2023/07/19(水) - 18:30
喧騒のパドックを歩き、各チームのバイクセットアップを見ていて気づくことがある。それは、コンチネンタルタイヤを使っているチームが多いことだ。主力のチューブレスはもちろんチューブラーを使う選手まで、GP5000の各バリエーションを数えれば、そのチョイスは多岐に渡る。世界最高峰のロードレース、ツール・ド・フランスの現場からお届けする。
自転車ロードレースにおける世界最大・世界最重要レース、ツール・ド・フランス。そして、7月のフランス全土を駆け巡る3週間の戦いにおいて、大きなプレゼンスを誇るのがドイツのプレミアムタイヤブランドであるコンチネンタルだ。
歴史を振り返れば、コンチネンタルは100年以上前に自転車用タイヤ製造を開始した時点から、ツール・ド・フランスと密接に関わってきた。今も昔もドイツの小都市コルバッハで開発製造されたタイヤはトップチームに供給され、そのフィードバックをもとにより良い製品が形作られている。
クリストファー・フルーム(イギリス)のマイヨジョーヌ獲得を支えたのも同社タイヤだったし、2018年のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)による世界選手権制覇も、リチャル・カラパス(エクアドル)のオリンピック優勝も、マテイ・モホリッチ(スロベニア)やトーマス・ピドコック(イギリス)のダウンヒルを支えるのもコンチネンタルタイヤだ。
優勝候補タデイ・ポガチャル(スロベニア)擁するUAEチームエミレーツを筆頭に、グランツール常勝チームであるイネオス・グレナディアーズ、伝統と格式あるグルパマFDJといったトップチームがこぞって使い、第110回ツールでも22チーム中6チーム、スポンサー外も含めれば8チームが使用中だ。
リムブレーキからディスクブレーキへ。チューブラーからチューブレスへ。リム幅の拡大とタイヤのワイド化。ロードバイクを取り巻く環境はここ5年で目まぐるしく変遷しているが、コンチネンタルもプロ供給専用品の「COMPETITION PRO LTD(チューブラー)」から「Grand Prix 5000(チューブレス)」と時代の波に素早く対応し、かつプロ選手の細かいニーズに応え続けてきた。
時を同じくしてプロレースの舞台から姿を消したブランドがある一方、確実にコンチネンタルタイヤを使うチームは増えており、その高い使用率、そしてスポンサー外チームがロゴを消してまで使う事実からは、いかにコンチネンタルタイヤが選手から支持されているのかを窺い知ることができる。
そして何よりも「ツール=コンチネンタル」というイメージを強めているのが、同社が2018年から務めているツールオフィシャルパートナーシップだ。「ロードバイクを含めたすべての乗り物の安全性とロードシェア」を強く打ち出すために、レースを盛り上げるキャラバン隊には何台もの宣伝カーが走り、ヴィラージュ内の特設ブース設置や、選手のゼッケンプレートや、ステージ優勝者のメダルにも同社ロゴが光る。
ツールを取材する中で、ちょっとくすんだイエローカラーと、特徴的な跳ね馬ロゴを見ない日はゼロ。ちなみにレースに随行するオフィシャル車両のタイヤも全てコンチネンタル製(開幕前にフランスのA.S.O.ガレージで履き替えられる)であり、時に100km/hを超えるダウンヒルや、危険を避けるための咄嗟の回避運動といった過酷な状況下で、選手のみならず、レースに帯同するドライバーの安全も支えているのだ。
コンチネンタル採用チームが愛用するのがフラッグシップチューブレスレディタイヤである「Grand Prix 5000(以下GP5000)」シリーズだ。チューブラータイヤ全盛期にはプロ供給用のCOMPETITION PRO LTDが100%を占めていたが、近年のチューブレス化とともに主役の座に座り、選手たちの走りを支えている。
中でも使用率の高いスタンダードモデル「Grand Prix 5000S TR」は、チューブレス移行への切り札となったタイヤだ。2018年に14年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたGP5000のアップデート版として開発され、泥で歴史的なサバイバルレースとなった2021年のパリ~ルーベや、同年の世界選手権タイムトライアルなど大舞台を相次いで制覇した。それは、それまで転がりの軽さを狙ってTTステージに活躍の場を見出されてきたチューブレスタイヤが、通常の、それも特に機材性能が求められる舞台で信頼される証となった。
その一方で興味深いのが、軽量モデル「Grand Prix 5000TT TR」のシェア率が急速に高まったことだ。そもそもTT TRは、S TR比較で40kmのタイムトライアルで17秒速く、かつ25cで25g軽い「Grand Prix 5000TT TdF」として昨年ツールで実戦投入され、その後フィリッポ・ガンナ(イタリア)のアワーレコード新記録樹立にも貢献したタイヤ。それをもとにサイズバリエーションを増やし、今年3月に正式ラインナップ追加となったものだ。
例えばポガチャルは基本的に全ステージを通じてTT TRを使うほか、第1ステージで勝利し、マイヨジョーヌを獲得したアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)やエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)らも常用するなど、「タイムトライアル決戦用」という従来のイメージを覆す使われ方をしている。
レース前に忙しなくセットアップする各メカニックから聞いた話をまとめれば、耐久性にほぼ問題はなく、特に山岳ステージが多い今年のツールではTT TRを選ぶ選手が多い。メーカー資料によればS TR同様ベクトランブレーカーを採用し、耐パンク性能を損なっていないとのことで、それが証明されている事実とも言えそうだ。
2023年大会においては少数派となったものの、チューブラータイヤを求める声もまだ根強い模様。グルパマFDJでは一部選手がCOMPETITION PRO LTDを常用するほか、普段チューブレスを使うティボー・ピノも第13ステージでCOMPETITION PRO LTDに変更。さらにグルパマはピレネーを駆けた第6ステージでは、ピノとフランス王者のヴァランタン・マドゥアスがエンデュランスモデルのAS TRに変更するという、ほかチームと一味変わったセッティングだったことも興味深い。
また、3週目初日の個人タイムトライアルでは、ほとんどの選手がTT TRを装着して最後に登坂が待ち受ける難関コースに挑んでいた。
今ツール最大の焦点は、マイヨジョーヌを着るヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)とポガチャルの総合一騎討ち。1週目でリードを奪ったヴィンゲゴーに対し、ポガチャルが少しずつ、しかし確実に追い詰め、たったの10秒で3週目を迎えた。迎えた個人タイムトライアルではヴィンゲゴーが圧倒的な力を見せたものの、ポガチャルも「まだ勝負は終わってない。2分差を取り返すのは難しいけれど挑戦する」と話している。彼らのタイヤチョイスにも注目しつつ、レースの行方を見守りたいと思う。
プロチームから厚く信頼されるコンチネンタルタイヤ
自転車ロードレースにおける世界最大・世界最重要レース、ツール・ド・フランス。そして、7月のフランス全土を駆け巡る3週間の戦いにおいて、大きなプレゼンスを誇るのがドイツのプレミアムタイヤブランドであるコンチネンタルだ。
歴史を振り返れば、コンチネンタルは100年以上前に自転車用タイヤ製造を開始した時点から、ツール・ド・フランスと密接に関わってきた。今も昔もドイツの小都市コルバッハで開発製造されたタイヤはトップチームに供給され、そのフィードバックをもとにより良い製品が形作られている。
クリストファー・フルーム(イギリス)のマイヨジョーヌ獲得を支えたのも同社タイヤだったし、2018年のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)による世界選手権制覇も、リチャル・カラパス(エクアドル)のオリンピック優勝も、マテイ・モホリッチ(スロベニア)やトーマス・ピドコック(イギリス)のダウンヒルを支えるのもコンチネンタルタイヤだ。
優勝候補タデイ・ポガチャル(スロベニア)擁するUAEチームエミレーツを筆頭に、グランツール常勝チームであるイネオス・グレナディアーズ、伝統と格式あるグルパマFDJといったトップチームがこぞって使い、第110回ツールでも22チーム中6チーム、スポンサー外も含めれば8チームが使用中だ。
リムブレーキからディスクブレーキへ。チューブラーからチューブレスへ。リム幅の拡大とタイヤのワイド化。ロードバイクを取り巻く環境はここ5年で目まぐるしく変遷しているが、コンチネンタルもプロ供給専用品の「COMPETITION PRO LTD(チューブラー)」から「Grand Prix 5000(チューブレス)」と時代の波に素早く対応し、かつプロ選手の細かいニーズに応え続けてきた。
時を同じくしてプロレースの舞台から姿を消したブランドがある一方、確実にコンチネンタルタイヤを使うチームは増えており、その高い使用率、そしてスポンサー外チームがロゴを消してまで使う事実からは、いかにコンチネンタルタイヤが選手から支持されているのかを窺い知ることができる。
ツールのオフィシャルパートナー6年目 安全性とロードシェアをアピール
そして何よりも「ツール=コンチネンタル」というイメージを強めているのが、同社が2018年から務めているツールオフィシャルパートナーシップだ。「ロードバイクを含めたすべての乗り物の安全性とロードシェア」を強く打ち出すために、レースを盛り上げるキャラバン隊には何台もの宣伝カーが走り、ヴィラージュ内の特設ブース設置や、選手のゼッケンプレートや、ステージ優勝者のメダルにも同社ロゴが光る。
ツールを取材する中で、ちょっとくすんだイエローカラーと、特徴的な跳ね馬ロゴを見ない日はゼロ。ちなみにレースに随行するオフィシャル車両のタイヤも全てコンチネンタル製(開幕前にフランスのA.S.O.ガレージで履き替えられる)であり、時に100km/hを超えるダウンヒルや、危険を避けるための咄嗟の回避運動といった過酷な状況下で、選手のみならず、レースに帯同するドライバーの安全も支えているのだ。
チューブレス時代のプロトンを支えるGrand Prix 5000シリーズ
スタンダードモデルS TRに加え、軽量モデルTT TRのシェアも上昇中
コンチネンタル採用チームが愛用するのがフラッグシップチューブレスレディタイヤである「Grand Prix 5000(以下GP5000)」シリーズだ。チューブラータイヤ全盛期にはプロ供給用のCOMPETITION PRO LTDが100%を占めていたが、近年のチューブレス化とともに主役の座に座り、選手たちの走りを支えている。
中でも使用率の高いスタンダードモデル「Grand Prix 5000S TR」は、チューブレス移行への切り札となったタイヤだ。2018年に14年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたGP5000のアップデート版として開発され、泥で歴史的なサバイバルレースとなった2021年のパリ~ルーベや、同年の世界選手権タイムトライアルなど大舞台を相次いで制覇した。それは、それまで転がりの軽さを狙ってTTステージに活躍の場を見出されてきたチューブレスタイヤが、通常の、それも特に機材性能が求められる舞台で信頼される証となった。
その一方で興味深いのが、軽量モデル「Grand Prix 5000TT TR」のシェア率が急速に高まったことだ。そもそもTT TRは、S TR比較で40kmのタイムトライアルで17秒速く、かつ25cで25g軽い「Grand Prix 5000TT TdF」として昨年ツールで実戦投入され、その後フィリッポ・ガンナ(イタリア)のアワーレコード新記録樹立にも貢献したタイヤ。それをもとにサイズバリエーションを増やし、今年3月に正式ラインナップ追加となったものだ。
例えばポガチャルは基本的に全ステージを通じてTT TRを使うほか、第1ステージで勝利し、マイヨジョーヌを獲得したアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)やエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)らも常用するなど、「タイムトライアル決戦用」という従来のイメージを覆す使われ方をしている。
レース前に忙しなくセットアップする各メカニックから聞いた話をまとめれば、耐久性にほぼ問題はなく、特に山岳ステージが多い今年のツールではTT TRを選ぶ選手が多い。メーカー資料によればS TR同様ベクトランブレーカーを採用し、耐パンク性能を損なっていないとのことで、それが証明されている事実とも言えそうだ。
2023年大会においては少数派となったものの、チューブラータイヤを求める声もまだ根強い模様。グルパマFDJでは一部選手がCOMPETITION PRO LTDを常用するほか、普段チューブレスを使うティボー・ピノも第13ステージでCOMPETITION PRO LTDに変更。さらにグルパマはピレネーを駆けた第6ステージでは、ピノとフランス王者のヴァランタン・マドゥアスがエンデュランスモデルのAS TRに変更するという、ほかチームと一味変わったセッティングだったことも興味深い。
また、3週目初日の個人タイムトライアルでは、ほとんどの選手がTT TRを装着して最後に登坂が待ち受ける難関コースに挑んでいた。
今ツール最大の焦点は、マイヨジョーヌを着るヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)とポガチャルの総合一騎討ち。1週目でリードを奪ったヴィンゲゴーに対し、ポガチャルが少しずつ、しかし確実に追い詰め、たったの10秒で3週目を迎えた。迎えた個人タイムトライアルではヴィンゲゴーが圧倒的な力を見せたものの、ポガチャルも「まだ勝負は終わってない。2分差を取り返すのは難しいけれど挑戦する」と話している。彼らのタイヤチョイスにも注目しつつ、レースの行方を見守りたいと思う。
コンチネンタル Grand Prix 5000シリーズ
GRAND PRIX 5000S TR
650×30B | 280g |
650×32B | 300g |
700×25C | 250g |
700×28C | 280g |
700×30C | 300g |
700×32C | 320g |
カラー | Black、Transparent skin |
価格 | 13,000円(税込) |
GRAND PRIX 5000TT TR
700×25 | 225g |
700×28 | (28-622)240g |
カラー | BLACK / BLACK |
価格 | 17,000円(税込) |
GRAND PRIX 5000AS TR
700×28 | 335g(CREAM:340g) |
700×32 | 385g(CREAM:395g) |
700×35 | 425g(CREAM:430g) |
カラー | BLACK / BLACK、BLACK/CREAM |
価格 | 15,700円(税込) |
提供:ミズタニ自転車 text&photo:So Isobe