2009/05/06(水) - 00:00
もうこのペダル以外考えられないぐらい惚れ込んでます
小西裕介(なるしまフレンド)
プロフィール
小西 裕介
こにし ゆうすけ
なるしまフレンド立川店店長。レース歴19年。ツール・ド・台湾にも出場、国内トップレーサーとして活躍した経歴を持つ、サーキットコースを得意とするスピードマンタイプだ。マイバイクはデローザ・キング3+デュラエースDi2。今までのビンディングペダル暦は高校の時ルックのPP65、次は初期型タイム、SPD、シマノのデュラエースのルックタイプ、SPDAR、カンパのプロフィット、タイムのRXS、そしてスピードプレイ・ゼロチタン。
なるしまフレンド
「すべての機能が理にかなっている」
今はもうスピードプレイ以外考えられない。それぐらい惚れ込んでいます。自分の理想としているペダルの形に一番近いんです。初めて手にしたきっかけというのは、イギリス人のお客様に「スピードプレイは日本ではあまり使われてないが、海外では凄く人気があるんだよ」と言われて興味を持ったから。ちょうど膝の調子が悪い時に、「膝にも優しくていい」と言われて。それではじめは仲間のペダルを借りてちょっと使ってみて、一週間後には自分で買ってしまいましたね。
海外の選手のペダルを見ていると、よく契約外の製品を使ったりするじゃないですか。チームCSC(現サクソバンク)の選手全員がスピードプレイを使っているけれど、スポンサードされておらず購入して使っていると聞いています。それで使う気になったのも大きい。プロ選手のペダルへのこだわりには譲れないものがあって、契約外のものを使う選手も多いはず。それが選手全員が同じペダルを使っていて、(おそらく)不満が無い。それは何かメリットがあるんだろうと思ったんです。
以前、極端に小さなボディのシマノSPDペダルがありました。それを使っていたときにはスウィートスポットが見つけやすくて凄く良かったんですが、逆に横揺れに対する安定感が無くて、そのうち製品が消えてしまった。
小さいペダルは安定感が無いから、僕も昔から「小さいペダルを大きなクリートでキャッチしてあげる方式が理にかなっている」と思っていたんです。それが出来ているのはスピードプレイだけです。
固定も可動もどちらのモードにも対応するペダルがスピードプレイです。他社のペダルはクリートの種類を変えたりするけれど、稼動域の幅も自分では調整できない。大体クリートを交換すること0°・4.5°・9°から選ぶのに対し、スピードプレイは振り幅が自分で無段階に決められる。
クリートの深さを決めた後でも振り幅とQファクターの調整ができる。だからクリートの調整に迷わなくなりました。それまでシマノやルックのペダルを使ってきたんですが、その便利さに気づいて以来、スピードプレイ一筋です。
「前後位置とQファクターのセッティングが別々に出せる」
他社のペダルをセッティングする際に、クリートの深さを変えつつ、角度も変わってしまって、どちらもワケが分からなくなるというのは良くあること。 スピードプレイの場合は、それらが別々に調整・固定できるから、まず拇指球に対するペダル軸の深さをまず決めて、Qファクターを決めて、稼働域を決めて、乗ってみる。それでもし駄目ならQファクターが同じ、可動域も同じ状態で深さをちょっと変えてみるとか、そうやって別々に調整できて、自分のベストなポジションを探しやすいんです。だからペダルをクリートでキャッチするという方法が一番いい。深さを決めた後になおQファクターが調整できるのはメリットです。左右への振りも、たとえば4.5度動かしたい場合も、内側に2度、外側に2.5度づつ動かしたいとか、好みで決められる。それが先端固定のクリートだと、やっぱり組合せが難しい。それがスピードプレイだと「もうちょっとだけかかとを内側に入れたい」などの好みを簡単に調整できるんです。
クリートの調整のしやすさと、回しやすさ。ボディが小さいから安定感が無いようでいて、十分ある。かつポイントで力を入れやすい。それが気に入っています。クリートの固定力調整は出来ないけれど、それは全然必要ないと感じます。
はめてからの「気持ち(微)調整」ができるのはスピードプレイくらいで、これは絶対大きなメリット。「もうちょっとだけ内側にしたい」が簡単に調整できる。ほんのコンマ何ミリ単位の微調整をしたくなることはありますからね。
ちなみに僕のクリートは固定に近いけど、かかとが僅かに外に2.5度ぐらい動くように調整して、調整ネジをロックタイト(ネジ止め剤)で固めています。調整を何回もやっているとネジの締めが甘くなることがあるので。
「前後バランスが良く、システムで軽量」
硬いカーボンソールに大きなペダルを組み合わせて使うと、どこのポイントで踏んでいるのかがイメージしづらいんです。小さいペダルだと、力を伝えるポイントをつかみやすい。例えば靴の裏全体で踏んでいるようなカーボンソールのシューズで、前後に長いペダルをつけたとしたら、多分どこで踏んでいるか分からないでしょう。それに対してペダルが小さいと、スウィートスポットがつかみやすい。拇指球とペダル軸との位置がまず合わせやすいんです。
他社のペダルディが大きくなっているのは、小さいクリートだと安定感が出ないから。それでペダルを大きくする。例えばシマノSPD-SLはペダルボディを大きくて安定感を出しているというけれど、基本的にクリートが接触している部分はスピードプレイとそれほど変わらない。
そしてビンディング機構が後部にあるぶん、後部が重くなっている。対してスピードプレイは前後の重量バランスの崩れが少ない(ない)。前後の重さが均一でバランスが取れていることも、回しやすさにつながっているんでしょうね。
ペダルの上にクリートを載せるのではなくて、ペダルがクリートに半分めり込む構造ですから、一体となったときに全体でペダルとして機能するんです。クリートもほぼ前後バランスが取れている形なので、ペダリングの円運動に影響が出ないのだと思います。
メンテナンスもほとんど必要なく、汚れたら拭くぐらい。ドライルブを射すことが推奨されていますが、滑る感じもするので、ときどきほんの少量を塗布してふき取ってやれば十分だと思います。
クリートの傷つきが気になるので、歩くことがあるときはコーヒーショップキャップス(クリートカバーの名称)をつけています。接地面が金属のクリートなのでプラスチッククリートよりは持ちはいいと思いますが、土や砂が入ると動きに支障が出るし、ネジ部が減ると微調整できなくなるので、このカバーはペダルを購入する際に一緒に揃えておくといいですね。
世界のトッププロ4チームが使用する
スピードプレイペダルは今季、チームミルラム、リクイガス、サーベロテストチームの3つのトップチームにスポンサード供給されている。そしてサクソバンクがチームの判断でスピードプレイを購入してチーム全員が使用している。リクイガスのエース、ジロ覇者のイヴァン・バッソはチームCSC時代に3シーズンに渡ってスピードプレイを使用したが、リクイガスに移籍してからもこれを使い続けることにこだわった。そしてバッソのすすめでリクイガスはチーム全員が採用するチーム契約を結んだのだ。
一方、サクソバンク(旧チームCSC)は契約期間が切れたものの、ビャルネ・リース監督の方針で「スピードプレイペダルが選手の膝にやさしい」という判断のもと、チームが自費購入してまで使用し続けているという。
またサーベロテストチームのカルロス・サストレは、08年にスピードプレイペダルでツールを制した。スタックハイトをさらに低くする専用シューズを使い、サストレは引き続きチーム全体で採用したこのペダルを使ってグランツールに挑む。
「一度使うとやめられない」。スピードプレイにはそんな魅力があるのだろう。
提供:JPスポーツグループ 企画/制作:シクロワイアード