2023/08/02(水) - 12:00
世界最高峰の舞台、ツール・ド・フランス。バスクのビルバオからパリ・シャンゼリゼ大通りまで合計3,346.5kmに及ぶ距離を駆け抜け、コンチネンタルのGP5000シリーズは総合表彰台とステージ8勝という大きな結果を掴みとった。今回はサポートチームの活躍、そして各チームごとのタイヤセッティングに迫る。
ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)との激しいマイヨジョーヌ争いを展開したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)を筆頭に、コンチネンタルのプレミアムロードレーシングタイヤは今年もツール・ド・フランスという大舞台でトップ選手の走りを支えた。
Grand Prix 5000シリーズを筆頭に使うコンチネンタルサポート選手のステージ優勝は実に8回に及んだ。
グランデパール(開幕)は熱狂のバスクだった。終盤の激坂「コート・ド・ピケ」ではいきなり総合バトルが勃発し、アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)がステージ優勝と共にマイヨジョーヌを獲得。この後イェーツが第5ステージでマイヨジョーヌを手放すまで、UAEは常にリーダーチームとしてプロトンを牽引し続けた。
ポガチャルはマイヨジョーヌ獲得こそ叶わなかったものの、終始激しい総合争いを繰り広げ、第6ステージと第20ステージでステージ優勝、そして総合2位とマイヨブランを獲得。プロトン屈指の人気を誇るポガチャルは最終シャンゼリゼでも逃げを打つなど、最後の最後までエンターテイナーとしてファンを沸かせたのだった。
グランツール常勝チームであるイネオス・グレナディアーズはミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)が第13ステージの超級山岳グラン・コロンビエールを、続くアルプス初日の第14ステージではカルロス・ロドリゲス(スペイン)が制して2勝。若手シフトを進めるイネオスにとって、ツール初出場となった22歳の優勝は大きな躍進だ。
亡きジーノ・メーダーへの勝利を誓うバーレーン・ヴィクトリアスはステージ3勝を挙げることに成功した。ペリョ・ビルバオ(スペイン)が第10ステージで、モンブランを登る第15ステージではワウト・プールス(オランダ)が、第19ステージでは僅差のスプリントでマテイ・モホリッチ(スロベニア)がそれぞれ逃げ切り。涙ながらに記者会見に臨んだモホリッチは世界中のファンの心を強く打った。
ポガチャルとイェーツはシェンゼリぜの総合表彰台に登ったほか、ロドリゲスとビルバオ、さらにダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)がトップ10入り。コンチネンタルのタイヤは文字通りトップ選手たちの走りを支え、ステージ優勝や総合表彰台獲得に貢献したのだった。
このツールを沸かせたUAEチームエミレーツは、今年がコンチネンタルファーストイヤー。使用タイヤはGrand Prix 5000(チューブレス)で統一し、TT TRもしくはS TRを選手個人の好みで使い分ける。使用率としてはTT TRが多く、特にポガチャルやイェーツなどクライマーはバイクを限りなく6.8kgに近づける上でもTT TRを常用した。
体重66kgと公表されているポガチャルのタイヤサイズは28Cだ。担当メカニックによれば今シーズン序盤は25Cを使っていたものの、リエージュ~バストーニュ~リエージュでの落車で舟状骨骨折を負って以降、安心感を高めるべく28Cに切り替えたという。
なお内幅25mmのエンヴィSES4.5ホイールにTT TR(28C)を取り付けた場合、タイヤ幅は実測31.5mmを超える。ポガチャルは25Cの時でフロント4.6bar/リア4.8bar、28Cに切り替えて以降はさらに低く、フロント3.2bar/リア3.4barにセットしているという。なお、今年のロンド・ファン・フラーンデレンで優勝した際はS TRの30C。体重58kgのイェーツはTT TRの25Cを使用していた。
サポートチームの中でも最もバリエーションに富んだタイヤ選択を行ったのがグルパマFDJだ。多くのメンバーがチューブレスのGrand Prix 5000S TRを使うが、オールラウンド用のAS TRを使う選手もいれば、チューブラーのCOMPETITION PRO LTD、タイムトライアルではTT TRと、非常にタイヤ選択が幅広い。
現役ラストイヤーのツールに臨み、地元を通る第20ステージでは大逃げを打つなど、終始大声援を浴び続けたティボー・ピノと総合エースのダヴィ・ゴデュ(共にフランス)は基本的にS TR(28C)。しかしメカニックに聞いたところ、軽い雨予報の場合はCOMPETITION PRO LTD(25mm)、一日雨、もしくは峠の下りが雨の場合はAS TR(28C)と天気によって使い分けているという。
また、ケヴィン・ゲニエッツ(ルクセンブルク)は常時COMPETITION PRO LTD(25mm)を常用。基本的にチームから使用タイヤを指定することはなく、すべて選手の好みに合わせているとのことだ。
グランツール常勝チームとして名を馳せるイネオス・グレナディアーズは100%チューブレス運用を行い、TT TRもしくはS TRを選手の好みで使い分けていた。プロトン内で最後までリムブレーキバイクを使い続けていた(〜2021年)同チームだが、2022年にはディスクブレーキ+チューブレスタイヤへの移行を完了している。
チーム内ではTT TR(28C)のシェアが高いが、パンクリスクを踏まえてクフィアトコフスキや元王者エガン・ベルナル(コロンビア)は山岳ステージでS TRを使用。タイムトライアルも含めて28Cで揃えており、チューブラーのCOMPETITION PRO LTDやオールラウンド用のAS TRは姿を消している。
大成功のツールを過ごしたバーレーン・ヴィクトリアスのメインユースタイヤはTT TR。ビルバオやプールス、モホリッチのステージウィナーコンビや、ミケル・ランダ(スペイン)も含めて大多数がTT TRユーザーだが、ニキアス・アルント(ドイツ)はS TRを常用するなど、やはり選手の好みが反映されている。タイヤサイズは全て28Cで統一しているといい、内幅21mmのヴィジョンMETRONホイールに組み合わせた場合の実測値は31.1mmと太い。
タイムトライアル用タイヤをメインユースするチームが増えているが、モビスターはスタンダードモデルであるGrand Prix 5000S TRを常用(サイズは全て28C)。メカニックに聞いたところ「一部の難関山岳とタイムトライアルステージではTT TRを使うけれど、僕らはあまりパンクリスクを冒さない選択をしたい」との答え。プロトン屈指の歴史を誇るスペインチームならではの選択と言えそうだ。
ツール・ド・フランスは製品の最大かつ最高のテストサーキットでもあり、製品の信頼性を証明する最高の舞台だ。特に昨今のツールは終始レースが緩まず、丘陵ステージであっても平均速度が50km/hに迫る場面が多々ある。ダウンヒルは常に100km/h台に到達し、どんな登りであっても総合争いの引き金になるなど、機材の信頼性が占める重要度は過去にないほど高まっていると言えるだろう。
リムブレーキからディスクブレーキへ、チューブラータイヤからチューブレスタイヤへ切り替わる機材激動時代の中で、コンチネンタルを使うチームが増えているのには理由がある。それはトッププロの走りに応える性能を持っていること、即ち「信頼性の高さ」であることに他ならない。
ステージ8勝をマーク コンチネンタルサポート選手の活躍を振り返る
ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)との激しいマイヨジョーヌ争いを展開したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)を筆頭に、コンチネンタルのプレミアムロードレーシングタイヤは今年もツール・ド・フランスという大舞台でトップ選手の走りを支えた。
Grand Prix 5000シリーズを筆頭に使うコンチネンタルサポート選手のステージ優勝は実に8回に及んだ。
グランデパール(開幕)は熱狂のバスクだった。終盤の激坂「コート・ド・ピケ」ではいきなり総合バトルが勃発し、アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)がステージ優勝と共にマイヨジョーヌを獲得。この後イェーツが第5ステージでマイヨジョーヌを手放すまで、UAEは常にリーダーチームとしてプロトンを牽引し続けた。
ポガチャルはマイヨジョーヌ獲得こそ叶わなかったものの、終始激しい総合争いを繰り広げ、第6ステージと第20ステージでステージ優勝、そして総合2位とマイヨブランを獲得。プロトン屈指の人気を誇るポガチャルは最終シャンゼリゼでも逃げを打つなど、最後の最後までエンターテイナーとしてファンを沸かせたのだった。
グランツール常勝チームであるイネオス・グレナディアーズはミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)が第13ステージの超級山岳グラン・コロンビエールを、続くアルプス初日の第14ステージではカルロス・ロドリゲス(スペイン)が制して2勝。若手シフトを進めるイネオスにとって、ツール初出場となった22歳の優勝は大きな躍進だ。
亡きジーノ・メーダーへの勝利を誓うバーレーン・ヴィクトリアスはステージ3勝を挙げることに成功した。ペリョ・ビルバオ(スペイン)が第10ステージで、モンブランを登る第15ステージではワウト・プールス(オランダ)が、第19ステージでは僅差のスプリントでマテイ・モホリッチ(スロベニア)がそれぞれ逃げ切り。涙ながらに記者会見に臨んだモホリッチは世界中のファンの心を強く打った。
ポガチャルとイェーツはシェンゼリぜの総合表彰台に登ったほか、ロドリゲスとビルバオ、さらにダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)がトップ10入り。コンチネンタルのタイヤは文字通りトップ選手たちの走りを支え、ステージ優勝や総合表彰台獲得に貢献したのだった。
各チームごとに見るタイヤチョイス
パドックでバイクセットアップを見ていると、同じコンチネンタルサポートチームであってもタイヤ選択に差があることに気づく。スタンダードモデルのGrand Prix 5000S TRはもちろん、軽量モデルであるTT TRだけで揃えるチームも多く、さらにオールラウンド用のAS TRや、チューブラーモデルのCOMPETITION PRO LTDを使う選手まで。ここでは、代表する5チームがどのようなチョイスで走っていたのかを紹介していく。UAEチームエミレーツ:ポガチャルはGrand Prix 5000TT TR 28Cを愛用
このツールを沸かせたUAEチームエミレーツは、今年がコンチネンタルファーストイヤー。使用タイヤはGrand Prix 5000(チューブレス)で統一し、TT TRもしくはS TRを選手個人の好みで使い分ける。使用率としてはTT TRが多く、特にポガチャルやイェーツなどクライマーはバイクを限りなく6.8kgに近づける上でもTT TRを常用した。
体重66kgと公表されているポガチャルのタイヤサイズは28Cだ。担当メカニックによれば今シーズン序盤は25Cを使っていたものの、リエージュ~バストーニュ~リエージュでの落車で舟状骨骨折を負って以降、安心感を高めるべく28Cに切り替えたという。
なお内幅25mmのエンヴィSES4.5ホイールにTT TR(28C)を取り付けた場合、タイヤ幅は実測31.5mmを超える。ポガチャルは25Cの時でフロント4.6bar/リア4.8bar、28Cに切り替えて以降はさらに低く、フロント3.2bar/リア3.4barにセットしているという。なお、今年のロンド・ファン・フラーンデレンで優勝した際はS TRの30C。体重58kgのイェーツはTT TRの25Cを使用していた。
多種多様なタイヤを織り交ぜるグルパマFDJ
サポートチームの中でも最もバリエーションに富んだタイヤ選択を行ったのがグルパマFDJだ。多くのメンバーがチューブレスのGrand Prix 5000S TRを使うが、オールラウンド用のAS TRを使う選手もいれば、チューブラーのCOMPETITION PRO LTD、タイムトライアルではTT TRと、非常にタイヤ選択が幅広い。
現役ラストイヤーのツールに臨み、地元を通る第20ステージでは大逃げを打つなど、終始大声援を浴び続けたティボー・ピノと総合エースのダヴィ・ゴデュ(共にフランス)は基本的にS TR(28C)。しかしメカニックに聞いたところ、軽い雨予報の場合はCOMPETITION PRO LTD(25mm)、一日雨、もしくは峠の下りが雨の場合はAS TR(28C)と天気によって使い分けているという。
また、ケヴィン・ゲニエッツ(ルクセンブルク)は常時COMPETITION PRO LTD(25mm)を常用。基本的にチームから使用タイヤを指定することはなく、すべて選手の好みに合わせているとのことだ。
イネオス・グレナディアーズはGrand Prix 5000TT TRをメインユース
グランツール常勝チームとして名を馳せるイネオス・グレナディアーズは100%チューブレス運用を行い、TT TRもしくはS TRを選手の好みで使い分けていた。プロトン内で最後までリムブレーキバイクを使い続けていた(〜2021年)同チームだが、2022年にはディスクブレーキ+チューブレスタイヤへの移行を完了している。
チーム内ではTT TR(28C)のシェアが高いが、パンクリスクを踏まえてクフィアトコフスキや元王者エガン・ベルナル(コロンビア)は山岳ステージでS TRを使用。タイムトライアルも含めて28Cで揃えており、チューブラーのCOMPETITION PRO LTDやオールラウンド用のAS TRは姿を消している。
バーレーン・ヴィクトリアスはGrand Prix 5000TT TR、ときどきS TR
大成功のツールを過ごしたバーレーン・ヴィクトリアスのメインユースタイヤはTT TR。ビルバオやプールス、モホリッチのステージウィナーコンビや、ミケル・ランダ(スペイン)も含めて大多数がTT TRユーザーだが、ニキアス・アルント(ドイツ)はS TRを常用するなど、やはり選手の好みが反映されている。タイヤサイズは全て28Cで統一しているといい、内幅21mmのヴィジョンMETRONホイールに組み合わせた場合の実測値は31.1mmと太い。
Grand Prix 5000S TRで揃えるモビスター
タイムトライアル用タイヤをメインユースするチームが増えているが、モビスターはスタンダードモデルであるGrand Prix 5000S TRを常用(サイズは全て28C)。メカニックに聞いたところ「一部の難関山岳とタイムトライアルステージではTT TRを使うけれど、僕らはあまりパンクリスクを冒さない選択をしたい」との答え。プロトン屈指の歴史を誇るスペインチームならではの選択と言えそうだ。
過酷な最高峰レースで高まるコンチネンタルの信頼性
2023年のツール・ド・フランスは、昨年よりも圧倒的にTT TRのシェアが高まった大会となった。TT TR推しの各チームのメカニックの話をまとめると耐久性に問題はなく「当初はもっとパンクが多いだろうと思っていたけれど、実際使ってみると特に問題なかった」という意見を多く聞くことができた。ツール・ド・フランスは製品の最大かつ最高のテストサーキットでもあり、製品の信頼性を証明する最高の舞台だ。特に昨今のツールは終始レースが緩まず、丘陵ステージであっても平均速度が50km/hに迫る場面が多々ある。ダウンヒルは常に100km/h台に到達し、どんな登りであっても総合争いの引き金になるなど、機材の信頼性が占める重要度は過去にないほど高まっていると言えるだろう。
リムブレーキからディスクブレーキへ、チューブラータイヤからチューブレスタイヤへ切り替わる機材激動時代の中で、コンチネンタルを使うチームが増えているのには理由がある。それはトッププロの走りに応える性能を持っていること、即ち「信頼性の高さ」であることに他ならない。
コンチネンタル Grand Prix 5000シリーズ
GRAND PRIX 5000S TR
650×30B | 280g |
650×32B | 300g |
700×25C | 250g |
700×28C | 280g |
700×30C | 300g |
700×32C | 320g |
カラー | Black、Transparent skin |
価格 | 13,000円(税込) |
GRAND PRIX 5000TT TR
700×25 | 225g |
700×28 | (28-622)240g |
カラー | BLACK / BLACK |
価格 | 17,000円(税込) |
GRAND PRIX 5000AS TR
700×28 | 335g(CREAM:340g) |
700×32 | 385g(CREAM:395g) |
700×35 | 425g(CREAM:430g) |
カラー | BLACK / BLACK、BLACK/CREAM |
価格 | 15,700円(税込) |
提供:ミズタニ自転車 text&photo:So Isobe