2021/08/20(金) - 18:00
ピナレロの新たなるフラッグシップモデル、DOGMA Fはデビュー以降破竹の快進撃を続けている。リチャル・カラパスによるツール・ド・フランスの総合表彰台と、東京オリンピック制覇。Fを駆るグレナディアーズたちの活躍をプレイバックする。
DOGMAの歴史は近代グランツールの歴史。今現在のロードレース界において、これに異を唱える者は少ないだろう。2012年のブラドレー・ウィギンスによるツール・ド・フランス制覇を皮切りに、クリストファー・フルームのグランツール合計6勝(うちツール4勝)、そしてゲラント・トーマスの2018年ツール制覇。
2019年にDOGMA F12がデビューして以降も2019年にエガン・ベルナルがツールを制覇。2020年はテイオ・ゲイガンハートがジロでマリアローザを獲得した。2021年も不調を打破したベルナルがジロで復活総合優勝を遂げるなど、その勢いは全く弱まってはいない。
2010年のチームスカイ発足当時からパートナーシップを組んだピナレロは、これまでロードバイクやTTバイク、さらにはパリ〜ルーベ用のスペシャルモデルなどを含め、合計18モデルを実戦投入。イネオスとピナレロが共に成し遂げたグランツール総合優勝は12、うちツール総合優勝は7にのぼる。
僅かな利点(ゲイン)を積み上げる「マージナルゲイン」を提唱するチームにおいて、ピナレロ、そしてDOGMAは創設以来変わらず選手を支え続けている数少ないエキップメントの一つだ。
新生DOGMA Fは、2021年ツール・ド・フランスの開幕プレゼンテーションで、最も注目を集めたバイクだった。
DOGMA Fは日本時間6月24日の23時に世界同時公開となり、その直後のプレゼンテーションではチームカラーの"F"に乗るイネオス・グレナディアーズがブレストの特設ステージに登壇。常勝チームが駆る主力モデルの世代交代とあって、世界各国のファンやメディアから大きな注目が注がれた。
このツールでイネオス・グレナディアーズはカラパスを総合3位に送り込んだことは周知の通り。2019年にジロを制したカラパスだが、今年はゲラント・トーマスと共に自身2度目となるツール出場を叶えた。ツール初年度の2020年はベルナルのアシストとして総合13位、そして2年目となる今年はトーマスを含め有力勢が次々と落車で姿を消していく中、DOGMA Fと共に危なげなく総合成績上位で駒を進めていった。
ピレネー初日の第15ステージで総合順位を5位まで落としたものの、翌日の第16ステージアンドラで4位に、さらに第17ステージの超級山岳サンラリ=スラン/ポルテ峠では上位2選手に食らいついて総合成績を3位に押し上げ、第20ステージの個人タイムトライアルでも順位をキープ。シャンゼリゼの総合表彰台への切符を掴み取るのだった。
なお、ディスクブレーキの普及に伴いほとんどの欧州プロチームがリムブレーキからの移行を果たす中、イネオス・グレナディアーズは使用モデルがDOGMA Fに代替わりしてもなおリムブレーキを継続採用している。
265gという大幅な減量を施したDOGMA Fは、既にアッセンブル次第でUCIルール下限である6.8kgを下回る軽さをやすやすと達成する。従来から語られてきたことではあるものの、イネオスがリムブレーキに固執するのは、重量面ではなく、パンク時のホイール交換に要するタイムロスを限りなく減らすため。市販モデルのディスクブレーキ専用化が著しい現在において、ピナレロはフラッグシップモデルにリムブレーキをラインナップする数少ないトップブランドとなっている。これはイネオス・グレナディアーズはもちろんのこと、リムブレーキのフィーリングを愛する一般ユーザーにとっては特に大きな意味を持つと言えるだろう。
F8に始まる新世代DOGMAのデザインを色濃く受け継ぐ"F"。F12とFの外見上の違いはシェイプアップされたフォークや、より鋭さを増した各チューブのデザイン変更程度ではあるものの、その走りが飛躍したのは前章のインプレッションページからも分かる通り。軽量化や、空力改善だけに留まらない走行性能向上を大きな見た目上の変化無しに、それも2年という短スパンで成し遂げた事実はピナレロの優れた開発能力を浮き彫りにしている。
熱狂と狂騒のツール・ド・フランス最終日から1週間。「グレナディアーズ」たちの姿は、ここ日本にあった。
全ては東京2020オリンピックでメダルを獲るために。カラパスが、トーマスやアダム・イェーツ、ゲイガンハートが、ジャンニ・モスコンやフィリッポ・ガンナが、ミハウ・クフィアトコフスキが、パヴェル・シヴァコフが、リッチー・ポートが、アンドレイ・アマドールが、そしてローハン・デニスたちが「プルトニウムフラッシュ」カラーのシートチューブに日の丸を、各国の国旗をフロントフォークに入れた特別ペイントのDOGMA Fを駆り、東京都府中市の武蔵野の森公園から富士スピードウェイに至る距離234km/獲得標高4,865mという過酷なコースに挑んだ。
4年に一度の大舞台で、同じくDOGMA Fを駆るヨナタン・ナルバエスとたった二人でエクアドルチームを組んだカラパスが精彩を放った。三国峠を越え、優勝候補たちが激しくアタックを仕掛け合う隙を付き、残り25km地点から抜け出したカラパス。超高速に達する籠坂峠の下りで追走グループとの差を開き、さらに残り6kmで独走に持ち込み、フィニッシュ。脚力はもちろん勇気と判断力による勝利であり、あらゆる状況が組み込まれたコースにおいて、DOGMA Fもまた、そのピュアオールラウンダーたる性能をフルに輝かせたようだ。
2019年のジロ・デ・イタリア総合優勝者で、今シーズンのツール・ド・スイスで総合優勝、そして直前のツール・ド・フランスを総合3位で終えていたカラパスが金メダルを獲得。エクアドルの五輪金メダルは1996年アトランタ五輪の20km競歩で勝利したジェファーソン・ペレス以来2つめの快挙であり、また一つ歴史に名を残してみせた。
なお、「五輪覇者」となったカラパスは、これまでの金メダリストたちがそうだったように、パリオリンピックまでの3年間、五輪覇者を意味する金色を纏うことが許される。ピナレロは既にゴールドメタリックとブラックで塗装されているスペシャルDOGMA Fの画像をアップしており、その後すぐに組み上げられ、カラパスの手に渡った。カラパスは早速五輪後の初レースとなるブエルタ・ア・エスパーニャで黄金のDOGMA Fを使用中であり、今後の活躍にも期待したい。
過酷な超級山岳の登りや、100km/hに達するダウンヒル、高速化する平坦ステージ、そしてありとあらゆる場面でアタックを仕掛けるための瞬発力。DOGMA Fはそのモットーである"The Art Of Balance"を体現するスーパーバイクとして、デビュー以降華々しい活躍を続けている。
ピナレロとイネオス・グレナディアーズは今年6月に向こう4年間、つまり2025年までのパートナーシップ延長を締結しており、チーム創設から数えて15年もの長期契約を結ぶこととなる。その発表の中で、デイブ・ブレイルスフォード代表は以下のようにコメントを綴っている。
「創業以来、ピナレロのバイクでレースをしてきましたが、それは常にレースと革新への共通の愛に根ざしたパートナーシップでした。ピナレロは私たちのスポーツの中でユニークな存在の企業です。ピナレロは自転車競技の伝統に深い敬意を払いつつ、テクノロジーとエンジニアリングの最先端であり続けたいという願望を持っています。このスポーツは長年にわたって大きく変化してきましたが、ファウスト氏とチームは10年以上にわたり、最高のバイク技術でチームをサポートし、私たちのレースの旅路の大きな部分を支えてくれています」。
ピナレロとイネオス・グレナディアーズの蜜月関係に終わりはなく、これからもDOGMAに乗ったグレナディアーズたちは世界のトップレースで戦い続ける。
世界最高峰の舞台で輝くイネオス・グレナディアーズとDOGMA F
DOGMAの歴史は近代グランツールの歴史。今現在のロードレース界において、これに異を唱える者は少ないだろう。2012年のブラドレー・ウィギンスによるツール・ド・フランス制覇を皮切りに、クリストファー・フルームのグランツール合計6勝(うちツール4勝)、そしてゲラント・トーマスの2018年ツール制覇。
2019年にDOGMA F12がデビューして以降も2019年にエガン・ベルナルがツールを制覇。2020年はテイオ・ゲイガンハートがジロでマリアローザを獲得した。2021年も不調を打破したベルナルがジロで復活総合優勝を遂げるなど、その勢いは全く弱まってはいない。
2010年のチームスカイ発足当時からパートナーシップを組んだピナレロは、これまでロードバイクやTTバイク、さらにはパリ〜ルーベ用のスペシャルモデルなどを含め、合計18モデルを実戦投入。イネオスとピナレロが共に成し遂げたグランツール総合優勝は12、うちツール総合優勝は7にのぼる。
僅かな利点(ゲイン)を積み上げる「マージナルゲイン」を提唱するチームにおいて、ピナレロ、そしてDOGMAは創設以来変わらず選手を支え続けている数少ないエキップメントの一つだ。
DOGMA Fのデビュー戦、ツール・ド・フランスで総合表彰台を獲得
新生DOGMA Fは、2021年ツール・ド・フランスの開幕プレゼンテーションで、最も注目を集めたバイクだった。
DOGMA Fは日本時間6月24日の23時に世界同時公開となり、その直後のプレゼンテーションではチームカラーの"F"に乗るイネオス・グレナディアーズがブレストの特設ステージに登壇。常勝チームが駆る主力モデルの世代交代とあって、世界各国のファンやメディアから大きな注目が注がれた。
このツールでイネオス・グレナディアーズはカラパスを総合3位に送り込んだことは周知の通り。2019年にジロを制したカラパスだが、今年はゲラント・トーマスと共に自身2度目となるツール出場を叶えた。ツール初年度の2020年はベルナルのアシストとして総合13位、そして2年目となる今年はトーマスを含め有力勢が次々と落車で姿を消していく中、DOGMA Fと共に危なげなく総合成績上位で駒を進めていった。
ピレネー初日の第15ステージで総合順位を5位まで落としたものの、翌日の第16ステージアンドラで4位に、さらに第17ステージの超級山岳サンラリ=スラン/ポルテ峠では上位2選手に食らいついて総合成績を3位に押し上げ、第20ステージの個人タイムトライアルでも順位をキープ。シャンゼリゼの総合表彰台への切符を掴み取るのだった。
なお、ディスクブレーキの普及に伴いほとんどの欧州プロチームがリムブレーキからの移行を果たす中、イネオス・グレナディアーズは使用モデルがDOGMA Fに代替わりしてもなおリムブレーキを継続採用している。
265gという大幅な減量を施したDOGMA Fは、既にアッセンブル次第でUCIルール下限である6.8kgを下回る軽さをやすやすと達成する。従来から語られてきたことではあるものの、イネオスがリムブレーキに固執するのは、重量面ではなく、パンク時のホイール交換に要するタイムロスを限りなく減らすため。市販モデルのディスクブレーキ専用化が著しい現在において、ピナレロはフラッグシップモデルにリムブレーキをラインナップする数少ないトップブランドとなっている。これはイネオス・グレナディアーズはもちろんのこと、リムブレーキのフィーリングを愛する一般ユーザーにとっては特に大きな意味を持つと言えるだろう。
F8に始まる新世代DOGMAのデザインを色濃く受け継ぐ"F"。F12とFの外見上の違いはシェイプアップされたフォークや、より鋭さを増した各チューブのデザイン変更程度ではあるものの、その走りが飛躍したのは前章のインプレッションページからも分かる通り。軽量化や、空力改善だけに留まらない走行性能向上を大きな見た目上の変化無しに、それも2年という短スパンで成し遂げた事実はピナレロの優れた開発能力を浮き彫りにしている。
カラパスとDOGMA FがTOKYO2020金メダルを獲得
熱狂と狂騒のツール・ド・フランス最終日から1週間。「グレナディアーズ」たちの姿は、ここ日本にあった。
全ては東京2020オリンピックでメダルを獲るために。カラパスが、トーマスやアダム・イェーツ、ゲイガンハートが、ジャンニ・モスコンやフィリッポ・ガンナが、ミハウ・クフィアトコフスキが、パヴェル・シヴァコフが、リッチー・ポートが、アンドレイ・アマドールが、そしてローハン・デニスたちが「プルトニウムフラッシュ」カラーのシートチューブに日の丸を、各国の国旗をフロントフォークに入れた特別ペイントのDOGMA Fを駆り、東京都府中市の武蔵野の森公園から富士スピードウェイに至る距離234km/獲得標高4,865mという過酷なコースに挑んだ。
4年に一度の大舞台で、同じくDOGMA Fを駆るヨナタン・ナルバエスとたった二人でエクアドルチームを組んだカラパスが精彩を放った。三国峠を越え、優勝候補たちが激しくアタックを仕掛け合う隙を付き、残り25km地点から抜け出したカラパス。超高速に達する籠坂峠の下りで追走グループとの差を開き、さらに残り6kmで独走に持ち込み、フィニッシュ。脚力はもちろん勇気と判断力による勝利であり、あらゆる状況が組み込まれたコースにおいて、DOGMA Fもまた、そのピュアオールラウンダーたる性能をフルに輝かせたようだ。
2019年のジロ・デ・イタリア総合優勝者で、今シーズンのツール・ド・スイスで総合優勝、そして直前のツール・ド・フランスを総合3位で終えていたカラパスが金メダルを獲得。エクアドルの五輪金メダルは1996年アトランタ五輪の20km競歩で勝利したジェファーソン・ペレス以来2つめの快挙であり、また一つ歴史に名を残してみせた。
なお、「五輪覇者」となったカラパスは、これまでの金メダリストたちがそうだったように、パリオリンピックまでの3年間、五輪覇者を意味する金色を纏うことが許される。ピナレロは既にゴールドメタリックとブラックで塗装されているスペシャルDOGMA Fの画像をアップしており、その後すぐに組み上げられ、カラパスの手に渡った。カラパスは早速五輪後の初レースとなるブエルタ・ア・エスパーニャで黄金のDOGMA Fを使用中であり、今後の活躍にも期待したい。
この先も続く、DOGMAとイネオス・グレナディアーズの蜜月の仲
過酷な超級山岳の登りや、100km/hに達するダウンヒル、高速化する平坦ステージ、そしてありとあらゆる場面でアタックを仕掛けるための瞬発力。DOGMA Fはそのモットーである"The Art Of Balance"を体現するスーパーバイクとして、デビュー以降華々しい活躍を続けている。
ピナレロとイネオス・グレナディアーズは今年6月に向こう4年間、つまり2025年までのパートナーシップ延長を締結しており、チーム創設から数えて15年もの長期契約を結ぶこととなる。その発表の中で、デイブ・ブレイルスフォード代表は以下のようにコメントを綴っている。
「創業以来、ピナレロのバイクでレースをしてきましたが、それは常にレースと革新への共通の愛に根ざしたパートナーシップでした。ピナレロは私たちのスポーツの中でユニークな存在の企業です。ピナレロは自転車競技の伝統に深い敬意を払いつつ、テクノロジーとエンジニアリングの最先端であり続けたいという願望を持っています。このスポーツは長年にわたって大きく変化してきましたが、ファウスト氏とチームは10年以上にわたり、最高のバイク技術でチームをサポートし、私たちのレースの旅路の大きな部分を支えてくれています」。
ピナレロとイネオス・グレナディアーズの蜜月関係に終わりはなく、これからもDOGMAに乗ったグレナディアーズたちは世界のトップレースで戦い続ける。
提供:ピナレロジャパン
制作:シクロワイアード編集部
制作:シクロワイアード編集部