2022/06/14(火) - 12:23
正式デビューした2022年3月から、世のサイクリストの話題をさらい続けている「AGILEST(アジリスト)」を総力特集。パナレーサーが総力を挙げて刷新したロードレーシングタイヤを、開発者、そして宇都宮ブリッツェンの選手による話を元に紐解いていきたい。
日本のレーシングロードタイヤと言えば「RACE EVO」シリーズ。そう呼べるほどに、パナレーサーが手がけるRACE EVOシリーズは、トッププロはもちろん、アマチュアレーサー、そしてサンデーライダーに至るまで幅広く、そして確固たる支持を集めてきた。
しかし前作EVO4の登場(2019年)後、特にディスクブレーキの普及を中心に、ライドスタイルの多様化など、ロードバイクを取り巻く環境は大きく変わってきた。また、ここ数年RACE EVOシリーズは海外ブランドのライバル製品に押され気味になるなど、シェア率が下がっていたこともまた事実だ。開発者の言葉を借りれば、パナレーサー社内には「危機感が漂っていた」。
2月22日に正式デビューを飾った「AGILEST(アジリスト)」は、こんな状況を打開し、その頂点に君臨するべくパナレーサーが全力を投じた意欲作。ちょうど1年前のブランドカラー変更(青から紫に)や、PR戦略のパワーアップも加わり、2月上旬のチラ見せ時点から今日に至るまで話題をさらい続けている。現状、ずっとメーカー出荷が追いつかない状態が続いているのだという。
AGILEST開発のスタート地点となったのは、東京オリンピック出場を目指していた増田成幸(宇都宮ブリッツェン)の要望に応えるチューブラータイヤを供給するということだった。
2019年春にプロジェクトの船出を迎え、AGILESTの原型が定まり始めてからは約2年。選手の意見を真摯に汲み上げ、形となったパナレーサーの意欲作は、増田によってまずツアー・オブ・ジャパンを制し、第一目標だった東京オリンピックを走り、更に全日本選手権のタイムトライアル優勝とロードレース2位。十分な実績とともに、レース現場を飛び出し、今は一般市場にも戦いの場を広げている。
これまでRACE EVOシリーズの顔だった「(トレッド先端が尖った断面形状の)オールコンタクトトレッドシェイプ」を取りやめ、コンパウンドも、耐パンクベルトも、そしてネーミングすらも、ケーシング以外の全てを刷新したAGILEST。俊敏や素早さなどを表すAgile(アジャイル)の最上級を意味するモデル名からも、パナレーサー開発陣が込める思いの強さも感じ取れようというもの。
新型タイヤに対する宇都宮ブリッツェンからの要求は、まず「扱いやすさ」だった。先述の通りRACE EVOシリーズの顔だった「オールコンタクトトレッドシェイプ」はコーナリング中に高いグリップ力を発揮するものの、扱いやすさ(=切り返しなどでの挙動変化の少なさ)に関してはクセを感じるところがあったという。
前作RACE EVO4の時点でトレッドシェイプはやや丸みを帯びた形状にアップデートされていたが、それでもブリッツェン内ではRACE EVOシリーズ中で唯一ラウンドシェイプを採用したRACE Cの使用率が高かった。ここに開発陣は注目を当て、グリップ力を担保できる新コンパウンドを開発。さらに今までのパナレーサーの弱点だったという、転がり抵抗の低減を目指して開発が行われた。
耐久性を支える耐パンクベルトは「Tough & Flex Super Belt」に進化した。特殊なコードをゴムでコーティングした素材構成自体は従来の「ProTite(プロタイト)」と共通だが、素材や厚さを徹底的に実験し、改良。できる限り軽く、薄く、しなやかでタイヤ性能に悪影響を及ぼさないことを主眼においた。
また、コンパウンドと耐パンクベルトの性能が共に底上げされたことで、基本となるスタンダードモデルの立ち位置も微妙に変化が加わった。従来のRACE EVO4シリーズで言えば「All-round-オールラウンド」、「Light-軽量性重視」、「Duro-耐パンク性重視」の中間ではなくDURO寄りだったものの、AGILEST(スタンダードモデル)はAGILEST-LIGHT寄りの立ち位置に。これはモデルチェンジに当たって前作よりも重量を抑えて耐パンク性を確保できたため、今まで以上に軽さを突き詰めることができたからだという。
ラインナップはRACE EVO4と同じく、目的別に合わせた3種類のクリンチャーモデル(スタンダードのAGILEST、耐久性に優れたAGILEST DURO、軽量化に特化したAGILEST-LIGHT)が用意され、スタンダードモデルにはTLR(チューブレスレディ)が加わり、さらにレース用としてTU(チューブラー)も揃えられている。
新型のコンパウンドと耐パンクベルトの組み合わせを核とし、高次元でグリップ力、耐パンク性能を発揮しつつ、しなやかな乗り心地も実現した、レースからロングライドまで幅広く性能を発揮する次世代のレーシングタイヤがAGILEST。以下には各モデルごとの解説を紹介し、次章からの製品インプレッションに繋げていきたい。
幅広いラインナップを誇るAGILESTシリーズの中核を成すのがこのクリンチャーモデル。転がりの軽さと高いグリップ力を兼ね備えつつ、しなやかな走り心地となるよう尽力されたパナレーサーの新スタンダードタイヤだ。
サイズは23Cと25C、そして28Cの3種類が用意され、それぞれ重量は180g、190g、210gとRACE EVO4 Aと比べて-40gという圧倒的な軽量化を達成している。走りの軽さに直結するホイール外周部の40gを侮るなかれ。サイドカラーはブラックとスキン、25Cのみレッドとブルーが用意される。税抜5,700円と、前後買い揃えても1万円+αというリーズナブルな価格も嬉しい。
パナレーサー伝統の耐久性最重要視モデルで、いわゆる「D」。スタンダードモデルに採用されたPro Tite Beltに加え、新開発の「Tough & Flex Super Outer Shield」を採用することで更に耐パンク性能をグレードアップさせている。
コンパウンドはもちろんZSG AGILE Compoundで、厚い信頼を得ていた前作から25C比で-20gの軽量化を果たしている。山間部にありがちな荒れた舗装路や、酷使しがちなトレーニングライド、ブルベのようなパンクを避けたいロングライドにうってつけの強化型レーシングタイヤだ。
全ては圧倒的な走りの軽さを得るために。極限まで軽量性を求めたGILLARから重量を増やすことなく、新コンパウンドと耐パンクベルトによって転がり抵抗値低減を実現した超軽量レーシングタイヤ。その重量は23Cで160g、25Cで170gとライバルブランドから圧倒的なアドバンテージを奪っている。
なおAGILEST-LIGHTには専用のトレッドパターンが与えられているもが、これは見た目で区別しやすいように配慮されたもの。このパターンのある無しによる走行性能の変化はないという。
宇都宮ブリッツェンを筆頭とするプロチームの走りを支えるAGILESTのチューブラータイヤ。増田成幸らの声を活かし、「センタースリック/サイド杉目」トレッドパターンで直進時の軽さ、そして倒し込んだ際のグリップの効きといった扱いやすさという相反する性格を両立している。
内部に入るチューブはパナレーサーご自慢の「R'AIR(アールエアー)」。コンパウンドや耐パンクベルト、トレッド部分の断面形状などはスタンダードモデルと共通だ。
スタンダードモデルをベースにチューブレスホイールに対応させたTLRモデル。幅広化、そして低圧化が進むホイールトレンドを汲み、装着性やマウント性、フックレスリムへの対応にこだわった意欲作だ。
耐パンクベルトは採用されていないものの、開発陣によれば頑丈な空気保持機構がそのまま耐パンクベルトの機能を果たすため、不必要な重量増を回避しているという。ラインナップの中で唯一30Cモデルが用意されていることがポイント。AGILESTのしなやかさを、もう一段階上のレベルで味わえる注目作だ。
パナレーサー渾身の力作、AGILEST(アジリスト)
日本のレーシングロードタイヤと言えば「RACE EVO」シリーズ。そう呼べるほどに、パナレーサーが手がけるRACE EVOシリーズは、トッププロはもちろん、アマチュアレーサー、そしてサンデーライダーに至るまで幅広く、そして確固たる支持を集めてきた。
しかし前作EVO4の登場(2019年)後、特にディスクブレーキの普及を中心に、ライドスタイルの多様化など、ロードバイクを取り巻く環境は大きく変わってきた。また、ここ数年RACE EVOシリーズは海外ブランドのライバル製品に押され気味になるなど、シェア率が下がっていたこともまた事実だ。開発者の言葉を借りれば、パナレーサー社内には「危機感が漂っていた」。
2月22日に正式デビューを飾った「AGILEST(アジリスト)」は、こんな状況を打開し、その頂点に君臨するべくパナレーサーが全力を投じた意欲作。ちょうど1年前のブランドカラー変更(青から紫に)や、PR戦略のパワーアップも加わり、2月上旬のチラ見せ時点から今日に至るまで話題をさらい続けている。現状、ずっとメーカー出荷が追いつかない状態が続いているのだという。
AGILEST開発のスタート地点となったのは、東京オリンピック出場を目指していた増田成幸(宇都宮ブリッツェン)の要望に応えるチューブラータイヤを供給するということだった。
2019年春にプロジェクトの船出を迎え、AGILESTの原型が定まり始めてからは約2年。選手の意見を真摯に汲み上げ、形となったパナレーサーの意欲作は、増田によってまずツアー・オブ・ジャパンを制し、第一目標だった東京オリンピックを走り、更に全日本選手権のタイムトライアル優勝とロードレース2位。十分な実績とともに、レース現場を飛び出し、今は一般市場にも戦いの場を広げている。
レーシングタイヤの全てを"再定義"
第一目標は扱いやすさ。従来の顔だった断面形状を総刷新
これまでRACE EVOシリーズの顔だった「(トレッド先端が尖った断面形状の)オールコンタクトトレッドシェイプ」を取りやめ、コンパウンドも、耐パンクベルトも、そしてネーミングすらも、ケーシング以外の全てを刷新したAGILEST。俊敏や素早さなどを表すAgile(アジャイル)の最上級を意味するモデル名からも、パナレーサー開発陣が込める思いの強さも感じ取れようというもの。
新型タイヤに対する宇都宮ブリッツェンからの要求は、まず「扱いやすさ」だった。先述の通りRACE EVOシリーズの顔だった「オールコンタクトトレッドシェイプ」はコーナリング中に高いグリップ力を発揮するものの、扱いやすさ(=切り返しなどでの挙動変化の少なさ)に関してはクセを感じるところがあったという。
前作RACE EVO4の時点でトレッドシェイプはやや丸みを帯びた形状にアップデートされていたが、それでもブリッツェン内ではRACE EVOシリーズ中で唯一ラウンドシェイプを採用したRACE Cの使用率が高かった。ここに開発陣は注目を当て、グリップ力を担保できる新コンパウンドを開発。さらに今までのパナレーサーの弱点だったという、転がり抵抗の低減を目指して開発が行われた。
グリップ力はそのままに、前作比12%の転がり抵抗値低減
タイヤの性能を直接的に左右するのがコンパウンドだ。従来は「ゼロ・スリップ・グリップ」の頭文字を取ったZSGアドバンスドコンパウンドを採用していたが、AGILESTではこれをより進化させた「ZSG AGILE Compound」を取り入れた。可能な限りの研究開発によって、高いグリップ力を維持したまま前作比で12%もの転がり抵抗値低減を叶えているという。耐久性を支える耐パンクベルトは「Tough & Flex Super Belt」に進化した。特殊なコードをゴムでコーティングした素材構成自体は従来の「ProTite(プロタイト)」と共通だが、素材や厚さを徹底的に実験し、改良。できる限り軽く、薄く、しなやかでタイヤ性能に悪影響を及ぼさないことを主眼においた。
また、コンパウンドと耐パンクベルトの性能が共に底上げされたことで、基本となるスタンダードモデルの立ち位置も微妙に変化が加わった。従来のRACE EVO4シリーズで言えば「All-round-オールラウンド」、「Light-軽量性重視」、「Duro-耐パンク性重視」の中間ではなくDURO寄りだったものの、AGILEST(スタンダードモデル)はAGILEST-LIGHT寄りの立ち位置に。これはモデルチェンジに当たって前作よりも重量を抑えて耐パンク性を確保できたため、今まで以上に軽さを突き詰めることができたからだという。
ラインナップはRACE EVO4と同じく、目的別に合わせた3種類のクリンチャーモデル(スタンダードのAGILEST、耐久性に優れたAGILEST DURO、軽量化に特化したAGILEST-LIGHT)が用意され、スタンダードモデルにはTLR(チューブレスレディ)が加わり、さらにレース用としてTU(チューブラー)も揃えられている。
新型のコンパウンドと耐パンクベルトの組み合わせを核とし、高次元でグリップ力、耐パンク性能を発揮しつつ、しなやかな乗り心地も実現した、レースからロングライドまで幅広く性能を発揮する次世代のレーシングタイヤがAGILEST。以下には各モデルごとの解説を紹介し、次章からの製品インプレッションに繋げていきたい。
パナレーサー AGILESTシリーズ 各種スペック
AGILEST:シリーズのコアを成す、定番のクリンチャーモデル
幅広いラインナップを誇るAGILESTシリーズの中核を成すのがこのクリンチャーモデル。転がりの軽さと高いグリップ力を兼ね備えつつ、しなやかな走り心地となるよう尽力されたパナレーサーの新スタンダードタイヤだ。
サイズは23Cと25C、そして28Cの3種類が用意され、それぞれ重量は180g、190g、210gとRACE EVO4 Aと比べて-40gという圧倒的な軽量化を達成している。走りの軽さに直結するホイール外周部の40gを侮るなかれ。サイドカラーはブラックとスキン、25Cのみレッドとブルーが用意される。税抜5,700円と、前後買い揃えても1万円+αというリーズナブルな価格も嬉しい。
サイズと重量 | 700x23C(180g)、700x25C(190g)、700x28C(210g) |
サイドカラー | ブラック、スキン、レッド(25Cのみ)、ブルー(25Cのみ) |
税抜参考価格 | 5,700円 |
AGILEST DURO:トレーニングユースの、そして軽さを求めるツーリングユーザーの強い味方
パナレーサー伝統の耐久性最重要視モデルで、いわゆる「D」。スタンダードモデルに採用されたPro Tite Beltに加え、新開発の「Tough & Flex Super Outer Shield」を採用することで更に耐パンク性能をグレードアップさせている。
コンパウンドはもちろんZSG AGILE Compoundで、厚い信頼を得ていた前作から25C比で-20gの軽量化を果たしている。山間部にありがちな荒れた舗装路や、酷使しがちなトレーニングライド、ブルベのようなパンクを避けたいロングライドにうってつけの強化型レーシングタイヤだ。
サイズと重量 | 700x23C(210g)、700x25C(220g)、700x28C(250g) |
サイドカラー | ブラック |
税抜参考価格 | 5,700円 |
AGILEST-LIGHT:GILLARの軽さはそのままに、さらなる転がり抵抗を低減
全ては圧倒的な走りの軽さを得るために。極限まで軽量性を求めたGILLARから重量を増やすことなく、新コンパウンドと耐パンクベルトによって転がり抵抗値低減を実現した超軽量レーシングタイヤ。その重量は23Cで160g、25Cで170gとライバルブランドから圧倒的なアドバンテージを奪っている。
なおAGILEST-LIGHTには専用のトレッドパターンが与えられているもが、これは見た目で区別しやすいように配慮されたもの。このパターンのある無しによる走行性能の変化はないという。
サイズと重量 | 700x23C(160g)、700x25C(170g) |
サイドカラー | ブラック |
税抜参考価格 | 6,200円 |
AGILEST TU:プロチームの活躍を支えるチューブラータイヤ
宇都宮ブリッツェンを筆頭とするプロチームの走りを支えるAGILESTのチューブラータイヤ。増田成幸らの声を活かし、「センタースリック/サイド杉目」トレッドパターンで直進時の軽さ、そして倒し込んだ際のグリップの効きといった扱いやすさという相反する性格を両立している。
内部に入るチューブはパナレーサーご自慢の「R'AIR(アールエアー)」。コンパウンドや耐パンクベルト、トレッド部分の断面形状などはスタンダードモデルと共通だ。
サイズと重量 | 700x25mm(260g) |
サイドカラー | ブラック |
税抜参考価格 | 9,800円 |
AGILEST TLR:次世代を担うチューブレスレディタイヤ
スタンダードモデルをベースにチューブレスホイールに対応させたTLRモデル。幅広化、そして低圧化が進むホイールトレンドを汲み、装着性やマウント性、フックレスリムへの対応にこだわった意欲作だ。
耐パンクベルトは採用されていないものの、開発陣によれば頑丈な空気保持機構がそのまま耐パンクベルトの機能を果たすため、不必要な重量増を回避しているという。ラインナップの中で唯一30Cモデルが用意されていることがポイント。AGILESTのしなやかさを、もう一段階上のレベルで味わえる注目作だ。
サイズと重量 | 700x25C(220g)、700x28C(250g)、700x30C(270g) |
サイドカラー | ブラック |
税抜参考価格 | 6,700円 |
提供:パナーレーサー/制作:シクロワイアード編集部