2013/01/26(土) - 18:37
オールドウィランガヒルの頂上ゴールでサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がアタック。「オーストラリアデー」のオーストラリアチームのオーストラリア人の勝利にオーストラリアが沸く。同時にトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)が総合首位の座を射止めた。
1788年にイギリス艦隊がオーストラリア大陸に到着し、植民地化を開始させた1月26日は、「オーストラリアデー(オーストラリアの日)」として国民の祝日に指定されている。南オーストラリアのサイクリスト全員が詰めかけたと言われるほどのオールドウィランガヒルで、登りバトルが繰り広げられた。
平均勾配7%の登りが3kmにわたって続くオールドウィランガヒルは、ツアー・ダウンアンダー最大の山場。昨年に引き続き、今年もオールドウィランガヒルの頂上にゴールが置かれた。選手たちは観客が詰めかけた登りを2度登ることになる。
クイーンステージだけに、スタート直後から集団前方ではアタックの火花が散る。アタックと吸収を3度繰り返した後、20km地点で7名の逃げが決まった。「チームはボアーロとクリス(セレンセン)を逃げに送り込む作戦で、自分はバックアップとして集団の前で走っていた。千切れそうになるほどペースアップ。チームは常に選手を逃げグループに送り込んでいた」と宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)は振り返る。
逃げを決行したのは、昨年ジロ・デ・イタリア総合3位のトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)、トマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)、マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソ・ティンコフ)、イェンス・モーリス(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)、クラース・ロデウィック(ベルギー、BMCレーシングチーム)、クーン・デコルト(オランダ、アルゴス・シマノ)、そしてカルヴィン・ワトソン(オーストラリア、UniSAオーストラリア)。
リーダージャージ擁するスカイプロサイクリングは、この7名に4分のリードを与える。終始風が吹き付けたため、宮澤はチームメイトの風よけとして集団前方に姿を見せる。「レース前半はクリスのためにポジション取り。そして、最初のオールドウィランガヒルの登りに向けて、クリスを集団前方に引き上げた」と言う。
レース後半に入ると、ブランコプロサイクリングとレディオシャック・レオパードがメイン集団のペースアップを開始。オールドウィランガヒルの登りが始まると、マルチンスキーやボアーロを残して逃げは吸収。最後まで粘ったマルチンスキーもあえなく吸収された。
するとカウンターアタックでエロス・カペッキ(イタリア)とホセ・エラーダ(スペイン)のモビスターコンビ、ギヨーム・ボナフォン(フランス、アージェードゥーゼル)、ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)が集団を飛び出し、新たに4名で逃げグループを形成してオールドウィランガヒル頂上を通過する。しかしスカイプロサイクリングとオリカ・グリーンエッジがコントロールするメイン集団を振り切ることは出来ない。
2度目の、つまり最後のオールドウィランガヒルに向けた登りが始まると逃げは全て吸収。レースはフリダシに戻され、ここから本命たちによる闘いが始まった。
ゴールまで3kmを切り、先陣を切ったのはイヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム)。この動きにティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック・レオパード)とペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)が反応するも、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)が牽引するメイン集団は離れない。
続いて総合3位のハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター)がアタックし、ラスト1kmで集団から飛び出したゲランスとともに先頭グループを形成する。遅れてスラグテルも合流したが、その後ろにリーダージャージのトーマスの姿は無かった。
ゴールまで300mを切るとスラグテルがさらに加速し、ゲランスが食らいつく。ラスト150mでスプリントを開始したゲランスが、スラグテルを振り切ってゴールした。
昨年同じオールドウィランガヒルでアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とバトルを繰り広げ、ステージ2位&逆転総合優勝を果たしたゲランス。オーストラリアデーに、ここまで勝利の無かった開催国オーストラリアに勝利をもたらした。
「ツール・ド・フランスのステージよりも多いと感じる観客の前で、こうして勝つことが出来て本当にファンタスティックだ。沿道には観客が途切れなかった」。表彰台でヒーロー扱いを受けるゲランスは語る。
「第2ステージで総合争いから脱落したことは残念でならなかった。埋め合わせをするには、今日勝つしかなかったんだ。ブランコの若い選手(スラグテル)の後ろに飛びついて、ゴール前で勝負を仕掛けた。昨年はステージ2位で今年はステージ1位。1週間を締めくくるには最高の結果だ」。
そして、28秒遅れでゴールしたトーマスに代わって、抜群の登坂力を見せつけて2位に入ったスラグテルが総合首位に。リーダージャージを獲得するとともに、新人賞、スプリント賞でトップに立った23歳の新鋭ダッチオールラウンダーは、満面の笑みでインタビューを答える。「今日はとにかく総合ライバルを突き放すことだけに集中していた。サイモン・ゲランスがモビスターの選手(モレーノ)と飛び出した時、ゲラント・トーマスを突き放すことと、ステージ3位のボーナスタイムのことだけを考えて食らいついた。総合リードを広げることが出来て満足している。ステージ優勝を逃したのは悔しいけど、リーダージャージを手にしたのだから、それは些細なことに感じる。今週プロ初勝利を飾って、今こうしてワールドツアーレースでリーダージャージを着ている。自分のキャリアはここから始まるのだと思う」。
一方「ラスト500mで脚が完全に売り切れてしまった」と悔やむのは、リーダージャージを失ったトーマス。「チームメイトはだれもかもが素晴らしく、特にエディ(ボアッソンハーゲン)は献身的に動いてくれた。サイモン(ゲランス)のアタックは強力で、一気に距離が開いた。そこで勝負がついてしまった。全力を尽くしたけど、もう何も残っていなかった」。トーマスは29秒差の総合5位で最終日を迎える。
翌日はツアー・ダウンアンダー最終日。アデレード市内を駆け抜ける平坦基調の周回コースは完全にスプリンター向き。アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)の通算勝利数の記録更新に注目が集まる。「ジョニー」ことジョナサン・キャントウェル(オーストラリア)のリードアウト役を担う宮澤は、この日12分49秒遅れのグルペット先頭でゴールした。
レースの模様はフォトギャラリーにて!
ツアー・ダウンアンダー2013第5ステージ結果
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 3h36'25"
2位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)
3位 ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター) +10"
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル) +12"
5位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック・レオパード) +13"
6位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ブランコプロサイクリング) +16"
7位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)
8位 ラファエル・バルス(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)
9位 ダニエーレ・ピエトロポッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
10位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック・レオパード)
102位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +12'49"
個人総合成績
1位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング) 16h35'33"
2位 ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター) +13"
3位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック・レオパード) +25"
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル) +28"
5位 ゲラント・トーマス(イギリス、スカイプロサイクリング) +29"
6位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック・レオパード)
7位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル) +32"
8位 ダニエーレ・ピエトロポッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
9位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ブランコプロサイクリング)
10位 ユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、FDJ) +37"
99位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +23'32"
山岳賞
ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター)
ポイント賞
トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)
新人賞
トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)
チーム総合成績
レディオシャック・レオパード
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
1788年にイギリス艦隊がオーストラリア大陸に到着し、植民地化を開始させた1月26日は、「オーストラリアデー(オーストラリアの日)」として国民の祝日に指定されている。南オーストラリアのサイクリスト全員が詰めかけたと言われるほどのオールドウィランガヒルで、登りバトルが繰り広げられた。
平均勾配7%の登りが3kmにわたって続くオールドウィランガヒルは、ツアー・ダウンアンダー最大の山場。昨年に引き続き、今年もオールドウィランガヒルの頂上にゴールが置かれた。選手たちは観客が詰めかけた登りを2度登ることになる。
クイーンステージだけに、スタート直後から集団前方ではアタックの火花が散る。アタックと吸収を3度繰り返した後、20km地点で7名の逃げが決まった。「チームはボアーロとクリス(セレンセン)を逃げに送り込む作戦で、自分はバックアップとして集団の前で走っていた。千切れそうになるほどペースアップ。チームは常に選手を逃げグループに送り込んでいた」と宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)は振り返る。
逃げを決行したのは、昨年ジロ・デ・イタリア総合3位のトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)、トマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)、マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソ・ティンコフ)、イェンス・モーリス(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)、クラース・ロデウィック(ベルギー、BMCレーシングチーム)、クーン・デコルト(オランダ、アルゴス・シマノ)、そしてカルヴィン・ワトソン(オーストラリア、UniSAオーストラリア)。
リーダージャージ擁するスカイプロサイクリングは、この7名に4分のリードを与える。終始風が吹き付けたため、宮澤はチームメイトの風よけとして集団前方に姿を見せる。「レース前半はクリスのためにポジション取り。そして、最初のオールドウィランガヒルの登りに向けて、クリスを集団前方に引き上げた」と言う。
レース後半に入ると、ブランコプロサイクリングとレディオシャック・レオパードがメイン集団のペースアップを開始。オールドウィランガヒルの登りが始まると、マルチンスキーやボアーロを残して逃げは吸収。最後まで粘ったマルチンスキーもあえなく吸収された。
するとカウンターアタックでエロス・カペッキ(イタリア)とホセ・エラーダ(スペイン)のモビスターコンビ、ギヨーム・ボナフォン(フランス、アージェードゥーゼル)、ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)が集団を飛び出し、新たに4名で逃げグループを形成してオールドウィランガヒル頂上を通過する。しかしスカイプロサイクリングとオリカ・グリーンエッジがコントロールするメイン集団を振り切ることは出来ない。
2度目の、つまり最後のオールドウィランガヒルに向けた登りが始まると逃げは全て吸収。レースはフリダシに戻され、ここから本命たちによる闘いが始まった。
ゴールまで3kmを切り、先陣を切ったのはイヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム)。この動きにティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック・レオパード)とペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)が反応するも、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)が牽引するメイン集団は離れない。
続いて総合3位のハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター)がアタックし、ラスト1kmで集団から飛び出したゲランスとともに先頭グループを形成する。遅れてスラグテルも合流したが、その後ろにリーダージャージのトーマスの姿は無かった。
ゴールまで300mを切るとスラグテルがさらに加速し、ゲランスが食らいつく。ラスト150mでスプリントを開始したゲランスが、スラグテルを振り切ってゴールした。
昨年同じオールドウィランガヒルでアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とバトルを繰り広げ、ステージ2位&逆転総合優勝を果たしたゲランス。オーストラリアデーに、ここまで勝利の無かった開催国オーストラリアに勝利をもたらした。
「ツール・ド・フランスのステージよりも多いと感じる観客の前で、こうして勝つことが出来て本当にファンタスティックだ。沿道には観客が途切れなかった」。表彰台でヒーロー扱いを受けるゲランスは語る。
「第2ステージで総合争いから脱落したことは残念でならなかった。埋め合わせをするには、今日勝つしかなかったんだ。ブランコの若い選手(スラグテル)の後ろに飛びついて、ゴール前で勝負を仕掛けた。昨年はステージ2位で今年はステージ1位。1週間を締めくくるには最高の結果だ」。
そして、28秒遅れでゴールしたトーマスに代わって、抜群の登坂力を見せつけて2位に入ったスラグテルが総合首位に。リーダージャージを獲得するとともに、新人賞、スプリント賞でトップに立った23歳の新鋭ダッチオールラウンダーは、満面の笑みでインタビューを答える。「今日はとにかく総合ライバルを突き放すことだけに集中していた。サイモン・ゲランスがモビスターの選手(モレーノ)と飛び出した時、ゲラント・トーマスを突き放すことと、ステージ3位のボーナスタイムのことだけを考えて食らいついた。総合リードを広げることが出来て満足している。ステージ優勝を逃したのは悔しいけど、リーダージャージを手にしたのだから、それは些細なことに感じる。今週プロ初勝利を飾って、今こうしてワールドツアーレースでリーダージャージを着ている。自分のキャリアはここから始まるのだと思う」。
一方「ラスト500mで脚が完全に売り切れてしまった」と悔やむのは、リーダージャージを失ったトーマス。「チームメイトはだれもかもが素晴らしく、特にエディ(ボアッソンハーゲン)は献身的に動いてくれた。サイモン(ゲランス)のアタックは強力で、一気に距離が開いた。そこで勝負がついてしまった。全力を尽くしたけど、もう何も残っていなかった」。トーマスは29秒差の総合5位で最終日を迎える。
翌日はツアー・ダウンアンダー最終日。アデレード市内を駆け抜ける平坦基調の周回コースは完全にスプリンター向き。アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)の通算勝利数の記録更新に注目が集まる。「ジョニー」ことジョナサン・キャントウェル(オーストラリア)のリードアウト役を担う宮澤は、この日12分49秒遅れのグルペット先頭でゴールした。
レースの模様はフォトギャラリーにて!
ツアー・ダウンアンダー2013第5ステージ結果
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 3h36'25"
2位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)
3位 ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター) +10"
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル) +12"
5位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック・レオパード) +13"
6位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ブランコプロサイクリング) +16"
7位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)
8位 ラファエル・バルス(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)
9位 ダニエーレ・ピエトロポッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
10位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック・レオパード)
102位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +12'49"
個人総合成績
1位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング) 16h35'33"
2位 ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター) +13"
3位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック・レオパード) +25"
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル) +28"
5位 ゲラント・トーマス(イギリス、スカイプロサイクリング) +29"
6位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック・レオパード)
7位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル) +32"
8位 ダニエーレ・ピエトロポッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
9位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ブランコプロサイクリング)
10位 ユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、FDJ) +37"
99位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +23'32"
山岳賞
ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター)
ポイント賞
トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)
新人賞
トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)
チーム総合成績
レディオシャック・レオパード
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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