2014/01/08(水) - 12:19
今年Jシリーズチャンピオン斉藤亮や、フランスU23チャンピオン、ジュリアン・トラリューを迎え強力な布陣を構築したブリヂストン・アンカーMTBチーム。シクロワイアードでは所属する選手4名へのインタビューを行った。前編では今年新たな飛躍を目指す斎藤と、平野星矢の2名の談話を紹介する。
日本、ヨーロッパ、アジアのUCI国際レースに参戦し、世界レベルでの活躍を目指すこと。それが2014年、大きな変貌を遂げたブリヂストン・アンカーMTBチームの目標である。これまでの平野星矢、沢田時という布陣に加え、今年は昨年Jシリーズ全勝優勝を成し遂げた斉藤亮と、フランスのU23ナショナルチャンピオン、ジュリアン・トラリューを迎えた4人体勢となった。
この超強力な布陣が意味するのは、"常勝チーム・アンカー"の復権だ。「チームも僕も、皆がそれを成し遂げたいと思っているんです」と斉藤亮は言う。更に選手だけではなく、専属のマッサーやメカニック、コーチ陣を擁し、海外有力チームにも引けを取らない陣容を揃えた。もちろんブリヂストンサイクルの直属チームだけにバックアップ体勢も十分だ。2014年シーズン、まずチームはキプロス島で行われるUCIレースへ参加し、その後は斉藤と平野が国内レース、沢田とジュリアンが海外レースを中心に走ることとなる。
斉藤亮「Jシリーズの合間を縫って海外長期遠征を行う。新たな目標に向かうことが楽しみ」
この2年間、ミヤタ・メリダの選手として活動し、2年連続のJシリーズチャンピオンを獲得しました。そして「次の目標はなんだろう?」と考えた時に、やっぱり海外で走りたいという夢が拭いきれなかったんです。その中で今、国内でUCIコンチネンタル登録をしているのがアンカーでした。もちろんフランスで活動しているという魅力もありましたし、そうした思いが今回の移籍を決めさせたんです。
2年連続でシリーズチャンピオンを獲り、海外にも目が向いていますが、決して国内レースをないがしろにする訳ではありません。でも(シリーズ優勝を)3回連続、4回連続ということには、どうしても昨年と同じようなモチベーションが保てなくなりました。
今、コーヘイ(山本幸平)が世界のトップレースを走り、確実にシングルリザルトを残せるような実力になってきています。彼と一緒に走った全日本選手権では、負けはしたものの確かな手応えを自分の中に持つことができたんです。
国内のレベルが低いということでは決して無いのですが、今シーズンは走るレース全てで独走になり、自分と同等や、格上の選手と走ることがありませんでした。僕に足りないことは、そうしたレベルの高い選手と一緒に走るという絶対的なレース経験。
スポット参戦では無く、長期スパンで海外レースに参加することで、日本でできなかったことを体験し、そこで成績を出したい。抜いても抜いてもまだ前を走っている選手がたくさんいて、少しでもタレたらゴボウ抜きされる…。そんな環境に身を置くことが決まっていることに、非常にワクワクしていますよ。
海外レースが楽しみだという話をしましたが、活動拠点は国内におきます。僕と(平野)星矢が国内を担当し、(沢田)時とジュリアン(トラリュー)が海外拠点。そして僕はJシリーズ全てに参加し、その合間を縫ってUCIワールドカップ参戦を含めた長期遠征を行う予定です。
2013シーズンでアンカーはどうしても海外目線でしたから、国内での印象は薄かったと思います。そこで僕と星矢が活躍することで、国内でのプロモーション活動をしっかりと行いたいと考えています。
具体的にはまず、シーズン序盤にキプロス島へと渡り、UCIレースを連戦します。その後は5月頭にJシリーズの開幕戦を走り、再び海外組と合流してフランスのUCIレース、そして調整を行ってワールドカップへ。その後は未定ですが、全日本選手権後に再度ヨーロッパへと渡りたいと考えています。また、今年は4年に1度のアジア大会の年でもありますから、(山本)幸平や、他の日本人選手と表彰台を独占したいですね。
ーチームの皆と過ごしてみてどう感じましたか?
移籍とはいえ、いつもMTBレースを一緒に走っている仲間ですし、(平野)星矢は同じ長野県出身で、週に何回も練習に出かけています。(沢田)時とも先日のランカウイのレースに一緒に出場しましたから、既に積極的に情報交換できる仲ではあります。みんな後輩ですから、僕は最年長として自分自身の経験を彼らに伝えていきたいと考えています。2014年シーズンのアンカーは強力な選手が多数いることで、お互い良い高めあいができるでしょう。
今、世界選手権やオリンピックなどのビッグレースで、日本の参加枠はだいたい1つ。それを皆で争うのではなく、僕や幸平が海外に出てポイントを獲得することで、2つや3つに増やしたいと考えているんです。
そうすれば僕らはもちろんですが、若手にも海外選手と共に走る舞台を用意できます。オリンピックも迫ってきていますし、そうした意味でも2014年シーズンはすごく大事だと思うんです。やることは自分で見えていますね。
ー今までメリダチームでは26インチと29インチホイールのバイクを乗り換えて使っていましたね。
アンカーは650B(27.5インチ)一本でレースに臨むそうですが、そのことに関して不安などはありませんか?
今まで29インチバイクをメインで使っていたのですが、実は2年間走ってみても最後までポジションが決まらなかったんですよね。サドル高やステム長、ハンドルなど、幾つも幾つも交換しても「これだ!」と思う部分が無く…。そしてシーズン途中に思い切って26インチバイクを使ってみたところ、とてもしっくりきたんです。最終戦は27.5を用意してもらったのですが、アンカーとはジオメトリーが異なるものの、乗ってすぐに身体に馴染んでくれたんです。
やっぱり29インチはあれだけ大きな車輪を回すことになるので、レースの最終盤で足が残っていない場合が多いのですが、26インチだとそれがありません。僕の中で650Bは26インチにとても近い、最後までペースが途切れないイメージがあって、より速い。まだ(取材時点では)アンカーのバイクには乗っていませんが、非常に楽しみですよね。
今回の移籍のお話を頂いた際、その話を持ちかけてくれた方が「常勝チーム・アンカー」が崩れ掛かってきているという話をしていました。僕も過去のレース経験からそう感じていましたし、やはり日本のレースで日本の企業チームが強いというのは、皆の憧れであると思うんです。その復権を手伝いたいと考えています。
ー2014年シーズンは楽しみですか?
正直に言うと、楽しみ半分、不安半分(笑)。でも、自信はあります。今までやってきた環境からガラッと変わりますから、そこに順応するまでにはやはり少し時間はかかるでしょうね。でも今現在、モチベーションもすごく高いですし、成績も含めて2013年以上の活躍を見せていきたいと思いますね。
平野星矢「不調に終わった昨シーズン。チームの変化は歓迎」
ー2013年シーズンを振り返って
2013年シーズンは…ダメでしたね(笑)。最初こそ調子が良かったのですが、途中でポジションを修正したりしたことで、自分の中で悪循環にはまってしまい、リズムが悪くなってなかなか上手く立て直すことができませんでしたね。それ以外はあまり収穫の無い、ちょっと自分では残念なシーズンでした。
今まで僕は26インチや、プロトタイプの29インチバイクを乗ってきたのですが、2013年シーズンの途中から既に650Bに乗っていました。僕は比較的サドルの前に座ってペダリングするタイプなのですが、ホイールベースが変わるとBBの位置が変わり、それで上手くはまる場所を見つけられないままシーズンを終えてしまいました。
とりあえず2014年シーズンは、今までできていた自分の走りを取り戻していきたいと思います。それができれば、今自分で問題にしていることの大体は解決してくるはずなんです。でも別に「こうじゃなきゃいけない」というものは無いですし、バイクも常に変わっていきますから、自分の直感を信じて修正していければ、と。特に不安は感じていませんね。かなり悪いレベルに落ちてしまったので、あとは上がるだけです(笑)。
ー2014年シーズンの予定は?
国内レース、つまりJシリーズをメインに走りますが、開幕が遅いのでその前に海外で何戦か走る予定です。シーズン中は海外レースにもポイントで参戦予定ですが、あまり計画を立てて意気込んでレースに臨むのは合っていない気がしています。もともと計画的に生きてきた人間じゃないので(笑)。目標は常に流動的なのですが、とにかく前述したように悪循環からの脱却でしょうか。
ー斎藤亮とジュリアンが加入してきたことをどう思っていますか?
特に自分自身何か変わることは無いですね。僕は同じ環境の中にいるとダメになってしまうので、同じチームの中に変化があることはとても歓迎しています。昨年とは違う刺激がたくさんあるだろうし、来シーズンは楽しいことになると思いますね。とても楽しみです。
ジュリアン・トラリューと沢田時のインタビューは続編でお届けします。
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano
日本、ヨーロッパ、アジアのUCI国際レースに参戦し、世界レベルでの活躍を目指すこと。それが2014年、大きな変貌を遂げたブリヂストン・アンカーMTBチームの目標である。これまでの平野星矢、沢田時という布陣に加え、今年は昨年Jシリーズ全勝優勝を成し遂げた斉藤亮と、フランスのU23ナショナルチャンピオン、ジュリアン・トラリューを迎えた4人体勢となった。
この超強力な布陣が意味するのは、"常勝チーム・アンカー"の復権だ。「チームも僕も、皆がそれを成し遂げたいと思っているんです」と斉藤亮は言う。更に選手だけではなく、専属のマッサーやメカニック、コーチ陣を擁し、海外有力チームにも引けを取らない陣容を揃えた。もちろんブリヂストンサイクルの直属チームだけにバックアップ体勢も十分だ。2014年シーズン、まずチームはキプロス島で行われるUCIレースへ参加し、その後は斉藤と平野が国内レース、沢田とジュリアンが海外レースを中心に走ることとなる。
斉藤亮「Jシリーズの合間を縫って海外長期遠征を行う。新たな目標に向かうことが楽しみ」
この2年間、ミヤタ・メリダの選手として活動し、2年連続のJシリーズチャンピオンを獲得しました。そして「次の目標はなんだろう?」と考えた時に、やっぱり海外で走りたいという夢が拭いきれなかったんです。その中で今、国内でUCIコンチネンタル登録をしているのがアンカーでした。もちろんフランスで活動しているという魅力もありましたし、そうした思いが今回の移籍を決めさせたんです。
2年連続でシリーズチャンピオンを獲り、海外にも目が向いていますが、決して国内レースをないがしろにする訳ではありません。でも(シリーズ優勝を)3回連続、4回連続ということには、どうしても昨年と同じようなモチベーションが保てなくなりました。
今、コーヘイ(山本幸平)が世界のトップレースを走り、確実にシングルリザルトを残せるような実力になってきています。彼と一緒に走った全日本選手権では、負けはしたものの確かな手応えを自分の中に持つことができたんです。
国内のレベルが低いということでは決して無いのですが、今シーズンは走るレース全てで独走になり、自分と同等や、格上の選手と走ることがありませんでした。僕に足りないことは、そうしたレベルの高い選手と一緒に走るという絶対的なレース経験。
スポット参戦では無く、長期スパンで海外レースに参加することで、日本でできなかったことを体験し、そこで成績を出したい。抜いても抜いてもまだ前を走っている選手がたくさんいて、少しでもタレたらゴボウ抜きされる…。そんな環境に身を置くことが決まっていることに、非常にワクワクしていますよ。
海外レースが楽しみだという話をしましたが、活動拠点は国内におきます。僕と(平野)星矢が国内を担当し、(沢田)時とジュリアン(トラリュー)が海外拠点。そして僕はJシリーズ全てに参加し、その合間を縫ってUCIワールドカップ参戦を含めた長期遠征を行う予定です。
2013シーズンでアンカーはどうしても海外目線でしたから、国内での印象は薄かったと思います。そこで僕と星矢が活躍することで、国内でのプロモーション活動をしっかりと行いたいと考えています。
具体的にはまず、シーズン序盤にキプロス島へと渡り、UCIレースを連戦します。その後は5月頭にJシリーズの開幕戦を走り、再び海外組と合流してフランスのUCIレース、そして調整を行ってワールドカップへ。その後は未定ですが、全日本選手権後に再度ヨーロッパへと渡りたいと考えています。また、今年は4年に1度のアジア大会の年でもありますから、(山本)幸平や、他の日本人選手と表彰台を独占したいですね。
ーチームの皆と過ごしてみてどう感じましたか?
移籍とはいえ、いつもMTBレースを一緒に走っている仲間ですし、(平野)星矢は同じ長野県出身で、週に何回も練習に出かけています。(沢田)時とも先日のランカウイのレースに一緒に出場しましたから、既に積極的に情報交換できる仲ではあります。みんな後輩ですから、僕は最年長として自分自身の経験を彼らに伝えていきたいと考えています。2014年シーズンのアンカーは強力な選手が多数いることで、お互い良い高めあいができるでしょう。
今、世界選手権やオリンピックなどのビッグレースで、日本の参加枠はだいたい1つ。それを皆で争うのではなく、僕や幸平が海外に出てポイントを獲得することで、2つや3つに増やしたいと考えているんです。
そうすれば僕らはもちろんですが、若手にも海外選手と共に走る舞台を用意できます。オリンピックも迫ってきていますし、そうした意味でも2014年シーズンはすごく大事だと思うんです。やることは自分で見えていますね。
ー今までメリダチームでは26インチと29インチホイールのバイクを乗り換えて使っていましたね。
アンカーは650B(27.5インチ)一本でレースに臨むそうですが、そのことに関して不安などはありませんか?
今まで29インチバイクをメインで使っていたのですが、実は2年間走ってみても最後までポジションが決まらなかったんですよね。サドル高やステム長、ハンドルなど、幾つも幾つも交換しても「これだ!」と思う部分が無く…。そしてシーズン途中に思い切って26インチバイクを使ってみたところ、とてもしっくりきたんです。最終戦は27.5を用意してもらったのですが、アンカーとはジオメトリーが異なるものの、乗ってすぐに身体に馴染んでくれたんです。
やっぱり29インチはあれだけ大きな車輪を回すことになるので、レースの最終盤で足が残っていない場合が多いのですが、26インチだとそれがありません。僕の中で650Bは26インチにとても近い、最後までペースが途切れないイメージがあって、より速い。まだ(取材時点では)アンカーのバイクには乗っていませんが、非常に楽しみですよね。
今回の移籍のお話を頂いた際、その話を持ちかけてくれた方が「常勝チーム・アンカー」が崩れ掛かってきているという話をしていました。僕も過去のレース経験からそう感じていましたし、やはり日本のレースで日本の企業チームが強いというのは、皆の憧れであると思うんです。その復権を手伝いたいと考えています。
ー2014年シーズンは楽しみですか?
正直に言うと、楽しみ半分、不安半分(笑)。でも、自信はあります。今までやってきた環境からガラッと変わりますから、そこに順応するまでにはやはり少し時間はかかるでしょうね。でも今現在、モチベーションもすごく高いですし、成績も含めて2013年以上の活躍を見せていきたいと思いますね。
平野星矢「不調に終わった昨シーズン。チームの変化は歓迎」
ー2013年シーズンを振り返って
2013年シーズンは…ダメでしたね(笑)。最初こそ調子が良かったのですが、途中でポジションを修正したりしたことで、自分の中で悪循環にはまってしまい、リズムが悪くなってなかなか上手く立て直すことができませんでしたね。それ以外はあまり収穫の無い、ちょっと自分では残念なシーズンでした。
今まで僕は26インチや、プロトタイプの29インチバイクを乗ってきたのですが、2013年シーズンの途中から既に650Bに乗っていました。僕は比較的サドルの前に座ってペダリングするタイプなのですが、ホイールベースが変わるとBBの位置が変わり、それで上手くはまる場所を見つけられないままシーズンを終えてしまいました。
とりあえず2014年シーズンは、今までできていた自分の走りを取り戻していきたいと思います。それができれば、今自分で問題にしていることの大体は解決してくるはずなんです。でも別に「こうじゃなきゃいけない」というものは無いですし、バイクも常に変わっていきますから、自分の直感を信じて修正していければ、と。特に不安は感じていませんね。かなり悪いレベルに落ちてしまったので、あとは上がるだけです(笑)。
ー2014年シーズンの予定は?
国内レース、つまりJシリーズをメインに走りますが、開幕が遅いのでその前に海外で何戦か走る予定です。シーズン中は海外レースにもポイントで参戦予定ですが、あまり計画を立てて意気込んでレースに臨むのは合っていない気がしています。もともと計画的に生きてきた人間じゃないので(笑)。目標は常に流動的なのですが、とにかく前述したように悪循環からの脱却でしょうか。
ー斎藤亮とジュリアンが加入してきたことをどう思っていますか?
特に自分自身何か変わることは無いですね。僕は同じ環境の中にいるとダメになってしまうので、同じチームの中に変化があることはとても歓迎しています。昨年とは違う刺激がたくさんあるだろうし、来シーズンは楽しいことになると思いますね。とても楽しみです。
ジュリアン・トラリューと沢田時のインタビューは続編でお届けします。
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano
リンク
Amazon.co.jp