2013/03/22(金) - 13:22
カタルーニャ地方の山岳地帯を6時間にわたって走る大会最難関のクイーンステージ。リーダージャージを着るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が落車によってリタイアするという波乱の中、ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)が超級山岳の頂上まで逃げ切った。
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(UCIワールドツアー)第4ステージは、リャナルスからポルトアイネのステー場まで217kmを走る。レース前半から標高1500mクラスの山岳が連続して登場し、合計5つのカテゴリー山岳を越える。獲得標高差は4800m。
しかもレース後半には登坂距離24.6kmの超級山岳カント峠と登坂距離18.9kmの超級山岳ポルトアイネが連続して登場。標高1947mのスキー場にゴールが置かれている。
昨年も同じカント峠&ポルトアイネのゴールが設定されたが、雪を伴う悪天候によってコースが短縮。当時、カント峠の中腹に急遽ゴールが移されたという経緯がある。今年は好天によってポルトアイネまで問題なくコースが確保された。
今大会最も難易度の高い山岳コース。総合争いをほぼ決定づけるこの日、ビッグネームが揃う23名がレース序盤から逃げた。
逃げたのは総合9位・30秒遅れのマーティンや、ジロ・デ・イタリア覇者ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)、山岳賞ジャージのクリスティアーノ・サレルノ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)、ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ブランコプロサイクリング)ら。リーダージャージ擁するモビスターはヘスス・エラーダ(スペイン)を監視役として逃げに送り込む。
2010年のツアー・オブ・ジャパン覇者サレルノは積極的にカテゴリー山岳でポイントを獲得し、山岳賞ジャージキープを確実に。逃げグループとメイン集団のタイム差は3分に抑え込まれたが、119km地点でリーダージャージが落車するトラブルが発生する。
ダウンヒルでエロス・カペッキ(イタリア、モビスター)とともに落車したバルベルデは、骨折は免れたものの、左半身に打撲と擦過傷を負い、軽い脳しんとうを起こしていたため大事を取ってリタイア。こうしてメイン集団の追走は一旦緩んでしまう。バーチャル総合リーダーとなったブラドレー・ウィギンズ(イギリス)擁するスカイプロサイクリングが代わって集団先頭に立ってペースを刻んだ。
超級山岳カント峠に差し掛かり、ヘジダルがペースを作る逃げグループからロッシュがアタック。先頭でカント峠をクリアしたロッシュには、最後の超級山岳ポルトアイネに入ってすぐマーティンやエラーダが追いつく。スカイ率いるメイン集団は1分後方に迫った。
するとマーティンが逃げグループの中からアタック。監視役エラーダを振り切って独走を開始したマーティンは、メイン集団とのタイム差を広げながら頂上を目指す。
スカイのアシスト陣が引き続けるメイン集団からは、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ブランコプロサイクリング)とユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)がカウンターアタック。しかし先頭マーティンには追いつかない。
ゴールまで4kmを残して先頭マーティンからファンデンブロックとヘーシンクまで50秒、そしてメイン集団まで2分。タイム差が縮まらないことを察すると、ようやくカチューシャが協力的にメイン集団のペースを上げ始める。
すると、バーチャル総合リーダーのウィギンズから22秒遅れのナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)がアタック。ラスト2kmを切って勾配が9%を刻む区間でも、クインターナは軽いダンシングで突き進む。
遅れて集団から飛び出したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がクインターナに合流すると、そのまま前を走るヘーシンクとファンデンブロックをパス。クインターナとロドリゲスの2人がマーティンとのタイム差をグングン詰める。
苦しみながらも1分近いリードを保ってラスト1kmのアーチをくぐるマーティン。ステージ優勝を確実にしていたが、総合成績のためにペースを弱めない。ロドリゲスとクインターナを振り切って、マーティンが標高1947mに独走でゴールした。
ロドリゲスとクインターナは36秒遅れ、ウィギンズは1分02秒遅れでゴール。これによりマーティンが新たに総合リーダーの座につき、10秒遅れでロドリゲス、32秒遅れでクインターナ、そしてウィギンズが36秒遅れで続く展開に。
マーティンが逃げ切りによってステージ優勝とリーダージャージを獲得。カタルーニャに欧州拠点を置くガーミン・シャープは、チーム総合成績でもトップに立っている。カタルーニャは残り3ステージ。総合成績に変動が起こり得るのは、バルセロナのモンジュイックの丘にゴールする最終ステージのみ。10秒差のマーティンとロドリゲス、そして好調クインターナが最後まで総合争いを繰り広げることになりそうだ。
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2013第4ステージ結果
1位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) 6h02'40"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +36"
3位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)
4位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル) +47"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ブランコプロサイクリング) +51"
6位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング) +1'02"
7位 ピーター・ステティーナ(アメリカ、ガーミン・シャープ)
8位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
9位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)
10位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +1'08"
個人総合成績
1位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) 18h48'38"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +10"
3位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) +32"
4位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング) +36"
5位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ) +39"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ブランコプロサイクリング) +51"
7位 プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ) +1'00"
8位 ピーター・ステティーナ(アメリカ、ガーミン・シャープ) +1'07"
9位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +1'13"
10位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル) +1'15"
山岳賞
クリスティアーノ・サレルノ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
スプリント賞
クリスティアン・メイヤー(カナダ、オリカ・グリーンエッジ)
チーム総合成績
ガーミン・シャープ
text:Kei Tsuji
photo:www.voltacatalunya.cat
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(UCIワールドツアー)第4ステージは、リャナルスからポルトアイネのステー場まで217kmを走る。レース前半から標高1500mクラスの山岳が連続して登場し、合計5つのカテゴリー山岳を越える。獲得標高差は4800m。
しかもレース後半には登坂距離24.6kmの超級山岳カント峠と登坂距離18.9kmの超級山岳ポルトアイネが連続して登場。標高1947mのスキー場にゴールが置かれている。
昨年も同じカント峠&ポルトアイネのゴールが設定されたが、雪を伴う悪天候によってコースが短縮。当時、カント峠の中腹に急遽ゴールが移されたという経緯がある。今年は好天によってポルトアイネまで問題なくコースが確保された。
今大会最も難易度の高い山岳コース。総合争いをほぼ決定づけるこの日、ビッグネームが揃う23名がレース序盤から逃げた。
逃げたのは総合9位・30秒遅れのマーティンや、ジロ・デ・イタリア覇者ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)、山岳賞ジャージのクリスティアーノ・サレルノ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)、ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ブランコプロサイクリング)ら。リーダージャージ擁するモビスターはヘスス・エラーダ(スペイン)を監視役として逃げに送り込む。
2010年のツアー・オブ・ジャパン覇者サレルノは積極的にカテゴリー山岳でポイントを獲得し、山岳賞ジャージキープを確実に。逃げグループとメイン集団のタイム差は3分に抑え込まれたが、119km地点でリーダージャージが落車するトラブルが発生する。
ダウンヒルでエロス・カペッキ(イタリア、モビスター)とともに落車したバルベルデは、骨折は免れたものの、左半身に打撲と擦過傷を負い、軽い脳しんとうを起こしていたため大事を取ってリタイア。こうしてメイン集団の追走は一旦緩んでしまう。バーチャル総合リーダーとなったブラドレー・ウィギンズ(イギリス)擁するスカイプロサイクリングが代わって集団先頭に立ってペースを刻んだ。
超級山岳カント峠に差し掛かり、ヘジダルがペースを作る逃げグループからロッシュがアタック。先頭でカント峠をクリアしたロッシュには、最後の超級山岳ポルトアイネに入ってすぐマーティンやエラーダが追いつく。スカイ率いるメイン集団は1分後方に迫った。
するとマーティンが逃げグループの中からアタック。監視役エラーダを振り切って独走を開始したマーティンは、メイン集団とのタイム差を広げながら頂上を目指す。
スカイのアシスト陣が引き続けるメイン集団からは、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ブランコプロサイクリング)とユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)がカウンターアタック。しかし先頭マーティンには追いつかない。
ゴールまで4kmを残して先頭マーティンからファンデンブロックとヘーシンクまで50秒、そしてメイン集団まで2分。タイム差が縮まらないことを察すると、ようやくカチューシャが協力的にメイン集団のペースを上げ始める。
すると、バーチャル総合リーダーのウィギンズから22秒遅れのナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)がアタック。ラスト2kmを切って勾配が9%を刻む区間でも、クインターナは軽いダンシングで突き進む。
遅れて集団から飛び出したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がクインターナに合流すると、そのまま前を走るヘーシンクとファンデンブロックをパス。クインターナとロドリゲスの2人がマーティンとのタイム差をグングン詰める。
苦しみながらも1分近いリードを保ってラスト1kmのアーチをくぐるマーティン。ステージ優勝を確実にしていたが、総合成績のためにペースを弱めない。ロドリゲスとクインターナを振り切って、マーティンが標高1947mに独走でゴールした。
ロドリゲスとクインターナは36秒遅れ、ウィギンズは1分02秒遅れでゴール。これによりマーティンが新たに総合リーダーの座につき、10秒遅れでロドリゲス、32秒遅れでクインターナ、そしてウィギンズが36秒遅れで続く展開に。
マーティンが逃げ切りによってステージ優勝とリーダージャージを獲得。カタルーニャに欧州拠点を置くガーミン・シャープは、チーム総合成績でもトップに立っている。カタルーニャは残り3ステージ。総合成績に変動が起こり得るのは、バルセロナのモンジュイックの丘にゴールする最終ステージのみ。10秒差のマーティンとロドリゲス、そして好調クインターナが最後まで総合争いを繰り広げることになりそうだ。
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2013第4ステージ結果
1位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) 6h02'40"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +36"
3位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)
4位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル) +47"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ブランコプロサイクリング) +51"
6位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング) +1'02"
7位 ピーター・ステティーナ(アメリカ、ガーミン・シャープ)
8位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
9位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)
10位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +1'08"
個人総合成績
1位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) 18h48'38"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +10"
3位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) +32"
4位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング) +36"
5位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ) +39"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ブランコプロサイクリング) +51"
7位 プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ) +1'00"
8位 ピーター・ステティーナ(アメリカ、ガーミン・シャープ) +1'07"
9位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +1'13"
10位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル) +1'15"
山岳賞
クリスティアーノ・サレルノ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
スプリント賞
クリスティアン・メイヤー(カナダ、オリカ・グリーンエッジ)
チーム総合成績
ガーミン・シャープ
text:Kei Tsuji
photo:www.voltacatalunya.cat
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