルが足りないと感じましたし、課題が見つかったので実りのある遠征になりました。今回の世界選を走ったことが、来シーズンへのモチベーションに繋がります。まだシクロクロス東京は残ってますが、ここでシーズンの一区切りです。ロードシーズンも、シクロクロスを意識しながら闘いたいと思います。
シクロクロス世界選手権2014エリート男子結果
1位 ゼネク・スティバル(チェコ) 1h05'30"
2位 スヴェン・ネイス(ベルギー) +12"
3位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー) +40"
4位 クラース・ヴァントルノート(ベルギー) +58"
5位 トム・メーウセン(ベルギー) +1'07"
6位 ラルス・ファンデルハール(オランダ) +1'22"
7位 ロブ・ピータース(ベルギー) +1'43"
8位 フランシス・ムレー(フランス) +1'53"
9位 ラドミール・シムネク(チェコ) +2'04"
10位 ウィエツ・ボスマンス(ベルギー) +2'11"
37位 竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ) +5'54"
51位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) -2Lap
text:Kei Tsuji
interview:Alisa Okazaki
photo:Cor Vos
泥に覆われたホーヘルハイデの全長3300mコース。2014年のシクロクロス世界選手権を締めくくるエリートレースが行なわれる頃には天候が回復したものの、路面の状態が好転することはなく、粘性の高い泥との闘いとなった。
スタートダッシュで弾丸のように飛び出していったのは、泥に覆われたUCIワールドカップ第4戦ナミュールで優勝しているフランシス・ムレー(フランス)。ここにスヴェン・ネイス(ベルギー)やゼネク・スティバル(チェコ)、ラルス・ファンデルハール(オランダ)を含むパックが合流して1周目を完了する。
2周目に入るタイミングでスティバルがスパートを仕掛けると、すぐさまネイスが合流。積極的にレースをリードするこの2人に食らいつくことが出来たのはファンデルハールとムレーだけ。その後方に、ケヴィン・パウエルス(ベルギー)やクラース・ヴァントルノート(ベルギー)を含むベルギートレインが続く展開で周回を重ねる。
8周回のうち、ちょうど中盤の4周目でスティバルとネイスが再び先行すると、ファンデルハールとムレーが失速する。コーナーでのミスが続いたファンデルハールにはパウエルスが追いつき、追い抜く。今シーズン調子を上げることが出来ていなかったパウエルスが復活の兆しを見せたが、先頭2人の背中は遠すぎた。
ベルギー人ファンが大挙して詰めかけたコースで、フィニッシュまで3周を残してネイスがペースアップを開始する。テクニカルな区間で仕掛けるネイスと、舗装路や泥の直線路で仕掛けるスティバル。手の内を知った2人がそれぞれのタイミングで仕掛けたが決まらない。
7周目の中盤でスティバルがコーナリングに失敗して落車し、ネイスが先行したが決まらない。逆に先行するネイスも落車し、スティバルがペースアップするシーンも。両者一歩も退かない攻防の末、最終周回を迎えた。
フィニッシュまでおよそ2kmを残して、周回中盤にペースアップを試みたのはスティバル。上半身を前後に揺らしながら加速するスティバルを追うネイスは、泥のコーナーでラインをミスして下車してしまう。ここぞとばかりにスティバルが猛烈にペースを上げると、両者のギャップが数十メートル開いた。
最終ストレートで後方を確認しながら片手を挙げるスティバルと、肩を落としながらも大きな歓声に応えるネイス。接戦の末、スティバルが2010年と2011年に続く3度目の世界タイトルを獲得した。
2012年からロードレースに本格参戦し、2013年にはエネコツアー総合優勝を果たしたスティバル。ブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージではフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)との一騎打ちを制して優勝を飾っている。ロードレースでトップ選手の地位を築いた28歳は、昨年末からシクロクロス5レースにスポット参戦していた。
「ポイントの関係で後方からのスタートになるので、3日前の時点では出走するかどうか迷っていた。でもコースを試走して考えが変わったんだ。チャレンジしない理由は無いと。過去と比べてプレッシャーは少なかったよ。自分が好きな雨が降らない天気も味方した」と、3年ぶりにアルカンシェルに袖を通したスティバル。
スティバルはネイスとの攻防について、レース後のインタビューで以下のように語っている。「ネイスとのギャップが開いたとき、全開でペースを上げた。すると、いつも自分が差を開けられていた泥のコーナーで彼がミス。あのコーナーまでに絶対前に出ていないと勝てないと思っていた。最終周回は沿道から(ベルギーファンから)ビールが飛んできたよ」。
日本代表の竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ)はトップと同周回の37位でフィニッシュ。小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)はマイナス2ラップの51位でレースを終えている。シーズン最後にして最大の闘いを終えた2人は以下のように語っている。
37位・5分54秒差 竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ)
先週のUCIワールドカップ出場時に体調が悪かったので、どこまで調子を戻せているか心配していたものの、予想よりはしっかりと走れました。スタート後は前の選手をフォローして行くのが精一杯。前の選手のトラブルを処理しながら序盤を終えて、選手の位置が落ち着いてからはずっとラップタイムを刻んで走れました。前半の1〜2周を良いポジションを終えることが出来れば、後半のラップタイムはトップの選手とそこまで大きく変わらないはず。前半の掛かりの良さをこの1年間で磨きたいと思います。そうすれば順位を上げられると思います。
順位(37位)を見ると、調子の良い時の走りが出来たと思います。去年はここまでの走りが出来ていなかった。優勝したスティービーのように、ロードレースとシクロクロスを上手く走りたい。彼の走りが良い刺激になりました。来週のシクロクロス東京を走ってから、またヨーロッパに戻ってロードシーズンがスタートです。
51位・-2Lap 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)
前の選手が轍で詰まったりと、小さなミスが続いたものの、前半は良いペースのパックで走れていました。でも後半に単独になってから集中力が途切れてしまい、森の中のコーナーでミスが続いてしまった。完走出来なかったので、まだまだだと感じました。ですが、先週のUCIワールドカップでも、ちょっとずつステップアップしていることを感じました。
今回のコースは、轍を抜けるテクニックや、スピードを繋いで登る箇所など、コーナリング以外のテクニックが重要でした。そういったレースはまだ日本には無くて、なかなか経験出来ない。後半に余裕が無くなってくると、そういう箇所でミスをしてしまう。そういうスキルが足りないと感じましたし、課題が見つかったので実りのある遠征になりました。今回の世界選を走ったことが、来シーズンへのモチベーションに繋がります。まだシクロクロス東京は残ってますが、ここでシーズンの一区切りです。ロードシーズンも、シクロクロスを意識しながら闘いたいと思います。
シクロクロス世界選手権2014エリート男子結果
1位 ゼネク・スティバル(チェコ) 1h05'30"
2位 スヴェン・ネイス(ベルギー) +12"
3位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー) +40"
4位 クラース・ヴァントルノート(ベルギー) +58"
5位 トム・メーウセン(ベルギー) +1'07"
6位 ラルス・ファンデルハール(オランダ) +1'22"
7位 ロブ・ピータース(ベルギー) +1'43"
8位 フランシス・ムレー(フランス) +1'53"
9位 ラドミール・シムネク(チェコ) +2'04"
10位 ウィエツ・ボスマンス(ベルギー) +2'11"
37位 竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ) +5'54"
51位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) -2Lap
text:Kei Tsuji
interview:Alisa Okazaki
photo:Cor Vos
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