2013/05/03(金) - 16:20
ジロ・デ・イタリアにはマリアローザの他にマリアロッサ、マリアアッズーラ、マリアビアンカという三色ジャージが用意されている。それぞれスプリンター、クライマー、若手選手にとっての栄光ジャージであり、これらの闘いが並行しながら、複雑に絡みながら、3週間にわたって繰り広げられるのがステージレースの魅力だ。
マリアロッサ ポイント賞
総合争いに注視しがちなステージレースに花を添えるのが、華々しい集団スプリント。ポイント賞ジャージは、迫力あるスプリントバトルを体現するかのような真っ赤なジャージデザインが特徴だ。ステージ上位15名(25、20、16、14、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)とスプリントポイント上位6名(8、6、4、3、2、1)に与えられるポイントの積算によって争われる。
昨年開業したばかりの高速鉄道「イタロ」がジャージのスポンサーにつく。同社は主要都市を最高時速300km/h(実験では574km/hをマーク)で結ぶ鉄道会社で、これまで元国営のトレニタリア社が独占していたイタリア国内の鉄道に民間として初めて参入した。
シンプルにマリアロッサ(赤色ジャージ)とも呼ばれるが、正式名称はマリアロッサ・パッシオーネ。直訳すると「情熱の赤いジャージ」だ。
山岳ステージの厳しさから、近年は総合狙いの選手たちがポイント賞のトップに輝くパターンが多い。近年のポイント賞受賞者を見ても、総合上位に絡むようなオールラウンダー&クライマーの名前がズラリと並ぶ。
これまでジロでステージ通算10勝を飾っているマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)は、今年もステージ優勝量産を目指す。カヴェンディッシュには、昨年僅か1ポイント差でポイント賞を逃したという苦い思い出がある。
強力なリードアウトトレインに発射され、そこからライバルたちを置き去りにするカヴェンディッシュの姿を何度もイタリア人は見て来た。しかし、新天地オメガファーマ・クイックステップでは絶対的なエーススプリンターとしての座を確約されているものの、昨年までゴール前を支配していたようなリードアウトトレインを組めずにいる。これまでのゴールスプリントを見ても、連携が取れずに空中分解。カヴェンディッシュが自分の力で突破する光景が何度も見られた。
突如引退を発表したアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)をリードアウト役に迎え入れるという話も出たが、UCI(国際自転車競技連合)がシーズン途中の移籍に待ったをかけたため実現ならず。カヴェンディッシュは「ペタッキのようなビッグな選手が加わる意味は大きかった」と話しながらも、同時に「でもすでにモチベーションの高い選手が揃っていて、強いチーム体制でレースに挑むことが出来るよ」と自信も見せる。
昨年ステージ1勝を飾ったマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は、再びジロの勝利を狙ってくる。オリカ・グリーンエッジはチームTTで優勝を狙えるメンバーを集めており、スピード勝負では他チームを打ち負かすことが出来る。
ゴール勝負をジョン・デゲンコルブ(ドイツ)に託すのはアルゴス・シマノ。好調マルセル・キッテル(ドイツ)はツール・ド・フランスに集中するためジロには出場しない。ジロに初出場するフランスチャンピオンのナセル・ブアニ(フランス、FDJ)も目が離せない存在だ。
イタリア勢としてはエリア・ヴィヴィアーニ(キャノンデールプロサイクリング)やロベルト・フェラーリ(ランプレ・メリダ)、ダニエーレ・ベンナーティ(サクソ・ティンコフ)、サーシャ・モードロ(バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)、マッティア・ガヴァッツィ(アンドローニジョカトリ)、オスカル・ガット(ヴィーニファンティーニ)が勝負に絡んでくるだろう。
歴代ポイント賞受賞者
2012年 ホアキン・ロドリゲス(スペイン)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 カデル・エヴァンス(オーストラリア)
2009年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2008年 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2005年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 マリオ・チポッリーニ(イタリア)
2001年 マッシモ・ストラッツェール(イタリア)
2000年 ディミトリ・コニシェフ(ロシア)
マリアアッズーラ 山岳賞
グランツールの中で最も山岳の難易度が高いジロ・デ・イタリア。特に今年の山岳の厳しさは超一級。それだけに、山岳賞ジャージには大きな価値がある。
長らく緑色のマリアヴェルデが採用されていたが、昨年メディオラヌム銀行がジャージの冠スポンサーとなり、同社のイメージカラーである青色に変更された。名称はマリアアッズーラだ。
昨年まではチーマコッピ、1級山岳、2級山岳、3級山岳の4カテゴリーだったが、今年はここに4級山岳が追加。獲得ポイントも微妙に修正が加えられている。
獲得ポイントが最も大きいのはチーマ・コッピ(ステルヴィオ峠)で、先頭で通過した選手には21ポイントが与えられる(21、15、9、5、3、2、1)。その他、1級山岳先頭通過15ポイント(15、9、5、3、2、1)、2級山岳先頭通過9ポイント(9、5、3、2、1)、3級山岳先頭通過5ポイント(5、3、2、1)、4級山岳先頭通過3ポイント(3、2、1)。山岳ステージで活躍する総合上位陣が、必然的に山岳賞上位に名を連ねることになる。
昨年山岳ステージで逃げ切り優勝を飾り、その後のステージでも果敢に動いてポイントを稼いだマッテーオ・ラボッティーニ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)がミラノでマリアアッズーラを受け取った。今年ヴィーニファンティーニには、2009年と2011年の山岳賞受賞者ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)や、開幕前にチームに合流したダニーロ・ディルーカ(イタリア)、そしてマウロ・サンタンブロジオ(イタリア)がいる。UCIプロコンチネンタルチームながら屈強な山岳力を誇っている。
昨年山岳賞2位のステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)やドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)に代表される小柄なイタリアンクライマーたちは、総合ではなく山岳賞狙い。南米コロンビア勢にも注目で、カルロスアルベルト・ベタンクール(アージェードゥーゼル)やダルウィン・アタプマ(コロンビア)らがジロの山岳に挑む。
歴代山岳賞受賞者
2012年 マッテーオ・ラボッティーニ(イタリア)
2011年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2010年 マシュー・ロイド(オーストラリア)
2009年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2008年 エマヌエーレ・セッラ(イタリア)
2007年 レオナルド・ピエポリ(イタリア)
2006年 フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン)
2005年 ホセ・ルハノ(ベネズエラ)
2004年 ファビアン・ウェーグマン(ドイツ)
2003年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2002年 フリオ・ペレスクアピオ(メキシコ)
2001年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2000年 フランチェスコ・カーザグランデ(イタリア)
マリアビアンカ 新人賞
若手選手を対象とした新人賞。トップの選手には純白のホワイトジャージが与えられる。長らくブルーの複合賞ジャージに座を奪われていたが、6年前に復活した。対象となるのは誕生日が1988年1月1日以降の選手だ。
多くの場合、若手選手はアシストとして力を尽くさなければならない。ジロ・デル・トレンティーノで新人賞を獲得したプロ1年目のファビオ・アル(イタリア、アスタナ)に注目したいが、最優先しなければならないのはニーバリをアシストすることだ。
昨年ジャパンカップ3位のラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)やダルウィン・アタプマ(コロンビア、コロンビア)らも新人賞上位に絡んでくるだろう。テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)やルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、グリーンエッジ)といったスピードある若手が前半ステージでマリアビアンカに袖を通すはずだ。
歴代新人賞受賞者
2012年 リゴベルト・ウラン(コロンビア)
2011年 ロマン・クロイツィゲル(チェコ)
2010年 リッチー・ポルト(オーストラリア)
2009年 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー)
2008年 リカルド・リッコ(イタリア)
2007年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)
1995年〜2006年 ジャージ設定されず
text:Kei Tsuji in Napoli, Italy
マリアロッサ ポイント賞
総合争いに注視しがちなステージレースに花を添えるのが、華々しい集団スプリント。ポイント賞ジャージは、迫力あるスプリントバトルを体現するかのような真っ赤なジャージデザインが特徴だ。ステージ上位15名(25、20、16、14、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)とスプリントポイント上位6名(8、6、4、3、2、1)に与えられるポイントの積算によって争われる。
昨年開業したばかりの高速鉄道「イタロ」がジャージのスポンサーにつく。同社は主要都市を最高時速300km/h(実験では574km/hをマーク)で結ぶ鉄道会社で、これまで元国営のトレニタリア社が独占していたイタリア国内の鉄道に民間として初めて参入した。
シンプルにマリアロッサ(赤色ジャージ)とも呼ばれるが、正式名称はマリアロッサ・パッシオーネ。直訳すると「情熱の赤いジャージ」だ。
山岳ステージの厳しさから、近年は総合狙いの選手たちがポイント賞のトップに輝くパターンが多い。近年のポイント賞受賞者を見ても、総合上位に絡むようなオールラウンダー&クライマーの名前がズラリと並ぶ。
これまでジロでステージ通算10勝を飾っているマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)は、今年もステージ優勝量産を目指す。カヴェンディッシュには、昨年僅か1ポイント差でポイント賞を逃したという苦い思い出がある。
強力なリードアウトトレインに発射され、そこからライバルたちを置き去りにするカヴェンディッシュの姿を何度もイタリア人は見て来た。しかし、新天地オメガファーマ・クイックステップでは絶対的なエーススプリンターとしての座を確約されているものの、昨年までゴール前を支配していたようなリードアウトトレインを組めずにいる。これまでのゴールスプリントを見ても、連携が取れずに空中分解。カヴェンディッシュが自分の力で突破する光景が何度も見られた。
突如引退を発表したアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)をリードアウト役に迎え入れるという話も出たが、UCI(国際自転車競技連合)がシーズン途中の移籍に待ったをかけたため実現ならず。カヴェンディッシュは「ペタッキのようなビッグな選手が加わる意味は大きかった」と話しながらも、同時に「でもすでにモチベーションの高い選手が揃っていて、強いチーム体制でレースに挑むことが出来るよ」と自信も見せる。
昨年ステージ1勝を飾ったマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は、再びジロの勝利を狙ってくる。オリカ・グリーンエッジはチームTTで優勝を狙えるメンバーを集めており、スピード勝負では他チームを打ち負かすことが出来る。
ゴール勝負をジョン・デゲンコルブ(ドイツ)に託すのはアルゴス・シマノ。好調マルセル・キッテル(ドイツ)はツール・ド・フランスに集中するためジロには出場しない。ジロに初出場するフランスチャンピオンのナセル・ブアニ(フランス、FDJ)も目が離せない存在だ。
イタリア勢としてはエリア・ヴィヴィアーニ(キャノンデールプロサイクリング)やロベルト・フェラーリ(ランプレ・メリダ)、ダニエーレ・ベンナーティ(サクソ・ティンコフ)、サーシャ・モードロ(バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)、マッティア・ガヴァッツィ(アンドローニジョカトリ)、オスカル・ガット(ヴィーニファンティーニ)が勝負に絡んでくるだろう。
歴代ポイント賞受賞者
2012年 ホアキン・ロドリゲス(スペイン)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 カデル・エヴァンス(オーストラリア)
2009年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2008年 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2005年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 マリオ・チポッリーニ(イタリア)
2001年 マッシモ・ストラッツェール(イタリア)
2000年 ディミトリ・コニシェフ(ロシア)
マリアアッズーラ 山岳賞
グランツールの中で最も山岳の難易度が高いジロ・デ・イタリア。特に今年の山岳の厳しさは超一級。それだけに、山岳賞ジャージには大きな価値がある。
長らく緑色のマリアヴェルデが採用されていたが、昨年メディオラヌム銀行がジャージの冠スポンサーとなり、同社のイメージカラーである青色に変更された。名称はマリアアッズーラだ。
昨年まではチーマコッピ、1級山岳、2級山岳、3級山岳の4カテゴリーだったが、今年はここに4級山岳が追加。獲得ポイントも微妙に修正が加えられている。
獲得ポイントが最も大きいのはチーマ・コッピ(ステルヴィオ峠)で、先頭で通過した選手には21ポイントが与えられる(21、15、9、5、3、2、1)。その他、1級山岳先頭通過15ポイント(15、9、5、3、2、1)、2級山岳先頭通過9ポイント(9、5、3、2、1)、3級山岳先頭通過5ポイント(5、3、2、1)、4級山岳先頭通過3ポイント(3、2、1)。山岳ステージで活躍する総合上位陣が、必然的に山岳賞上位に名を連ねることになる。
昨年山岳ステージで逃げ切り優勝を飾り、その後のステージでも果敢に動いてポイントを稼いだマッテーオ・ラボッティーニ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)がミラノでマリアアッズーラを受け取った。今年ヴィーニファンティーニには、2009年と2011年の山岳賞受賞者ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)や、開幕前にチームに合流したダニーロ・ディルーカ(イタリア)、そしてマウロ・サンタンブロジオ(イタリア)がいる。UCIプロコンチネンタルチームながら屈強な山岳力を誇っている。
昨年山岳賞2位のステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)やドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)に代表される小柄なイタリアンクライマーたちは、総合ではなく山岳賞狙い。南米コロンビア勢にも注目で、カルロスアルベルト・ベタンクール(アージェードゥーゼル)やダルウィン・アタプマ(コロンビア)らがジロの山岳に挑む。
歴代山岳賞受賞者
2012年 マッテーオ・ラボッティーニ(イタリア)
2011年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2010年 マシュー・ロイド(オーストラリア)
2009年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2008年 エマヌエーレ・セッラ(イタリア)
2007年 レオナルド・ピエポリ(イタリア)
2006年 フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン)
2005年 ホセ・ルハノ(ベネズエラ)
2004年 ファビアン・ウェーグマン(ドイツ)
2003年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2002年 フリオ・ペレスクアピオ(メキシコ)
2001年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2000年 フランチェスコ・カーザグランデ(イタリア)
マリアビアンカ 新人賞
若手選手を対象とした新人賞。トップの選手には純白のホワイトジャージが与えられる。長らくブルーの複合賞ジャージに座を奪われていたが、6年前に復活した。対象となるのは誕生日が1988年1月1日以降の選手だ。
多くの場合、若手選手はアシストとして力を尽くさなければならない。ジロ・デル・トレンティーノで新人賞を獲得したプロ1年目のファビオ・アル(イタリア、アスタナ)に注目したいが、最優先しなければならないのはニーバリをアシストすることだ。
昨年ジャパンカップ3位のラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)やダルウィン・アタプマ(コロンビア、コロンビア)らも新人賞上位に絡んでくるだろう。テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)やルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、グリーンエッジ)といったスピードある若手が前半ステージでマリアビアンカに袖を通すはずだ。
歴代新人賞受賞者
2012年 リゴベルト・ウラン(コロンビア)
2011年 ロマン・クロイツィゲル(チェコ)
2010年 リッチー・ポルト(オーストラリア)
2009年 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー)
2008年 リカルド・リッコ(イタリア)
2007年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)
1995年〜2006年 ジャージ設定されず
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