2020/06/17(水) - 12:24
ジップの持てるテクノロジーの粋を集め2016年に誕生したフラッグシップ「NSW」シリーズ。その中でも、特殊な波状リムを採用する454と858のクリンチャーモデルが新たにチューブレスレディ対応となって新登場。リム内幅も広がりトレンドに沿ったスペックを獲得している。
エアロダイナミクスに一日の長を持つZIPP(ジップ)の最高峰ホイールとして、2017年よりラインアップに加わった454 NSWと858 NSW。今シーズンからサポートを受けるモビスターも、454 NSWをメインのホイールとしてレースで使用している。見た目にもインパクトのある、他のホイールとは一線を画した独創的なリム形状によって、ラインアップ史上最高の空力性能を追求したモデルだ。
特徴的な波打つ「SawTooth」リムは、バイオミメティクス(生物模倣技術。生物の構造や機能、生産プロセスなどから着想を得る科学技術のこと)を取り入れ、ザトウクジラのヒレから着想を得たノコギリ形状を採用。「Hyperfoils」テクノロジーと名付けられた、最低部53mm、最高部58mmの高低差を持たせたリムハイトによって、優れた空力性能はもちろん横風の影響を受けにくいコントロール性も実現した。
Firecrestシリーズから続くリム表面のディンプル加工も、今作の特殊なリム形状に最適化されたものに。一般的な丸形ではなく六角形とし、かつフィン状に配置した「HexFin」ABLCディンプルがリム表面の空気の流れをコントロール。意図的に小さな乱流を生み出すことで、ホイールのスタビリティを阻害する大きな乱流を抑制しており、あらゆるヨー角においてエアロ効果の高い、より省エネルギーで効率的な速度維持を可能とする性能を獲得している。
また、リム表面のロゴをデカールではなくプリントとした「ImPress」も、NSWシリーズのみに採用されるテクノロジーだ。リム表面の余計な凹凸を抑えることでエアロ性能が阻害されないよう工夫している。ブランドロゴの刷新に合わせて、ZIPPの文字を大胆に2箇所配置したグラフィックへと変更されたこともトピックだ。
そして今回、クリンチャー仕様だった454/858 NSWがついにチューブレスレディ対応リムへとアップデート。インナーチューブがないことによる軽い転がり、低い空気圧による快適性とグリップなど、究極のエアロホイールにチューブレスのメリットが加わった。加えてリム内幅も19mmに広がり、よりワイドなタイヤとの親和性を高めている。
NSWシリーズ専用の「Cognition」ハブは、2枚の面ラチェット構造によって駆動時には優れたパワー伝達性を実現。ぺダリングを止めた際にラチェット機構を半解放し、ハブシェルとフリーボディ間の抵抗を低減してくれる「Axial Clutch」という独自のフリー構造も搭載している。
ディスク/リムの両モデルが継続してラインアップ。ディスクローターはセンターロック対応、XDRまたはスラム/シマノのフリー仕様で販売され、カンパニョーロは別売りでフリーボディが用意される。価格は前後セットで529,100円(税抜)だ。チューブレスレディ対応になった2021年モデルから生涯保証が適応され、事故や落車等で破損した場合でも同等製品への交換保証が受けられるようになっている。
454/858NSWシリーズ特有の波打った分厚いリムに、ギラつくいかついロゴ。新型の303シリーズが随分さっぱりしてしまっただけに、インパクト大の454 NSWを手に取ると「やっぱりジップはこうでなくちゃ」とさえ思う。バイクに取り付けてもその存在感は薄まることなく、ハイエンドホイールたる主張は歴代、いや市場随一と言えるだろう。
しかし、結論から言ってしまうと、そのキワモノ感漂う見た目とは裏腹に、454 NSWはとても上質で乗りやすいホイールだ。脚を跳ね返すゴチゴチ感もなければ、風に煽られることも少なく、コンプレッションホイールのような不安もない。キャラクター的にゼロ加速の鋭さこそないものの、ひとたび走り出せば伸びやかな加速感がずっと、本当にずっと続いていく。
前後セットで1,815gと重量級であるにも関わらず、かつて一度試したリムブレーキ版(1,525g)同様、軽い加速感を味わえたことがまず驚いた点。1,540gの303 Sよりも出だしが良いのはとても不思議な気分だ。
これはおそらく、自前の404 Firecrestと比較するとリム剛性が均一(404はリムサイド部分が若干たわむ)で、スポークもストレートプルからJベンドに変更されたことで"踏みしろ"が生まれた効果だろう。ジップのプロダクトマネージャーに質問したところ「スポークの変更は補修の利便性を考えて」という意外な答えだったが、シッティングでもダンシングでも、ケイデンスの高低を問わず、パワーを滑らかに伝えてくれる。
だからこそ中速〜高速域の巡行性はもちろん、あともうひと加速欲しい時に踏ん張りが効くのが454 NSW最大の利点だ。踏みやすいから苦しい場面で助けになるし、登りで勾配が変化しても脚にガツンとこない。例えば瞬間的な加速こそライトウェイトのような超軽量・高剛性ホイールに譲るものの、苦手な分野を挙げるとすればそのくらい。登りでも10km/hを下回るような場面でない限り十分に走ってくれる。
そんな扱いやすさの大きな要素となっているのがチューブレスタイヤと、ワイド化されたリムによるエアボリュームだ。
今回は303 Firecrestと同じく推奨タイヤであるジップのTangente Speed RT28 Tubeless(28c)で試乗したが、筆者にとっての適正空気圧は、同条件の303各種と同じく4.0から4.2bar。衝撃をスムーズにいなしてくれるから、リムとスポークの好バランスもあいまって車体の進む力を妨げないのだ。
振動軽減こそ良いホイールの条件と言われるが、454 NSWは改めてその言葉を思い起こさせてくれるだけの良さがある。クリンチャーに慣れている方だとうっかり7Barを入れたくなるけれど、新世代のジップホイールは常識を入れ替えて臨む必要がある。
454 NSWは、その見た目の先入観を覆す、伸びやかさと扱いやすさを兼ね備えたホイールだ。50万円オーバーのハイエンドホイール市場ではクセのあるホイールもままあるが、これならどんなユーザーにも、そしてどんなバイクにもマッチするはずだ。
454/858 NSWが待望のチューブレスレディ化
エアロダイナミクスに一日の長を持つZIPP(ジップ)の最高峰ホイールとして、2017年よりラインアップに加わった454 NSWと858 NSW。今シーズンからサポートを受けるモビスターも、454 NSWをメインのホイールとしてレースで使用している。見た目にもインパクトのある、他のホイールとは一線を画した独創的なリム形状によって、ラインアップ史上最高の空力性能を追求したモデルだ。
特徴的な波打つ「SawTooth」リムは、バイオミメティクス(生物模倣技術。生物の構造や機能、生産プロセスなどから着想を得る科学技術のこと)を取り入れ、ザトウクジラのヒレから着想を得たノコギリ形状を採用。「Hyperfoils」テクノロジーと名付けられた、最低部53mm、最高部58mmの高低差を持たせたリムハイトによって、優れた空力性能はもちろん横風の影響を受けにくいコントロール性も実現した。
Firecrestシリーズから続くリム表面のディンプル加工も、今作の特殊なリム形状に最適化されたものに。一般的な丸形ではなく六角形とし、かつフィン状に配置した「HexFin」ABLCディンプルがリム表面の空気の流れをコントロール。意図的に小さな乱流を生み出すことで、ホイールのスタビリティを阻害する大きな乱流を抑制しており、あらゆるヨー角においてエアロ効果の高い、より省エネルギーで効率的な速度維持を可能とする性能を獲得している。
また、リム表面のロゴをデカールではなくプリントとした「ImPress」も、NSWシリーズのみに採用されるテクノロジーだ。リム表面の余計な凹凸を抑えることでエアロ性能が阻害されないよう工夫している。ブランドロゴの刷新に合わせて、ZIPPの文字を大胆に2箇所配置したグラフィックへと変更されたこともトピックだ。
そして今回、クリンチャー仕様だった454/858 NSWがついにチューブレスレディ対応リムへとアップデート。インナーチューブがないことによる軽い転がり、低い空気圧による快適性とグリップなど、究極のエアロホイールにチューブレスのメリットが加わった。加えてリム内幅も19mmに広がり、よりワイドなタイヤとの親和性を高めている。
NSWシリーズ専用の「Cognition」ハブは、2枚の面ラチェット構造によって駆動時には優れたパワー伝達性を実現。ぺダリングを止めた際にラチェット機構を半解放し、ハブシェルとフリーボディ間の抵抗を低減してくれる「Axial Clutch」という独自のフリー構造も搭載している。
ディスク/リムの両モデルが継続してラインアップ。ディスクローターはセンターロック対応、XDRまたはスラム/シマノのフリー仕様で販売され、カンパニョーロは別売りでフリーボディが用意される。価格は前後セットで529,100円(税抜)だ。チューブレスレディ対応になった2021年モデルから生涯保証が適応され、事故や落車等で破損した場合でも同等製品への交換保証が受けられるようになっている。
454 NSWインプレッション
454/858NSWシリーズ特有の波打った分厚いリムに、ギラつくいかついロゴ。新型の303シリーズが随分さっぱりしてしまっただけに、インパクト大の454 NSWを手に取ると「やっぱりジップはこうでなくちゃ」とさえ思う。バイクに取り付けてもその存在感は薄まることなく、ハイエンドホイールたる主張は歴代、いや市場随一と言えるだろう。
しかし、結論から言ってしまうと、そのキワモノ感漂う見た目とは裏腹に、454 NSWはとても上質で乗りやすいホイールだ。脚を跳ね返すゴチゴチ感もなければ、風に煽られることも少なく、コンプレッションホイールのような不安もない。キャラクター的にゼロ加速の鋭さこそないものの、ひとたび走り出せば伸びやかな加速感がずっと、本当にずっと続いていく。
前後セットで1,815gと重量級であるにも関わらず、かつて一度試したリムブレーキ版(1,525g)同様、軽い加速感を味わえたことがまず驚いた点。1,540gの303 Sよりも出だしが良いのはとても不思議な気分だ。
これはおそらく、自前の404 Firecrestと比較するとリム剛性が均一(404はリムサイド部分が若干たわむ)で、スポークもストレートプルからJベンドに変更されたことで"踏みしろ"が生まれた効果だろう。ジップのプロダクトマネージャーに質問したところ「スポークの変更は補修の利便性を考えて」という意外な答えだったが、シッティングでもダンシングでも、ケイデンスの高低を問わず、パワーを滑らかに伝えてくれる。
だからこそ中速〜高速域の巡行性はもちろん、あともうひと加速欲しい時に踏ん張りが効くのが454 NSW最大の利点だ。踏みやすいから苦しい場面で助けになるし、登りで勾配が変化しても脚にガツンとこない。例えば瞬間的な加速こそライトウェイトのような超軽量・高剛性ホイールに譲るものの、苦手な分野を挙げるとすればそのくらい。登りでも10km/hを下回るような場面でない限り十分に走ってくれる。
そんな扱いやすさの大きな要素となっているのがチューブレスタイヤと、ワイド化されたリムによるエアボリュームだ。
今回は303 Firecrestと同じく推奨タイヤであるジップのTangente Speed RT28 Tubeless(28c)で試乗したが、筆者にとっての適正空気圧は、同条件の303各種と同じく4.0から4.2bar。衝撃をスムーズにいなしてくれるから、リムとスポークの好バランスもあいまって車体の進む力を妨げないのだ。
振動軽減こそ良いホイールの条件と言われるが、454 NSWは改めてその言葉を思い起こさせてくれるだけの良さがある。クリンチャーに慣れている方だとうっかり7Barを入れたくなるけれど、新世代のジップホイールは常識を入れ替えて臨む必要がある。
454 NSWは、その見た目の先入観を覆す、伸びやかさと扱いやすさを兼ね備えたホイールだ。50万円オーバーのハイエンドホイール市場ではクセのあるホイールもままあるが、これならどんなユーザーにも、そしてどんなバイクにもマッチするはずだ。
454 NSWスペック
リム形式 | クリンチャー/チューブレスレディ |
リムハイト | 53-58mm |
リム内幅 | 19mm |
重量 | 前後:1,815g、前:860g/後:955g(XDRボディ/テープなし) |
実測重量 | 前後:1,701g、前:797g/後:904g(シマノボディ/チューブレステープ/バルブ込み) |
テクノロジー | Impressグラフィック、Sawtoothリム、HexFin ABLCディンプル、Cognitionハブセット(センターロック仕様) |
税抜価格 | ペア:529,100円、前:238,600円/後290,500円 |
858 NSW Disc-Brakeスペック
リム形式 | クリンチャー/チューブレスレディ |
リムハイト | 77-82mm |
リム内幅 | 19mm |
重量 | 前後:1,773g、前:838g/後:935g |
テクノロジー | Impressグラフィック、HexFin ABLCディンプル、センターロック仕様 |
税抜価格 | ペア:580,900円、前:264,500円/後316,400円 |
858 NSW Rim-Brakeスペック
リム形式 | クリンチャー/チューブレスレディ |
リムハイト | 77-82mm |
リム内幅 | 19mm |
重量 | 前後:1,714g、前:770g/後:944g |
テクノロジー | Impressグラフィック、HexFin ABLCディンプル、センターロック仕様 |
税抜価格 | ペア:580,900円、前:264,500円/後316,400円 |
提供:インターマックス 制作:シクロワイアード編集部