2009/07/06(月) - 09:59
モナコをスタートするツール・ド・フランス第2ステージは、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)の圧倒的なスプリントで幕を閉じた。2位以下の混戦のスプリント争いには新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)が絡み、グランツール史上日本人最高のステージ5位に入った!
モナコからブリニョルまでの187kmで行なわれた第2ステージ。序盤から4つの山岳ポイントが登場するが、ピュアスプリンターの脚を止めるほどの破壊力は無い。この日選手たちを苦しめたのは山岳の上りではなく暑さ。盛夏のプロヴァンスは気温30度を超えた。
モナコのカジノ前での開幕セレモニーを経て、180名の選手たちはマイヨジョーヌのファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)を先頭にコースに繰り出した。
開始直後から始まる3級山岳トゥルビー峠でファーストアタックを決めたのは、出場選手中最小のサミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)。サクソバンクがコントロールする集団からは断続的にアタックがかかったが、いずれも成功せずに頂上が近づく。新城幸也もアタック合戦に加わった。
結局上りでのアタックは決まらず、パリ〜ニースとツール・ド・スイスで山岳賞を獲得しているトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)が先頭で3級山岳の頂上を通過。そして13km地点でユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、フランセーズデジュー)のアタックに起因して4名が飛び出すと、ようやく集団はこれを見送った。
逃げを決めたのはヴェッカネン、シリル・デッセル(フランス、アージェードゥーゼル)、ステファヌ・オジェ(フランス、コフィディス)、スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)の4名。この逃げグループは平均スピード40km/h前後のペースを刻み、サクソバンクがコントロールするメイン集団から90km地点で最大5分20秒のリードを得た。
3週間のステージレースのマスドスタートレース初日は集団落車がつきものだ。この日もフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)やイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)らを含む落車が度々発生。
犠牲者の一人、ユルゲン・ファンデワール(ベルギー、クイックステップ)は何とかゴールに辿り着いたが、搬送先の病院で鎖骨骨折と肺損傷の診断。今大会最初のリタイアとなった。
逃げグループ内では3つの4級山岳でマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)をかけたスプリントが繰り広げられ、元フィンランドチャンピオンのヴェッカネンがポイントを量産して山岳賞ランキングトップに。
やがてチームコロンビア・HTCとサーヴェロが集団牽引に加わるとタイム差は縮小を続け、残り80km地点で5分あったタイム差は、残り40kmで4分、残り20kmで1分に。
残り10kmのアーチが近づくとミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)が集団から飛び出し、それまで逃げていた4名を抜きさって先頭に立ったが、スプリンターチームのスピードには叶わずに残り5kmで吸収された。
集団先頭で主導権を争ったのはチームコロンビア・HTCとミルラムの2チーム。肘をつき合わせた激しいポジション争いの中、別府史之(スキル・シマノ)もファンケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ)のために集団前方に上がった。
ラスト1kmを切ってなおチームコロンビアの優位は変わらず、Bboxブイグテレコムはトマ・ヴォクレール(フランス)らが新城幸也を連れて集団前方に上がった。
ハイスピードのまま突入したラスト700mの右カーブ。ここで落車が発生し、コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)のクラッシュによりトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)がコース外にはじき出されてしまう。
ダニーロ・ナポリターノ(イタリア、カチューシャ)やダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)もここで足止め。落車により分裂した集団はハイスピードを維持したまま最終ストレートに入った。
ロジャース、マルティン、ヒンカピー、レンショーの黄金ラインに牽かれたカヴェンディッシュは、ラスト350mでスプリントを開始。追撃するタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)をグングン引き離したカヴは、後続に数車差をつけて余裕のゴール。大きく両手を広げてフィニッシュラインを駆け抜けた。
カヴは今大会1勝目、ツールのステージ通算5勝目。完璧なチームワークにより、他を寄せ付けない圧倒的なスプリントでスプリント第1ラウンドを制した。もちろんポイント賞ランキングでもトップに立ち、マイヨヴェールを獲得している。
そしてファラー以下、混戦のスプリント勝負の中に、新城幸也の姿があった。トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)やゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)といった世界屈指のスプリンターとバトルを演じたユキヤ。後退するどころか伸びのあるスプリントを見せ、怯むことのない熱い走りで5位を射止めた。
もちろんこれはグランツールにおける日本人史上最高位。これまでの日本人最高位は1996年に今中大介(当時チームポルティ)がマークした35位。ユキヤは世界最高峰の舞台に於いて、完全なる力勝負で5位を勝ち取った。ポイント賞ランキングでも5位に浮上している。
この活躍にチームのベルノドー監督は「ユキヤがパワフルな選手ということは知っているが、ツールレベルのスプリントで結果を残すとは大きな驚きだ。(チーム公式サイト)」と舌を巻いている。隣国イタリアのガゼッタ紙ウェブ版でもアラシロ特集ページが組まれている。
また、スプリンターのアシストとして仕事を全うした別府史之も35位でゴール。スキル・シマノはエーススプリンターのファンヒュンメルが20位と伸びなかったが、クーン・デコルト(オランダ)が9位に入っている。
総合上位陣は落車の影響でバラけてゴールしたが、ラスト3km以内の救済措置により同タイム扱い。カンチェラーラが危なげなくマイヨジョーヌを守っている。
翌第3ステージはマルセイユからラ・グラン・モットまでの196.5kmで行なわれる。中盤に4級山岳が2つ設定されている以外はフラットだ。2日連続でスプリンターの闘いに持ち込まれる可能性大だが、南フランス特有の「ミストラル(アルプスからの季節風)」が思わぬ展開をもたらす可能性も。
ツール・ド・フランス2009第2ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)4h30'02"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)
3位 ロメン・フェイユ(フランス、アグリチュベル)
4位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
5位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
6位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)
7位 ウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)
8位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
9位 クーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)
10位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
35位 別府史之(日本、スキル・シマノ)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)4h49'34"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+18"
3位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+19"
4位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+22"
5位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+23"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)+30"
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+32"
8位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+33"
9位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+37"
10位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+40"
127位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+2'07"
173位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+2'52"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)35pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)30pts
3位 ロメン・フェイユ(フランス、アグリチュベル)26pts
5位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)22pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、フランセーズデジュー)9pts
2位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)6pts
3位 シリル・デッセル(フランス、アージェードゥーゼル)5pt
マイヨブラン(新人賞)
1位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)4h50'06"
2位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+01"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+05"
チーム総合成績
1位 アスタナ 14h29'52"
2位 サクソバンク +31"
3位 ガーミン +44"
第2ステージ敢闘賞
スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)
モナコからブリニョルまでの187kmで行なわれた第2ステージ。序盤から4つの山岳ポイントが登場するが、ピュアスプリンターの脚を止めるほどの破壊力は無い。この日選手たちを苦しめたのは山岳の上りではなく暑さ。盛夏のプロヴァンスは気温30度を超えた。
モナコのカジノ前での開幕セレモニーを経て、180名の選手たちはマイヨジョーヌのファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)を先頭にコースに繰り出した。
開始直後から始まる3級山岳トゥルビー峠でファーストアタックを決めたのは、出場選手中最小のサミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)。サクソバンクがコントロールする集団からは断続的にアタックがかかったが、いずれも成功せずに頂上が近づく。新城幸也もアタック合戦に加わった。
結局上りでのアタックは決まらず、パリ〜ニースとツール・ド・スイスで山岳賞を獲得しているトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)が先頭で3級山岳の頂上を通過。そして13km地点でユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、フランセーズデジュー)のアタックに起因して4名が飛び出すと、ようやく集団はこれを見送った。
逃げを決めたのはヴェッカネン、シリル・デッセル(フランス、アージェードゥーゼル)、ステファヌ・オジェ(フランス、コフィディス)、スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)の4名。この逃げグループは平均スピード40km/h前後のペースを刻み、サクソバンクがコントロールするメイン集団から90km地点で最大5分20秒のリードを得た。
3週間のステージレースのマスドスタートレース初日は集団落車がつきものだ。この日もフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)やイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)らを含む落車が度々発生。
犠牲者の一人、ユルゲン・ファンデワール(ベルギー、クイックステップ)は何とかゴールに辿り着いたが、搬送先の病院で鎖骨骨折と肺損傷の診断。今大会最初のリタイアとなった。
逃げグループ内では3つの4級山岳でマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)をかけたスプリントが繰り広げられ、元フィンランドチャンピオンのヴェッカネンがポイントを量産して山岳賞ランキングトップに。
やがてチームコロンビア・HTCとサーヴェロが集団牽引に加わるとタイム差は縮小を続け、残り80km地点で5分あったタイム差は、残り40kmで4分、残り20kmで1分に。
残り10kmのアーチが近づくとミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)が集団から飛び出し、それまで逃げていた4名を抜きさって先頭に立ったが、スプリンターチームのスピードには叶わずに残り5kmで吸収された。
集団先頭で主導権を争ったのはチームコロンビア・HTCとミルラムの2チーム。肘をつき合わせた激しいポジション争いの中、別府史之(スキル・シマノ)もファンケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ)のために集団前方に上がった。
ラスト1kmを切ってなおチームコロンビアの優位は変わらず、Bboxブイグテレコムはトマ・ヴォクレール(フランス)らが新城幸也を連れて集団前方に上がった。
ハイスピードのまま突入したラスト700mの右カーブ。ここで落車が発生し、コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)のクラッシュによりトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)がコース外にはじき出されてしまう。
ダニーロ・ナポリターノ(イタリア、カチューシャ)やダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)もここで足止め。落車により分裂した集団はハイスピードを維持したまま最終ストレートに入った。
ロジャース、マルティン、ヒンカピー、レンショーの黄金ラインに牽かれたカヴェンディッシュは、ラスト350mでスプリントを開始。追撃するタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)をグングン引き離したカヴは、後続に数車差をつけて余裕のゴール。大きく両手を広げてフィニッシュラインを駆け抜けた。
カヴは今大会1勝目、ツールのステージ通算5勝目。完璧なチームワークにより、他を寄せ付けない圧倒的なスプリントでスプリント第1ラウンドを制した。もちろんポイント賞ランキングでもトップに立ち、マイヨヴェールを獲得している。
そしてファラー以下、混戦のスプリント勝負の中に、新城幸也の姿があった。トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)やゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)といった世界屈指のスプリンターとバトルを演じたユキヤ。後退するどころか伸びのあるスプリントを見せ、怯むことのない熱い走りで5位を射止めた。
もちろんこれはグランツールにおける日本人史上最高位。これまでの日本人最高位は1996年に今中大介(当時チームポルティ)がマークした35位。ユキヤは世界最高峰の舞台に於いて、完全なる力勝負で5位を勝ち取った。ポイント賞ランキングでも5位に浮上している。
この活躍にチームのベルノドー監督は「ユキヤがパワフルな選手ということは知っているが、ツールレベルのスプリントで結果を残すとは大きな驚きだ。(チーム公式サイト)」と舌を巻いている。隣国イタリアのガゼッタ紙ウェブ版でもアラシロ特集ページが組まれている。
また、スプリンターのアシストとして仕事を全うした別府史之も35位でゴール。スキル・シマノはエーススプリンターのファンヒュンメルが20位と伸びなかったが、クーン・デコルト(オランダ)が9位に入っている。
総合上位陣は落車の影響でバラけてゴールしたが、ラスト3km以内の救済措置により同タイム扱い。カンチェラーラが危なげなくマイヨジョーヌを守っている。
翌第3ステージはマルセイユからラ・グラン・モットまでの196.5kmで行なわれる。中盤に4級山岳が2つ設定されている以外はフラットだ。2日連続でスプリンターの闘いに持ち込まれる可能性大だが、南フランス特有の「ミストラル(アルプスからの季節風)」が思わぬ展開をもたらす可能性も。
ツール・ド・フランス2009第2ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)4h30'02"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)
3位 ロメン・フェイユ(フランス、アグリチュベル)
4位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
5位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
6位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)
7位 ウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)
8位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
9位 クーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)
10位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
35位 別府史之(日本、スキル・シマノ)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)4h49'34"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+18"
3位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+19"
4位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+22"
5位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+23"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)+30"
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+32"
8位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+33"
9位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+37"
10位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+40"
127位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+2'07"
173位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+2'52"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)35pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)30pts
3位 ロメン・フェイユ(フランス、アグリチュベル)26pts
5位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)22pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、フランセーズデジュー)9pts
2位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)6pts
3位 シリル・デッセル(フランス、アージェードゥーゼル)5pt
マイヨブラン(新人賞)
1位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)4h50'06"
2位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+01"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+05"
チーム総合成績
1位 アスタナ 14h29'52"
2位 サクソバンク +31"
3位 ガーミン +44"
第2ステージ敢闘賞
スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)
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