「とてつもなく速いのに、乗り味は一般的なロードバイクと変わらない」国内屈指の機材ギーク・小畑郁がそう評した、ファクターの新型ONE。その異様なシルエットからは想像もつかない「素直さ」と「絶対的な速さ」の二律背反を、国内最速試乗で解き明かす。

Vol.1に引き続き、トライスポーツが所有する新型ONEを借用。フレームサイズは52、ステム110mmに相当する「1」の専用ハンドルをセットする
かつてないワイドスタンスのフロントフォークとリアステー、カミソリのような鋭さを感じさせるヘッド周り。新型ONEのあまりに特異なシルエットを前に、我々はどうしても身構えてしまう。「乗り味自体もクセのあるキワモノバイクではないか?」「乗りこなすのに覚悟がいるに違いない」と。
常識を覆すあまりのエアロっぷりに、発表直後から世界中で話題を巻き起こしているファクターの新型ONE。その国内初走行を早速記事化すべく、シクロワイアードではトライスポーツ協力のもと国内最速インプレッションを行なった。異形とも呼べる新時代のエアロロードはどのような走りを見せるのか?その模様を深く切り取るために、最高の布陣を招集した。
テスターを務めるのは、国内屈指の機材マニアであり、強豪レーサーとして日夜トレーニングと機材研究に勤しむ小畑郁さん(なるしまフレンド)と、自らファクターの現行OSTRO VAMを所有し、新型ONEの購入をすでに決めている古川由貴さん(SBC横浜あざみ野店)の2人。現場でヒアリングを担当した筆者、シクロワイアードの磯部も先代ONEを所有している一人だ。

テスターは古川由貴さん(SBC横浜あざみ野店)と小畑郁さん(なるしまフレンド)の二人 photo:Naoki Yasuoka

BBハイトが低いためクランク長は170mmまで(試乗車は165mm)。現代のレーサーのポジションにもマッチした設計だ photo:Naoki Yasuoka 
古川さんは現行OSTROを所有。インプレ現場に持ち込み、対比しながらテストを進めた photo:Naoki Yasuoka
全世界を話題の渦中に巻き込んだ、とてつもない車体を前に、ファクターを、そしてエアロを偏愛するメンバーが集結。粛々と進行することが多いインプレッションロケとしては異様とも言える熱気と高揚の中、スケジュールは進行していくのだった。

「これは凄い。普段よりもブレーキを意識しないと、ちょっと危ないくらいスピードが乗るんです」 photo:Naoki Yasuoka
「実際に乗ってみたら、本当に速い。グッと加速した時に、OSTROや他のエアロロードよりも勝手に進んでいくというか、どこかへ吸い込まれるような感覚が非常に強いバイクだなという印象でした。気づいたらすごく遠くまで行ってしまったんですけど、上りも全然苦ではないし、見た目から想像するよりもずっと走りにクセがない。レーサーバイクですから、しっかりと芯があって、踏んでいけばもちろん脚の消耗は早い。ただ、設計の意図通り、前乗りポジションを意識した時に、足自体の回転はすごく軽やかに感じました」
特異なルックスとは裏腹に、走りは驚くほどに「真っ当」だという。しかし、スピードを乗せた瞬間にその正体は現れる。
「一番光ったのは下りからの登り返し区間です。本当にエアロの王様と言っても差し支えないくらい伸びるし、その上でステアリングがものすごいどっしりと構えられているので、安心してスピードを出せる。ブレーキをいつも以上に意識しないと、ちょっと危ないかな、と思えるほど速度が出ます(笑)」

「どこにもクセが無い。こんなフォルムなのに車体のバランスが素晴らしいんです」 photo:Naoki Yasuoka
その言葉を隣で聞いていた小畑さんも、深く頷きながら驚きを口にする。
「最近のファクターのモノづくりを見ていると、乗る前から良いバイクなんだろうなと分かっていました。それでも予想していたよりもずっと乗りやすくて、クセがない。フロント周りの特殊なワイドフォークの形状とか、いろいろなものを考えると、どこかバランスが悪いとか、何か気になるポイントがありそうなのに、それがほぼ感じられなかった。あんなフォルムとジオメトリーなのに、目隠しして乗ったら、一般的なロードフレームと全く変わらないほど違和感がない。多分誰が乗っても僕と印象は変わらないと思います」。

「乗りやすい。なのにとてつもなく速い。こんなに心躍るインプレは久々です」と小畑さんは言う photo:Naoki Yasuoka 小畑さんはさらに、その空力性能を「体感」レベルで強調する。
「まず驚いたのは見た目と異なる乗りやすさ。それからもちろんエアロですよね。おそらく、今まで乗った中でも一番エアロを感じるバイク。25〜30km/hという低速域ですら確実に感じるくらい速いし、それ以上スピードを上げれば二次曲線的に速い。プロはもちろんだけど、一般ユーザーにとってもシンプルに速さを感じられるバイクです。
もちろんレーシングバイクだから剛性は高い。でも脚をガリガリ削ってくるような感じではなくて、伸びやかに加速するイメージ。しなりを感じながら乗りたい人はちょっと違うかもしれないけれど、走りのバランスが取れているんですね。重量的にはフォークが重いけれど、重心がヘッドに寄っている感じもありません。ヘッド周辺の剛性は硬く感じるけれど、あえてハンドルを少し柔らかく作っているのか、適度にしなるので具合がいいんです」。
「本当にそうですよね」と古川さんも同調する。「最近のバイクは、加速して到達点までのスピードの乗り方がどれくらい速いかがキーポイントになると思うんですよ。そしてこのONEは、そこがとても短い。そして、目標スピードに到達した後も、絶対的エアロでスルスル風を切り裂いて走る。速く走りたいという欲望に対してメリットしか感じません」。

OSTROとジオメトリーの違いを比較。リーチとBBハイトからは設計思想の違いが浮かび上がる photo:Naoki Yasuoka
話題は、このバイクのもう一つの心臓部とも言える「ジオメトリー」へと移る。小畑さんのオタク心に火がついたのはここからだった。
「このバイクの素晴らしさは、前乗りポジションで走っても危なくない、安心感があるという点です。今流行りの前乗りポジションを考えるなら、個人的にはサーヴェロのS5やコルナゴのV4Rsなどのように、フロントセンターが長くないといけない。そこでONEを見ると、しっかり良いと思える数値に落ち着いているんです。だからONEでポジションをしっかり決めると、乗り手は自転車のかなり前に位置するはずなのに、走りは安定していて不安感がない。個人的にはもっと幅の狭いハンドルが欲しくなるけれど、ジオメトリーをイチから作り上げたのに、ここまで違和感なく仕上げているのは本当にすごい」。
古川さんも、実際の取り回しの良さに舌を巻く。 「ハンドリングもクセがないんです。狙ったラインを通せるし、ヒンジフォークとしてはハンドル切れ角制限が少ないのも良い。トライアスロンでは180度ターンがあったりして、意外とハンドルを大きく切る場面があるんですが、ONEなら全然大丈夫。さらに特殊なジオメトリーのおかげでフロントが前に出ているので、大きく切っても前輪がシューズに当たらない。細かくS字を切っても遅れることもないし、ターンインでも自然に倒れ込む。とても、普通なんです」

急勾配が勝負を決めるレースでなければ登りも全く苦にならない、と二人は言葉を揃える photo:Naoki Yasuoka
「そう。だから『平坦レースだけでしょ?』と思っている人は、いい意味で肩透かしを食らいます」と小畑さんが言葉を継ぐ。 「個人的には国内レースであれば、群馬CSCくらいの流れるアップダウンコースだったら全然いけちゃうと思うんです。修善寺の5kmコースならいける、という人もいるくらいにはノーマルな感じなんです。苦手科目はゼロ発進が多いクリテリウムでしょうか。日本のクリテは立ち上がり加速が重視されるコース傾向にあるのでもっと軽快感の高いバイクの方がいいように思いますが、サーキットエンデューロでは無敵でしょう。急角度の登りが勝負を決めるコースでなければ、おおよそのレースで武器になると思います」。

「エンジニアのやる気に火をつける、そういうブランドです」とトライスポーツの大西さんは言う。自身もファクターのグローバルミーティングでその哲学を垣間見てきた photo:Naoki Yasuoka なぜ、FACTORはこれほどまでに尖ったバイクを、高い完成度で形にできるのか。代理店であるトライスポーツの大西さんは、今年秋にスペインで開催されたグローバルミーティングでロブ・ギティス氏を含むファクター首脳陣と会話を重ね、ONEに対する理解度を深めてきた。そこから浮かび上がる「「開発哲学」を我々取材班にも明かしてくれた。
「ファクターの本質は、開発者でオーナーであるロブ・ギティスが『作りたいものを作る』という姿勢にあります。開発者っていろいろな発想を思いついて形にしたい、実物でテストしてみたいって思う人種ですが、それにはコストが掛かる。でもファクターの首脳陣は、エンジニアたちが提案したことを止めたことはないと言います。ロブはかつて一流メーカーのOEM生産を担うファクトリーを運営し、そこでコストゆえの妥協点をたくさん見てきた。ここ一枚シート追加したらいいのに、ここの形こうしたほうがいいのに。そういう妥協点を一切無くして、本当に納得したものだけを作る。このONEもそんな思想を具現化したものなんです」
その思想は、元建築設計の経歴を持つ古川さんの心にも深く刺さっていた。 「私自身、元々建築の設計をやってた人間なので、部材応力強度とかを見る癖があるんです。だからなんとなく形を見た時に、どの辺りに応力が集中するかとかわかる。そういう目線で見た時に、ファクターのあらゆるバイク、特にこのONEはそうですが、すごくしっかり作っているという思想が見て取れるんですよね。メカニック目線で見ても細部の妥協はないし、セラミックスピードのような一流メーカーとコラボしているし、自社でホイールやハンドルを作ってトータルパッケージとして開発している。開発陣の努力が見えるところがいいんです」。
「コストパフォーマンスはもちろんなんだけど、この作り込みに対してフレームセット100万円強というのは、本当に納得できる金額。現状、バリューに対するコストパフォーマンスは一番良い自転車かもしれない」と小畑さんも舌を巻く。

テスト現場で新型ONE(54サイズ)を納車した古川さん photo:Naoki Yasuoka

普段なかなか見れないフレームのヘッド部分。周り止めの金属パーツが取り付けられている photo:Naoki Yasuoka 
超細x極ワイド。単体で見るとONE特有のフォルムがさらに際立つ photo:Naoki Yasuoka

Onyx BlackカラーのONE(54サイズ)。ハンドルが届くまではこのままSBC横浜あざみ野店に飾るという photo:Naoki Yasuoka
「私は、ファクターのオリジンである『001』の流れを汲むこのONEのヒストリーが大好きなんです。本当はOSTROじゃなくて、先代のONEが欲しくてたまらなかった。でも気がついたら廃盤になって、ある意味仕方なし的にOSTROに乗っていたんですが、いやいや、ファクターがエアロを求める火は絶対に消えないぞ、って信じていた。そしたら5月にドーフィネでプロトが出て、『なんじゃこりゃ、やばい』って。もう感動しましたよ。やってくれた!!って。001からのオリジンを守って、他社を完全凌駕するバイクにまで仕上げてくれたのが本当に嬉しかった」。
古川さんは、すでに新型ONEをオーダーしており、このインプレ現場で、届いたばかりのフレーム(54サイズ)を受け取り「納車」するという、最高にハッピーなシチュエーションが待っていた。ハンドルバーが遅れているため、しばらくはフレーム+フォークの状態でSBC横浜あざみ野店に飾るとのこと。ファンにとっては実車を目の当たりにできる数少ない機会になるだろう。
「もし自分のバイクをお金に糸目をつけずに組むんだったら……そうですね。ZIPPの858NSWを入れて、REDのエクスプロア13sでフロントはエアロチェーンリングでシングルにしたいですね(笑)」

取材現場を高揚感に包み込んだONEの走り。「バリューに対するコストパフォーマンスは一番良い自転車かもしれない」と小畑さんに言わしめた photo:Naoki Yasuoka
「異形」が、いつしか「必然の形」に見えてくる。新型FACTOR ONEは、ただのエアロロードではない。速さを追求した者が行き着く究極・最速の回答なのだ。
話題の新型ONEを国内最速インプレッション

かつてないワイドスタンスのフロントフォークとリアステー、カミソリのような鋭さを感じさせるヘッド周り。新型ONEのあまりに特異なシルエットを前に、我々はどうしても身構えてしまう。「乗り味自体もクセのあるキワモノバイクではないか?」「乗りこなすのに覚悟がいるに違いない」と。
常識を覆すあまりのエアロっぷりに、発表直後から世界中で話題を巻き起こしているファクターの新型ONE。その国内初走行を早速記事化すべく、シクロワイアードではトライスポーツ協力のもと国内最速インプレッションを行なった。異形とも呼べる新時代のエアロロードはどのような走りを見せるのか?その模様を深く切り取るために、最高の布陣を招集した。
テスターを務めるのは、国内屈指の機材マニアであり、強豪レーサーとして日夜トレーニングと機材研究に勤しむ小畑郁さん(なるしまフレンド)と、自らファクターの現行OSTRO VAMを所有し、新型ONEの購入をすでに決めている古川由貴さん(SBC横浜あざみ野店)の2人。現場でヒアリングを担当した筆者、シクロワイアードの磯部も先代ONEを所有している一人だ。



全世界を話題の渦中に巻き込んだ、とてつもない車体を前に、ファクターを、そしてエアロを偏愛するメンバーが集結。粛々と進行することが多いインプレッションロケとしては異様とも言える熱気と高揚の中、スケジュールは進行していくのだった。
「吸い込まれる」という、未知の加速体験
予定時間を過ぎても、真っ先にONEに乗ってライドに出かけた古川さんが全く戻ってこない。心配になった取材班が電話を入れてから暫くして、「いや、楽しくなっちゃって、全然帰ってこれませんでした(笑)」と、顔をほころばせて戻ってきた古川さんの第一声は、確信に満ちたものだった。
「実際に乗ってみたら、本当に速い。グッと加速した時に、OSTROや他のエアロロードよりも勝手に進んでいくというか、どこかへ吸い込まれるような感覚が非常に強いバイクだなという印象でした。気づいたらすごく遠くまで行ってしまったんですけど、上りも全然苦ではないし、見た目から想像するよりもずっと走りにクセがない。レーサーバイクですから、しっかりと芯があって、踏んでいけばもちろん脚の消耗は早い。ただ、設計の意図通り、前乗りポジションを意識した時に、足自体の回転はすごく軽やかに感じました」
特異なルックスとは裏腹に、走りは驚くほどに「真っ当」だという。しかし、スピードを乗せた瞬間にその正体は現れる。
「一番光ったのは下りからの登り返し区間です。本当にエアロの王様と言っても差し支えないくらい伸びるし、その上でステアリングがものすごいどっしりと構えられているので、安心してスピードを出せる。ブレーキをいつも以上に意識しないと、ちょっと危ないかな、と思えるほど速度が出ます(笑)」

その言葉を隣で聞いていた小畑さんも、深く頷きながら驚きを口にする。
「最近のファクターのモノづくりを見ていると、乗る前から良いバイクなんだろうなと分かっていました。それでも予想していたよりもずっと乗りやすくて、クセがない。フロント周りの特殊なワイドフォークの形状とか、いろいろなものを考えると、どこかバランスが悪いとか、何か気になるポイントがありそうなのに、それがほぼ感じられなかった。あんなフォルムとジオメトリーなのに、目隠しして乗ったら、一般的なロードフレームと全く変わらないほど違和感がない。多分誰が乗っても僕と印象は変わらないと思います」。

「まず驚いたのは見た目と異なる乗りやすさ。それからもちろんエアロですよね。おそらく、今まで乗った中でも一番エアロを感じるバイク。25〜30km/hという低速域ですら確実に感じるくらい速いし、それ以上スピードを上げれば二次曲線的に速い。プロはもちろんだけど、一般ユーザーにとってもシンプルに速さを感じられるバイクです。
もちろんレーシングバイクだから剛性は高い。でも脚をガリガリ削ってくるような感じではなくて、伸びやかに加速するイメージ。しなりを感じながら乗りたい人はちょっと違うかもしれないけれど、走りのバランスが取れているんですね。重量的にはフォークが重いけれど、重心がヘッドに寄っている感じもありません。ヘッド周辺の剛性は硬く感じるけれど、あえてハンドルを少し柔らかく作っているのか、適度にしなるので具合がいいんです」。
「本当にそうですよね」と古川さんも同調する。「最近のバイクは、加速して到達点までのスピードの乗り方がどれくらい速いかがキーポイントになると思うんですよ。そしてこのONEは、そこがとても短い。そして、目標スピードに到達した後も、絶対的エアロでスルスル風を切り裂いて走る。速く走りたいという欲望に対してメリットしか感じません」。
異形が生んだ「理詰めのジオメトリー」

話題は、このバイクのもう一つの心臓部とも言える「ジオメトリー」へと移る。小畑さんのオタク心に火がついたのはここからだった。
「このバイクの素晴らしさは、前乗りポジションで走っても危なくない、安心感があるという点です。今流行りの前乗りポジションを考えるなら、個人的にはサーヴェロのS5やコルナゴのV4Rsなどのように、フロントセンターが長くないといけない。そこでONEを見ると、しっかり良いと思える数値に落ち着いているんです。だからONEでポジションをしっかり決めると、乗り手は自転車のかなり前に位置するはずなのに、走りは安定していて不安感がない。個人的にはもっと幅の狭いハンドルが欲しくなるけれど、ジオメトリーをイチから作り上げたのに、ここまで違和感なく仕上げているのは本当にすごい」。
古川さんも、実際の取り回しの良さに舌を巻く。 「ハンドリングもクセがないんです。狙ったラインを通せるし、ヒンジフォークとしてはハンドル切れ角制限が少ないのも良い。トライアスロンでは180度ターンがあったりして、意外とハンドルを大きく切る場面があるんですが、ONEなら全然大丈夫。さらに特殊なジオメトリーのおかげでフロントが前に出ているので、大きく切っても前輪がシューズに当たらない。細かくS字を切っても遅れることもないし、ターンインでも自然に倒れ込む。とても、普通なんです」

「そう。だから『平坦レースだけでしょ?』と思っている人は、いい意味で肩透かしを食らいます」と小畑さんが言葉を継ぐ。 「個人的には国内レースであれば、群馬CSCくらいの流れるアップダウンコースだったら全然いけちゃうと思うんです。修善寺の5kmコースならいける、という人もいるくらいにはノーマルな感じなんです。苦手科目はゼロ発進が多いクリテリウムでしょうか。日本のクリテは立ち上がり加速が重視されるコース傾向にあるのでもっと軽快感の高いバイクの方がいいように思いますが、サーキットエンデューロでは無敵でしょう。急角度の登りが勝負を決めるコースでなければ、おおよそのレースで武器になると思います」。
ロブ・ギティスの執念と、妥協なき反骨心

「ファクターの本質は、開発者でオーナーであるロブ・ギティスが『作りたいものを作る』という姿勢にあります。開発者っていろいろな発想を思いついて形にしたい、実物でテストしてみたいって思う人種ですが、それにはコストが掛かる。でもファクターの首脳陣は、エンジニアたちが提案したことを止めたことはないと言います。ロブはかつて一流メーカーのOEM生産を担うファクトリーを運営し、そこでコストゆえの妥協点をたくさん見てきた。ここ一枚シート追加したらいいのに、ここの形こうしたほうがいいのに。そういう妥協点を一切無くして、本当に納得したものだけを作る。このONEもそんな思想を具現化したものなんです」
その思想は、元建築設計の経歴を持つ古川さんの心にも深く刺さっていた。 「私自身、元々建築の設計をやってた人間なので、部材応力強度とかを見る癖があるんです。だからなんとなく形を見た時に、どの辺りに応力が集中するかとかわかる。そういう目線で見た時に、ファクターのあらゆるバイク、特にこのONEはそうですが、すごくしっかり作っているという思想が見て取れるんですよね。メカニック目線で見ても細部の妥協はないし、セラミックスピードのような一流メーカーとコラボしているし、自社でホイールやハンドルを作ってトータルパッケージとして開発している。開発陣の努力が見えるところがいいんです」。
「コストパフォーマンスはもちろんなんだけど、この作り込みに対してフレームセット100万円強というのは、本当に納得できる金額。現状、バリューに対するコストパフォーマンスは一番良い自転車かもしれない」と小畑さんも舌を巻く。
「信じていた、エアロの火は消えないと」
インプレッションの最初から最後まで、古川さんの表情は、一人のショップスタッフではなく、熱狂的なファクターファンのそれだった。



「私は、ファクターのオリジンである『001』の流れを汲むこのONEのヒストリーが大好きなんです。本当はOSTROじゃなくて、先代のONEが欲しくてたまらなかった。でも気がついたら廃盤になって、ある意味仕方なし的にOSTROに乗っていたんですが、いやいや、ファクターがエアロを求める火は絶対に消えないぞ、って信じていた。そしたら5月にドーフィネでプロトが出て、『なんじゃこりゃ、やばい』って。もう感動しましたよ。やってくれた!!って。001からのオリジンを守って、他社を完全凌駕するバイクにまで仕上げてくれたのが本当に嬉しかった」。
古川さんは、すでに新型ONEをオーダーしており、このインプレ現場で、届いたばかりのフレーム(54サイズ)を受け取り「納車」するという、最高にハッピーなシチュエーションが待っていた。ハンドルバーが遅れているため、しばらくはフレーム+フォークの状態でSBC横浜あざみ野店に飾るとのこと。ファンにとっては実車を目の当たりにできる数少ない機会になるだろう。
「もし自分のバイクをお金に糸目をつけずに組むんだったら……そうですね。ZIPPの858NSWを入れて、REDのエクスプロア13sでフロントはエアロチェーンリングでシングルにしたいですね(笑)」

「異形」が、いつしか「必然の形」に見えてくる。新型FACTOR ONEは、ただのエアロロードではない。速さを追求した者が行き着く究極・最速の回答なのだ。
提供:トライスポーツ、text:So Isobe/photo:Naoki Yasuoka