チームメイトに発射された元ボクサーのナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)が残り200mからスプリントを開始。ツアー・オブ・北京第2ステージで、今シーズン最も勝っているフレンチスプリンターが貫禄ある勝利を飾った。



ツアー・オブ・北京2013第2ステージツアー・オブ・北京2013第2ステージ image:Tour of Beijing北京北部の山岳地帯を走る第2ステージ。懐柔(フアイロウ)を発ち、万里の長城の脇をかすめて延慶(エンケイ)にゴールする今大会最長201.5kmコースには、4つのカテゴリー山岳が設定されている。最後の2級山岳からゴールまで50kmの平坦路が続くため、スプリンターが登りで遅れたとしても挽回は可能だ。

頭と身体のバランスがおかしいダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)頭と身体のバランスがおかしいダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) photo:Graham Watson/Tour of Beijingスタート直後にファーストアタックを仕掛けたのは、来季オメガファーマ・クイックステップへの移籍を決めているトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)。この動きにマッシモ・グラツィアート(イタリア、ランプレ・メリダ)とチャド・ベイヤー(アメリカ、チャンピオンシステム)、オリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)、マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)の4名が合流する。

モデュイ監督と話す宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)モデュイ監督と話す宮澤崇史(サクソ・ティンコフ) photo:Sonoko Tanaka徐々にメイン集団を引き離した5名の逃げグループの中で、昨年ジロ・デ・イタリアで総合3位に入ったデヘントの登坂力が光った。「チームにとっては最後のステージレース。だから結果を残したいと思っている。今日はスプリンターチームを振り切るには無理があるので、完全に山岳賞ジャージ狙いだった」と語るデヘントが山岳ポイントを量産。この日を終えて赤玉デザインの山岳賞ジャージ着用を決めている。

メイン集団はリーダージャージ擁するBMCレーシングチームが徹底的にコントロールし、トル・フースホフト(ノルウェー)のスプリントに持ち込むために逃げを捕まえにかかる。今シーズン限りで引退するマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)らの集団牽引で、逃げグループのリードは縮小を続けた。

スプリントポイントでボーナスタイムを稼いだブエは総合ジャンプアップに成功。ゴールまで30kmを切ると逃げグループは崩壊し、カイセンが単独でエスケープを継続する。しかしスプリンターチームを振り切ることは出来ず、残り8kmで吸収された。



北京北部に広がる山岳地帯を行く北京北部に広がる山岳地帯を行く photo:Graham Watson/Tour of Beijing
粘り強く逃げ続けるオリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)粘り強く逃げ続けるオリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル) photo:Graham Watson/Tour of Beijingメイン集団を牽引するスティーブ・クミングス(イギリス、BMCレーシングチーム)メイン集団を牽引するスティーブ・クミングス(イギリス、BMCレーシングチーム) photo:Graham Watson/Tour of Beijing



リーダージャージを着て走るトル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシングチーム)リーダージャージを着て走るトル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシングチーム) photo:Graham Watson/Tour of Beijingメイン集団は一貫してBMCレーシングチームのコントロール下に置かれていたが、残り5kmを切るとオメガファーマ・クイックステップやサクソ・ティンコフ、アルゴス・シマノも集団前方へ。宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)はこの日もチームメイトを引き連れて集団最前列まで上がる。

ゴールスプリントを制したナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)ゴールスプリントを制したナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr) photo:Graham Watson/Tour of Beijing宮澤は「残り30kmからチーム一丸となって位置取りを始め、最後はマティのスプリントに。ボアーロ→自分→ロジャース→マティの順で動いてスプリントに備えたが、広い道路に苦戦してしまった」と振り返る(最終的にマッティ・ブレシェルはステージ4位)。

集団内でゴールする西薗良太(チャンピオンシステム)集団内でゴールする西薗良太(チャンピオンシステム) photo:Sonoko Tanaka残り1kmを前に、この日もオリカ・グリーンエッジが集団先頭に立って主導権を握る。しかし、イェンス・モーリス(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)の飛び出しによってトレインがばらけ、統率が崩れたところでFDJ.frが先頭に出る。

ステージ優勝とリーダージャージを同時に手にしたナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)ステージ優勝とリーダージャージを同時に手にしたナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr) photo:Graham Watson/Tour of Beijing最終ストレートで、ドミニク・ロラン(カナダ.fr)の強力なリードアウトを受けたブアニが残り200mでスプリントを開始。バイクを左右に大きく振る荒々しいスプリントで、ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)やミッチェル・ドッカー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を振り切った。

「登りで遅れる度に、チームメイトの力を借りて集団に復帰した。そして最後はドミニク・ロランが完璧な仕事をこなしてくれた」と、今大会初勝利を飾ったブアニ。連日の上位フィニッシュにより、第2ステージを27位で終えたトル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシングチーム)からリーダージャージを奪うことに成功している。

リーダージャージの他、ポイント賞ジャージと新人賞ジャージを獲得したブアニが今シーズン10勝目。これは2009年のジミー・カスペール(フランス)に並ぶ今世紀のフランス人シーズン最多勝記録だ。

西薗良太(チャンピオンシステム)と宮澤はともに集団内でフィニッシュ。総合5位から総合11位に順位を下げた西薗は「チームは毎日逃げに乗れていい感じです。自分は昨日の疲れもあるので、今日は明日からの山に向けて淡々とこなしました。明日は厳しいレースになると見ています。逃げに乗れたら乗るし、もし集団に残ったとしても有力選手のふるい落としに付いていって、総合を狙うクリス・バトラーを守りながら前を目指したいと思います。クリスとはトレンティーノやUSAプロチャレンジなどで何度も一緒に走っているので息が合っているので楽しみです」とコメントしている。




ツアー・オブ・北京2013第2ステージ結果
1位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)                    4h59'49"
2位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
3位 ミッチェル・ドッカー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソ・ティンコフ)
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 バリー・マルクス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
7位 ヨナス・ファンヘネヒテン(ベルギー、ロット・ベリソル)
8位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
9位 ルーカ・メスゲツ(スロベニア、アルゴス・シマノ)
10位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
111位 西薗良太(日本、チャンピオンシステム)
139位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)

個人総合成績
1位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)                    9h20'13"
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシングチーム)
3位 マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)              +01"
4位 ウィレム・ワウテルス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)          +03"
5位 ルーカ・メスゲツ(スロベニア、アルゴス・シマノ)              +04"
6位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
7位 チャド・ベイヤー(アメリカ、チャンピオンシステム)             +05"
8位 ニコラス・マース(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)       +06"
9位 ミッチェル・ドッカー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
10位 オリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)            +07"

ポイント賞
ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)

山岳賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)

新人賞
ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)

チーム総合成績
カチューシャ

text:Kei Tsuji
photo:Graham Watson/Tour of Beijing, Sonoko Tanaka

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