2013/06/03(月) - 17:23
5月26日、今年で第5回目となるアルプスあづみのセンチュリーライド2013が開催された。澄み渡る信州の爽やかな気候のもと、1,547人が参加した。今年も編集部の実走レポートでお届けしよう。
開催5回目の歴史の新しさながら、申し込み開始後まもなく定員に達するクラスが出るほどの人気大会となった通称「AACR」ことアルプスあづみのセンチュリーライド。まずは前日土曜の様子からお伝えします。
タケヤ、雷太、梨絵 3人のオリンピアンがサポートしてくれる充実のウェルカムイベント
前日受付とウェルカムイベントが開催される会場となる梓川沿いの公共の宿、梓水苑(しすいえん)前には、昼ごろより続々と参加者がやってくる。前日受付のため宿泊が伴うから、午前中に松本城や市内を観光してから会場入りする人も多いと訊く。そして午後から続くトークショーなど様々なイベントを楽しみにしているのだ。
今年は鈴木雷太さん、竹谷賢二さん、小田島梨絵さんという、なんと元オリンピック選手が3人揃うという超豪華メンバーによるウェルカムイベントとなった。
CW編集スタッフはまず11時からの小田島梨絵さんの女子会ツーリングに同行取材。女性限定のライドで美味しいお蕎麦を食べに行く楽しいライドだった。
午前10時からは10人の定員による小メニュー、鈴木雷太さんの「セーフティライド」実習講習が行われていた。これはロードバイク初心者向けのライディング講習会で、大人数での公道ライドで必要な「ハンドサイン」(手信号)ができるように、雷太さんが一緒に走りながらやり方を教えてくれるというものだ。
「停まるよ」「スピード落として」「右に寄るよ」「道路に穴があるから気をつけて」等、集団で走るときに後方の人に自分の動きや注意点をうまく伝える方法を教えてくれる。この手信号や声の出し方は小田島さんの女子ライド中にも教えてくれた。
この大会はロングライド入門者に人気が高いので、ビギナーの心配事に対応するメニューをちゃんと用意してくれているのが嬉しい。手信号や注意喚起の声の出し方は、身に着けていれば不用意な事故に合う確率をぐっと減らしてくれるのだ。
そして今年からこの大会に導入されたのが事前の自転車検査制度だ。これは最寄りのサイクルショップ(大会協力店)に自転車を持ち込んで、各部を点検・整備してもらう制度で、チェックシートの項目を検査して自転車を完璧な状態にしてからあづみのに来てもらおうというもの。
確かに出発前の手間は増えるものの、この制度を採用してみればメカトラブルが驚くほど減るという。
雷太さん曰く、「これを行うと行わないとでは大違い。以前はスタート直後にマヴィックのスタッフがヘルプしきれないほどのトラブルが続出していたのが、事前検車を行うだけでそんな事態がまったく起こらなくなるんです」とか。
「面倒だ」と不満を言っていた人が、検車に持ち込んでみると自分で気づかなかったメカトラのタネが発見できて逆に感謝されるケースが多いとか(これについては後でも触れます)。
竹谷さんや梨絵さんによるトークショー、スポーツアロママッサージのレクチャーなど、ロングライドに役に立つステージイベントが続いて、会場にいても飽きることがない。協賛ブースのスペシャライズド、ピナレロ、インターマックス他の試乗会も、走りやすい公道(コースの一部)の周回コースが用意され、好評だ。
そしてフェイスブックで呼びかけられた、地元の「松本ぽたりんぐクラブ」がプロデュースする「AACR土曜のぽたりんぐ」もあって、どうやら楽しいらしい。
吹き抜ける風が爽やかで居るだけで気持ちのいい会場を後に、参加者たちは明日に備えて宿へ。市内のあちこちでそれぞれ郷土料理とお酒の前夜祭の宴が催されたことだろう。
2年連続の晴天が嬉しい! 爽やかな風を感じながら残雪の白馬連峰を目指す
アルプスあづみのセンチュリーライドの舞台となるのは長野県松本市・安曇野市・松川村・大町市・白馬村一帯。大まかには松本から北上し、白馬まで行って帰ってくるというコース設定だ。基本は往復コースになっているので、つらくなったら折り返せるというのもメリットだ。これは雷太さんがホノルルセンチュリーライドに得たノウハウで採用したとか。
スタート第1便は朝6時、160kmコース早出組からの出発だ。160kmクラスは3分割のウェーブスタートとなり、それぞれ30分おきに出発。距離の短い120km、80km、40kmクラスと時間差でスタートしていく。
CW編集部は今年もメタボ会長を含む3人での実走取材参加だ。今回で2回めの出場だが、昨年に続いて晴天。過去雨に悩んできた大会だけに、勝手に「我々って晴れメンズ」(笑)ということにして走りだす。
「晴れれば9割成功したようなもの」と雷太さん。雨が降ると信州は5月でも震えるほど寒くなるからだ。ちなみに雷太さんは昨年はMTB全日本選手権と日程が重なり、コーチとして行く必要があったため走れなかった。今年は新デザインのBIKE RANCHのクラブウェアに身を包み、仲間と一緒に走ることに。
朝の爽やかな空気を吸いつつ、小グループでスタートしていく。リンゴ畑を抜けて、穂高エイドへ。ここでは地元の銘菓「あずさ」と「湯多里饅頭」が配られる。小腹を満たせばすぐ向こうには安曇野のシンボルである常念岳の冠雪した山容が眺められる。
次の大町エイドまでは平坦基調の一本道。グループをつくってドラフティングしながら快調に進む。水田の風景の向こうに、目指す白馬連峰がかすかに見えている。
大町エイドは少し奥まった、「国営アルプスあづみの公園」のなかの、森の小径をしばらく走ると辿り着くところにある。
メインルートからは迂回路の先にあり、立ち寄らずにショートカットすることもできるのだが、ここでは「まってました」の恒例のおにぎりが登場する。炊き上げられたつやつやの白米おにぎりに、ねぎ味噌や辛味噌をつけて食べるのだが、これが絶品。だからやっぱりこのエイドに立ち寄るのは絶対に外せない。わらび餅も好評。ここに立ち寄る皆が少し長めに休んでいくようだ。
ちなみにここが80kmコースの人たちの折り返しポイントだ。
この大町エイド、その先の大町温泉郷エイドと木崎湖エイドの3箇所は、大町の魅力を伝えるNPO法人「ぐるったネットワーク大町」の皆さんがおもてなしを担当していて、心のこもった「地物」の補給食を用意してくれるのだ。
「地元からのおもてなし」と、去年以上の「安全」を心がけたという今大会。この美味しいおにぎりを食べただけでそのお接待の真心が伝わってくる。この先の道中が楽しみになる。
ところで120km参加者限定の木崎湖エイドでは、地元産大豆を使ったこだわり冷奴や、こだわりあんこと紫米のおこわを包んだおやきが供されたそうだ。
ここまで走って、参加者たちのメカトラブルが少ないことに気がつく。不運のパンク以外のトラブルで立ち往生している人をほとんど見なかったのだ。これには驚いた。
通常のロングライドイベントではコースのあちこちで自転車のトラブルで停まっている人を見かけるものだが、それが少ない。パンクさえ少ないようで、「これはやっぱり事前の車検制度が効いているな」、と感心する。これは他のイベントも参考にすべきだと思った。
もっとも、何かあってもニュートラルサポートでお馴染みのマヴィック部隊が来ているのも安心だ。レースでもないのに、そこまで手厚いのは他大会にない特色だ。
大町エイドを出て、川にかかる橋を渡る。新緑を映しこんだような清流と、冠雪の白馬連峰が見えている。皆、立ち止まっては記念撮影。
10kmの平坦路を走った後に待っているのは、斜度3%、梓川の支流を横目に直線的に登る2.7kmの緩いダラダラ坂。これがけっこうきつい。まあでも、悪魔おじさんのコスプレのママチャリに乗った人も押さずに登っているぐらいです(でも走り慣れた人ならへっちゃら)。
続く大町温泉郷エイドでは、なにやら長蛇の列。昨年、編集部スタッフは序盤に身近に起こった落車事故の対応をしていて、このエイドに立ち寄れなかったのだが、今年は余裕を持って到着することができた。
すると、待っていたのはお漬物のオンパレード(笑)。きゅうり、キャベツ、大根、人参、エリンギ、セロリなどなど信州野菜を使ったいろんなタイプのお漬物と、野菜の和え物などがずらりと並ぶ。
こちらでも「ぐるったネットワーク大町」のおばちゃんたちが威勢よくおすすめしてくれる。この手作り野菜の漬物、和え物、惣菜の美味しいこと。素材がいいと「野菜は最高のごちそう」と唸ってしまう。汗をかいた後だけにしょっぱいものは美味しいが、喉が余計に渇かないように塩分控えめの味付けにしてくれているそうです。細やかな心遣いが嬉しい!
そして、参加者にすっかりお馴染みの手作り洋菓子&カフェの「アン・マリーレ」さんによる新作補給食「一口ドーナッツ」が配布された。ウィーンや軽井沢、小淵沢で修行した若きパティシエの味が嬉しい!。
エイドから少し走りだしたところにある店舗では、淹れたて珈琲とパリ・ブレストが楽しめるとあって、そちらでゆっくりお茶休憩をとる常連サイクリストも。アン・マリーレさん、いつも応援ありがとうございます。
この大会にはグルメフォンド的なキャッチコピーは無いが、もはやそう名乗ってもいいほどだと思う。
北大町からは高原地帯へと入っていく。神城・飯森あたりで再び国道148号線周辺に戻るまでは、続く坂に苦しめられるのだ。
厳しいのが31号線の約4kmの登り坂。平均勾配は4.6パーセント。約67km地点の標高957mの峠がコース中最高標高地点だ。
そして美麻まで一度下り、大町街道の33号線に出て、美麻トンネルの迂回路の旧道へ。31号線を外れ、細くて険しい峠道が待っている。
この頂上は「峠」という、そのまんまの名前の看板がある峠だが、蛇行する人が続出。気温も高くなってきたので、余計にきつく感じられる。
神城へと下り、148号線に戻れば難関はクリアした気分になる。この160kmコースは前半部分に坂をもってきて、後半は厳しくないように設定されている。序盤に苦しんで、後半は楽に帰ってこれるようにという「行きはよいよい帰りは怖い」の逆設定なのだ。
飯森あたりから眼前に白馬連峰の白い山肌が圧倒的な迫力で迫ってくる。冬が厳しかった今年、残雪の量は例年にないほど多く、白い山の美しさがいつにも増して輝いている。
折り返し地点となる八方尾根の白馬47スキー場のジャンプ台が見えてきた。
この一帯、手作りジェラート屋やソフトクリーム屋さんが軒を連ねるようになり、
立ち寄りする人が続出(笑)。気温はぐんぐん上昇して、32度にまで上がった。それでも尚爽やかさを感じるのは信州ならではだ。
ジャンプ台の下では豚汁でのんびり休憩。ここでお父さんと一緒に11歳で160kmに挑戦している稲川槙志(まきし)君に出会う。身体は小さいが、余裕たっぷりの頼もしさ! 走る皆が「ガンバレ」と声援を送っていた。
折り返しての帰路へ。青木湖、中綱湖、木崎湖の「仁科三湖」沿いの道を走る。バイパスが整備されたため、ほんの数年前は主要道だった道が、今はのどかな田舎道になっている。素朴な集落と湖眺めながら走る、風情があって自転車で走りやすい湖畔の道だ。
暑さが増して、我々取材班もコンビニで休憩ストップ。アイスクリームをぱくつく。そんなことなら手作りジェラート屋に立ち寄ればよいのだが、そこは仕事なので並ぶ時間がもったいないのだ(笑)。
随行マヴィックカーもここでひと休憩。どうやらマヴィック関係者の社員さんたちも大勢で参加している模様で、ここで集合している。黄色いサポートカーと最後の打ち合わせをして、いざ安曇野エリアへ。
有名なアートヒルズへの坂が、白馬で折り返してから最大の難所だろうか。ほんの数10メートルの標高差を駆け上がれば、安曇野の風景が眼下に広がる。
脚のなくなった仲間をサポートしてあげるチームの姿が目に入る。そしてここにも手作りソフトクリーム屋さんがあります。
りんご畑を抜け、見覚えのある風景が。松本市郊外のメイン会場に帰ってくるのはあっと言う間だった。アートヒルズ坂以外はたいした上りがないので、まさに「帰りはヨイヨイ」だ。
肌の日焼けも心地よく、メイン会場ではメインブース上で記念写真撮影のサービスがある。そして梓水苑のお風呂で汗を流し、日焼けした肌を感じつつ楽しかった一日を振り返る。
昨年に引き続き、今年度も160kmを走りきった編集スタッフの感想は「昨年度大会と変わりなく、同じように最高だったね」というものだった。運営がいっそう洗練され、今年は安全をテーマに掲げただけあってコースのあちこちの誘導スタッフの注意喚起と誘導が的確かつ親切でとても良かったと感じた。
2年連続の晴天。気候の良さ、コースの良さ、景観の良さ。どれをとっても素晴らしいロングライドだ。参加した人の評判が良く、実際の満足度も高いこの大会。今年も参加定員をあえて増やさずに内容の充実を図った。
大会のキャッチフレーズに使われる「美しい日本のロングライド」という言葉は、走ってみると納得できる。
5月下旬という最高の季節に、美しさがピークを迎える一帯を走る。それだけで成功がほぼ約束されているようなもの。実際、上がった写真はどの大会と比べてもいちばんフォトジェニックだ。
そしてこの「AACR」と姉妹大会とも言える北アルプス山麓グランフォンドが9月7・8日に開催される。こちらも雷太さんがコースアドバイザーをつとめ、アルプスあづみのセンチュリーライドの運営スタッフともノウハウを共有し、初秋の同エリアを楽しめるのでおすすめだ。コースはAACRと少し被る、最長100km・70km・30kmコースで、その主催スタッフの皆さんもAARCを走って体験していた。
photo&text:Makoto.AYANO
編集部撮影の全写真によるフォトアルバム(CW FaceBook)
開催5回目の歴史の新しさながら、申し込み開始後まもなく定員に達するクラスが出るほどの人気大会となった通称「AACR」ことアルプスあづみのセンチュリーライド。まずは前日土曜の様子からお伝えします。
タケヤ、雷太、梨絵 3人のオリンピアンがサポートしてくれる充実のウェルカムイベント
前日受付とウェルカムイベントが開催される会場となる梓川沿いの公共の宿、梓水苑(しすいえん)前には、昼ごろより続々と参加者がやってくる。前日受付のため宿泊が伴うから、午前中に松本城や市内を観光してから会場入りする人も多いと訊く。そして午後から続くトークショーなど様々なイベントを楽しみにしているのだ。
今年は鈴木雷太さん、竹谷賢二さん、小田島梨絵さんという、なんと元オリンピック選手が3人揃うという超豪華メンバーによるウェルカムイベントとなった。
CW編集スタッフはまず11時からの小田島梨絵さんの女子会ツーリングに同行取材。女性限定のライドで美味しいお蕎麦を食べに行く楽しいライドだった。
午前10時からは10人の定員による小メニュー、鈴木雷太さんの「セーフティライド」実習講習が行われていた。これはロードバイク初心者向けのライディング講習会で、大人数での公道ライドで必要な「ハンドサイン」(手信号)ができるように、雷太さんが一緒に走りながらやり方を教えてくれるというものだ。
「停まるよ」「スピード落として」「右に寄るよ」「道路に穴があるから気をつけて」等、集団で走るときに後方の人に自分の動きや注意点をうまく伝える方法を教えてくれる。この手信号や声の出し方は小田島さんの女子ライド中にも教えてくれた。
この大会はロングライド入門者に人気が高いので、ビギナーの心配事に対応するメニューをちゃんと用意してくれているのが嬉しい。手信号や注意喚起の声の出し方は、身に着けていれば不用意な事故に合う確率をぐっと減らしてくれるのだ。
そして今年からこの大会に導入されたのが事前の自転車検査制度だ。これは最寄りのサイクルショップ(大会協力店)に自転車を持ち込んで、各部を点検・整備してもらう制度で、チェックシートの項目を検査して自転車を完璧な状態にしてからあづみのに来てもらおうというもの。
確かに出発前の手間は増えるものの、この制度を採用してみればメカトラブルが驚くほど減るという。
雷太さん曰く、「これを行うと行わないとでは大違い。以前はスタート直後にマヴィックのスタッフがヘルプしきれないほどのトラブルが続出していたのが、事前検車を行うだけでそんな事態がまったく起こらなくなるんです」とか。
「面倒だ」と不満を言っていた人が、検車に持ち込んでみると自分で気づかなかったメカトラのタネが発見できて逆に感謝されるケースが多いとか(これについては後でも触れます)。
竹谷さんや梨絵さんによるトークショー、スポーツアロママッサージのレクチャーなど、ロングライドに役に立つステージイベントが続いて、会場にいても飽きることがない。協賛ブースのスペシャライズド、ピナレロ、インターマックス他の試乗会も、走りやすい公道(コースの一部)の周回コースが用意され、好評だ。
そしてフェイスブックで呼びかけられた、地元の「松本ぽたりんぐクラブ」がプロデュースする「AACR土曜のぽたりんぐ」もあって、どうやら楽しいらしい。
吹き抜ける風が爽やかで居るだけで気持ちのいい会場を後に、参加者たちは明日に備えて宿へ。市内のあちこちでそれぞれ郷土料理とお酒の前夜祭の宴が催されたことだろう。
2年連続の晴天が嬉しい! 爽やかな風を感じながら残雪の白馬連峰を目指す
アルプスあづみのセンチュリーライドの舞台となるのは長野県松本市・安曇野市・松川村・大町市・白馬村一帯。大まかには松本から北上し、白馬まで行って帰ってくるというコース設定だ。基本は往復コースになっているので、つらくなったら折り返せるというのもメリットだ。これは雷太さんがホノルルセンチュリーライドに得たノウハウで採用したとか。
スタート第1便は朝6時、160kmコース早出組からの出発だ。160kmクラスは3分割のウェーブスタートとなり、それぞれ30分おきに出発。距離の短い120km、80km、40kmクラスと時間差でスタートしていく。
CW編集部は今年もメタボ会長を含む3人での実走取材参加だ。今回で2回めの出場だが、昨年に続いて晴天。過去雨に悩んできた大会だけに、勝手に「我々って晴れメンズ」(笑)ということにして走りだす。
「晴れれば9割成功したようなもの」と雷太さん。雨が降ると信州は5月でも震えるほど寒くなるからだ。ちなみに雷太さんは昨年はMTB全日本選手権と日程が重なり、コーチとして行く必要があったため走れなかった。今年は新デザインのBIKE RANCHのクラブウェアに身を包み、仲間と一緒に走ることに。
朝の爽やかな空気を吸いつつ、小グループでスタートしていく。リンゴ畑を抜けて、穂高エイドへ。ここでは地元の銘菓「あずさ」と「湯多里饅頭」が配られる。小腹を満たせばすぐ向こうには安曇野のシンボルである常念岳の冠雪した山容が眺められる。
次の大町エイドまでは平坦基調の一本道。グループをつくってドラフティングしながら快調に進む。水田の風景の向こうに、目指す白馬連峰がかすかに見えている。
大町エイドは少し奥まった、「国営アルプスあづみの公園」のなかの、森の小径をしばらく走ると辿り着くところにある。
メインルートからは迂回路の先にあり、立ち寄らずにショートカットすることもできるのだが、ここでは「まってました」の恒例のおにぎりが登場する。炊き上げられたつやつやの白米おにぎりに、ねぎ味噌や辛味噌をつけて食べるのだが、これが絶品。だからやっぱりこのエイドに立ち寄るのは絶対に外せない。わらび餅も好評。ここに立ち寄る皆が少し長めに休んでいくようだ。
ちなみにここが80kmコースの人たちの折り返しポイントだ。
この大町エイド、その先の大町温泉郷エイドと木崎湖エイドの3箇所は、大町の魅力を伝えるNPO法人「ぐるったネットワーク大町」の皆さんがおもてなしを担当していて、心のこもった「地物」の補給食を用意してくれるのだ。
「地元からのおもてなし」と、去年以上の「安全」を心がけたという今大会。この美味しいおにぎりを食べただけでそのお接待の真心が伝わってくる。この先の道中が楽しみになる。
ところで120km参加者限定の木崎湖エイドでは、地元産大豆を使ったこだわり冷奴や、こだわりあんこと紫米のおこわを包んだおやきが供されたそうだ。
ここまで走って、参加者たちのメカトラブルが少ないことに気がつく。不運のパンク以外のトラブルで立ち往生している人をほとんど見なかったのだ。これには驚いた。
通常のロングライドイベントではコースのあちこちで自転車のトラブルで停まっている人を見かけるものだが、それが少ない。パンクさえ少ないようで、「これはやっぱり事前の車検制度が効いているな」、と感心する。これは他のイベントも参考にすべきだと思った。
もっとも、何かあってもニュートラルサポートでお馴染みのマヴィック部隊が来ているのも安心だ。レースでもないのに、そこまで手厚いのは他大会にない特色だ。
大町エイドを出て、川にかかる橋を渡る。新緑を映しこんだような清流と、冠雪の白馬連峰が見えている。皆、立ち止まっては記念撮影。
10kmの平坦路を走った後に待っているのは、斜度3%、梓川の支流を横目に直線的に登る2.7kmの緩いダラダラ坂。これがけっこうきつい。まあでも、悪魔おじさんのコスプレのママチャリに乗った人も押さずに登っているぐらいです(でも走り慣れた人ならへっちゃら)。
続く大町温泉郷エイドでは、なにやら長蛇の列。昨年、編集部スタッフは序盤に身近に起こった落車事故の対応をしていて、このエイドに立ち寄れなかったのだが、今年は余裕を持って到着することができた。
すると、待っていたのはお漬物のオンパレード(笑)。きゅうり、キャベツ、大根、人参、エリンギ、セロリなどなど信州野菜を使ったいろんなタイプのお漬物と、野菜の和え物などがずらりと並ぶ。
こちらでも「ぐるったネットワーク大町」のおばちゃんたちが威勢よくおすすめしてくれる。この手作り野菜の漬物、和え物、惣菜の美味しいこと。素材がいいと「野菜は最高のごちそう」と唸ってしまう。汗をかいた後だけにしょっぱいものは美味しいが、喉が余計に渇かないように塩分控えめの味付けにしてくれているそうです。細やかな心遣いが嬉しい!
そして、参加者にすっかりお馴染みの手作り洋菓子&カフェの「アン・マリーレ」さんによる新作補給食「一口ドーナッツ」が配布された。ウィーンや軽井沢、小淵沢で修行した若きパティシエの味が嬉しい!。
エイドから少し走りだしたところにある店舗では、淹れたて珈琲とパリ・ブレストが楽しめるとあって、そちらでゆっくりお茶休憩をとる常連サイクリストも。アン・マリーレさん、いつも応援ありがとうございます。
この大会にはグルメフォンド的なキャッチコピーは無いが、もはやそう名乗ってもいいほどだと思う。
北大町からは高原地帯へと入っていく。神城・飯森あたりで再び国道148号線周辺に戻るまでは、続く坂に苦しめられるのだ。
厳しいのが31号線の約4kmの登り坂。平均勾配は4.6パーセント。約67km地点の標高957mの峠がコース中最高標高地点だ。
そして美麻まで一度下り、大町街道の33号線に出て、美麻トンネルの迂回路の旧道へ。31号線を外れ、細くて険しい峠道が待っている。
この頂上は「峠」という、そのまんまの名前の看板がある峠だが、蛇行する人が続出。気温も高くなってきたので、余計にきつく感じられる。
神城へと下り、148号線に戻れば難関はクリアした気分になる。この160kmコースは前半部分に坂をもってきて、後半は厳しくないように設定されている。序盤に苦しんで、後半は楽に帰ってこれるようにという「行きはよいよい帰りは怖い」の逆設定なのだ。
飯森あたりから眼前に白馬連峰の白い山肌が圧倒的な迫力で迫ってくる。冬が厳しかった今年、残雪の量は例年にないほど多く、白い山の美しさがいつにも増して輝いている。
折り返し地点となる八方尾根の白馬47スキー場のジャンプ台が見えてきた。
この一帯、手作りジェラート屋やソフトクリーム屋さんが軒を連ねるようになり、
立ち寄りする人が続出(笑)。気温はぐんぐん上昇して、32度にまで上がった。それでも尚爽やかさを感じるのは信州ならではだ。
ジャンプ台の下では豚汁でのんびり休憩。ここでお父さんと一緒に11歳で160kmに挑戦している稲川槙志(まきし)君に出会う。身体は小さいが、余裕たっぷりの頼もしさ! 走る皆が「ガンバレ」と声援を送っていた。
折り返しての帰路へ。青木湖、中綱湖、木崎湖の「仁科三湖」沿いの道を走る。バイパスが整備されたため、ほんの数年前は主要道だった道が、今はのどかな田舎道になっている。素朴な集落と湖眺めながら走る、風情があって自転車で走りやすい湖畔の道だ。
暑さが増して、我々取材班もコンビニで休憩ストップ。アイスクリームをぱくつく。そんなことなら手作りジェラート屋に立ち寄ればよいのだが、そこは仕事なので並ぶ時間がもったいないのだ(笑)。
随行マヴィックカーもここでひと休憩。どうやらマヴィック関係者の社員さんたちも大勢で参加している模様で、ここで集合している。黄色いサポートカーと最後の打ち合わせをして、いざ安曇野エリアへ。
有名なアートヒルズへの坂が、白馬で折り返してから最大の難所だろうか。ほんの数10メートルの標高差を駆け上がれば、安曇野の風景が眼下に広がる。
脚のなくなった仲間をサポートしてあげるチームの姿が目に入る。そしてここにも手作りソフトクリーム屋さんがあります。
りんご畑を抜け、見覚えのある風景が。松本市郊外のメイン会場に帰ってくるのはあっと言う間だった。アートヒルズ坂以外はたいした上りがないので、まさに「帰りはヨイヨイ」だ。
肌の日焼けも心地よく、メイン会場ではメインブース上で記念写真撮影のサービスがある。そして梓水苑のお風呂で汗を流し、日焼けした肌を感じつつ楽しかった一日を振り返る。
昨年に引き続き、今年度も160kmを走りきった編集スタッフの感想は「昨年度大会と変わりなく、同じように最高だったね」というものだった。運営がいっそう洗練され、今年は安全をテーマに掲げただけあってコースのあちこちの誘導スタッフの注意喚起と誘導が的確かつ親切でとても良かったと感じた。
2年連続の晴天。気候の良さ、コースの良さ、景観の良さ。どれをとっても素晴らしいロングライドだ。参加した人の評判が良く、実際の満足度も高いこの大会。今年も参加定員をあえて増やさずに内容の充実を図った。
大会のキャッチフレーズに使われる「美しい日本のロングライド」という言葉は、走ってみると納得できる。
5月下旬という最高の季節に、美しさがピークを迎える一帯を走る。それだけで成功がほぼ約束されているようなもの。実際、上がった写真はどの大会と比べてもいちばんフォトジェニックだ。
そしてこの「AACR」と姉妹大会とも言える北アルプス山麓グランフォンドが9月7・8日に開催される。こちらも雷太さんがコースアドバイザーをつとめ、アルプスあづみのセンチュリーライドの運営スタッフともノウハウを共有し、初秋の同エリアを楽しめるのでおすすめだ。コースはAACRと少し被る、最長100km・70km・30kmコースで、その主催スタッフの皆さんもAARCを走って体験していた。
photo&text:Makoto.AYANO
編集部撮影の全写真によるフォトアルバム(CW FaceBook)