2013/07/12(金) - 09:49
グライペルに続いて、カヴェンディッシュとの直接対決を制したマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)がステージ3勝目。ツール・ド・フランス第12ステージで再びジャーマンスプリンターのスピードが際立った。ラスト3km地点での落車に巻き込まれた新城幸也(ユーロップカー)は左手に縫合治療が必要なほどの深い傷を負っている。
ブルターニュ地方とノルマンディー地方でのステージを終え、ツールはアルプス山脈に向かってフランス横断を開始する。フォルジェールからトゥールまで、広大な平野を貫く218kmのコースは起伏に乏しく、カテゴリー山岳も無し。真っ平らなコースはスプリンター向きだ。
この日もスタートともにアタックがかかり、しばらくして5名の先行が決まる。今大会最も積極的に逃げているフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)の他、フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)、マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)、アントニー・ドゥラプラス(フランス、ソジャサン)、ロメン・シカール(フランス、エウスカルテル)が逃げた。
最大9分のリードを得た逃げに対し、マイヨジョーヌ擁するスカイプロサイクリングを中心に、ロット・ベリソルとアルゴス・シマノ、オメガファーマ・クイックステップがそれぞれ数名ずつ集団ローテーションにメンバーを送り込み、タイム差を調整しながら追走する平坦ステージの典型的なパターンに。平野を吹き抜ける追い風に乗って、レースは常時45km/h前後で進んだ。
スプリントポイントはガヴァッツィが先頭通過。2分後方のメイン集団はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)を先頭に駆け抜ける。やがて逃げグループからはシカールが脱落。残り30kmでタイム差が1分を切ると、逃げグループ内の平衡が崩れた。
スカイプロサイクリングやサクソ・ティンコフが危険回避のため集団先頭に上がり、ラスト15kmで逃げを視界に捉える。
逃げの中で最後まで粘ったのは「毎日スタートからアタックして、出来る限り大きなリードを得て、逃げる。それがアタッカーの仕事。今日はステージ優勝を狙っていた。結果的に捕まったけど、彼らを本気にさせたことに対する満足感もある」と語るフレチャ。35歳のアタッカーはラスト6kmで吸収された。
強力な隊列を組んでエーススプリンターをエスコートしたのはオメガファーマ・クイックステップとアルゴス・シマノ。一方、これまでのステージで主導権を掴んでいたロット・ベリソルは集団内に沈んでしまう。するとゴールまで3kmを残して大きな落車が発生。ここでロットトレインは完全にストップしてしまった。
この落車に巻き込まれたのはスカイプロサイクリングのリッチー・ポルト(オーストラリア)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)、そしてスプリントに向けて位置取りしていた新城幸也(ユーロップカー)。ユキヤは左手からの出血がひどく、メディカルカーによる治療を受けながらゴールへ。ガーゼで応急処置をした左手を抑えながらフィニッシュした。左指の中指と、人差し指の第1関節と第2関節の間を深くえぐる切り傷で、レース後にチームドクターによる縫合治療を受ける予定だ。
落車の影響を受けずにゴールに突き進んだのはオメガファーマとアルゴス。フラムルージュを過ぎ、クーン・デコルト(オランダ、アルゴス・シマノ)がキッテルを引き連れて先頭で最終コーナーを曲がる。
しかしその後方からヘルト・ステーグマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)が抜群のタイミングで前に上がり、カヴェンディッシュをスプリントに解き放つ。カヴェンディッシュが先頭でスプリント。勝ちパターンに持ち込んだカヴェンディッシュの後ろから、キッテルが伸びる。低い体勢でスプリントするカヴェンディッシュに、大柄でパワフルなキッテルが並ぶ。トップスピードからの伸びを見せたキッテルが先着した。
第10ステージでグライペルとの一騎打ちを制したキッテルが、この日はカヴェンディッシュを力で下した。今大会の最強スプリンターであることは、他の追随を許さないステージ3勝という成績が証明している。「全く信じられない事態だ。今日は誰1人としてミスをしなかった。チームメイトたちと勝利に向かって走ることを本当にエンジョイしている。今日はプロトンの中で僕が一番速かった。アルプスを越えて、パリまで走りきりたいと思っているよ」。
サガンとカヴェンディッシュと並ぶ世界最多シーズン14勝目を飾ったキッテル。リードアウト役を担ったのは、2日前にカヴェンディッシュとの接触で落車したトム・フィーラース(オランダ)ではなく、キッテルと賭けをしていたデコルト。「実はデコルトは少し焦っていたんだ。だって、仮にステージ3勝した場合、彼は頭を剃るという賭けをしていたから」とキッテル。チームの良い雰囲気と団結力が結果に結びついている。
選手コメントはレース公式サイトより。
ツール・ド・フランス2013第12ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) 4h49'49"
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)
4位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
5位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
6位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
7位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
8位 ヨアン・ジェーヌ(フランス、ユーロップカー)
9位 フアンホセ・ロバト(スペイン、エウスカルテル)
10位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、アージェードゥーゼル)
181位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
個人総合成績 マイヨジョーヌ
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) 47h19'13"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +3'25"
3位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +3'37"
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) +3'54"
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +3'57"
6位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +4'10"
7位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)+4'44"
8位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) +5'18"
9位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) +5'37"
10位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル) +5'39"
ポイント賞 マイヨヴェール
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) 307pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) 211Pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 195pts
山岳賞 マイヨブランアポワルージュ
1位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) 49pts
2位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング 33pts
3位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) 28pts
新人賞 マイヨブラン
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)47h23'57"
2位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) +34"
3位 ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル) +6'53"
チーム総合成績
1位 モビスター 141h17'14"
2位 サクソ・ティンコフ +4'34"
3位 ベルキンプロサイクリング +6'06"
text:Kei Tsuji
photo:A.S.O., Cor Vos
ブルターニュ地方とノルマンディー地方でのステージを終え、ツールはアルプス山脈に向かってフランス横断を開始する。フォルジェールからトゥールまで、広大な平野を貫く218kmのコースは起伏に乏しく、カテゴリー山岳も無し。真っ平らなコースはスプリンター向きだ。
この日もスタートともにアタックがかかり、しばらくして5名の先行が決まる。今大会最も積極的に逃げているフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)の他、フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)、マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)、アントニー・ドゥラプラス(フランス、ソジャサン)、ロメン・シカール(フランス、エウスカルテル)が逃げた。
最大9分のリードを得た逃げに対し、マイヨジョーヌ擁するスカイプロサイクリングを中心に、ロット・ベリソルとアルゴス・シマノ、オメガファーマ・クイックステップがそれぞれ数名ずつ集団ローテーションにメンバーを送り込み、タイム差を調整しながら追走する平坦ステージの典型的なパターンに。平野を吹き抜ける追い風に乗って、レースは常時45km/h前後で進んだ。
スプリントポイントはガヴァッツィが先頭通過。2分後方のメイン集団はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)を先頭に駆け抜ける。やがて逃げグループからはシカールが脱落。残り30kmでタイム差が1分を切ると、逃げグループ内の平衡が崩れた。
スカイプロサイクリングやサクソ・ティンコフが危険回避のため集団先頭に上がり、ラスト15kmで逃げを視界に捉える。
逃げの中で最後まで粘ったのは「毎日スタートからアタックして、出来る限り大きなリードを得て、逃げる。それがアタッカーの仕事。今日はステージ優勝を狙っていた。結果的に捕まったけど、彼らを本気にさせたことに対する満足感もある」と語るフレチャ。35歳のアタッカーはラスト6kmで吸収された。
強力な隊列を組んでエーススプリンターをエスコートしたのはオメガファーマ・クイックステップとアルゴス・シマノ。一方、これまでのステージで主導権を掴んでいたロット・ベリソルは集団内に沈んでしまう。するとゴールまで3kmを残して大きな落車が発生。ここでロットトレインは完全にストップしてしまった。
この落車に巻き込まれたのはスカイプロサイクリングのリッチー・ポルト(オーストラリア)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)、そしてスプリントに向けて位置取りしていた新城幸也(ユーロップカー)。ユキヤは左手からの出血がひどく、メディカルカーによる治療を受けながらゴールへ。ガーゼで応急処置をした左手を抑えながらフィニッシュした。左指の中指と、人差し指の第1関節と第2関節の間を深くえぐる切り傷で、レース後にチームドクターによる縫合治療を受ける予定だ。
落車の影響を受けずにゴールに突き進んだのはオメガファーマとアルゴス。フラムルージュを過ぎ、クーン・デコルト(オランダ、アルゴス・シマノ)がキッテルを引き連れて先頭で最終コーナーを曲がる。
しかしその後方からヘルト・ステーグマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)が抜群のタイミングで前に上がり、カヴェンディッシュをスプリントに解き放つ。カヴェンディッシュが先頭でスプリント。勝ちパターンに持ち込んだカヴェンディッシュの後ろから、キッテルが伸びる。低い体勢でスプリントするカヴェンディッシュに、大柄でパワフルなキッテルが並ぶ。トップスピードからの伸びを見せたキッテルが先着した。
第10ステージでグライペルとの一騎打ちを制したキッテルが、この日はカヴェンディッシュを力で下した。今大会の最強スプリンターであることは、他の追随を許さないステージ3勝という成績が証明している。「全く信じられない事態だ。今日は誰1人としてミスをしなかった。チームメイトたちと勝利に向かって走ることを本当にエンジョイしている。今日はプロトンの中で僕が一番速かった。アルプスを越えて、パリまで走りきりたいと思っているよ」。
サガンとカヴェンディッシュと並ぶ世界最多シーズン14勝目を飾ったキッテル。リードアウト役を担ったのは、2日前にカヴェンディッシュとの接触で落車したトム・フィーラース(オランダ)ではなく、キッテルと賭けをしていたデコルト。「実はデコルトは少し焦っていたんだ。だって、仮にステージ3勝した場合、彼は頭を剃るという賭けをしていたから」とキッテル。チームの良い雰囲気と団結力が結果に結びついている。
選手コメントはレース公式サイトより。
ツール・ド・フランス2013第12ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) 4h49'49"
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)
4位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
5位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
6位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
7位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
8位 ヨアン・ジェーヌ(フランス、ユーロップカー)
9位 フアンホセ・ロバト(スペイン、エウスカルテル)
10位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、アージェードゥーゼル)
181位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
個人総合成績 マイヨジョーヌ
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) 47h19'13"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +3'25"
3位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +3'37"
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) +3'54"
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +3'57"
6位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +4'10"
7位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)+4'44"
8位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) +5'18"
9位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) +5'37"
10位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル) +5'39"
ポイント賞 マイヨヴェール
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) 307pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) 211Pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 195pts
山岳賞 マイヨブランアポワルージュ
1位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) 49pts
2位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング 33pts
3位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) 28pts
新人賞 マイヨブラン
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)47h23'57"
2位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) +34"
3位 ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル) +6'53"
チーム総合成績
1位 モビスター 141h17'14"
2位 サクソ・ティンコフ +4'34"
3位 ベルキンプロサイクリング +6'06"
text:Kei Tsuji
photo:A.S.O., Cor Vos
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