レース終盤にかけて連続して登場する1級山岳と3級山岳で先行した2人が逃げ切り。フグルサングとの一騎打ちを制したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が、1年前に亡くなったチームメイトに捧げるステージ優勝を飾った。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013第7ステージ・コース高低図クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013第7ステージ・コース高低図 image:A.S.O.クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第7ステージはさながらツール第18ステージのリハーサルだ。レース前半に登場する超級山岳ラルプ・デュエズ、2級山岳サレン峠、1級山岳オモン峠の組み合わせはツールと共通だ。

アルプス山脈を行く一日アルプス山脈を行く一日 photo:Cor Vosツール第18ステージはラルプ・デュエズを再び登り返してゴールを迎えるが、この日は1級山岳ノイェル峠を越えてから3級山岳シュペルデヴォリュイにゴールする。この2つの山岳がバトルを生んだ。

逃げグループに入ったユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)逃げグループに入ったユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル) photo:Cor Vos総合9位のレオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンデューラ)やステージ優勝者エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)らを欠くプロトンからレース序盤に飛び出したのは22名。この大きな逃げグループをスカイプロサイクリングが追走する展開に。

先行するヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)とサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)先行するヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)とサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) photo:Cor Vosピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)やユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)、トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)を始め、総合順位を落としている選手たちで構成された逃げグループは、4分のリードを得て超級山岳ラルプ・デュエズと2級山岳サレン峠をクリア。マイヨルージュ・アポワ・ブランのトマ・ダムソー(フランス、アルゴス・シマノ)が積極的に山岳ポイントを獲得する。

ロジャースのためにメイン集団をリードするアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)ロジャースのためにメイン集団をリードするアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) photo:Cor Vos続く1級山岳オモン峠で逃げグループは縮小し、1級山岳ノイェル峠で先頭はシャヴァネルとアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)の2人に絞られる。スカイプロサイクリングが徹底的にコントロールするメイン集団ではリタイア者が続出し、この日だけで17名が途中リタイア。別府史之(オリカ・グリーンエッジ)もレース中盤でバイクを降りた。

1級山岳ノイェル峠の本格的な登りが始まると総合上位陣の闘いが始まる。まずはアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が攻撃を仕掛けてホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が合流。しかしこの動きはアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)によって封じ込められる。

先頭ではシャヴァネルを振り切ったデマルキがしばらく独走したものの、ハイペースで進むメイン集団にラスト14km地点で吸収。前日にリーダージャージを失った総合3位のローハン・デニス(オーストラリア、ガーミン・シャープ)が脱落すると、今度はサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が攻撃に出た。

1級山岳ノイェル峠の頂上2km手前で飛び出したサンチェスにはヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)が合流。サンチェスとフグルサングの2人は、総合4位マイケル・ロジャース(オーストラリア)のためにメイン集団を献身的に引っ張るコンタドールを7秒引き離して頂上をクリアする。短い下り区間を経て、最後の3級山岳シュペルデヴォリュイの登りに突入した。

平均勾配5.7%・登坂距離4kmの登りが始まると、先頭ではフグルサングがペースアップ。サンチェスが口を大きく開けて喘ぐ素振りを見せながら食らいつく。その20秒後方、コンタドールが率いる10名弱のメイン集団からはロドリゲスやダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)がアタックしたが決まらない。

ラスト1kmを切ってからメイン集団を飛び出した総合2位リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)の追い込みも届かず、最後はフグルサングとサンチェスの一騎打ちに。後方で力を貯めたサンチェスが抜群のスパートで先着した。

フグルサングを振り切ってゴールするサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)フグルサングを振り切ってゴールするサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) photo:Riccardo Scanferla
チームメイトと喜ぶサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)チームメイトと喜ぶサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) photo:Riccardo Scanferla「特にラスト3kmは苦しんだよ。強いフグルサングに全力で食らいついて勝負に持ち込むことが出来た」と語る北京五輪金メダリストのサンチェス。今シーズン初勝利を、昨年9月にトレーニング中の事故で亡くなったチームメイトのビクトル・カベド(スペイン)に捧げた。

「チームとして今シーズン2勝を飾っていたけど、UCIワールドツアーレースでは0勝だったんだ。僕自身はツール・ド・フランスに出場せずに休息期間に入るジロ・デ・イタリアで思うような結果を残せなかったので、ツール・ド・フランスを前に、チームに勝利をもたらせて嬉しい」。

この日は断続的にアタックが仕掛けられたが、スカイがほぼ全てのアタックを封じ込めた。クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)が総合首位を守るとともに、総合2位ポルトがリードを広げることに成功している。コンタドールのアシストを受けたロジャースが総合3位に浮上した。

総合争いは翌日の最終第8ステージで決着。ラスト36km地点で1級山岳ヴァル峠(登坂距離10.4km・平均勾配6.9%)を越え、最後は1級山岳リスル(登坂距離13.9km・平均勾配6.7%)を駆け上がってゴールを迎える。フルームは「明日は標高2000m以上まで登るハードなステージ。でも状況はコントロール下にある」と自信を見せている。

北京五輪金メダリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)のシューズ北京五輪金メダリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)のシューズ photo:Riccardo Scanferla自信に溢れた表情でレース後の記者会見に望むクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)自信に溢れた表情でレース後の記者会見に望むクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferla

選手コメントはレース公式サイトより。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013第7ステージ結果
1位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)            5h26'14"
2位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ) 
3位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)          +15"
4位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                 +16"
5位 スタフ・クレメント(オランダ、ブランコプロサイクリング)
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
7位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)
8位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)
9位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)
10位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)          +23"
DNF 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)

個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)          25h00'13"
2位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)          +51"
3位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)         +1'37"
4位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                +1'47"
5位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)                +1'49"
6位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)                +2'04"
7位 スタフ・クレメント(オランダ、ブランコプロサイクリング)          +2'32"
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              +2'47"
9位 ローハン・デニス(オーストラリア、ガーミン・シャープ)           +2'48"
10位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)         +2'56"

ポイント賞
ジャンニ・メールスマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)

山岳賞
トマ・ダムソー(フランス、アルゴス・シマノ)

新人賞
ローハン・デニス(オーストラリア、ガーミン・シャープ)

チーム総合成績
スカイプロサイクリング

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos
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