日本、そして本国イタリアにおいて、ピナレロのロードバイクの2本柱であるレースモデル「F」とアマチュア向けモデル「X」の販売比率はおよそ9対1であるという。つまり圧倒的にレースバイク需要が強い。そこにはプロ機材に対する憧れはもちろんのこと、一般的なアマチュア向けモデルに対する「走りが重い」というマイナスイメージがこびり付いているからだ。
しかし、グローバルに目を向けると、その比率は6対4にまで迫るという。特にドイツや北欧といったレース至上主義ではないスポーツサイクリングカルチャーが根付く国々では、現実的なハイスピードを愉しむためのパッケージ、つまりXシリーズがごく自然に支持されている。

ピナレロのお膝元、トレヴィーゾの郊外で開催されたプレゼンテーション。世界遺産に認定されたプロセッコの丘の麓にあたる photo:Pinarello 
およそ20名ほどのジャーナリストが欧米と日本から集結。2日間、プレゼンと試乗で理解を深めることができた photo:Pinarello

ピナレロの顔役、ファウスト・ピナレロ氏が登場。今年既にプロトタイプのDOGMA Xでストラーデビアンケの市民イベントを走ったという photo:Pinarello
剛性や空力を追求し、先鋭化が進む近年のレースバイクは、ライダー側がバイクに歩調を合わせる必要があるバイクが少なくない。その尖り方に、あるいは存在自体に少し疲れを感じているホビーライダーは少なくないだろう。しかし、だからといって野暮ったい走りのエンデュランスバイクは嫌。かつて熱心にレースを走っていた人や、仕事の傍ら日夜トレーニングに励むアマチュアが、(筆者も含めて)わざわざ走りの鈍いバイクを選ぶことはまずもってない。
「そういった層にとって走りの鋭さは必要不可欠。でも、DOGMA Fほど過激なポジションは時に身体への大きな負担になり得る。だからこそDOGMA Xが必要だった」。
開発陣がそう語るように、このバイクはポジションの過激さをほんの僅かに抑えつつも、ピュアなレーシングスピードを徹底的に追求した一台だ。ピナレロが放つ2代目の新型DOGMA Xは、そうした現代のハイエンド市場に対する、極めて贅沢でラグジュアリーな回答だ。

披露された新型DOGMA X。フレームは先代よりもメリハリの効いた、美しいデザインにアップデートされた photo:So Isobe
新しいDOGMA Xと対面するべく、5月末にピナレロのお膝元であるイタリア・ヴェネト州トレヴィーゾへ渡った。滞在2日半というショートトリップではあったものの、ピナレロが本拠地を置くトレヴィーゾ周辺の丘陵地帯で、新型DOGMA Xの走りを体感することができた。

本気で走るアマチュアライダーのためにデザインされたDOGMA X photo:Pinarello
発表会の幕開けを飾るプレゼンテーション映像に映し出されていたのは、峠道を全力で駆け抜けるアマチュアサイクリストたちの姿。掲げられたテーマは「Amplify every emotion(すべての感情を増幅させる)」。体が悲鳴を上げようともプッシュし続ける熱量に寄り添う、アマチュアのための最高峰。それが新型DOGMA Xの本質だ。
ベールを脱いだ2代目DOGMA XがDOGMA F以上に曲線が多用され、その佇まいは極めてグラマラス。プレゼンテーションに登場したファウスト・ピナレロ代表は「ピナレロらしいスタイルを維持したまま、性能をさらに引き上げるために試行錯誤を繰り返した」と語る。熱量高く語られたのは、ピナレロが大切にしてやまない造形美学と、高い走行性能へのこだわりだ。

ピナレロらしさ、DOGMAらしさはそのまま。デザインや塗装に野暮ったさなど微塵もない photo:So Isobe

美しい「Etna Lucente」カラーの塗り分け。艶消しマットと、カーボン目地が浮き出るクリア、そしてラメ入りの3パターンを組み合わせている photo:So Isobe 
最大タイヤクリアランスは35mmと、このカテゴリーとしては細い。挙動をスポイルする超ワイドタイヤはピナレロの美学に反するからだ photo:So Isobe
このバイクの本質を見誤ってはならない。DOGMA Xは、単にヘッドチューブを伸ばし、ハンドル位置を高くしただけの、いわゆる「快適ポジションのイージーバイク」では決してない。
ピナレロには、かつて北の地獄(パリ〜ルーベ)を制するために電子制御のリアサスペンションまで投入した「DOGMA-K」の系譜がある。彼らにとっての快適性とは、ライダーを甘やかすためのコンフォートではなく、「いかにハイスピードを維持し、戦闘力を保つか」というレースの思想そのものと言っていい。

開発を主導したマッシモ・ポロニアート氏。「エンデュランスバイクというカテゴリーではあるものの、他ブランドのそれとは全く思想が違う」と言う photo:Pinarello
開発を主導したマッシモ・ポロニアート氏は、この2代目をして「みんなのためのDOGMA」と表現した。しかし、その言葉の根底には、ピュアなロードレーサーとしての誇りが脈々と流れている。「これは単に快適にゆっくり乗りたい人に向けたバイクじゃない。6時間も7時間もサドルの上で過ごし、アグレッシブに走りたい人のための高性能バイクです」。
実際、Fシリーズほどの過激な前傾姿勢は必要としないユーザーを想定しているが、トップチューブ長(水平換算)535mmの515サイズのヘッドチューブ長は133mmで、スタックハイトは548,6mmと、他ブランドのエンデュランスバイクに比べると明らかに低い。あくまでレーシングバイクを愛するユーザーが納得する走りのキレを維持しながら、ナーバスにならず走りに集中できるジオメトリーに収められている。

先代にあったブリッジを廃した「X-STAYS 2.0」。シートステーもDOGMA Fと同じ方向にベンドするように変化した photo:So Isobe 
トップチューブ長(水平換算)535mmの515サイズのヘッドチューブ長は133mm。他社のエンデュランスモデルよりも遥かに低い photo:So Isobe
最大の特徴は、初代DOGMA Xのアイコンでもあったシートステーのクロス構造を廃し、トップチューブとシートチューブの集合部分の構造を大幅に見直し、シートステーの交点を下方へと大きく引き下げたこと。トラス構造のようなY字のシートステーは一見剛性強化を思わせるが、ステーそれぞれを1本式に比べて細く設計できるためしなり量を増やし、結果的に乗り心地に向上に繋がるというのがピナレロの設計思想。洗練されたフレーム独自のしなりと2箇所の交点によって路面からの突き上げを効率的に吸収し、路面追従性を向上。シートステーが先代と逆向きに反っていることが横から見た際の大きな変化だ。
フレーム素材にはDOGMA Fに奢られる最高峰カーボン「Torayca M40X」を採用し、さらにフレームセットのUCI公認を取得していることも実にピナレロらしい。マッシモ氏に直接確認したところ、剛性バランスはDOGMA Fと比較して10%ほどダウンさせているという。高すぎる剛性はアマチュアの脚を削る。ホビーライダーの出力特性に最適化したというが、彼らが言う「アマチュア」の想定レベルは非常に高いことを加えておきたい。

DOGMA Fよりも曲線を多用したダウンチューブ。空力性能と横剛性向上に貢献する photo:So Isobe

ピナレロのハイエンドモデルに採用される3Dプリント製のチタンシートヤグラ photo:So Isobe 
マッシブな造形のボトムブラケット。フレーム剛性はDOGMA F比で10%ほど落としているという photo:So Isobe
他社のエンデュランスロードには40mm以上のタイヤクリアランスが確保されていることも少なくないが、「DOGMA」を冠したピナレロバイクにとって、重く太すぎるタイヤは悪である。DOGMA Xのタイヤクリアランスは35mmと、ここでもピナレロの美学が貫かれている。プリンストンのホイールをアッセンブルした状態で車重は7.05kgだという。
フロント周りにも妥協はない。空力性能を高めるためにヘッドチューブのノーズ形状をさらにスリム化させるとともに、テーパー形状の新型エアロダウンチューブを組み合わせることで、平坦での巡航性能だけでなく、登りでの横剛性をも引き上げた。

DOGMA Xは11種類のフレームサイズと4種類のカラーバリエーションで発売される photo:So Isobe
細部を見ても、荒れた路面での信頼性と軽量化を両立する3Dプリント製のチタンシートヤグラの採用や、フロントフォークのスルーアクスルねじ切りを隠すクリーンなエアロ設計、さらにはUDH(ユニバーサルディレイラーハンガー)とシマノの双方に完全対応したリアハンガーなど、現代のハイスペックバイクとしてのディテールが凝縮されている。
インプレと、開発者インタビューは次章にてお届けします。
しかし、グローバルに目を向けると、その比率は6対4にまで迫るという。特にドイツや北欧といったレース至上主義ではないスポーツサイクリングカルチャーが根付く国々では、現実的なハイスピードを愉しむためのパッケージ、つまりXシリーズがごく自然に支持されている。



剛性や空力を追求し、先鋭化が進む近年のレースバイクは、ライダー側がバイクに歩調を合わせる必要があるバイクが少なくない。その尖り方に、あるいは存在自体に少し疲れを感じているホビーライダーは少なくないだろう。しかし、だからといって野暮ったい走りのエンデュランスバイクは嫌。かつて熱心にレースを走っていた人や、仕事の傍ら日夜トレーニングに励むアマチュアが、(筆者も含めて)わざわざ走りの鈍いバイクを選ぶことはまずもってない。
「そういった層にとって走りの鋭さは必要不可欠。でも、DOGMA Fほど過激なポジションは時に身体への大きな負担になり得る。だからこそDOGMA Xが必要だった」。
開発陣がそう語るように、このバイクはポジションの過激さをほんの僅かに抑えつつも、ピュアなレーシングスピードを徹底的に追求した一台だ。ピナレロが放つ2代目の新型DOGMA Xは、そうした現代のハイエンド市場に対する、極めて贅沢でラグジュアリーな回答だ。

新しいDOGMA Xと対面するべく、5月末にピナレロのお膝元であるイタリア・ヴェネト州トレヴィーゾへ渡った。滞在2日半というショートトリップではあったものの、ピナレロが本拠地を置くトレヴィーゾ周辺の丘陵地帯で、新型DOGMA Xの走りを体感することができた。
全力で走るアマチュアライダーに贈る最高峰モデル

発表会の幕開けを飾るプレゼンテーション映像に映し出されていたのは、峠道を全力で駆け抜けるアマチュアサイクリストたちの姿。掲げられたテーマは「Amplify every emotion(すべての感情を増幅させる)」。体が悲鳴を上げようともプッシュし続ける熱量に寄り添う、アマチュアのための最高峰。それが新型DOGMA Xの本質だ。
ベールを脱いだ2代目DOGMA XがDOGMA F以上に曲線が多用され、その佇まいは極めてグラマラス。プレゼンテーションに登場したファウスト・ピナレロ代表は「ピナレロらしいスタイルを維持したまま、性能をさらに引き上げるために試行錯誤を繰り返した」と語る。熱量高く語られたのは、ピナレロが大切にしてやまない造形美学と、高い走行性能へのこだわりだ。
プロダクト・フィロソフィー:イージーバイクではない「もう一つの最高峰」



このバイクの本質を見誤ってはならない。DOGMA Xは、単にヘッドチューブを伸ばし、ハンドル位置を高くしただけの、いわゆる「快適ポジションのイージーバイク」では決してない。
ピナレロには、かつて北の地獄(パリ〜ルーベ)を制するために電子制御のリアサスペンションまで投入した「DOGMA-K」の系譜がある。彼らにとっての快適性とは、ライダーを甘やかすためのコンフォートではなく、「いかにハイスピードを維持し、戦闘力を保つか」というレースの思想そのものと言っていい。

開発を主導したマッシモ・ポロニアート氏は、この2代目をして「みんなのためのDOGMA」と表現した。しかし、その言葉の根底には、ピュアなロードレーサーとしての誇りが脈々と流れている。「これは単に快適にゆっくり乗りたい人に向けたバイクじゃない。6時間も7時間もサドルの上で過ごし、アグレッシブに走りたい人のための高性能バイクです」。
実際、Fシリーズほどの過激な前傾姿勢は必要としないユーザーを想定しているが、トップチューブ長(水平換算)535mmの515サイズのヘッドチューブ長は133mmで、スタックハイトは548,6mmと、他ブランドのエンデュランスバイクに比べると明らかに低い。あくまでレーシングバイクを愛するユーザーが納得する走りのキレを維持しながら、ナーバスにならず走りに集中できるジオメトリーに収められている。
「余計なものはつけない」ピナレロの美学
ディスクブレーキとワイドタイヤ全盛となった今、DOGMA Xもまた、先代がそうだったように余計なギミックはつけず、主な衝撃吸収はタイヤと驚くほど細いシートポスト、そしてアップデートを遂げたリアステー「X-STAYS 2.0」が担う。

最大の特徴は、初代DOGMA Xのアイコンでもあったシートステーのクロス構造を廃し、トップチューブとシートチューブの集合部分の構造を大幅に見直し、シートステーの交点を下方へと大きく引き下げたこと。トラス構造のようなY字のシートステーは一見剛性強化を思わせるが、ステーそれぞれを1本式に比べて細く設計できるためしなり量を増やし、結果的に乗り心地に向上に繋がるというのがピナレロの設計思想。洗練されたフレーム独自のしなりと2箇所の交点によって路面からの突き上げを効率的に吸収し、路面追従性を向上。シートステーが先代と逆向きに反っていることが横から見た際の大きな変化だ。
フレーム素材にはDOGMA Fに奢られる最高峰カーボン「Torayca M40X」を採用し、さらにフレームセットのUCI公認を取得していることも実にピナレロらしい。マッシモ氏に直接確認したところ、剛性バランスはDOGMA Fと比較して10%ほどダウンさせているという。高すぎる剛性はアマチュアの脚を削る。ホビーライダーの出力特性に最適化したというが、彼らが言う「アマチュア」の想定レベルは非常に高いことを加えておきたい。



他社のエンデュランスロードには40mm以上のタイヤクリアランスが確保されていることも少なくないが、「DOGMA」を冠したピナレロバイクにとって、重く太すぎるタイヤは悪である。DOGMA Xのタイヤクリアランスは35mmと、ここでもピナレロの美学が貫かれている。プリンストンのホイールをアッセンブルした状態で車重は7.05kgだという。
フロント周りにも妥協はない。空力性能を高めるためにヘッドチューブのノーズ形状をさらにスリム化させるとともに、テーパー形状の新型エアロダウンチューブを組み合わせることで、平坦での巡航性能だけでなく、登りでの横剛性をも引き上げた。

細部を見ても、荒れた路面での信頼性と軽量化を両立する3Dプリント製のチタンシートヤグラの採用や、フロントフォークのスルーアクスルねじ切りを隠すクリーンなエアロ設計、さらにはUDH(ユニバーサルディレイラーハンガー)とシマノの双方に完全対応したリアハンガーなど、現代のハイスペックバイクとしてのディテールが凝縮されている。
フレームセットで販売、税込価格は1,276,000円
日本国内において、DOGMA Xはフレームセットとして販売が行われる。カラーリングは高級感を纏う4種類で、価格は税込1,276,000円だ。インプレと、開発者インタビューは次章にてお届けします。
| フレーム | TORAYCA M40X カーボン |
| サイズ | 43、46.5、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5、62(C-C) |
| カラー | Moonlight Frost Etna Lucente Aqua Veil Jade Eclipse |
| 価格 | 1,276,000円(税込) |
提供:カワシマサイクルサプライ
text:So Isobe
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