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来日したポガチャル、フォルモロ、オリヴェイラに話を聞く

来日したタデイ・ポガチャル(スロベニア)とダヴィデ・フォルモロ(イタリア)とイヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル)に独占インタビュー。レースのこと、そしてコルナゴについて聞いた photo:So Isobe

さいたまクリテリウムを前日に控えたその日、会場から遠くないホテルにはタデイ・ポガチャル(スロベニア)の姿があった。そう、21歳にして初出場のツール・ド・フランスでいきなり総合優勝をかっさらい、さらに翌年も連覇したあのポガチャルだ。

その傍には、UAEチームエミレーツのチームメイトであり、仲が良いというダヴィデ・フォルモロ(イタリア)とイヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル)も。「昨日は東京を観光してきたんだ。渋谷の人混みはすごかったね」と言う彼らは、実にリラックスして日本滞在を満喫しているようだった。

セップ・クスを下し、さいたまクリテを制したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Makoto AYANO

コルナゴの日本総代理店を務める株式会社アキボウの協力で実現したインタビューに応えてくれたのは、このポガチャル、フォルモロ、そしてオリヴェイラという超豪華メンバーたち。スター選手であるポガチャルを中心に今シーズンを振り返ってもらいながら、彼らの活躍によって一躍レースシーンでのトップブランドに返り咲いたコルナゴのバイクについて話を聞いた。「超オールラウンダー」ポガチャルから見たV4Rsの走りとは?前モデルであるV3Rsからの進化とは?

彼らのマネージャーから指定された1時間の枠が足りなくなってしまうほどに濃密だったインタビューを、ぜひ一読してほしい。

ポガチャル:今年は最初から最後まで良いシーズン。来季ジロはまだ秘密

「今年は良いシーズンだった。出来過ぎだったとも思うよ」と言うポガチャル photo:So Isobe

― 今シーズン、UAEチームエミレーツは合計57勝。勝ち星ランキングでは2位でした。もちろんツール・ド・フランスでの総合2位など悔しい場面もあったと思いますが、総括して満足のゆくシーズンだったでしょうか?

ポガチャル:多少のアップダウンはあったものの、最初から最後まで良いシーズンとなったな。この結果には満足しているし、チームのスタッフや僕を支えてくれた彼らチームメイトに感謝している。

― あなたは開幕レースで勝ち、最終レースのロンバルディアでも勝ちました。出場したレースの実に約33%(1/3)で勝利を収めています。

サッカーだと勝率は5割ぐらいだよね?だからそこを目指さないと...(笑)。まあそれは冗談としても、今年はできすぎたシーズンだったこともあるし、その勝率は下がってしまうと思う。ひとまず今は、来年も良い年になることを願っているよ。チャレンジも多くなるだろうから楽しみにしている。

最終戦ロンバルディアを制すなど、好調のままシーズンを終えた photo:CorVos

― 別のインタビューでは「来年はレース数を減らしたい」というような発言もありました。またそれは「チームのボス(監督)次第だ」とも。チームのエースですが、ボス次第というのは少し意外でした。

僕の走り方は”出場するレースでは全力を尽くす”こと。だからレース数が多すぎると疲弊してしまい、反対にトレーニングする時間が無くなってしまう。そのため来シーズンはもっと良いプログラム(レーススケジュール)を組みたいと思っている。

もちろん選手全員に希望するスケジュールはある。でもこのロードレースはチームスポーツだし、1チームに選手が30名もいてレース数も多い。だからそこで結果を出すためには良いプログラムと良い組織、それぞれの分野の専門家が必要なんだ。そのため彼らは選手の要望を聞き、方針を定める。だから30名全員の要望が実現されることは実質不可能なんだ。

― そのスケジュールの中には、噂に出ているジロ・デ・イタリアも入っているのでしょうか?

...その噂は噂のままにしておくよ(笑)。

さいたまクリテリウムを沸かせたポガチャルたち photo:Makoto AYANO

― 今回で3回目(初回:2018年ジャパンカップ、2回目:2021年東京五輪)の日本ですが、印象はどうですか?

毎回違った気持ちになるね。東京五輪のときはコロナ禍だったこともあり少し特殊な状況だった。でもその時でさえヨーロッパとは全く異なる素晴らしい体験をすることができたんだ。初回の時は僕自身若かったし、コンチネンタルチームに所属していたこともあって、色んなところを見て回るお金もなかった(笑)。だから今回が本当の東京などを観光することができる初めての機会だったんだ。とても良い場所だし、また来たいと思っているよ。

チームバイク、コルナゴ V4Rsについて

ポガチャル:反応性がよく、登りアタックで武器になる

「V4Rsはスプリントや下り、登りなども含めたあらゆる面で優れたバイク」 photo:So Isobe

― チームは今現在コルナゴのV4Rsだけをレースで使っていますね。特にあなたは現チーム所属5シーズン目。リムブレーキ時代のV2-RからV3Rs、そしてV4Rsまで乗り継いでいますが、V4Rsに対してどのような印象を持っていますか?

そうだね。スプリントや下り、登りなども含めたあらゆる面で優れたバイクだと言える。以前のバイクと比べて反応性も良く、剛性が高いから登りのアタックがしやすいんだ。見た目もクールだしね。モデルチェンジするたびにアップグレードしているので満足しているよ。

オリヴェイラ:僕個人としては、V3Rsと比べて特にコーナーの立ち上がりが良くなったように思う。コーナーの多いベルギーのクラシックレースではバイクの剛性によるアドバンテージがあった。スプリント勝負ではリードアウトを担うけれど、その時エアロに優れていることも大きなメリットだ。

― チームはV4Rs開発時にプロトタイプの「PROTOTIPO」が供給され、実戦テストが繰り返されたと聞いています。その過程でどのようなフィードバックが行われたのでしょうか?

ポガチャル:PROTOTIPOがチームにやってきたのは昨年5月のこと。コルナゴとチームはバイクの走りを底上げさせるために協力体制を築いているんだ。でもプロトタイプの時点でとても良いバイクだったし、僕が乗った時点ですでに満足する出来だった。V3Rsと比べると加速時の剛性感が増したし、下りの快適性もずっと良くなった。

ポガチャルのV4Rs。プロトタイプの時点で文句のつけようがなかったという photo:So Isobe

― 特に近年のレースで下りは重要な要素ですからね。

そうだね。特にグランツールでは登りで既に疲れ切っている状態で、全速力でダウンヒルを飛ばさないといけない。高い集中力が求められるまさにその時、必要なのは安心してコーナーを曲がることができる良いバイク。そして加速時に力を消耗しない速いバイクだ。平坦区間や登りでもスピードが速いからエアロダイナミクスに秀でていることも僕らは求めている。

「アシストにとってはV4Rsのエアロ性能が武器になる」

― フォルモロ選手にも伺いたいのですが、エースとアシストによってバイクに求めるものは違ってくるのでしょうか?

フォルモロ:「僕にとっては軽さとエアロが全て」 photo:CorVos

フォルモロ:僕にとってとにかく重要なのは軽さとエアロ。とてもシンプルさ。ただし、瞬発力の高いバイクはエースがアタックする時に有利だし、アシストから見ればエアロ性能に優れていれば集団先頭を牽引できる時間が長くなる。同じワット数で踏んでいても牽引できる距離が1kmぐらい伸びることもあるんだ。それは登りでも一緒さ。

オリヴェイラ:そうだね。平坦区間で牽引役を務めることの多い僕にとって、エアロ性能は重要な要素だ。山岳で勝負する選手は軽さが重要だと思うけれど、僕にとって重量はあまり気にすることじゃない。フレームサイズも大きいし、だから僕のバイクにはタデイたちクライマーと違って軽量カーボンパーツを付けていない。

「平坦アシストにとってエアロ性能はとても大切なこと」 photo:So Isobe

― チームはあらゆるステージでV4Rs一台体制ですよね。軽量モデルとエアロモデルを乗り分けるチームは少なくないですが、それについて意見はありますか?

ポガチャル:メリットとデメリットがあるね。例えばオリヴェイラは平坦区間でチームメイトのために走り、リードアウトを務めるからエアロモデルを欲している。僕自身も平坦ステージはエアロバイクで力を蓄え、山岳ステージで軽量バイクに乗るようなこともいいと思う。僕はバイクを乗り分けることに抵抗はないからね。でも、人によってはフレームサイズ選びの手間もあるし...。ダヴィデ(フォルモロ)は嫌がるだろうね。

フォルモロ:君はまだ若くて適応力があるから(笑)。僕はバイク選びもシンプルであればある方が良い。

― ...つまり、ポガチャル選手はコンセプトの復活を望むということですね?

ポガチャル:そうだ!戻ってこいコンセプト!(笑)

― バイクのセッティングについて、どの程度メカニック要望を伝えるのでしょうか?

ポガチャル:例えばグランツールのようなステージレースであれば、ステージが終わってから次の日のコースを確認し、要望をWhatsAppを通して伝える感じだね。

V4Rsを駆るポガチャル。高い剛性によって持ち前のアタックにさらに磨きがかかる photo:CorVos

「グローバル化を遂げたコルナゴ。でもバイクとブランドのフィロソフィーは変わらない」

― ポガチャル選手、オリヴェイラ選手は2019年から、フォルモロ選手は2020年から現チームに所属して以降コルナゴに乗ってきました。選手目線でのブランドに対する印象を聞かせて下さい。

「コルナゴは多くのチャンピオンを生み出した偉大なブランド。僕はイタリア人だから、本当にそう思っている」 photo:So Isobe
ポガチャル:そうだね。コルナゴブランドはここ数年で大きく変わったと思う。ただし、僕はV2-R、V3Rs、PROTOTIPO、そしてV4Rsとずっと軽量モデルに乗り続けている中で、バイク自体の方向性はずっと変わっていない。とてもクールなブランドだと思う。

フォルモロ:イタリア人の僕にとって、コルナゴは多くのチャンピオンを生み出した偉大なブランドだ。最近は家族経営のブランドからよりグローバル企業に変わった印象があるけれど、ブランドのフィロソフィーは捨ててない。イタリア人としてコルナゴの成長を見ることはとても嬉しいし、その成長に関わることができて幸せなんだ。

オリヴェイラ:僕はアンダー15、16の時からコルナゴに乗っていたんだ。チームに加入してからコルナゴに戻った形になるね。最初はC64やリムブレーキのV2-Rだったけど、そこからコルナゴのバイクはアイデンティティは変えずに大きな改善を果たした。その進化はとても嬉しい体験だったよ。

フォルモロ:かつて世界トップだったコルナゴが再びその舞台に舞い戻った。それはイタリア人としてとても嬉しいことだよ。

― V4Rs以外で乗ってみたいコルナゴのバイクはありますか?

インタビューは和やかな雰囲気で進んだ。与えられた1時間があっという間に終わってしまうほど photo:So Isobe

ポガチャル:グラベルバイク(G3-X)に乗ってみたいね。C68ももちろん良さそうだけど、個人的にはC60やC64に乗ってみたいと思うんだ。特にC64は僕にとって美しいバイク。僕のコレクションしたいバイクたちだね。

フォルモロ:僕もグラベルバイクだね。V4Rsは最も速くで剛性が高く、Cシリーズはもっとクラシックな走り。ロードレースでグラベル区間が含まれるようになってきているし、新しい方向性のバイクが生まれる可能性もあるよね。

オリヴェイラ:乗りたいバイクじゃないけど、僕は新しいTTバイク(TT1)が好きだよ。先代モデルと比べてとてもスピードに乗るバイクだ。改善ぶりは目を引くものがあるね。トラック競技やタイムトライアルも得意だからTTバイクの改善は喜ぶべきものさ。

来年のツール・ド・フランスでリベンジ、そして総合3勝目を狙うポガチャル photo:CorVos

― 最後に、来年の目標について教えて下さい。

ポガチャル:ツール・ド・フランスは常に目標。まあ言わなくても分かることだよね(笑)。来年はフィニッシュがパリからニースになることもあって、より一層クレイジーなツールになるだろう。楽しんでチャレンジしたいと思っている。

UAEチームエミレーツが駆る、コルナゴのレーシングモデル

コルナゴ V4Rs

V4Rs(SDM3/UAEチーム・エミレーツ) photo:Makoto AYANO

コルナゴ V4Rs(RVRD) (c)アキボウ
コルナゴ V4Rs(RVBK) (c)アキボウ


コルナゴ V4Rs(RVWH) (c)アキボウ
コルナゴ V4Rs(WT23/チームADQ) (c)アキボウ


コルナゴの最高峰レーシングモデルであり、UAEチームエミレーツが全幅の信頼を置くマシンが V4Rsだ。同社のモノコック軽量機「Vシリーズ」の最新モデルであり、最終プロトタイプであるPROTOTIPOを経てデビューを飾ったオールラウンダー。「エアロダイナミクス」「軽量性」「動的剛性」「ジオメトリ」そして「堅牢性と信頼性」という各領域で進化を遂げ、ポガチャルたちの活躍を文字通り足下から支えている。日本国内での販売は、フレームセットと、チームエディションをはじめとする3種類の完成車。フレームサイズとカラーが豊富に揃うこともコルナゴらしいポイント。

サイズ420、455、485、510、530、550、570
カラーSDM3[ UAE Team エミレーツ ]、WT23[ Team ADQ ]、RVBK、RVRD、RVWH
フレームセット891,000円(税込)

プレミアムパッケージ

Dura-Ace DI2
(ホイールセット込み)
Dura-Ace DI2
(ホイールなし)
Ultegra DI2
(ホイールセット込み)
Ultegra DI2
(ホイールなし)
コンポーネントDura-Ace R9200系Dura-Ace R9200系Ultegra DI2 R8100系Ultegra DI2 R8100系
ハンドルCOLNAGO CC.01COLNAGO CC.01COLNAGO CC.01COLNAGO CC.01
サドルSelle ITALIA SLR BOOST TMSelle ITALIA SLR BOOST TMSelle ITALIA SLR BOOST TMSelle ITALIA SLR BOOST TM
ホイールShimano WH-R9270 C50TL-Shimano WH-R8170 C36TL-
タイヤChallenge Strada 25mm-Challenge Strada 25mm-
税込価格1,672,000円1,386,000円1,422,300円1,226,500円


コルナゴ TT1

コルナゴ TT1 (c)アキボウ

個人タイムトライアルの好結果無くしてグランツール制覇は夢のまた夢。コルナゴが今年9月に発表したのがチームのために同ブランド初のディスクブレーキ仕様タイムトライアルバイクであるTT1だ。CFD解析と風洞実験を重ね、前作であるK.Oneと比較してスピードはもちろんのこと剛性と安定性、さらにはディスクブレーキ化を果たしつつ軽量化も実現するなど、TTバイクとして大幅に総合力を向上させている。タイムトライアルやトライアスロンユーザーのためにフレームセットでの市販がスタートしており、税込価格は1,100,000円。

サイズS、M、L
価格1,100,000円(税込)
提供:アキボウ、photo&text:CW編集部