2013/05/02(木) - 09:05
高級イタリアンロードの代表格、デローザが2011年にリリースし衝撃を与えたエントリーモデルがR848だ。2年の時を経て、2013年新たにその座へと取って代わったのが、今回インプレッションを行うR838である。老舗ブランドが送り出す第2世代エントリーカーボンロードの実力を検証していく。
偉大なブランドの代表格として、常にその名前が挙げられるデローザ。時代のチャンピオン達から深く愛され、エディ・メルクスが自らのブランドを立ち上げる際に、創業者ウーゴ・デローザの下で修行を積んだという逸話はあまりにも有名だ。最近ではアックア・エ・サポーネやLPRブレークス、チームNIPPO(今季はNIPPOデローザ)など、イタリアに根ざすプロチームに機材を供給し、1953年の創業以来変わらずレースシーンとの関わりを保ち続けている。
プロトスやキングRSなどのカーボンモデルや、デローザファミリーの次男ドリアーノのみが作る金属フレームなどハイエンドモデルを中心にラインナップしてきたデローザだが、2011年は変革の時を迎えた。デローザ初のエントリーカーボンモデル R848を発表し、大きなセンセーションを巻き起こしたのだ。
それから2年を経た2013年、R848に替わる後継機種として発表されたのがR838だ。EPSバッテリー内蔵化など幾多の新機構を設けたSUPER KINGなどと並び、デローザ新世代の一翼を担う存在である。R848と同じく台湾で生産され、高品質かつリーズナブルなプライスとする特徴を持つ。
ビギナーからベテランまで誰が乗っても扱いやすく、安心してスポーツライディングを楽しめること。それがR848から変わらないデローザのエントリーモデルに課せられた使命だ。トップチューブとシートステーが流れるように繋がる美しいデザインには、ハイエンドモデルに匹敵するポテンシャルが秘められている。
R848と比較して各部のボリュームを増し、一回りマッシブに、かつ細部まで作りこまれたフォルムは、機能とデザインを追求して生み出されたものだ。K3カーボン素材を採用したフレームはモノコック工法で形作られ、特に段差を設けたヘッドチューブ周辺の造形は、剛性を感じさせる力強いものとなった。
横方向に扁平なトップチューブと、縦方向に長いティアドロップ型ダウンチューブという断面形状の対比も面白い。BB30規格のボトムブラケットを採用したマッシブなBBシェルと合わせ、フレームの上側で振動吸収を狙い、下側で剛性強化を狙う意図が読み取れる。
下側1-1/2インチのベアリングを備える上下異型テーパーヘッドチューブに対応するのは、後端にリブを設けた重量350gのフロントフォーク。緩やかにフォーク全体をベンドさせ、小さい43と45サイズのフレームではオフセット量を50mm取ることで、安定性を向上させている。
ブレーキやシフトケーブルが全て内装化された美しいフォルムは、イタリアンバイク"らしさ"を感じる鮮やかな3種類のペインティングで仕上げられる。カンパニョーロ・EPSに対応したフレームセット販売の「ブラックグレー」と、アテナ+シロッコで組まれた完成車には「ホワイトレッドグレー」と「ブラックブルーレッド」が用意され、完成車は349,650円(税込)というプライスだ。
さて、2013年デローザラインナップの中でも注目度の高いR838を、テストライダー両氏はどう判断するのだろうか。さっそくインプレッションに移ろう。なおテストバイクに装備されたホイールとタイヤは完成車のものとは異なることを承知頂きたい。
―インプレッション
「乗った瞬間から快適、ブルベのような長距離イベントにお勧め」品川真寛(YOU CAN)
乗った瞬間に快適で、路面のザラザラ感を全く伝えてこないコンフォートなバイクという第一印象を持ちました。初めてロードバイクを買う人におススメできそうな、肩の力を張らずに乗ることのできるバイクです。ギアを掛けて踏むとやや重たい印象がありますが、ロングライドをメインに、たまにレースに参加するぐらいの楽しみ方ならば、不満が出ることもありません。
このバイクの売りはズバリ、振動吸収性です。昔のカーボンフレームを思い出させるようなマイルドな乗り心地ながら芯が通っているような感じがあるため、長距離向きだと思いました。ヘッド部分はがっしりとした作りとなっているため、フロントフォークが柔軟なのでしょう。路面から振動をカットして疲労を抑える性能に長けているため、ブルべ的な走りには特に向いています。
ですが、フォークの柔軟性は乗り心地と引き換えに、コーナリングでのアンダーステアを生み出しているようです。下りを攻めるような走り方こそ向いていませんが、素直なハンドリングのため、ロードレーサービギナーには最適だと感じますね。
しなりのあるフレームですので、上りではトルクを掛けるのでは無く、ケイデンスを高めに走ったほうが良さそうです。通じてレース機材として見た場合、スプリントやペースの上下が激しい展開にはどうしても一歩遅れてしまうような感覚があります。ですが一定ペースを刻むことは得意ですので、淡々と逃げたり、耐久レースで長い時間を走ることには向いているでしょう。
市販車にはカンパニョーロのシロッコ35が付属していますが、今回の試乗車にアッセンブルされていたカンパニョーロのユーラスやマビックのキシリウムのようなカチッとしたホイールに交換すれば、より性能を引き出せると思います。逆に剛性が低めなホイールにしてしまうとハンドリングが頼りなくなってしまうかもしれません。
ケーブルのルーティングなどもスマートですが、トップチューブが横にワイドで、ダンシングの際に脚があたってしまう場合があるかもしれません。しかしシリアスなレーサーでなければ問題ないはずですね。
デローザというブランドやカンパニョーロ・アテナで組まれていること、フレームのボリューム感。どれもとても魅力的だと思います、ロングライドが主な目的であれば間違いなくお買い得感のある一台です。
「乗り心地が良い中にデローザらしい安定感がある」山添悟志(スポーツバイスクル・スキップ)
とにかく乗り心地がいいというのが第一印象でした。デローザと言えば硬くレーシーなイメージで、ボリューム感あるルックスからすると、意外な印象ですね。この乗り心地の良さはフォークを適度にしならせて、フレームのカーボンの積層をうまく工夫することによって実現しているのではないかと思います。
乗り心地が良く、振動吸収性が高いことに加え、どっしりとした安定感やがあるところにデローザらしさ、ヨーロッパの自転車らしさを感じました。
乗り心地を重視すると剛性が低くなりバランスが崩れることがありますが、このバイクにはそんな不安感はありません。ニュートラルなハンドリングで、切れすぎず、切りにくすぎずといった印象です。また踏み出しが軽いな、という印象を受けましたが、不安感はありません。
初心者が扱う上でも問題ないですし、ナーバスにならずに済むと思います。気難しいイメージのデローザですが、比較的気楽に、気負わず乗れるバイクかなと思います。安定感があり、手放しもしやすいですね。
しかし安定感と相反してタイトコーナーではアンダーステア気味だったり、ギアを掛けて無理やり踏んだ場合にはもたつきを感じてしまうので、レースに打ち込んだり、アグレッシブな走りをしたいライダーにはデローザなら他のモデルを選ぶことをオススメします。
このR838は、レースよりもロングライドに向け。起伏があっても乗り方次第で十分に対処できるため、一定ペースで淡々と走っても、軽いギアを回しながらダンシングでリズムで越えていくような走りをしても、気持ち良く走れると思います。路面が悪くとも、振動の角を取ってくれるの安心ですね。景色を楽しみつつマイペースでゴールを目指す乗り方が向いているでしょう。
試乗車にはカンパニョーロのユーラスが付いていましたが、同社のバレットに変えた所、ホイール自体は重くなっているのに踏みの軽さや乗り心地には変化がありませんでした。剛性感のある、ある程度重ためのディープリムホイールの方がバランスが良いのだと思います。今回は試せていませんが、市販車にアッセンブルされるシロッコ35とも相性は良いはずです。
カンパニョーロで組まれたルックスは、いかにもイタリアンバイクらしさ溢れるもの。そんなところに魅力やお買い得感を感じる初心者の方にこそお勧めですね。年齢や性別を問わず扱いやすい一台です。
デローザ R838
サイズ(AS) 43・45・48・50
カラー(完成車販売): White Red Carbon(光沢)/Black Blue Red(マット)
カラー(フレーム販売): Black Gray(マット)
完成車価格:349,650円(カンパニョーロ アテナ+シロッコ仕様)
フレーム価格:210,000円
インプレライダーのプロフィール
品川真寛(YOU CAN)
2003年に日本鋪道よりプロデビュー。2005年からシマノ・メモリーコープに移籍し、ヨーロッパに活躍の舞台を移す。パリ~ルーベやヘント〜ウェヴェルヘムをはじめ春のクラシックレースに多数出場。2008年から愛三工業レーシングに移籍。アジアのレースで入賞歴多数を誇る。2012年限りで引退し、現在はYOU CAN大磯店にて勤務する。愛称は「しなしな」。
YOU CAN
山添悟志(スポーツバイスクル・スキップ)
神奈川県厚木市に1996年にオープンしたロード系プロショップ、スポーツバイスクル・スキップの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
スポーツバイスクル スキップ
ウェア協力:VALETTE(バレット)
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO
偉大なブランドの代表格として、常にその名前が挙げられるデローザ。時代のチャンピオン達から深く愛され、エディ・メルクスが自らのブランドを立ち上げる際に、創業者ウーゴ・デローザの下で修行を積んだという逸話はあまりにも有名だ。最近ではアックア・エ・サポーネやLPRブレークス、チームNIPPO(今季はNIPPOデローザ)など、イタリアに根ざすプロチームに機材を供給し、1953年の創業以来変わらずレースシーンとの関わりを保ち続けている。
プロトスやキングRSなどのカーボンモデルや、デローザファミリーの次男ドリアーノのみが作る金属フレームなどハイエンドモデルを中心にラインナップしてきたデローザだが、2011年は変革の時を迎えた。デローザ初のエントリーカーボンモデル R848を発表し、大きなセンセーションを巻き起こしたのだ。
それから2年を経た2013年、R848に替わる後継機種として発表されたのがR838だ。EPSバッテリー内蔵化など幾多の新機構を設けたSUPER KINGなどと並び、デローザ新世代の一翼を担う存在である。R848と同じく台湾で生産され、高品質かつリーズナブルなプライスとする特徴を持つ。
ビギナーからベテランまで誰が乗っても扱いやすく、安心してスポーツライディングを楽しめること。それがR848から変わらないデローザのエントリーモデルに課せられた使命だ。トップチューブとシートステーが流れるように繋がる美しいデザインには、ハイエンドモデルに匹敵するポテンシャルが秘められている。
R848と比較して各部のボリュームを増し、一回りマッシブに、かつ細部まで作りこまれたフォルムは、機能とデザインを追求して生み出されたものだ。K3カーボン素材を採用したフレームはモノコック工法で形作られ、特に段差を設けたヘッドチューブ周辺の造形は、剛性を感じさせる力強いものとなった。
横方向に扁平なトップチューブと、縦方向に長いティアドロップ型ダウンチューブという断面形状の対比も面白い。BB30規格のボトムブラケットを採用したマッシブなBBシェルと合わせ、フレームの上側で振動吸収を狙い、下側で剛性強化を狙う意図が読み取れる。
下側1-1/2インチのベアリングを備える上下異型テーパーヘッドチューブに対応するのは、後端にリブを設けた重量350gのフロントフォーク。緩やかにフォーク全体をベンドさせ、小さい43と45サイズのフレームではオフセット量を50mm取ることで、安定性を向上させている。
ブレーキやシフトケーブルが全て内装化された美しいフォルムは、イタリアンバイク"らしさ"を感じる鮮やかな3種類のペインティングで仕上げられる。カンパニョーロ・EPSに対応したフレームセット販売の「ブラックグレー」と、アテナ+シロッコで組まれた完成車には「ホワイトレッドグレー」と「ブラックブルーレッド」が用意され、完成車は349,650円(税込)というプライスだ。
さて、2013年デローザラインナップの中でも注目度の高いR838を、テストライダー両氏はどう判断するのだろうか。さっそくインプレッションに移ろう。なおテストバイクに装備されたホイールとタイヤは完成車のものとは異なることを承知頂きたい。
―インプレッション
「乗った瞬間から快適、ブルベのような長距離イベントにお勧め」品川真寛(YOU CAN)
乗った瞬間に快適で、路面のザラザラ感を全く伝えてこないコンフォートなバイクという第一印象を持ちました。初めてロードバイクを買う人におススメできそうな、肩の力を張らずに乗ることのできるバイクです。ギアを掛けて踏むとやや重たい印象がありますが、ロングライドをメインに、たまにレースに参加するぐらいの楽しみ方ならば、不満が出ることもありません。
このバイクの売りはズバリ、振動吸収性です。昔のカーボンフレームを思い出させるようなマイルドな乗り心地ながら芯が通っているような感じがあるため、長距離向きだと思いました。ヘッド部分はがっしりとした作りとなっているため、フロントフォークが柔軟なのでしょう。路面から振動をカットして疲労を抑える性能に長けているため、ブルべ的な走りには特に向いています。
ですが、フォークの柔軟性は乗り心地と引き換えに、コーナリングでのアンダーステアを生み出しているようです。下りを攻めるような走り方こそ向いていませんが、素直なハンドリングのため、ロードレーサービギナーには最適だと感じますね。
しなりのあるフレームですので、上りではトルクを掛けるのでは無く、ケイデンスを高めに走ったほうが良さそうです。通じてレース機材として見た場合、スプリントやペースの上下が激しい展開にはどうしても一歩遅れてしまうような感覚があります。ですが一定ペースを刻むことは得意ですので、淡々と逃げたり、耐久レースで長い時間を走ることには向いているでしょう。
市販車にはカンパニョーロのシロッコ35が付属していますが、今回の試乗車にアッセンブルされていたカンパニョーロのユーラスやマビックのキシリウムのようなカチッとしたホイールに交換すれば、より性能を引き出せると思います。逆に剛性が低めなホイールにしてしまうとハンドリングが頼りなくなってしまうかもしれません。
ケーブルのルーティングなどもスマートですが、トップチューブが横にワイドで、ダンシングの際に脚があたってしまう場合があるかもしれません。しかしシリアスなレーサーでなければ問題ないはずですね。
デローザというブランドやカンパニョーロ・アテナで組まれていること、フレームのボリューム感。どれもとても魅力的だと思います、ロングライドが主な目的であれば間違いなくお買い得感のある一台です。
「乗り心地が良い中にデローザらしい安定感がある」山添悟志(スポーツバイスクル・スキップ)
とにかく乗り心地がいいというのが第一印象でした。デローザと言えば硬くレーシーなイメージで、ボリューム感あるルックスからすると、意外な印象ですね。この乗り心地の良さはフォークを適度にしならせて、フレームのカーボンの積層をうまく工夫することによって実現しているのではないかと思います。
乗り心地が良く、振動吸収性が高いことに加え、どっしりとした安定感やがあるところにデローザらしさ、ヨーロッパの自転車らしさを感じました。
乗り心地を重視すると剛性が低くなりバランスが崩れることがありますが、このバイクにはそんな不安感はありません。ニュートラルなハンドリングで、切れすぎず、切りにくすぎずといった印象です。また踏み出しが軽いな、という印象を受けましたが、不安感はありません。
初心者が扱う上でも問題ないですし、ナーバスにならずに済むと思います。気難しいイメージのデローザですが、比較的気楽に、気負わず乗れるバイクかなと思います。安定感があり、手放しもしやすいですね。
しかし安定感と相反してタイトコーナーではアンダーステア気味だったり、ギアを掛けて無理やり踏んだ場合にはもたつきを感じてしまうので、レースに打ち込んだり、アグレッシブな走りをしたいライダーにはデローザなら他のモデルを選ぶことをオススメします。
このR838は、レースよりもロングライドに向け。起伏があっても乗り方次第で十分に対処できるため、一定ペースで淡々と走っても、軽いギアを回しながらダンシングでリズムで越えていくような走りをしても、気持ち良く走れると思います。路面が悪くとも、振動の角を取ってくれるの安心ですね。景色を楽しみつつマイペースでゴールを目指す乗り方が向いているでしょう。
試乗車にはカンパニョーロのユーラスが付いていましたが、同社のバレットに変えた所、ホイール自体は重くなっているのに踏みの軽さや乗り心地には変化がありませんでした。剛性感のある、ある程度重ためのディープリムホイールの方がバランスが良いのだと思います。今回は試せていませんが、市販車にアッセンブルされるシロッコ35とも相性は良いはずです。
カンパニョーロで組まれたルックスは、いかにもイタリアンバイクらしさ溢れるもの。そんなところに魅力やお買い得感を感じる初心者の方にこそお勧めですね。年齢や性別を問わず扱いやすい一台です。
デローザ R838
サイズ(AS) 43・45・48・50
カラー(完成車販売): White Red Carbon(光沢)/Black Blue Red(マット)
カラー(フレーム販売): Black Gray(マット)
完成車価格:349,650円(カンパニョーロ アテナ+シロッコ仕様)
フレーム価格:210,000円
インプレライダーのプロフィール
品川真寛(YOU CAN)
2003年に日本鋪道よりプロデビュー。2005年からシマノ・メモリーコープに移籍し、ヨーロッパに活躍の舞台を移す。パリ~ルーベやヘント〜ウェヴェルヘムをはじめ春のクラシックレースに多数出場。2008年から愛三工業レーシングに移籍。アジアのレースで入賞歴多数を誇る。2012年限りで引退し、現在はYOU CAN大磯店にて勤務する。愛称は「しなしな」。
YOU CAN
山添悟志(スポーツバイスクル・スキップ)
神奈川県厚木市に1996年にオープンしたロード系プロショップ、スポーツバイスクル・スキップの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
スポーツバイスクル スキップ
ウェア協力:VALETTE(バレット)
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO
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