2019/07/30(火) - 14:55
ツール・ド・フランスで活躍するシマノ・プロダクツに迫る本特集も最終回。フランス人選手の活躍で湧いたツールは、チームイネオスの新星エガン・ベルナルが総合首位と新人賞を獲得、ペテル・サガンがマイヨヴェールの袖に腕を通し幕を下ろした。本大会をシマノ・プロダクツと共に振り返ろう。
今回のツール・ド・フランスは油圧ディスクブレーキ搭載の自転車を使用する選手たちの活躍が目立つ。使用が正式に認められた2018年大会では、スプリンターたちが駆るエアロロードに搭載されている印象が強かった油圧ディスクブレーキ。2019年ではありとあらゆる脚質の選手が使用し始め、いよいよ本格的にレースの現場で浸透したと言っても良い大会となった。
油圧ディスクブレーキは様々な場面でアドバンテージを発揮し、選手たちのパフォーマンスを支えた。第3ステージの終盤3級山岳でひとり抜け出し、そのまま逃げ切ったジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)。彼が下りでアドバンテージを稼ぎ出せたのは、油圧ディスクブレーキによる安定した制動力も一因だ。もちろんこの時、彼がピレネー決戦を経てもマイヨジョーヌを着用していることを知るものは居ない。
そして、ミッチェルトン・スコットのサイモン・イェーツが油圧ディスクブレーキ搭載車で2回ステージ優勝を果たしている。今年のS.イェーツは双子の兄弟アダムのサポート役としての参加だったが、彼のようなグランツールレーサーが、油圧ディスクブレーキ搭載車で勝利を挙げたことは1つの大きなニュースだ。
マイヨヴェールを獲得したペテル・サガンと、第4ステージで優勝したエリア・ヴィヴィアーニは、昨年の解禁より使用を開始。今年ももちろん油圧ディスクブレーキ搭載車をチョイスしている。今年のツールを振り返るだけでも油圧ディスクブレーキがプロ選手の間で一般的な存在となったことがわかるだろう。
ここからはシマノのホイールに焦点を当てていく。現在プロレースで使用されているモデルは、主にDURA-ACEのC60とC40(共にチューブラー)、タイムトライアルではPROの3SpokeホイールとTeXtremeディスクホイールの出番となる。
DURA-ACEホイールは4年目のシーズンを迎え、その円熟した性能はプロの現場では誰もが知るところ。チューブラーモデルのラインアップがC40とC60という2種類のラインアップとなったR9100系。リム幅がワイド化を果たし、エアロダイナミクスを大幅に向上したという。同時にカーボンレイアップを9000系より見直すことで軽量化も実現し、ワイドリムに重量増も最小限に抑えられたことで、DURA-ACEホイールの総合的なパフォーマンスが強化されている。
エアロダイナミクス、剛性、重量を高いレベルで達成できたことで、シマノはDURA-ACEグレードのチューブラーホイールをC40とC60と洗練した2種類のラインアップに。もちろんリムブレーキとディスクブレーキ用の2つが揃えられている。
C40は前後ペア重量1,384gと軽量でありながら、37mmのリムハイトでエアロダイナミクスを追求。選手たちはアルプスやピレネーなど山岳ステージから、アップダウンの激しい丘陵ステージまでこのホイールで挑む。ミッチェルトン・スコットのサイモン・イェーツは、C40ディスクブレーキモデルで今大会第2週までに2勝を挙げている。
対してC60はエアロダイナミクスの効果を得たい平坦、タイムトライアルで使用されるモデル。60mmというディープリムながら前後ペア重量が1,496gと軽量に仕上げられているため、登りも含むコースで愛用している選手は多数。3級山岳が登場し、登りフィニッシュが設定されていた第3ステージで、ユンボ・ヴィズマの選手たちはC60をチョイスしていた。
C60をタイムトライアルで選択するのは主にサンウェブとミッチェルトン・スコットだ。多くのシマノグローバルサポートチームが後述するPROのホイールを使用している一方で、この2チームはDURA-ACEのC60ディスクブレーキモデルを前輪として採用。今大会の個人タイムトライアルでは、通常PROの3Spokeホイールを使用するチームイネオスのピットにC60を前輪に搭載したバイクも確認できた。
タイムトライアル用のホイールが用意されている中でロードレース用を選ぶのは、サンウェブ、ミッチェルトン・スコット、チームイネオスがシマノのエアロダイナミクスを信頼している表れだろう。そしてTT専用モデルとオールラウンドモデルを選択できるのはシマノの強みだろう。
PROのタイムトライアル用ホイールを使用するのはチームイネオスとユンボ・ヴィズマ、グルパマFDJの3チーム。前輪に装備される3Spokeホイールは空気を切り裂くような形状をしたプロペラのようなスポークが特徴のモデル。28mmワイドリムとしながらも765gという重量を達成しており、多少の登りがあるタイムトライアルであれば、3Spokeホイールが力を発揮してくれる。
後輪に使用されるTeXtremeディスクホイールは、非駆動側を「WIDE AERODYNAMIC AEROFOIL」と呼ぶ凸レンズ状のデザインとしたモデル。これによりシートステーとのクリアランスを最小限とし、よりスムーズなエアフローを実現している。3Spokeホイールとこのホイールの組み合わせは、TTTで常に好成績を収めるユンボ・ヴィズマとチームイネオスの定番。第2ステージでこの2チームが1-2を獲得したことも記憶に新しい。
リムブレーキモデル
ディスクブレーキモデル
リムブレーキモデル
ディスクブレーキモデル
ホイールの項でも取り上げたPROブランドもシマノを構成する要素だ。PROのコンポーネンツを採用しているのはボーラ・ハンスグローエ、ドゥクーニンク・クイックステップ、グルパマFDJ、サンウェブの4チーム。ハンドルやステム、シートポストやタイムトライアルで使用するエクステンションバー、バーテープなど製品展開は多岐にわたり、豊富なラインアップとシマノクオリティから選手から厚い信頼を得ている。
選手の要望に応えるためPROは選手供給用として1mm刻みで長さが異なるステムを用意。サイクルスポーツの主役である選手が適切なポジションを出せるようにプロダクトを揃えるのが、世界を代表するコンポーネンツメーカーの対応力の懐の深さだ。
そして、多くの選手が使用するモデルはVIBEステム。前面のV字が特徴的なクランプ部は、ボルトを後ろから入れるデザインを採用。コラム部分もインテグレーションデザインとなっており、エアロを意識した設計となっている。ハンドルに関してもコンパクトやアナトミック、シャローなど、豊富なラインアップを用意。選手のニーズに応える充実の製品展開となっている。
またシマノやPROとの結びつきが強いグルパマFDJはタイムトライアルバイクにミサイルEVO TTバーを使用。PRO製品を使用することで、高い強度と安全性を確保し、ポジション調整幅も広いのが特徴だ。
今年のツール・ド・フランスはジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)がすべての話題を掻っ攫ったと言っても過言ではない。フランス人が10日間以上マイヨジョーヌを着用し続け、第2休息日まで無事に到達した。ニームの街で一息ついたプロトンは、アルプスへ向けて再び走り出す。
第16ステージはニームを発着するスプリンターステージで、もちろんスプリント勝負でレースは決す。一方、総合勢は横風などによる集団分裂を避けることに神経を尖らせたが、この日は何も起こらず、結果として嵐の前の静けさを表すような一日となった。
翌17ステージはニーム郊外のポン・デュ・ガールから、アルプスの玄関口ギャップに向けて駒を進めるコース。比較的イージーなレイアウトだが、残り8.5km地点に待ち構えている3級山岳が、ピュアスプリンター達による猛追を阻むと予測された。そのため、逃げきれる確率が高いと見た選手達の形成したエスケープグループは、33名と大きな集団となった。
逃げ切るという意思の下、先頭集団が高速で序盤を駆け抜けた結果、残り100kmの時点で10分差が開き、実質的な逃げ切りが決定する。この33名の中で決定的な動きを見せたのは、ミッチェルトン・スコットのマッテオ・トレンティンだった。最後に現れる3級山岳の麓からアタックを繰り出したヨーロッパチャンピオンは、追走にキャッチされること無くギャップのフィニッシュラインにたどり着いた。
トレンティンが選択していた機材は、クライミングバイクにDURA-ACE C60ホイール、油圧ディスクブレーキシステムをアセンブルした仕様。3級山岳のヒルクライムとその後の下りを意識したこの機材選択が見事にハマり、山頂までに稼いだ30秒のタイムギャップを維持し続けると言う、アグレッシブなダウンヒルを可能にしたのだろう。
第18ステージに入ると、いよいよアルプスの決戦が幕を開ける。アラフィリップの活躍を願うフランス国民が集まっているであろう超級山岳イゾアール峠、ガリビエ峠が登場。この日のポイントはガリビエ峠から約19kmのダウンヒルを経てフィニッシュとなること。卓越した登坂能力とダウンヒル能力が求められる過酷な1日だ。
この日のステージ優勝は33名のエスケープグループから誕生。チームイネオス、ユンボ・ヴィズマ、ドゥクーニンク・クイックステップ、グルパマFDJの思惑が交差するメイン集団では、チームの総力を挙げてライバルたちを振い落す攻防が繰り広げられる。ガリビエ峠ではチームイネオスが先頭に立ち、ハイペースで集団を牽引。一人、また一人と集団からこぼれ落ちていく選手がいる中、総合5位につけていたエガン・ベルナル(チームイネオス)が遂にアタック。あっという間に40秒のタイム差を生み出し、単独でガリビエ峠を通過した。
一方、取り残された集団からはゲラント・トーマス(チームイネオス)もアタック。ティボー・ピノ(グルパマFDJ)やステフェン・クライスヴァイク(ユンボ・ヴィズマ)らにキャッチされ不発に終わるも、アラフィリップが脱落。アラフィリップは、マイヨジョーヌを失う危機となるものの、油圧ディスクブレーキのアドバンテージを最大限に活かした果敢なダウンヒルでライバル達に追いつくことに成功し、無事フィニッシュ。マイヨジョーヌを巡る争いは翌日に持ち越された。
第19ステージ、今大会で最高標高地点のイズラン峠を越えていくこの日。突如降り出した雹が路面を多い、豪雨が土砂崩れを起こし、レースは途中で中止に。イズラン峠で単独アタックを成功させたベルナルがマイヨジョーヌを獲得。登りでライバルたちに遅れを取っていたアラフィリップは、前日に見せたアグレッシブなダウンヒルでタイム差を詰めていたが、イズラン峠でのタイム差が総合成績に反映されることとなり、マイヨジョーヌを失う。アラフィリップが総合首位を守ったのは14日間だった。
悪天候の影響を受け第20ステージは距離59km、超級山岳のバル・トランスを登ってフィニッシュという短縮コースで行われることに。この日の逃げに乗ったのは、総合首位を脅かさない逃げ切り狙いの選手ばかり。総合リーダー擁するチームイネオスはマイヨジョーヌを維持することに注力したため、区間優勝は序盤の逃げから生まれることとなった。ベルナルは区間4位に入り、マイヨジョーヌをほぼ手中に収めた。
そしてツール最終日、黄色のワンポイントを入れたチームイネオスのメンバーらと共にパリ・シャンゼリゼに凱旋したベルナル。レースを危なげなく走りきり、偉大な先輩コロンビアンライダーが数多いる中で、母国に初めてマイヨジョーヌをもたらすことに成功した。さらには戦後のツール史上最年少での総合優勝という記録も打ち立て、サイクルロードレースの新たな風として存在感を示した。
マイヨヴェールはスプリントフィニッシュのステージで常に上位に付けていたペテル・サガンの手に。サガンはこれで7回目のポイント賞を獲得。3週間という長丁場、かつ過酷なコンディションのなかで安定した成績を何年も同じ様に残すことができるのは、世界最高峰の選手であることの証明だ。
ジュリアン・アラフィリップの総合敢闘賞は誰も文句のつけようが無いだろう。フランスのみならず全世界が彼の活躍に注目し、新たなヒーローの誕生を見守った。今年のツール・ド・フランスは、ベルナルやアラフィリップのような注目の新星が輝く大会となった。
シマノグローバルサポートチームは、マイヨジョーヌとマイヨブラン、マイヨヴェールを獲得。13ステージでDURA-ACE使用選手が勝利するという実績を挙げ、そのうち7勝が油圧ディスクブレーキ使用選手によるものだった。油圧ディスクブレーキのパフォーマンスは、世界最高峰の舞台における選手達の活躍により証明されたことは間違いない。この後もブエルタ・ア・エスパーニャ、世界選手権と続くロードシーズン。そして来年のツール・ド・フランス、東京五輪と、シマノの戦いはこれからも続く。
世界最高峰の舞台で活躍したDURA-ACE 油圧ディスクブレーキ
今回のツール・ド・フランスは油圧ディスクブレーキ搭載の自転車を使用する選手たちの活躍が目立つ。使用が正式に認められた2018年大会では、スプリンターたちが駆るエアロロードに搭載されている印象が強かった油圧ディスクブレーキ。2019年ではありとあらゆる脚質の選手が使用し始め、いよいよ本格的にレースの現場で浸透したと言っても良い大会となった。
油圧ディスクブレーキは様々な場面でアドバンテージを発揮し、選手たちのパフォーマンスを支えた。第3ステージの終盤3級山岳でひとり抜け出し、そのまま逃げ切ったジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)。彼が下りでアドバンテージを稼ぎ出せたのは、油圧ディスクブレーキによる安定した制動力も一因だ。もちろんこの時、彼がピレネー決戦を経てもマイヨジョーヌを着用していることを知るものは居ない。
そして、ミッチェルトン・スコットのサイモン・イェーツが油圧ディスクブレーキ搭載車で2回ステージ優勝を果たしている。今年のS.イェーツは双子の兄弟アダムのサポート役としての参加だったが、彼のようなグランツールレーサーが、油圧ディスクブレーキ搭載車で勝利を挙げたことは1つの大きなニュースだ。
マイヨヴェールを獲得したペテル・サガンと、第4ステージで優勝したエリア・ヴィヴィアーニは、昨年の解禁より使用を開始。今年ももちろん油圧ディスクブレーキ搭載車をチョイスしている。今年のツールを振り返るだけでも油圧ディスクブレーキがプロ選手の間で一般的な存在となったことがわかるだろう。
エアロダイナミクスと軽量性から走りを支えるDURA-ACEとPROホイール
ここからはシマノのホイールに焦点を当てていく。現在プロレースで使用されているモデルは、主にDURA-ACEのC60とC40(共にチューブラー)、タイムトライアルではPROの3SpokeホイールとTeXtremeディスクホイールの出番となる。
DURA-ACEホイールは4年目のシーズンを迎え、その円熟した性能はプロの現場では誰もが知るところ。チューブラーモデルのラインアップがC40とC60という2種類のラインアップとなったR9100系。リム幅がワイド化を果たし、エアロダイナミクスを大幅に向上したという。同時にカーボンレイアップを9000系より見直すことで軽量化も実現し、ワイドリムに重量増も最小限に抑えられたことで、DURA-ACEホイールの総合的なパフォーマンスが強化されている。
エアロダイナミクス、剛性、重量を高いレベルで達成できたことで、シマノはDURA-ACEグレードのチューブラーホイールをC40とC60と洗練した2種類のラインアップに。もちろんリムブレーキとディスクブレーキ用の2つが揃えられている。
C40は前後ペア重量1,384gと軽量でありながら、37mmのリムハイトでエアロダイナミクスを追求。選手たちはアルプスやピレネーなど山岳ステージから、アップダウンの激しい丘陵ステージまでこのホイールで挑む。ミッチェルトン・スコットのサイモン・イェーツは、C40ディスクブレーキモデルで今大会第2週までに2勝を挙げている。
対してC60はエアロダイナミクスの効果を得たい平坦、タイムトライアルで使用されるモデル。60mmというディープリムながら前後ペア重量が1,496gと軽量に仕上げられているため、登りも含むコースで愛用している選手は多数。3級山岳が登場し、登りフィニッシュが設定されていた第3ステージで、ユンボ・ヴィズマの選手たちはC60をチョイスしていた。
C60をタイムトライアルで選択するのは主にサンウェブとミッチェルトン・スコットだ。多くのシマノグローバルサポートチームが後述するPROのホイールを使用している一方で、この2チームはDURA-ACEのC60ディスクブレーキモデルを前輪として採用。今大会の個人タイムトライアルでは、通常PROの3Spokeホイールを使用するチームイネオスのピットにC60を前輪に搭載したバイクも確認できた。
タイムトライアル用のホイールが用意されている中でロードレース用を選ぶのは、サンウェブ、ミッチェルトン・スコット、チームイネオスがシマノのエアロダイナミクスを信頼している表れだろう。そしてTT専用モデルとオールラウンドモデルを選択できるのはシマノの強みだろう。
PROのタイムトライアル用ホイールを使用するのはチームイネオスとユンボ・ヴィズマ、グルパマFDJの3チーム。前輪に装備される3Spokeホイールは空気を切り裂くような形状をしたプロペラのようなスポークが特徴のモデル。28mmワイドリムとしながらも765gという重量を達成しており、多少の登りがあるタイムトライアルであれば、3Spokeホイールが力を発揮してくれる。
後輪に使用されるTeXtremeディスクホイールは、非駆動側を「WIDE AERODYNAMIC AEROFOIL」と呼ぶ凸レンズ状のデザインとしたモデル。これによりシートステーとのクリアランスを最小限とし、よりスムーズなエアフローを実現している。3Spokeホイールとこのホイールの組み合わせは、TTTで常に好成績を収めるユンボ・ヴィズマとチームイネオスの定番。第2ステージでこの2チームが1-2を獲得したことも記憶に新しい。
ツールで戦うシマノ&PRO ホイールラインアップ
WH-R9100-C40 チューブラー
リムブレーキモデル
仕様 | チューブラー、2:1スポークシステム |
重量 | 前後ペア1,384g |
価格 | ¥318,423(税抜) |
ディスクブレーキモデル
仕様 | チューブラー、2:1スポークシステム、ロードE-THRU 12mm |
重量 | フロント:609g、リア:763g |
価格 | ¥149,428(税抜、フロント)、¥174,908(税抜、リア) |
WH-R9100-C60 チューブラー
リムブレーキモデル
仕様 | チューブラー、2:1スポークシステム |
重量 | 666g(フロント)、830g(リア) |
価格 | ¥148,484(税抜、フロント)、¥174,300(税抜、リア) |
ディスクブレーキモデル
仕様 | チューブラー、2:1スポークシステム、ロードE-THRU 12mm |
重量 | フロント:678g、リア:829g |
価格 | ¥151,035(税抜、フロント)、¥177,017(税抜、リア) |
PROコンポーネンツ 選手のニーズに応える細かいラインアップ
ホイールの項でも取り上げたPROブランドもシマノを構成する要素だ。PROのコンポーネンツを採用しているのはボーラ・ハンスグローエ、ドゥクーニンク・クイックステップ、グルパマFDJ、サンウェブの4チーム。ハンドルやステム、シートポストやタイムトライアルで使用するエクステンションバー、バーテープなど製品展開は多岐にわたり、豊富なラインアップとシマノクオリティから選手から厚い信頼を得ている。
選手の要望に応えるためPROは選手供給用として1mm刻みで長さが異なるステムを用意。サイクルスポーツの主役である選手が適切なポジションを出せるようにプロダクトを揃えるのが、世界を代表するコンポーネンツメーカーの対応力の懐の深さだ。
そして、多くの選手が使用するモデルはVIBEステム。前面のV字が特徴的なクランプ部は、ボルトを後ろから入れるデザインを採用。コラム部分もインテグレーションデザインとなっており、エアロを意識した設計となっている。ハンドルに関してもコンパクトやアナトミック、シャローなど、豊富なラインアップを用意。選手のニーズに応える充実の製品展開となっている。
またシマノやPROとの結びつきが強いグルパマFDJはタイムトライアルバイクにミサイルEVO TTバーを使用。PRO製品を使用することで、高い強度と安全性を確保し、ポジション調整幅も広いのが特徴だ。
PRO VIBEカーボンハンドルシリーズ
素材 | カーボンT800 | |
クランプ径 | 31.8mm | |
ラインアップ | エアロコンパクト | 380mm、400mm、420mm |
アナトミック | 400mm、420mm | |
コンパクト | 400mm、420mm | |
重量 | 245g~(エアロコンパクト)230g~(アナトミック、コンパクト) | |
税抜価格 | 42,000円(エアロコンパクト)、40,000円(アナトミック、コンパクト) |
PRO VIBE ステム
素材 | Al-7075 |
アングル | -10°、-17° |
コラムサイズ | 1-1/8、1-1/4 |
長さ | 80~130mm(1-1/4サイズは120mmまで) |
クランプ径 | 31.8mm |
重量 | 135g(100mm) |
価格 | 13,000円(税抜) |
100周年マイヨジョーヌを賭けた闘いはクライマックスへ 激闘の第3週をプレイバック
今年のツール・ド・フランスはジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)がすべての話題を掻っ攫ったと言っても過言ではない。フランス人が10日間以上マイヨジョーヌを着用し続け、第2休息日まで無事に到達した。ニームの街で一息ついたプロトンは、アルプスへ向けて再び走り出す。
第16ステージはニームを発着するスプリンターステージで、もちろんスプリント勝負でレースは決す。一方、総合勢は横風などによる集団分裂を避けることに神経を尖らせたが、この日は何も起こらず、結果として嵐の前の静けさを表すような一日となった。
翌17ステージはニーム郊外のポン・デュ・ガールから、アルプスの玄関口ギャップに向けて駒を進めるコース。比較的イージーなレイアウトだが、残り8.5km地点に待ち構えている3級山岳が、ピュアスプリンター達による猛追を阻むと予測された。そのため、逃げきれる確率が高いと見た選手達の形成したエスケープグループは、33名と大きな集団となった。
逃げ切るという意思の下、先頭集団が高速で序盤を駆け抜けた結果、残り100kmの時点で10分差が開き、実質的な逃げ切りが決定する。この33名の中で決定的な動きを見せたのは、ミッチェルトン・スコットのマッテオ・トレンティンだった。最後に現れる3級山岳の麓からアタックを繰り出したヨーロッパチャンピオンは、追走にキャッチされること無くギャップのフィニッシュラインにたどり着いた。
トレンティンが選択していた機材は、クライミングバイクにDURA-ACE C60ホイール、油圧ディスクブレーキシステムをアセンブルした仕様。3級山岳のヒルクライムとその後の下りを意識したこの機材選択が見事にハマり、山頂までに稼いだ30秒のタイムギャップを維持し続けると言う、アグレッシブなダウンヒルを可能にしたのだろう。
第18ステージに入ると、いよいよアルプスの決戦が幕を開ける。アラフィリップの活躍を願うフランス国民が集まっているであろう超級山岳イゾアール峠、ガリビエ峠が登場。この日のポイントはガリビエ峠から約19kmのダウンヒルを経てフィニッシュとなること。卓越した登坂能力とダウンヒル能力が求められる過酷な1日だ。
この日のステージ優勝は33名のエスケープグループから誕生。チームイネオス、ユンボ・ヴィズマ、ドゥクーニンク・クイックステップ、グルパマFDJの思惑が交差するメイン集団では、チームの総力を挙げてライバルたちを振い落す攻防が繰り広げられる。ガリビエ峠ではチームイネオスが先頭に立ち、ハイペースで集団を牽引。一人、また一人と集団からこぼれ落ちていく選手がいる中、総合5位につけていたエガン・ベルナル(チームイネオス)が遂にアタック。あっという間に40秒のタイム差を生み出し、単独でガリビエ峠を通過した。
一方、取り残された集団からはゲラント・トーマス(チームイネオス)もアタック。ティボー・ピノ(グルパマFDJ)やステフェン・クライスヴァイク(ユンボ・ヴィズマ)らにキャッチされ不発に終わるも、アラフィリップが脱落。アラフィリップは、マイヨジョーヌを失う危機となるものの、油圧ディスクブレーキのアドバンテージを最大限に活かした果敢なダウンヒルでライバル達に追いつくことに成功し、無事フィニッシュ。マイヨジョーヌを巡る争いは翌日に持ち越された。
第19ステージ、今大会で最高標高地点のイズラン峠を越えていくこの日。突如降り出した雹が路面を多い、豪雨が土砂崩れを起こし、レースは途中で中止に。イズラン峠で単独アタックを成功させたベルナルがマイヨジョーヌを獲得。登りでライバルたちに遅れを取っていたアラフィリップは、前日に見せたアグレッシブなダウンヒルでタイム差を詰めていたが、イズラン峠でのタイム差が総合成績に反映されることとなり、マイヨジョーヌを失う。アラフィリップが総合首位を守ったのは14日間だった。
悪天候の影響を受け第20ステージは距離59km、超級山岳のバル・トランスを登ってフィニッシュという短縮コースで行われることに。この日の逃げに乗ったのは、総合首位を脅かさない逃げ切り狙いの選手ばかり。総合リーダー擁するチームイネオスはマイヨジョーヌを維持することに注力したため、区間優勝は序盤の逃げから生まれることとなった。ベルナルは区間4位に入り、マイヨジョーヌをほぼ手中に収めた。
そしてツール最終日、黄色のワンポイントを入れたチームイネオスのメンバーらと共にパリ・シャンゼリゼに凱旋したベルナル。レースを危なげなく走りきり、偉大な先輩コロンビアンライダーが数多いる中で、母国に初めてマイヨジョーヌをもたらすことに成功した。さらには戦後のツール史上最年少での総合優勝という記録も打ち立て、サイクルロードレースの新たな風として存在感を示した。
マイヨヴェールはスプリントフィニッシュのステージで常に上位に付けていたペテル・サガンの手に。サガンはこれで7回目のポイント賞を獲得。3週間という長丁場、かつ過酷なコンディションのなかで安定した成績を何年も同じ様に残すことができるのは、世界最高峰の選手であることの証明だ。
ジュリアン・アラフィリップの総合敢闘賞は誰も文句のつけようが無いだろう。フランスのみならず全世界が彼の活躍に注目し、新たなヒーローの誕生を見守った。今年のツール・ド・フランスは、ベルナルやアラフィリップのような注目の新星が輝く大会となった。
シマノグローバルサポートチームは、マイヨジョーヌとマイヨブラン、マイヨヴェールを獲得。13ステージでDURA-ACE使用選手が勝利するという実績を挙げ、そのうち7勝が油圧ディスクブレーキ使用選手によるものだった。油圧ディスクブレーキのパフォーマンスは、世界最高峰の舞台における選手達の活躍により証明されたことは間違いない。この後もブエルタ・ア・エスパーニャ、世界選手権と続くロードシーズン。そして来年のツール・ド・フランス、東京五輪と、シマノの戦いはこれからも続く。
提供:シマノ 企画/制作:シクロワイアード