2022/07/01(金) - 00:00
クリテリウム・デュ・ドーフィネで一部の選手が使用し、話題を呼んでいたトレックの「あのバイク」が、ついにそのベールを脱ぐ。円熟の域に至ったスーパーバイクが、今一度その殻を破りエアロロードの未来を示す。
トレックのエンジニアはきっと詩人に違いない。ジャン・コクトー曰く「詩人は未来を回想する」のだから。2022年のドーフィネで、トレック・セガフレードのチームエリアに並べられていた新型Madone SLRは、まさに未来から現代へと産み落とされたようなフューチャリスティックなフォルムでもって、現地メディアの目を引き付けた。
こんなバイクは見たことがない。このバイクから目が離せない。シートチューブに空けられた大穴、トレックがIsoFlowと名付けたその空間を見て、誰もがそう思っただろう。シリーズ誕生以来、代を重ねること6度。4年ぶりのフルモデルチェンジを果たした第7世代Madoneはお披露目のその瞬間から、ロードバイクの歴史に名を刻んだことは間違いない。
だが、振り返ってみれば、Madoneというバイクの歩みはずっとそうだった。2003年の登場以来、トレックのレーシングバイクとしての地位を確固たるものとし、2015年にデビューした先々代では、他のブランドから一線を画したエアロフォルムの中に、振動吸収機構"IsoSpeed"を内蔵するという離れ業で、空力が全てに優先するエアロロードに、エンデュランスバイクに匹敵する快適性を付加するという革命をもたらした。
2018年の先代Madoneは、IsoSpeedを調整式へとアップデートし、異なる体格のライダーを受け容れる懐の深さを見せた。さらに2021年にはフレーム素材を最新のOCLV800へ更新し、新型のAeolus RSLホイールの登場と合わせて大幅な軽量化を達成した。常に時代の先を行くことは、最速を使命として与えられたMadoneの宿命でもあるのだろう。
快適性の向上という、ライバルたちとは全く異なるアプローチで成果を出してきたMadoneだが、勝利を至上命題とするプロたちからは、更なる要望が出されていたという。「さらに速く、そして軽く」というトレック・セガフレードの選手らの声に応えるべく、トレックは新型Madoneの開発に着手。
同社のヒルクライムバイク"Émonda"のために開発された最新のOCLV800カーボン。そして、エレン・ファンダイクのアワーレコード樹立の立役者となったTTバイク"SpeedConcept"の開発で用いられた風洞実験のノウハウ。この2つを掛け合わせて生み出されたのが"IsoFlow"、そして新型のステム一体型ハンドルだ。
新型Madoneの最も特徴的な部分であり、技術面においても核心部となるのが"IsoFlow"。そう、シートチューブに設けられた大きな空洞は、ただのデザインではなく、走行性能に密接に関わってくる造作なのだ。
前作ではIsoSpeedが配置されていた空間を二股に分かれた空洞としつつ、トップチューブから尻尾のように伸びた部位にシートポストを取り付けることで積極的にしなりを生み出す構造に。IsoSpeedと同レベルの快適性を維持したまま、よりシンプルな構造とすることで150gの軽量化を実現している。
そして、この特徴的な空洞構造は、空気抵抗となる気流の渦の軽減効果を発揮するという。シートチューブ周りの空気の流れ、すなわちFlowを乱すことなくバイク後方へと流すことで、大幅なエアロダイナミクスの改善を可能とした。
IsoFlowと並ぶ、もう一つのトピックが新型のステム一体型ハンドルバーだ。エアロ性能の向上を目指すために、最も重要とされるのが真っ先に空気が当たる正面の空力だ。その部分のエアロダイナミクスを高めるために、コックピット周りのデザインは大きな役割を果たす。
トレックは、この部分の空力性能を高めるため、エアロバーステムを新規に設計。ポジションの調整幅を確保するために2ピースとしていた前作に対し、ステムとハンドルをシームレスに仕上げる完全一体成型とすることで、余計な段差や溝を排除。空力面でのアドバンテージに加え、余計なボルトなどを排することで大幅な軽量化(マイナス150g)をも達成している。
また、ドロップエンドに対し、ブラケット部を3cm狭くするフレアデザインに。もっとも多用するブラケット部を持った際に、上体をコンパクトに保ち空力的に有利なポジションを取りやすくなっている。一方、ドロップポジションは幅広くなっているため、スプリントでもしっかりと力を籠めやすく、ダウンヒル時のコントロール性も確保している。
これらにより、近代Madoneの特徴であった快適性に優れたエアロロードという美点はそのままに、更なる空力性能の向上と軽量化を実現。先代Madone SLR比で300gのシェイプアップ、そして時速45kmで走行時には19Wの抵抗削減に成功。同じ出力であれば、1時間あたり60秒を短縮する、新次元の速さを手に入れた。
MadoneをMadoneたらしめる独自性を色濃く残しながら、レーシングバイクとしては正当な進化を果たした新型Madone SLR。注目が集まる新作だが、国内における展開はMadone SLR9 eTap(1,756,700円)、Madone SLR9(1,668,700円)、Madone SLR7(1,305,700円)、Madone SLR6(1,155,000円)という4グレードの完成車から始まる予定だ。(※価格は全て税込)
ジオメトリーはH1.5となり、サイズは47、50、52、54、56、58の6種類。フレームサイズによって標準装備されるハンドル幅及びステムのサイズが調整されている。グレードにより用意されるカラーは異なるが、Deep Carbon Smoke、Viper Red、Azure、Metallic Red Smoke to Red Carbon Smoke、Quest Smooth Silverの全5カラーが用意される。なお、最大タイヤクリアランスは28Cで、電動コンポーネント専用設計となっている。また、今シーズンはミドルグレードのMadone SLは継続モデルとなるとのことだ。
未来から来たエアロロード。第7世代Madone、新生。
トレックのエンジニアはきっと詩人に違いない。ジャン・コクトー曰く「詩人は未来を回想する」のだから。2022年のドーフィネで、トレック・セガフレードのチームエリアに並べられていた新型Madone SLRは、まさに未来から現代へと産み落とされたようなフューチャリスティックなフォルムでもって、現地メディアの目を引き付けた。
こんなバイクは見たことがない。このバイクから目が離せない。シートチューブに空けられた大穴、トレックがIsoFlowと名付けたその空間を見て、誰もがそう思っただろう。シリーズ誕生以来、代を重ねること6度。4年ぶりのフルモデルチェンジを果たした第7世代Madoneはお披露目のその瞬間から、ロードバイクの歴史に名を刻んだことは間違いない。
だが、振り返ってみれば、Madoneというバイクの歩みはずっとそうだった。2003年の登場以来、トレックのレーシングバイクとしての地位を確固たるものとし、2015年にデビューした先々代では、他のブランドから一線を画したエアロフォルムの中に、振動吸収機構"IsoSpeed"を内蔵するという離れ業で、空力が全てに優先するエアロロードに、エンデュランスバイクに匹敵する快適性を付加するという革命をもたらした。
2018年の先代Madoneは、IsoSpeedを調整式へとアップデートし、異なる体格のライダーを受け容れる懐の深さを見せた。さらに2021年にはフレーム素材を最新のOCLV800へ更新し、新型のAeolus RSLホイールの登場と合わせて大幅な軽量化を達成した。常に時代の先を行くことは、最速を使命として与えられたMadoneの宿命でもあるのだろう。
さらに速く、そして軽く。プロが望んだ性能を実現するIsoFlow & 新型バーステム
快適性の向上という、ライバルたちとは全く異なるアプローチで成果を出してきたMadoneだが、勝利を至上命題とするプロたちからは、更なる要望が出されていたという。「さらに速く、そして軽く」というトレック・セガフレードの選手らの声に応えるべく、トレックは新型Madoneの開発に着手。
同社のヒルクライムバイク"Émonda"のために開発された最新のOCLV800カーボン。そして、エレン・ファンダイクのアワーレコード樹立の立役者となったTTバイク"SpeedConcept"の開発で用いられた風洞実験のノウハウ。この2つを掛け合わせて生み出されたのが"IsoFlow"、そして新型のステム一体型ハンドルだ。
乗り心地はそのままに、エアロかつ軽量に進化したIsoFlowテクノロジー
新型Madoneの最も特徴的な部分であり、技術面においても核心部となるのが"IsoFlow"。そう、シートチューブに設けられた大きな空洞は、ただのデザインではなく、走行性能に密接に関わってくる造作なのだ。
前作ではIsoSpeedが配置されていた空間を二股に分かれた空洞としつつ、トップチューブから尻尾のように伸びた部位にシートポストを取り付けることで積極的にしなりを生み出す構造に。IsoSpeedと同レベルの快適性を維持したまま、よりシンプルな構造とすることで150gの軽量化を実現している。
そして、この特徴的な空洞構造は、空気抵抗となる気流の渦の軽減効果を発揮するという。シートチューブ周りの空気の流れ、すなわちFlowを乱すことなくバイク後方へと流すことで、大幅なエアロダイナミクスの改善を可能とした。
速さと軽さに貢献するシームレスな一体型コックピット
IsoFlowと並ぶ、もう一つのトピックが新型のステム一体型ハンドルバーだ。エアロ性能の向上を目指すために、最も重要とされるのが真っ先に空気が当たる正面の空力だ。その部分のエアロダイナミクスを高めるために、コックピット周りのデザインは大きな役割を果たす。
トレックは、この部分の空力性能を高めるため、エアロバーステムを新規に設計。ポジションの調整幅を確保するために2ピースとしていた前作に対し、ステムとハンドルをシームレスに仕上げる完全一体成型とすることで、余計な段差や溝を排除。空力面でのアドバンテージに加え、余計なボルトなどを排することで大幅な軽量化(マイナス150g)をも達成している。
また、ドロップエンドに対し、ブラケット部を3cm狭くするフレアデザインに。もっとも多用するブラケット部を持った際に、上体をコンパクトに保ち空力的に有利なポジションを取りやすくなっている。一方、ドロップポジションは幅広くなっているため、スプリントでもしっかりと力を籠めやすく、ダウンヒル時のコントロール性も確保している。
これらにより、近代Madoneの特徴であった快適性に優れたエアロロードという美点はそのままに、更なる空力性能の向上と軽量化を実現。先代Madone SLR比で300gのシェイプアップ、そして時速45kmで走行時には19Wの抵抗削減に成功。同じ出力であれば、1時間あたり60秒を短縮する、新次元の速さを手に入れた。
国内展開は4グレード 5つのカラーが選択可能
MadoneをMadoneたらしめる独自性を色濃く残しながら、レーシングバイクとしては正当な進化を果たした新型Madone SLR。注目が集まる新作だが、国内における展開はMadone SLR9 eTap(1,756,700円)、Madone SLR9(1,668,700円)、Madone SLR7(1,305,700円)、Madone SLR6(1,155,000円)という4グレードの完成車から始まる予定だ。(※価格は全て税込)
ジオメトリーはH1.5となり、サイズは47、50、52、54、56、58の6種類。フレームサイズによって標準装備されるハンドル幅及びステムのサイズが調整されている。グレードにより用意されるカラーは異なるが、Deep Carbon Smoke、Viper Red、Azure、Metallic Red Smoke to Red Carbon Smoke、Quest Smooth Silverの全5カラーが用意される。なお、最大タイヤクリアランスは28Cで、電動コンポーネント専用設計となっている。また、今シーズンはミドルグレードのMadone SLは継続モデルとなるとのことだ。
Madone SLR9 eTap
フレーム | OCLV800フレーム |
コンポーネント | スラム Red eTap AXS |
カラー | Viper Red、Azure |
税込価格 | 1,756,700円 |
Madone SLR9
フレーム | OCLV800フレーム |
コンポーネント | シマノ R9200系DURA-ACE DI2 |
カラー | Viper Red、Azure |
税込価格 | 1,668,700円 |
Madone SLR7
フレーム | OCLV800フレーム |
コンポーネント | シマノ R8100系 Ultegra DI2 |
カラー | Deep Carbon Smoke、Viper Red、Azure、Metallic Red Smoke to Red Carbon Smoke、Quest Smooth Silver |
税込価格 | 1,305,700円 |
Madone SLR6
フレーム | OCLV800フレーム |
コンポーネント | シマノ R7100系 105 DI2 |
カラー | Viper Red、Azure、Metallic Red Smoke to Red Carbon Smoke、Quest Smooth Silver |
税込価格 | 1,155,000円 |
text:Naoki Yasuoka 提供:トレック・ジャパン