2013/08/30(金) - 10:59
TT世界チャンピオンのトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)渾身のエスケープ。フィニッシュラインのわずか30m手前で吸収されるという接戦を演出したのは、元TT世界チャンピオンのファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)だった。
ガリシア州とカスティーリャ・イ・レオン州を離れ、ブエルタはイベリア半島南部を目指して南下を始める。ゴール地点は7年ぶりにブエルタに登場するエストレマドゥーラ州のカセレス。全長175kmのコースにはカテゴリー山岳が一つも登場しない。
このスプリンター向きのステージで、ニュートラルゾーン終了と同時にマルティンが飛び出した。しばらくしてマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)が単独で追走したものの、スイッチが入ったマルティンには追いつかず。ここからタイムトライアル世界チャンピオンの独走が始まった。
「今日は最初からステージ優勝を狙っていたわけじゃない。世界選手権に向けて追い込みたかったんだ。スタート直後にアタックした時、2〜4人が合流してくれればと思った。でも誰も付いて来なかった。単独になったので、根気づよくフィナーレに備えた」とマルティン。追い風に押されるようにして、メイン集団から最大7分半のリードを稼ぎ出した。
メイン集団をコントロールしたのは2日連続ゴールスプリント勝負に持ち込みたいオリカ・グリーンエッジとアルゴス・シマノ。先頭マルティンを確実に捕まえるべく、慎重にタイム差をチェックしながらメイン集団を牽引する。
スペインを象徴するような荒涼とした大地を、力強いフォームで独走を続けたマルティン。しかし残り20kmで早くもタイム差は1分を下回る。サクソ・ティンコフやモビスターも前に上がり、タイム差は残り10kmで15秒に。
苦しみながらも、スピードを落とさずに逃げ続けたマルティンは「もし勝てれば素晴らしい、でも勝てなくても良いトレーニングだったと考えながら走っていた。確かに残り10kmの時点で逃げ切りが頭をかすめたよ」と振り返っている。
前日に引き続きアルゴス・シマノがリードアウトトレインを組んで集団先頭に立ったが、メイン集団のスピードは上がりきらない。5秒のリードを守ったまま残り1kmアーチを駆け抜けた先頭マルティンが、単独で最終ストレートにやってきた。
アルゴス・シマノはマルティンを追いきれず、残り400mからカンチェラーラがロングスパートを仕掛けて追撃する。連携をミスしたアルゴス・シマノ勢が後方に沈む中、カンチェラーラの後ろからミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソ・ティンコフ)らがスプリントを開始。
同じく腰を上げて最後の力を振り絞るマルティンはフィニッシュライン目前、およそ30m手前で抜き去られる。デンマークチャンピオンジャージのモルコフが先着した。
モルコフはトラックレースとロードレースを両立する28歳で、過去にはトラック世界選手権マディソンと団体追い抜きでメダルを獲得。ヨーロッパ各地で開催される6日間レースでは、アレックス・ラスムッセン(デンマーク、ガーミン・シャープ)とのタッグで数々の成功を収めている。2011年に「伊豆ベロドローム」で行なわれたトラックパーティーのマディソンで優勝。また、2012年のツール・ド・フランスでは、第1ステージで逃げてマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を獲得し、第6ステージまでジャージを着続けた。
「これまで集団スプリントに加わったことはなかったけど、今日はトラックで磨いたスピードが活かされるようなフィナーレだった。カンチェラーラの猛追が無かったら、マルティンを捕まえることは出来なかったと思う」と、グランツール初勝利を飾ったモルコフは語る。「ポジショニングが鍵を握った。カンチェラーラの後ろにつけて、残り200mで踏み始めたんだ」。
一方、フィニッシュライン目前で175kmの逃げを終えたマルティンは「終盤は緩い登りだったので難しいとは思っていた。最後まで出し切ることが出来た。良い一日だったよ」と締めくくっている。この日の平均スピードは44km/h。これはほぼマルティンが単独で逃げ続けた結果だ。マルティンは文句無しの敢闘賞に輝いている。
第7ステージを終えて、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)がモンターニャ(山岳賞)とコンビナーダ(複合賞)でトップを維持。前日のステージ優勝者で、この日ステージ6位だったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がプントス(ポイント賞)トップに立っている。マイヨロホはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が守った。
選手コメントはレース公式サイトやチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第6ステージ結果
1位 ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソ・ティンコフ) 3h54'15"
2位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
5位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)
6位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
7位 トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
8位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
9位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
10位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ベルキンプロサイクリング)
敢闘賞
トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 22h38'07"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) +03"
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +08"
4位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード) +16"
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +21"
6位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード) +26"
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング) +28"
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +31"
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ) +38"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +42"
プントス(ポイント賞)
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 51pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 48pts
3位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ) 40pts
モンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 11pts
2位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) 8pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 6pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 8pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 13pts
3位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) 18pts
チーム総合成績
1位 レディオシャック・レオパード 66h54'52"
2位 サクソ・ティンコフ +05"
3位 ベルキンプロサイクリング +1'10"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
ガリシア州とカスティーリャ・イ・レオン州を離れ、ブエルタはイベリア半島南部を目指して南下を始める。ゴール地点は7年ぶりにブエルタに登場するエストレマドゥーラ州のカセレス。全長175kmのコースにはカテゴリー山岳が一つも登場しない。
このスプリンター向きのステージで、ニュートラルゾーン終了と同時にマルティンが飛び出した。しばらくしてマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)が単独で追走したものの、スイッチが入ったマルティンには追いつかず。ここからタイムトライアル世界チャンピオンの独走が始まった。
「今日は最初からステージ優勝を狙っていたわけじゃない。世界選手権に向けて追い込みたかったんだ。スタート直後にアタックした時、2〜4人が合流してくれればと思った。でも誰も付いて来なかった。単独になったので、根気づよくフィナーレに備えた」とマルティン。追い風に押されるようにして、メイン集団から最大7分半のリードを稼ぎ出した。
メイン集団をコントロールしたのは2日連続ゴールスプリント勝負に持ち込みたいオリカ・グリーンエッジとアルゴス・シマノ。先頭マルティンを確実に捕まえるべく、慎重にタイム差をチェックしながらメイン集団を牽引する。
スペインを象徴するような荒涼とした大地を、力強いフォームで独走を続けたマルティン。しかし残り20kmで早くもタイム差は1分を下回る。サクソ・ティンコフやモビスターも前に上がり、タイム差は残り10kmで15秒に。
苦しみながらも、スピードを落とさずに逃げ続けたマルティンは「もし勝てれば素晴らしい、でも勝てなくても良いトレーニングだったと考えながら走っていた。確かに残り10kmの時点で逃げ切りが頭をかすめたよ」と振り返っている。
前日に引き続きアルゴス・シマノがリードアウトトレインを組んで集団先頭に立ったが、メイン集団のスピードは上がりきらない。5秒のリードを守ったまま残り1kmアーチを駆け抜けた先頭マルティンが、単独で最終ストレートにやってきた。
アルゴス・シマノはマルティンを追いきれず、残り400mからカンチェラーラがロングスパートを仕掛けて追撃する。連携をミスしたアルゴス・シマノ勢が後方に沈む中、カンチェラーラの後ろからミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソ・ティンコフ)らがスプリントを開始。
同じく腰を上げて最後の力を振り絞るマルティンはフィニッシュライン目前、およそ30m手前で抜き去られる。デンマークチャンピオンジャージのモルコフが先着した。
モルコフはトラックレースとロードレースを両立する28歳で、過去にはトラック世界選手権マディソンと団体追い抜きでメダルを獲得。ヨーロッパ各地で開催される6日間レースでは、アレックス・ラスムッセン(デンマーク、ガーミン・シャープ)とのタッグで数々の成功を収めている。2011年に「伊豆ベロドローム」で行なわれたトラックパーティーのマディソンで優勝。また、2012年のツール・ド・フランスでは、第1ステージで逃げてマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を獲得し、第6ステージまでジャージを着続けた。
「これまで集団スプリントに加わったことはなかったけど、今日はトラックで磨いたスピードが活かされるようなフィナーレだった。カンチェラーラの猛追が無かったら、マルティンを捕まえることは出来なかったと思う」と、グランツール初勝利を飾ったモルコフは語る。「ポジショニングが鍵を握った。カンチェラーラの後ろにつけて、残り200mで踏み始めたんだ」。
一方、フィニッシュライン目前で175kmの逃げを終えたマルティンは「終盤は緩い登りだったので難しいとは思っていた。最後まで出し切ることが出来た。良い一日だったよ」と締めくくっている。この日の平均スピードは44km/h。これはほぼマルティンが単独で逃げ続けた結果だ。マルティンは文句無しの敢闘賞に輝いている。
第7ステージを終えて、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)がモンターニャ(山岳賞)とコンビナーダ(複合賞)でトップを維持。前日のステージ優勝者で、この日ステージ6位だったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がプントス(ポイント賞)トップに立っている。マイヨロホはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が守った。
選手コメントはレース公式サイトやチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第6ステージ結果
1位 ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソ・ティンコフ) 3h54'15"
2位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
5位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)
6位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
7位 トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
8位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
9位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
10位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ベルキンプロサイクリング)
敢闘賞
トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 22h38'07"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) +03"
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +08"
4位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード) +16"
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +21"
6位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード) +26"
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング) +28"
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +31"
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ) +38"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +42"
プントス(ポイント賞)
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 51pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 48pts
3位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ) 40pts
モンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 11pts
2位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) 8pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 6pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 8pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 13pts
3位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) 18pts
チーム総合成績
1位 レディオシャック・レオパード 66h54'52"
2位 サクソ・ティンコフ +05"
3位 ベルキンプロサイクリング +1'10"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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