トム・ボーネンに代わる砂漠の王として、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)が力を見せつけた。新天地で2013年シーズンを闘うカヴがステージ2勝目。ボーナスタイムによってついに総合首位に立った。

カタール半島を貫く直線路カタール半島を貫く直線路 photo:A.S.O.2月6日、今大会最長160kmのレースは、アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)とセバスティアン・ラング(ドイツ、IAMサイクリング)、ガティス・スムクリス(ラトビア、カチューシャ)の逃げでスタートする。風の強さは“カタールにしては”弱め。

メイン集団を牽引するオメガファーマ・クイックステップとBMCレーシングチームメイン集団を牽引するオメガファーマ・クイックステップとBMCレーシングチーム photo:A.S.O.ツアー・オブ・カタール第4ステージはカタール半島中部のキャメルレーストラックをスタートし、ジグザグに砂漠を進んで東岸のアルコールコルニッシュにゴールする。ちょうどレース中盤、グリブコ、ラング、スムクリスの3人は最大7分15秒のリードを得る。ここからスプリンターチームの集団ペースアップが始まった。

集団前方で走るテイラー・フィニーとブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシングチーム)集団前方で走るテイラー・フィニーとブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシングチーム) photo:A.S.O.フィニッシュまで30kmを残してタイム差5分。欧米レースなら逃げ有利のタイム差だが、真っ平らで直線的なカタールでは勝手が違う。オメガファーマ・クイックステップやBMCレーシングチーム、オリカ・グリーンエッジ、ヴァカンソレイユ・DCM、スカイプロサイクリング、アルゴス・シマノ、サクソ・ティンコフの集団牽引により、タイム差は見る見るうちに縮まって行く。

スプリント2連勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)スプリント2連勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:A.S.O.ラスト20kmで3分15秒。「逃げとのタイム差に神経をすり減らしたけど、比較的早くタイム差が縮まった」と話すのは、総合4位につけるカヴェンディッシュ。その後もタイム差は縮まり続け、ラスト9kmで先頭3名は捉えられた。

リーダージャージに袖を通したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)リーダージャージに袖を通したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:A.S.O.ゴールスプリントに向けて人数を揃えてトレインを組んだのはアルゴス・シマノで、スカイやFDJ、アスタナが被せて行く。

オメガファーマ・クイックステップは決して集団先頭に出ることなく、少人数でカヴェンディッシュの15〜20番手のポジションをキープする。「チームは集団牽引に力を使ってしまったので、最終局面で動けたのは3人。ラスト5kmでゼネク・スティバルが最高のポジションまで引き上げてくれ、マッテーオ・トレンティンがラスト1.5kmのロータリーまでポジションをキープ。そこからニキ・テルプストラに連れられて更にポジションを上げた」とカヴェンディッシュは振り返る。

向かい風によって統率が崩れた状態でラスト1km。ここで集団落車が発生し、清水都貴(日本ナショナルチーム)や別府史之(オリカ・グリーンエッジ)が巻き込まれてしまう。「ゴール手前で前の選手が転んで落車に巻き込まれ、頭から飛んで肩肘腰膝足首を負傷。シーズンも始まったばかりなので、明日からは様子をみて走ります」と、別府はレース後にツイート。肋骨に違和感があるため、X線検査を受けるという。

集団先頭では、自力でラインを見つけたカヴェンディッシュがラスト150mでスプリントを開始する。「右側からの風が強かったので、みんな右側に寄りがち。そこで左側から一気に前に出て、最高のポジションからスプリントに持ち込んだ」。追いすがるバリー・マルクス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)とアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)を振り切り、2日連続で手を挙げてフィニッシュラインを駆け抜けた。

昨年までのような屈強なリードアウトトレインに発射されるのではなく、抜群のポジション取りとタイミングを読む嗅覚、スプリント力で他を圧倒するカヴェンディッシュ。ボーナスタイムによって総合首位に浮上した。

ツアー・オブ・カタールは残り2ステージ。カヴェンディッシュは「明日はツアー・オブ・カタールの山場になるけど、ステージ優勝を狙う作戦に変わりはない。この良いチームの雰囲気を保って、1年を通して勝ち続けたい」とコメントする。同じくベルギーチームに在籍し、ツアー・ダウンアンダーで活躍したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)と双璧を成す存在になりそうだ。

日本人最高位は西谷泰治(日本ナショナルチーム)の18位。落車した選手を含め、全員先頭集団と同タイムでゴールしている。



ツアー・オブ・カタール2013第4ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)3h30'05"
2位 バリー・マルクス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
3位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
4位 フィリッポ・フォルティン(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)
5位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
6位 ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)
7位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ)
8位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)
9位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
10位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、アージェードゥーゼル)

18位 西谷泰治(日本、日本ナショナルチーム)
34位 盛一大(日本、日本ナショナルチーム)
54位 佐野淳哉(日本、日本ナショナルチーム)
78位 鈴木譲(日本、日本ナショナルチーム)
97位 内間康平(日本、日本ナショナルチーム)
109位 畑中勇介(日本、日本ナショナルチーム)
131位 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)
132位 清水都貴(日本、日本ナショナルチーム)

個人総合成績
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)10h20'01"
2位 ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシングチーム)        +02"
3位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)            +08"
4位 アダム・ブライス(イギリス、BMCレーシングチーム)             +09"
5位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)       +12"
6位 ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシングチーム)
7位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、スカイプロサイクリング)       +13"
8位 マシュー・ヘイマン(オーストラリア、スカイプロサイクリング)        +14"
9位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)   +16"
10位 ゲラント・トーマス(イギリス、スカイプロサイクリング)          +17"

ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)

新人賞
テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)

チーム総合成績
BMCレーシングチーム

text:Kei Tsuji
photo:A.S.O.

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