2013/07/06(土) - 09:16
今回のインプレッションで取り上げるのは、ベルギーのメルクス社がそれまでのトップモデルEMX-7の上位に位置すべく新開発したフラッグシップモデル、EMX-525。圧倒的な剛性を備えるプロスペックと同社が謳う旗艦の性能とは如何に。
エディ・メルクス EMX-525 photo:Makoto.Ayano/cyclowired.jp
自転車競技史上類い稀かつ圧倒的な勝利数を誇るエディ・メルクス(ベルギー)。ハンニバルと称された氏は引退後、それまで自分のためにフレームを造り続けてくれた名匠ウーゴ・デローザの門戸を叩き、後に自身の名を冠したブランドを立ち上げた。
現役時代、ジロとツールを5回制し、史上初のトリプルクラウン(ツール、ジロ、世界選手権を同年に制覇すること)を成し遂げた理由の一つに、機材に関する執拗なまでのこだわりがあったと言われている。名匠の造るフレームの数々を乗り潰し、1年に50本ほどのフレームをオーダーし、さらにカンパニョーロには特注チタン製パーツを作らせるなど、その執着心は何度聞いても驚かされる。
角張ったデザインのトップチューブ
大ボリュームのヘッドチューブに接続されるエアロ形状のフロントフォーク
フォークは安定したスタビリティを得るため中心部分で屈曲している
バイクの素材が鉄からアルミ、そしてカーボンへと変貌を遂げた現在においても、そんな彼の信条はエディ・メルクス社の理念として息づいている。フレームにあえて特殊素材を使うなどチャレンジ精神は衰えず、生み出されるバイクは常にその時代のトップチームへと供給される。プロチームと寄り添い共に歩むことでメルクスのバイクはたゆまぬ技術革新を行っているのである。
さて、今回のテストバイクは、同社フラッグシップのEMX-525である。「メルクス」「525」と聞いて、彼について良く知る方ならピンと来るものがあるだろう。そう、彼が打ち立てた今なお破られぬ現役通算勝利数だ。
直線と曲線、そして2カ所の屈曲でデザインされたトップチューブ
リアブレーキワイヤーは内蔵式だ
シートポストはオリジナル形状。クランプは安定の2本締めだ
トップチューブから繋がるようにデザインされるチェーンステー
「究極のパフォーマンスを追求した」というEMX-525。その設計コンセプトは「ライダーの力を逃さず、すべてをコントロールできるパワーを備えること」だ。不必要な軽量化には目もくれず、プロ選手の—現役時代のメルクスのような大パワーを推進力に変換するために生まれたバイクである。
角の付けられた直線で構成される、圧倒的なボリューム感を誇るフレームは、忍び寄る豹や虎をイメージしてデザインされたもの。がっちりとパワーを受け止めるべく、独自にブレンドした600GPaクラスのカーボンを使用し、フレームの各部分でカーボンの積層や素材を変更することで"柔"の部分を身にまとっている。
電動コンポーネント専用となるEMX-525
BB部分はシェル幅いっぱいにまで広げられ、剛性を確保している
圧倒的なボリュームを誇るヘッドチューブは1-1/8、1-1/2インチの上下異系ベアリングを備えることで安定したハンドリングとダンシングのロスを解消。更にフォークはクラウン部分がヘッドチューブとダウンチューブに入り込む形状とすることでエアロダイナミクスも狙う。同様にシートチューブ下側後方もリアホイールが収まる切り欠きが設けられている。
多角形で構成されるチェーンステーは機敏な反応を生み出すための左右比対称設計。フレームで唯一繊細な表情を見せる細いシートチューブはリアブレーキ下側で屈曲を設け、衝撃の吸収を狙う設計思想が見て取れる。そうして生まれたEMX-525は剛性面ではマーケットに存在する市販のバイクの平均値より、ヘッドチューブ周辺で67%(150Nm/)、BB周辺で50%上(215Nm/)回るという圧倒的な数値を実現するに至った。
左右比対称形状を採用するリアバック。屈曲を設けることで衝撃吸収製に寄与している
シートチューブ下側後方はえぐられ、空力を意識している
トップチューブ裏側に記されるEDDY MERCKXロゴ
更に設計上思い切った点として、電動コンポーネント専用にデザインされていることも特徴だとい言えるだろう。「究極のパフォーマンスを追求した結果」とのことだが、よりプロフェッショナルなライダーに向けた性格だと言えるだろう。
メルクスの偉大なる功績が与えられたEMX-525。このフラッグシップマシンをテストライダー両氏はどのように評価するのだろうか。インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「アルミフレームの乗り心地 レースのみをターゲットにしている」山添悟志(Squipe)
レースだけにターゲットを絞った剛性の高さが印象的。もし私がブラインドテストでこのフレームに乗ったら間違いなくアルミレーシングフレームと勘違いしそうなほどに硬く、フレームから聞こえてくる様々な反響音もアルミフレームが持つそれですね。とにかくスパルタンなフレームで、単純な脚力以外にも、振動や路面からの突き上げに対する耐久力が高いタフなライダーや競技者に向いていると感じました。カーボンの乗り心地に慣れている方だと驚かれると思います
「アルミフレームの乗り心地 レースのみをターゲットにしている」山添悟志(Squipe) ただ、この硬さをアルミフレームで作ろうとすると著しく耐久性の低いバイクができるはず。そんな硬さをより耐久性のあるカーボン素材で達成したことに意味があるのでしょう。
エッジの効いたデザインが硬さに大きく影響しているのでしょう。とにかくパワーがないと全開まで踏み切れませんが、'90年台後半から'00年代の初頭にかけて主流だったガチガチのアルミレーシングフレームの剛性感を持つフレームが好みのライダーにはお勧めですね。
ターゲットとなるユーザーを意図的に絞ったとも考えられるような剛性感ですね。サポートを行っているチームの中でこのフレームのような硬い乗り味が好きなライダーいるのか、もしくはエディ・メルクス自身が好みなのかも知れません。
単独の逃げが得意でトルクフルなペダリングで走り、エディ・メルクスが居を構えるベルギーのフランドル地方のレーサーの様なタフさを持つライダーこそ、このフレームの性能を生かせると思います。スプリントにも適しているとは思いますが、ホビーレーサーではゴール前の勝負まで脚をためておくことが重要ですね。
エディ・メルクスというと、スチールフレームが全盛だったころから他社とは少し異なったジオメトリーを採用していました。このEMX-525は剛性を以外はとてもシンプルな乗り味のフレームで、奇抜な形状にも関わらず前後左右の剛性バランスをしっかりと整えることが出来ているいう印象です。挙動もニュートラルで、タイトコーナーでも切り込んでいくことが出来ました。シッティングとダンシングどちらでもしっかりと走ってくれます。軽く硬いため非常に加速が得意ですが、高速巡航をする場合にはタフな脚力が求められます。
リア周りはタイヤとフレームのクリアランスがしっかりと確保されています。スポークの破断などによって突然ホイールが振れた場合に備えた設計で、メルクスの母国であるべルギーで春先に行われる石畳の上を通る様なクラシックレースで使用することを考慮した結果ではないでしょうか。前三角が大きいフレーム形状と幅広なトップチューブによって、重心がつかみやすいですね。ダンシングでもシッティングでも踏むポイントがぶれずに、軸がしっかりと把握できるため安定して踏み込むことができますね。
今回の試乗車にアッセンブルされていたWH-9000-C35-CLのようなミッドハイトのホイールは良くマッチしてくれると思います。しっかりとした耐久性のあるホイールが適しているのではないでしょうか。バイクに負けない脚力があればあらゆるシチュエーションで活躍してくれると思います。実業団であればE1やJPTなどトップアマチュアからプロレベルのライダーに。また、メルクスのバイクが好きな方や歴史に裏打ちされた性能を味わってみたいという方であれば検討する価値があるでしょう。
「プロのスプリンターが満足出来る剛性 短い上りが得意なフレーム」品川真寛(YOU CAN)
どんな速度域からでも加速出来ることが最大の魅力で、力が逃げるような印象が全くありませんでした。ヘッド周りとBB周辺の剛性感が特に高く、見た目の迫力通りの剛性感でした。スプリント系レースや平坦系レース向いています。
春のクラシックレースの様な高い速度域での安定感を狙っている印象があり、脚があるうちはガチャ踏みをしても問題なく進んでくれるでしょう。疲労が溜まってくると踏めなくなってしまう可能性が高いため、うまく終盤まで足を溜めて、ゴール前だけ全力を出すようなレース運びができれば、このバイクの持ち味を最大限に発揮することができるはずです。
「プロのスプリンターが満足出来る剛性 短い上りが得意なフレーム」品川真寛(YOU CAN)
硬いものの、突き上げが酷いわけではなく慣れれば問題なく乗れるレベルに収まっていると思います。リアブレーキ周辺の角ばった部分が振動吸収性に大きく寄与していますね。地形を問わずにパワーを掛ければ進んでくれるフレームで、荒れた路面では跳ねる感じもなくさらっとクリアできる点に完成度の高さを感じました。ただし、ロングライドにおススメできるほどの快適性ではないですね。あくまでレース用です。
修善寺や群馬CSCの様な短い上りを何度も上る様な周回コースが得意。上りでアタックする際にはライダーの出力を余すことなく推進力に変換してくれるでしょう。とにかく、大きな出力やトルクに応えてくれるフレームですね。淡々と登るような長い上りでも問題なく走ってくれますが、決して得意とは言えません。下りでは思った通りのラインをトレースでき、大きな安心感を感じました。
非常にマッシブなフレーム形状なので、トップチューブが膝にあたってしまう点は少し気になりました。前三角の大きさが安定感に寄与してるのではないでしょうか。ダンシングの際はリズムで自転車を振るというよりは低回転でゴリゴリと踏んだ時により進むので、このあたりも平坦やパワー系ライダーを考えての事だと思います。
試乗車にアッセンブルされていたシマノ WH-9000-C35-CLとの相性は良好で、このようなミッドハイトのホイールであれば上りも十分にこなせる組み合わせだと感じました。平坦に特化するのであれば、さらにリムハイトの高いホイールがおススメですね。ゴール前の勝負が得意なホビーレーサーにはおススメ。ロングライドには少し辛いかも知れませんが、ペダリングスキルがあるサイクリストであれば乗りこなせるでしょう。個性的なデザインが所有欲を十分に満たしてくれる一台だと思います。
エディ・メルクス EMX-525 photo:Makoto.Ayano/cyclowired.jp
エディ・メルクス EMX-525
フレーム:CL+600 square-curve / rigid designed frame
フォーク:エアロフォークII(1-1/8、1-1/2 テーパードヘッドチューブ)
BB規格:BB86
サイズ:48、50、52、54
カラー:ブラック/ホワイト/カーボン、レッド/ホワイト/カーボン
付属品:専用シートピラー、専用シートクランプ
フレーム価格:371,000円(税込)
インプレライダーのプロフィール
品川真寛(YOU CAN) 品川真寛(YOU CAN)
2003年に日本鋪道よりプロデビュー。2005年からシマノ・メモリーコープに移籍し、ヨーロッパに活躍の舞台を移す。パリ~ルーベやヘント〜ウェヴェルヘムをはじめ春のクラシックレースに多数出場。2008年から愛三工業レーシングに移籍。アジアのレースで入賞歴多数を誇る。2012年限りで引退し、現在はYOU CAN大磯店にて勤務する。愛称は「しなしな」。
YOU CAN
山添悟志(スポーツバイスクル・スキップ) 山添悟志(スポーツバイスクル・スキップ)
神奈川県厚木市に1996年にオープンしたロード系プロショップ、スポーツバイスクル・スキップの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
スポーツバイスクル スキップ
ウェア協力:VALETTE(バレット)
text:So.Isobe,Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO
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自転車競技史上類い稀かつ圧倒的な勝利数を誇るエディ・メルクス(ベルギー)。ハンニバルと称された氏は引退後、それまで自分のためにフレームを造り続けてくれた名匠ウーゴ・デローザの門戸を叩き、後に自身の名を冠したブランドを立ち上げた。
現役時代、ジロとツールを5回制し、史上初のトリプルクラウン(ツール、ジロ、世界選手権を同年に制覇すること)を成し遂げた理由の一つに、機材に関する執拗なまでのこだわりがあったと言われている。名匠の造るフレームの数々を乗り潰し、1年に50本ほどのフレームをオーダーし、さらにカンパニョーロには特注チタン製パーツを作らせるなど、その執着心は何度聞いても驚かされる。
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バイクの素材が鉄からアルミ、そしてカーボンへと変貌を遂げた現在においても、そんな彼の信条はエディ・メルクス社の理念として息づいている。フレームにあえて特殊素材を使うなどチャレンジ精神は衰えず、生み出されるバイクは常にその時代のトップチームへと供給される。プロチームと寄り添い共に歩むことでメルクスのバイクはたゆまぬ技術革新を行っているのである。
さて、今回のテストバイクは、同社フラッグシップのEMX-525である。「メルクス」「525」と聞いて、彼について良く知る方ならピンと来るものがあるだろう。そう、彼が打ち立てた今なお破られぬ現役通算勝利数だ。
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「究極のパフォーマンスを追求した」というEMX-525。その設計コンセプトは「ライダーの力を逃さず、すべてをコントロールできるパワーを備えること」だ。不必要な軽量化には目もくれず、プロ選手の—現役時代のメルクスのような大パワーを推進力に変換するために生まれたバイクである。
角の付けられた直線で構成される、圧倒的なボリューム感を誇るフレームは、忍び寄る豹や虎をイメージしてデザインされたもの。がっちりとパワーを受け止めるべく、独自にブレンドした600GPaクラスのカーボンを使用し、フレームの各部分でカーボンの積層や素材を変更することで"柔"の部分を身にまとっている。
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圧倒的なボリュームを誇るヘッドチューブは1-1/8、1-1/2インチの上下異系ベアリングを備えることで安定したハンドリングとダンシングのロスを解消。更にフォークはクラウン部分がヘッドチューブとダウンチューブに入り込む形状とすることでエアロダイナミクスも狙う。同様にシートチューブ下側後方もリアホイールが収まる切り欠きが設けられている。
多角形で構成されるチェーンステーは機敏な反応を生み出すための左右比対称設計。フレームで唯一繊細な表情を見せる細いシートチューブはリアブレーキ下側で屈曲を設け、衝撃の吸収を狙う設計思想が見て取れる。そうして生まれたEMX-525は剛性面ではマーケットに存在する市販のバイクの平均値より、ヘッドチューブ周辺で67%(150Nm/)、BB周辺で50%上(215Nm/)回るという圧倒的な数値を実現するに至った。
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更に設計上思い切った点として、電動コンポーネント専用にデザインされていることも特徴だとい言えるだろう。「究極のパフォーマンスを追求した結果」とのことだが、よりプロフェッショナルなライダーに向けた性格だと言えるだろう。
メルクスの偉大なる功績が与えられたEMX-525。このフラッグシップマシンをテストライダー両氏はどのように評価するのだろうか。インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「アルミフレームの乗り心地 レースのみをターゲットにしている」山添悟志(Squipe)
レースだけにターゲットを絞った剛性の高さが印象的。もし私がブラインドテストでこのフレームに乗ったら間違いなくアルミレーシングフレームと勘違いしそうなほどに硬く、フレームから聞こえてくる様々な反響音もアルミフレームが持つそれですね。とにかくスパルタンなフレームで、単純な脚力以外にも、振動や路面からの突き上げに対する耐久力が高いタフなライダーや競技者に向いていると感じました。カーボンの乗り心地に慣れている方だと驚かれると思います
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エッジの効いたデザインが硬さに大きく影響しているのでしょう。とにかくパワーがないと全開まで踏み切れませんが、'90年台後半から'00年代の初頭にかけて主流だったガチガチのアルミレーシングフレームの剛性感を持つフレームが好みのライダーにはお勧めですね。
ターゲットとなるユーザーを意図的に絞ったとも考えられるような剛性感ですね。サポートを行っているチームの中でこのフレームのような硬い乗り味が好きなライダーいるのか、もしくはエディ・メルクス自身が好みなのかも知れません。
単独の逃げが得意でトルクフルなペダリングで走り、エディ・メルクスが居を構えるベルギーのフランドル地方のレーサーの様なタフさを持つライダーこそ、このフレームの性能を生かせると思います。スプリントにも適しているとは思いますが、ホビーレーサーではゴール前の勝負まで脚をためておくことが重要ですね。
エディ・メルクスというと、スチールフレームが全盛だったころから他社とは少し異なったジオメトリーを採用していました。このEMX-525は剛性を以外はとてもシンプルな乗り味のフレームで、奇抜な形状にも関わらず前後左右の剛性バランスをしっかりと整えることが出来ているいう印象です。挙動もニュートラルで、タイトコーナーでも切り込んでいくことが出来ました。シッティングとダンシングどちらでもしっかりと走ってくれます。軽く硬いため非常に加速が得意ですが、高速巡航をする場合にはタフな脚力が求められます。
リア周りはタイヤとフレームのクリアランスがしっかりと確保されています。スポークの破断などによって突然ホイールが振れた場合に備えた設計で、メルクスの母国であるべルギーで春先に行われる石畳の上を通る様なクラシックレースで使用することを考慮した結果ではないでしょうか。前三角が大きいフレーム形状と幅広なトップチューブによって、重心がつかみやすいですね。ダンシングでもシッティングでも踏むポイントがぶれずに、軸がしっかりと把握できるため安定して踏み込むことができますね。
今回の試乗車にアッセンブルされていたWH-9000-C35-CLのようなミッドハイトのホイールは良くマッチしてくれると思います。しっかりとした耐久性のあるホイールが適しているのではないでしょうか。バイクに負けない脚力があればあらゆるシチュエーションで活躍してくれると思います。実業団であればE1やJPTなどトップアマチュアからプロレベルのライダーに。また、メルクスのバイクが好きな方や歴史に裏打ちされた性能を味わってみたいという方であれば検討する価値があるでしょう。
「プロのスプリンターが満足出来る剛性 短い上りが得意なフレーム」品川真寛(YOU CAN)
どんな速度域からでも加速出来ることが最大の魅力で、力が逃げるような印象が全くありませんでした。ヘッド周りとBB周辺の剛性感が特に高く、見た目の迫力通りの剛性感でした。スプリント系レースや平坦系レース向いています。
春のクラシックレースの様な高い速度域での安定感を狙っている印象があり、脚があるうちはガチャ踏みをしても問題なく進んでくれるでしょう。疲労が溜まってくると踏めなくなってしまう可能性が高いため、うまく終盤まで足を溜めて、ゴール前だけ全力を出すようなレース運びができれば、このバイクの持ち味を最大限に発揮することができるはずです。
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硬いものの、突き上げが酷いわけではなく慣れれば問題なく乗れるレベルに収まっていると思います。リアブレーキ周辺の角ばった部分が振動吸収性に大きく寄与していますね。地形を問わずにパワーを掛ければ進んでくれるフレームで、荒れた路面では跳ねる感じもなくさらっとクリアできる点に完成度の高さを感じました。ただし、ロングライドにおススメできるほどの快適性ではないですね。あくまでレース用です。
修善寺や群馬CSCの様な短い上りを何度も上る様な周回コースが得意。上りでアタックする際にはライダーの出力を余すことなく推進力に変換してくれるでしょう。とにかく、大きな出力やトルクに応えてくれるフレームですね。淡々と登るような長い上りでも問題なく走ってくれますが、決して得意とは言えません。下りでは思った通りのラインをトレースでき、大きな安心感を感じました。
非常にマッシブなフレーム形状なので、トップチューブが膝にあたってしまう点は少し気になりました。前三角の大きさが安定感に寄与してるのではないでしょうか。ダンシングの際はリズムで自転車を振るというよりは低回転でゴリゴリと踏んだ時により進むので、このあたりも平坦やパワー系ライダーを考えての事だと思います。
試乗車にアッセンブルされていたシマノ WH-9000-C35-CLとの相性は良好で、このようなミッドハイトのホイールであれば上りも十分にこなせる組み合わせだと感じました。平坦に特化するのであれば、さらにリムハイトの高いホイールがおススメですね。ゴール前の勝負が得意なホビーレーサーにはおススメ。ロングライドには少し辛いかも知れませんが、ペダリングスキルがあるサイクリストであれば乗りこなせるでしょう。個性的なデザインが所有欲を十分に満たしてくれる一台だと思います。
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エディ・メルクス EMX-525
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フォーク:エアロフォークII(1-1/8、1-1/2 テーパードヘッドチューブ)
BB規格:BB86
サイズ:48、50、52、54
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付属品:専用シートピラー、専用シートクランプ
フレーム価格:371,000円(税込)
インプレライダーのプロフィール
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2003年に日本鋪道よりプロデビュー。2005年からシマノ・メモリーコープに移籍し、ヨーロッパに活躍の舞台を移す。パリ~ルーベやヘント〜ウェヴェルヘムをはじめ春のクラシックレースに多数出場。2008年から愛三工業レーシングに移籍。アジアのレースで入賞歴多数を誇る。2012年限りで引退し、現在はYOU CAN大磯店にて勤務する。愛称は「しなしな」。
YOU CAN
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神奈川県厚木市に1996年にオープンしたロード系プロショップ、スポーツバイスクル・スキップの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
スポーツバイスクル スキップ
ウェア協力:VALETTE(バレット)
text:So.Isobe,Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO
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