2019/07/24(水) - 14:10
開幕から快進撃を続けるシマノ・グローバルサポートチーム。今ページではシマノが誇るフラッグシップS-PHYREシューズと、今年で創業100周年を迎えるヘルメットブランドのレイザーをピックアップして紹介しよう。今年はユンボ・ヴィズマとサンウェブがその2つを正式採用し、その他の多くの選手も好んでS-PHYREシューズを選んでいる。
ツールも第2週が終了し、残すところ後5ステージとなった。今年はシマノ・グローバルサポートチームが大躍進。今年はジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)とオランダ籍プロチームのユンボ・ヴィズマの活躍が目覚ましい。この活躍は選手自身のツール・ド・フランスに向けてトレーニングを積み重ねてきた結果であり、そして写真判定に持ち込まれてるような僅差を争う局面でこそ、アドバンテージとなる最先端の機材開発が好影響を与えていることに他ならない。
サイクルロードレースにおいて、唯一推進力を生みだすのはエンジンたるライダー自身。エアロを追求したフレームや極限の滑らかさを実現したコンポーネンツは、様々な抵抗を低減しこそすれ前へ進む力を生み出すわけではない。であればこそ、気温や風向といった外的環境の変化からライダー自身を守り、安定したパフォーマンスを発揮するために開発されたライダーズエキップメントの重要性は論を俟たないだろう。
というわけで、本章ではライダーズエキップメントにフォーカスを当てていこう。ユンボ・ヴィズマの選手らはベルジャン・ヘルメットブランド「レイザー」を採用し、シマノのフラッグシップS-PHYREシューズ「RC9」を着用している。このコンビネーションは、マイケル・マシューズ擁するサンウェブも同様。S-PHYREシューズに関しては、サポート外であっても好んで選んでいる選手がプロトンの中には多数存在している。
特にツール・ド・フランスのような最高峰のレースで求められるのは、プロテクション性能と通気性という基本性能に加えてエアロダイナミクスまで備えたヘルメット。これらの性能を各モデルの想定シチュエーションに合わせて設計するためにはブランドに知見と経験、R&D体制が必要となる。それらを併せ持つのが2019年で創業100周年を迎えるベルジャン・ヘルメットブランドのレイザーだ。
レイザーは、1980年代に自転車用ヘルメットの開発をスタートさせてからはプロレースと共にあり、常に厳しい競争にさらされるレースの現場で性能を磨いてきた。スタッフの多くはR&Dに従事しておりレース、シティコミューティングなど様々な場面に適したヘルメットを作り出している。レイザーヘルメットのブランドストーリーはこちらを御覧いただきたい。
現在ユンボ・ヴィズマとサンウェブが着用しているヘルメットは、ロードレース用エアロモデル「Bullet 2.0」とオールラウンドモデル「Z1」、タイムトライアル用「VICTOR」の3種類。今年のツール・ド・フランスでは既にこの3種類のヘルメットを着用している。これからのステージでは、選手がどのヘルメットを着用しているか確認してみても面白いだろう。
特にユンボ・ヴィズマはBullet 2.0のAir Slideに選手のファーストネームを入れており、選手を識別しやすくしている。Air SlideとはBullet 2.0の中央部に設けられたスライド式カバーのこと。このカバーを操作することで乗車中でも通気口の有無を変更することができるというもの。レース序盤はスライドをあげ通気口を出現させ、スプリント時は通気口を閉じることでヘルメットが備えるエアロダイナミクスを引き出すといった使用方法が可能となる。
Bullet 2.0の販売モデルのAir Slideは前後2パーツで構成、それぞれにタイプが異なる2種類、計4個のパーツが付属されている。額側のメインパーツはスライド操作と共に開閉するシャッターつきモデルと、シャッターのないパーツ。後頭部側は通気口の有無が異なる2種類。ツール・ド・フランスを走る選手の多くは、前頭部側にシャッターなしのパネルを、後頭部側に通気口が設けられたパーツをチョイスしているようだ。サンウェブのセース・ボル、ニキアス・アルントはシャッター付きのパネルを使用。Bullet 2.0はコースや季節、選手の好みで使い分けできることが美点だ。
Bullet 2.0はスプリントの最終盤での仕事を任された選手が着用しているケースが多い。ユンボ・ヴィズマがスプリントステージを狙う時は、ディラン・フルーネウェーヘン、マイク・テウニッセン、ワウト・ファンアールトがBullet 2.0をチョイスし、集団を牽引する役割を担うトニ・マルティンはZ1をチョイスしているようだ。サンウェブも同じ様にエースであるマイケル・マシューズと先述した2名がBullet 2.0を選択している。
スプリンターたちがロードレース用エアロヘルメットを着用しているのは、エアロダイナミクスのアドバンテージがオールラウンドモデルよりも大きいという証明だ。写真判定に持ち込まれるスプリントが多い今ツールのような激戦では、エアロダイナミクスに優れるヘルメットは勝利への鍵となるだろう。
Z1はオールラウンド用として非常に多くの選手達が選ぶモデルだ。多くのベンチレーションホールが設けられたルックスから伝わるように通気性/快適性に優れるヘルメットであり、真夏のフランスで行われるツールではこのモデルを選ぶ選手が多くなるもの頷ける。
一方で、Z1はオールラウンド用ヘルメットながらもエアロダイナミクスを考慮していることも特徴。Z1がデビューした2014年当時において、エッジが立ったデザインのヘルメットが多いなか、レイザーは丸みを帯びた帽体デザインをいち早く取り入れたブランドでもある。現在ほぼ全てのヘルメットがエアロを考慮した形状であることを考えると、レイザーのR&D能力と先見の明が光っていることがわかるだろう。
またZ1はMサイズで190gと非常に軽量性に優れるモデルであることもポイントだ。ステフェン・クライスヴァイクのように総合上位を狙う選手は、ツールに照準を合わせ体を絞り込むと共に、機材も軽量なものをチョイスする。車体に関しては6.8kgという重量規制がある一方、身に着けるものには重量規制は設けられていない。その状況においてアンダー200gのヘルメットは大きなアドバンテージとなるはずだ。
そんなZ1とアジアンフィットモデルのBullet 2.0 AFにユンボ・ヴィズマとサンウェブカラーの限定モデルが発売されている。Bullet 2.0に関してはヨーロッパモデルではなく、日本国内で流通しているアジアンフィットモデルとしてラインアップされている。限定製品ながら日本人にマッチするフィット感で着用できるのは嬉しいニュースだろう。
プロトンの中でも存在感を放つ黄色のギアに身を包んだユンボ・ヴィズマ、赤色から黒色に変化するグラデーションでアパレルなどを彩るサンウェブ。現在ツール・ド・フランスで活躍するチームロゴのステッカーが同封された特別仕様のため、カラーが気に入った方だけではなくチームのファンにもオススメのヘルメットだ。
第2ステージのチームTTで勝利したユンボ・ヴィズマ、そしてサンウェブが着用していたのはVICTORというモデル。ライダーが顔を動かしても空気抵抗を増大させないショートテールを採用していることが特徴だ。加えて前方投影面積が小さくなるようにデザインした前面、頭頂部付近の段差、耳を覆うまでのシェルによって得たエアロダイナミクスのアドバンテージが、ユンボ・ヴィズマに最速チームという名声をもたらした。
VICTORは非常に特徴的なバイザー形状も目を引くポイント。これは深い前傾姿勢を取ったときでもクリアな視界を得るためのものであり、トニ・マルティンのようなTT巧者の走りをサポートする。またバイザーとシェルの間に空間が生まれる仕組みも備えられているため、バイザー内側にも空気を流すことが可能。額部分に設けられたベンチレーションホールを機能させたい時や、バイザーが曇ってしまうようなシチュエーションにも対応してくれる。
シマノはフラッグシップS-PHYREシリーズのシューズ「RC9」でも、選手のパフォーマンス発揮に一役買っている。シマノのシューズは長らくプロ選手から愛用されてきた歴史を持ち、現在もユンボ・ヴィズマやサンウェブのように供給しているチームだけではなく、シマノ・グローバルサポートチーム内外の選手個人が選択しているケースも非常に多い。
ユンボ・ヴィズマと共同開発を行ったというフラッグシップシューズは、ソール剛性をラインアップ中最も高く調整するとともに、足を引き上げる際に発生する負の力"ブレーキングロス"を低減するダイナラストを採用。ペダリングパワーを効率よくコンポーネンツに伝えるシューズを実現しており、スプリンターやオールラウンダーなど脚質に関係なくパフォーマンスを支えている。
高い快適性やフィット感を実現するために、シマノはシューズの内側から大きなパターンで甲全体を包むサラウンドアッパーを採用。素材にはTEIJINマイクロファイバー合成皮革を採用し、細かいベンチレーションホールを設けることで暑い夏や湿度の高いコンディションでの快適性を確保した。
また、ユンボ・ヴィズマはS-PHYREのアイウェアを引き続き採用する。しっかりした剛性を持つハーフリムフレームのS-PHYRE Xと軽量なリムレスタイプのS-PHYRE Rという2種類が誕生した。選手からのフィードバックを受け、視野角の広い大きめのレンズを採用しているのが大きな特徴だ。
世界最高峰の舞台で勝利を掴み取るためには、ライダー、バイク、コンポーネンツ、選手が身につけるエキップメント全てにハイレベルな性能が求められる。シマノはDURA-ACEコンポーネンツで強力な存在感を示しているのはご存知の通り。さらに本章で紹介したようにレイザー、S-PHYREなどエキップメントでもシマノはプレゼンスを高めているため、選手たちの頭部と足下からも目が離せない。
10日間休むこと無くレースが続いた第1週が終了し、アルビの街で一息ついたツール・ド・フランスのプロトンはピレネーに向けて南下を開始した。前半戦は第6ステージのラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユで総合勢がライバルの様子をチェック、今年のツール・ド・フランスの行方を占った。しかし、休息日前日にチームイネオスが横風区間を活かし集団を破壊。ライバル勢を蹴落とすことに成功し、チームとして5連勝への駒を一歩進めた。
33℃まで上がるほどの暑さに見舞われた第11ステージはスプリンター達のための平坦ステージ。ひまわり畑の脇をプロトンは駆け抜け、フランス第5の都市トゥールーズでの大集団スプリントで勝負は決した。今年好調さが伝わってくるディラン・フルーネウェーヘンは惜しくも2位。勝つ時もあれば負ける時もあるのが勝負事。この日も写真判定となるほどの熱戦が第2週に入っても続けられている。今年のツールはスプリントが面白い。
第12ステージからいよいよピレネー決戦が始まる。ピレネーの玄関口トゥールーズを出発したプロトンから、マシューズ、フルーネウェーヘン、サガンらスプリント勢を含む40名のエスケープグループが生まれる展開に。1級山岳が2連続で現れるこの日のルートはスプリンターたちには厳しく、レース後半の主導権は軽量なアタッカーやクライマーたちの手に渡った。
フィニッシュまで30.5kmを残した1級山岳ウルケット=ダンシザンの頂上はサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)とグレゴール・ミュールベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)の2名で通過することに。ちなみにイェーツとミュールベルガーともに油圧ディスクブレーキ使用者。今年のツールは油圧ディスクブレーキバイクが活躍する場面が多く、その優位性はもはや自明のもの。レースはこの2名に追いついた選手を加えた3名のスプリントとなり、イェーツが先着。ミッチェルトン・スコットに2勝目をもたらした。
個人タイムトライアルで争われた第13ステージではフランスのサイクルロードレースファンが熱狂。フランス人選手による活躍が遠のいていたツールのタイムトライアルで、下馬評を覆しジュリアン・アラフィリップが優勝。マイヨジョーヌの誕生日にフランス人がマイヨジョーヌを守り抜いたのだ。2位にはPROの3SpokeホイールとTeXtremeカーボンディスクホイールを装備したチームイネオスのゲラント・トーマスが入っている。
本格的なマイヨジョーヌ争いがスタートしたのは、続く第14ステージ。最終局面で積極的に動いたのは、総合で後れを取っていたティボー・ピノ率いるグルパマFDJと、ステフェン・クライスヴァイクの総合成績を押し上げたいユンボ・ヴィズマだった。組織的なペースアップを経て最終的に残ったのは、今年のツールでマイヨジョーヌと総合表彰台を獲得が目されていた精鋭6名。この日、最も強かったのはピノ。ライバル勢を全員振るい落とす強力なアタックを披露し、トゥールマレー峠を先頭で登りきった。そして、アラフィリップがマイヨジョーヌを守るだけではなく、ライバルに差をつける結果に。
機材に注目してみるとピノはリムブレーキ、2位のアラフィリップは一貫して油圧ディスクブレーキ、3位のクライスヴァイクはリムブレーキ、4位のブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ)は油圧ディスクブレーキ。これまで山岳ステージの上位陣はリムブレーキが主流だったことを考えると、油圧ディスクブレーキが半数を占め、機材面においてもツールに変化が起こっている。
翌15ステージでは、強力なクライマー達が集結したエスケープグループが序盤に発生し、そこに入ったサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)が逃げ切り勝利。激しい攻防が繰り広げられたメイン集団から逃げ切れたのはイェーツ1人だった。イェーツが使用していた機材はDURA-ACE R9170 油圧ディスクブレーキ。天候の悪いダウンヒルでディスクブレーキの安定した制動力はイェーツに味方したはずだ。
ピレネー最終日のこの日、マイヨジョーヌ争いにも動きが生じた。アラフィリップは総合首位を維持することができたものの、他の総合有力勢に対しタイムを失ってしまう。2位のゲラント・トーマスに対し、タイム差は1分半まで縮小。そして、ピノが再び躍進した。ライバル達を振るい落とす事に成功し、総合4位まで返り咲く。マイヨジョーヌを守りたいアラフィリップと、彼に肉薄するゲラント・トーマス、クライスヴァイク、ピノ、ベルナルらがそれぞれの思惑を持ち、ツール最終週に挑む。
選手の活躍を支えるレイザーヘルメットとS-PHYREシューズ
ツールも第2週が終了し、残すところ後5ステージとなった。今年はシマノ・グローバルサポートチームが大躍進。今年はジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)とオランダ籍プロチームのユンボ・ヴィズマの活躍が目覚ましい。この活躍は選手自身のツール・ド・フランスに向けてトレーニングを積み重ねてきた結果であり、そして写真判定に持ち込まれてるような僅差を争う局面でこそ、アドバンテージとなる最先端の機材開発が好影響を与えていることに他ならない。
サイクルロードレースにおいて、唯一推進力を生みだすのはエンジンたるライダー自身。エアロを追求したフレームや極限の滑らかさを実現したコンポーネンツは、様々な抵抗を低減しこそすれ前へ進む力を生み出すわけではない。であればこそ、気温や風向といった外的環境の変化からライダー自身を守り、安定したパフォーマンスを発揮するために開発されたライダーズエキップメントの重要性は論を俟たないだろう。
というわけで、本章ではライダーズエキップメントにフォーカスを当てていこう。ユンボ・ヴィズマの選手らはベルジャン・ヘルメットブランド「レイザー」を採用し、シマノのフラッグシップS-PHYREシューズ「RC9」を着用している。このコンビネーションは、マイケル・マシューズ擁するサンウェブも同様。S-PHYREシューズに関しては、サポート外であっても好んで選んでいる選手がプロトンの中には多数存在している。
もう1つの100周年 ベルジャン・ヘルメットブランドのレイザー
選手が身につけるもので外せないのがヘルメット。自動車並みのスピードで走行するプロのレースでは、一度の落車が深刻なダメージにつながる可能性が高い。中でも頭部は最もデリケートな部分であり、ヘルメットには高いプロテクション性能が求められる。さらに、サイクルロードレースにおいてヘルメットに要求される性能は、極限状態において選手がレースに集中できる安心感と快適性を高い次元で実現することだ。特にツール・ド・フランスのような最高峰のレースで求められるのは、プロテクション性能と通気性という基本性能に加えてエアロダイナミクスまで備えたヘルメット。これらの性能を各モデルの想定シチュエーションに合わせて設計するためにはブランドに知見と経験、R&D体制が必要となる。それらを併せ持つのが2019年で創業100周年を迎えるベルジャン・ヘルメットブランドのレイザーだ。
レイザーは、1980年代に自転車用ヘルメットの開発をスタートさせてからはプロレースと共にあり、常に厳しい競争にさらされるレースの現場で性能を磨いてきた。スタッフの多くはR&Dに従事しておりレース、シティコミューティングなど様々な場面に適したヘルメットを作り出している。レイザーヘルメットのブランドストーリーはこちらを御覧いただきたい。
現在ユンボ・ヴィズマとサンウェブが着用しているヘルメットは、ロードレース用エアロモデル「Bullet 2.0」とオールラウンドモデル「Z1」、タイムトライアル用「VICTOR」の3種類。今年のツール・ド・フランスでは既にこの3種類のヘルメットを着用している。これからのステージでは、選手がどのヘルメットを着用しているか確認してみても面白いだろう。
特にユンボ・ヴィズマはBullet 2.0のAir Slideに選手のファーストネームを入れており、選手を識別しやすくしている。Air SlideとはBullet 2.0の中央部に設けられたスライド式カバーのこと。このカバーを操作することで乗車中でも通気口の有無を変更することができるというもの。レース序盤はスライドをあげ通気口を出現させ、スプリント時は通気口を閉じることでヘルメットが備えるエアロダイナミクスを引き出すといった使用方法が可能となる。
Bullet 2.0の販売モデルのAir Slideは前後2パーツで構成、それぞれにタイプが異なる2種類、計4個のパーツが付属されている。額側のメインパーツはスライド操作と共に開閉するシャッターつきモデルと、シャッターのないパーツ。後頭部側は通気口の有無が異なる2種類。ツール・ド・フランスを走る選手の多くは、前頭部側にシャッターなしのパネルを、後頭部側に通気口が設けられたパーツをチョイスしているようだ。サンウェブのセース・ボル、ニキアス・アルントはシャッター付きのパネルを使用。Bullet 2.0はコースや季節、選手の好みで使い分けできることが美点だ。
Bullet 2.0はスプリントの最終盤での仕事を任された選手が着用しているケースが多い。ユンボ・ヴィズマがスプリントステージを狙う時は、ディラン・フルーネウェーヘン、マイク・テウニッセン、ワウト・ファンアールトがBullet 2.0をチョイスし、集団を牽引する役割を担うトニ・マルティンはZ1をチョイスしているようだ。サンウェブも同じ様にエースであるマイケル・マシューズと先述した2名がBullet 2.0を選択している。
スプリンターたちがロードレース用エアロヘルメットを着用しているのは、エアロダイナミクスのアドバンテージがオールラウンドモデルよりも大きいという証明だ。写真判定に持ち込まれるスプリントが多い今ツールのような激戦では、エアロダイナミクスに優れるヘルメットは勝利への鍵となるだろう。
Z1はオールラウンド用として非常に多くの選手達が選ぶモデルだ。多くのベンチレーションホールが設けられたルックスから伝わるように通気性/快適性に優れるヘルメットであり、真夏のフランスで行われるツールではこのモデルを選ぶ選手が多くなるもの頷ける。
一方で、Z1はオールラウンド用ヘルメットながらもエアロダイナミクスを考慮していることも特徴。Z1がデビューした2014年当時において、エッジが立ったデザインのヘルメットが多いなか、レイザーは丸みを帯びた帽体デザインをいち早く取り入れたブランドでもある。現在ほぼ全てのヘルメットがエアロを考慮した形状であることを考えると、レイザーのR&D能力と先見の明が光っていることがわかるだろう。
またZ1はMサイズで190gと非常に軽量性に優れるモデルであることもポイントだ。ステフェン・クライスヴァイクのように総合上位を狙う選手は、ツールに照準を合わせ体を絞り込むと共に、機材も軽量なものをチョイスする。車体に関しては6.8kgという重量規制がある一方、身に着けるものには重量規制は設けられていない。その状況においてアンダー200gのヘルメットは大きなアドバンテージとなるはずだ。
Z1とBullet 2.0 AFにチームモデルが登場
Bullet 2.0ラインアップ
Z1ラインアップ
サイズ | S、M、L |
重量 | 190g(Sサイズ) |
カラー | Sunweb、Junbo Visma、マットブラック、ホワイト/シルバー、マットチタニウム、マットブラック/レッド、ブルーブラック、マットブラックイエロー |
価格 | 22,000円(税抜) |
そんなZ1とアジアンフィットモデルのBullet 2.0 AFにユンボ・ヴィズマとサンウェブカラーの限定モデルが発売されている。Bullet 2.0に関してはヨーロッパモデルではなく、日本国内で流通しているアジアンフィットモデルとしてラインアップされている。限定製品ながら日本人にマッチするフィット感で着用できるのは嬉しいニュースだろう。
プロトンの中でも存在感を放つ黄色のギアに身を包んだユンボ・ヴィズマ、赤色から黒色に変化するグラデーションでアパレルなどを彩るサンウェブ。現在ツール・ド・フランスで活躍するチームロゴのステッカーが同封された特別仕様のため、カラーが気に入った方だけではなくチームのファンにもオススメのヘルメットだ。
第2ステージのチームTTで勝利したユンボ・ヴィズマ、そしてサンウェブが着用していたのはVICTORというモデル。ライダーが顔を動かしても空気抵抗を増大させないショートテールを採用していることが特徴だ。加えて前方投影面積が小さくなるようにデザインした前面、頭頂部付近の段差、耳を覆うまでのシェルによって得たエアロダイナミクスのアドバンテージが、ユンボ・ヴィズマに最速チームという名声をもたらした。
VICTORは非常に特徴的なバイザー形状も目を引くポイント。これは深い前傾姿勢を取ったときでもクリアな視界を得るためのものであり、トニ・マルティンのようなTT巧者の走りをサポートする。またバイザーとシェルの間に空間が生まれる仕組みも備えられているため、バイザー内側にも空気を流すことが可能。額部分に設けられたベンチレーションホールを機能させたい時や、バイザーが曇ってしまうようなシチュエーションにも対応してくれる。
愛用するプロ選手多数 シマノが誇るフラッグシップシューズ「S-PHYRE RC9」
シマノはフラッグシップS-PHYREシリーズのシューズ「RC9」でも、選手のパフォーマンス発揮に一役買っている。シマノのシューズは長らくプロ選手から愛用されてきた歴史を持ち、現在もユンボ・ヴィズマやサンウェブのように供給しているチームだけではなく、シマノ・グローバルサポートチーム内外の選手個人が選択しているケースも非常に多い。
ユンボ・ヴィズマと共同開発を行ったというフラッグシップシューズは、ソール剛性をラインアップ中最も高く調整するとともに、足を引き上げる際に発生する負の力"ブレーキングロス"を低減するダイナラストを採用。ペダリングパワーを効率よくコンポーネンツに伝えるシューズを実現しており、スプリンターやオールラウンダーなど脚質に関係なくパフォーマンスを支えている。
高い快適性やフィット感を実現するために、シマノはシューズの内側から大きなパターンで甲全体を包むサラウンドアッパーを採用。素材にはTEIJINマイクロファイバー合成皮革を採用し、細かいベンチレーションホールを設けることで暑い夏や湿度の高いコンディションでの快適性を確保した。
また、ユンボ・ヴィズマはS-PHYREのアイウェアを引き続き採用する。しっかりした剛性を持つハーフリムフレームのS-PHYRE Xと軽量なリムレスタイプのS-PHYRE Rという2種類が誕生した。選手からのフィードバックを受け、視野角の広い大きめのレンズを採用しているのが大きな特徴だ。
世界最高峰の舞台で勝利を掴み取るためには、ライダー、バイク、コンポーネンツ、選手が身につけるエキップメント全てにハイレベルな性能が求められる。シマノはDURA-ACEコンポーネンツで強力な存在感を示しているのはご存知の通り。さらに本章で紹介したようにレイザー、S-PHYREなどエキップメントでもシマノはプレゼンスを高めているため、選手たちの頭部と足下からも目が離せない。
シマノ RC9
ピレネーで激化するマイヨジョーヌ争い
10日間休むこと無くレースが続いた第1週が終了し、アルビの街で一息ついたツール・ド・フランスのプロトンはピレネーに向けて南下を開始した。前半戦は第6ステージのラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユで総合勢がライバルの様子をチェック、今年のツール・ド・フランスの行方を占った。しかし、休息日前日にチームイネオスが横風区間を活かし集団を破壊。ライバル勢を蹴落とすことに成功し、チームとして5連勝への駒を一歩進めた。
33℃まで上がるほどの暑さに見舞われた第11ステージはスプリンター達のための平坦ステージ。ひまわり畑の脇をプロトンは駆け抜け、フランス第5の都市トゥールーズでの大集団スプリントで勝負は決した。今年好調さが伝わってくるディラン・フルーネウェーヘンは惜しくも2位。勝つ時もあれば負ける時もあるのが勝負事。この日も写真判定となるほどの熱戦が第2週に入っても続けられている。今年のツールはスプリントが面白い。
第12ステージからいよいよピレネー決戦が始まる。ピレネーの玄関口トゥールーズを出発したプロトンから、マシューズ、フルーネウェーヘン、サガンらスプリント勢を含む40名のエスケープグループが生まれる展開に。1級山岳が2連続で現れるこの日のルートはスプリンターたちには厳しく、レース後半の主導権は軽量なアタッカーやクライマーたちの手に渡った。
フィニッシュまで30.5kmを残した1級山岳ウルケット=ダンシザンの頂上はサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)とグレゴール・ミュールベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)の2名で通過することに。ちなみにイェーツとミュールベルガーともに油圧ディスクブレーキ使用者。今年のツールは油圧ディスクブレーキバイクが活躍する場面が多く、その優位性はもはや自明のもの。レースはこの2名に追いついた選手を加えた3名のスプリントとなり、イェーツが先着。ミッチェルトン・スコットに2勝目をもたらした。
個人タイムトライアルで争われた第13ステージではフランスのサイクルロードレースファンが熱狂。フランス人選手による活躍が遠のいていたツールのタイムトライアルで、下馬評を覆しジュリアン・アラフィリップが優勝。マイヨジョーヌの誕生日にフランス人がマイヨジョーヌを守り抜いたのだ。2位にはPROの3SpokeホイールとTeXtremeカーボンディスクホイールを装備したチームイネオスのゲラント・トーマスが入っている。
本格的なマイヨジョーヌ争いがスタートしたのは、続く第14ステージ。最終局面で積極的に動いたのは、総合で後れを取っていたティボー・ピノ率いるグルパマFDJと、ステフェン・クライスヴァイクの総合成績を押し上げたいユンボ・ヴィズマだった。組織的なペースアップを経て最終的に残ったのは、今年のツールでマイヨジョーヌと総合表彰台を獲得が目されていた精鋭6名。この日、最も強かったのはピノ。ライバル勢を全員振るい落とす強力なアタックを披露し、トゥールマレー峠を先頭で登りきった。そして、アラフィリップがマイヨジョーヌを守るだけではなく、ライバルに差をつける結果に。
機材に注目してみるとピノはリムブレーキ、2位のアラフィリップは一貫して油圧ディスクブレーキ、3位のクライスヴァイクはリムブレーキ、4位のブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ)は油圧ディスクブレーキ。これまで山岳ステージの上位陣はリムブレーキが主流だったことを考えると、油圧ディスクブレーキが半数を占め、機材面においてもツールに変化が起こっている。
翌15ステージでは、強力なクライマー達が集結したエスケープグループが序盤に発生し、そこに入ったサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)が逃げ切り勝利。激しい攻防が繰り広げられたメイン集団から逃げ切れたのはイェーツ1人だった。イェーツが使用していた機材はDURA-ACE R9170 油圧ディスクブレーキ。天候の悪いダウンヒルでディスクブレーキの安定した制動力はイェーツに味方したはずだ。
ピレネー最終日のこの日、マイヨジョーヌ争いにも動きが生じた。アラフィリップは総合首位を維持することができたものの、他の総合有力勢に対しタイムを失ってしまう。2位のゲラント・トーマスに対し、タイム差は1分半まで縮小。そして、ピノが再び躍進した。ライバル達を振るい落とす事に成功し、総合4位まで返り咲く。マイヨジョーヌを守りたいアラフィリップと、彼に肉薄するゲラント・トーマス、クライスヴァイク、ピノ、ベルナルらがそれぞれの思惑を持ち、ツール最終週に挑む。
提供:シマノ 企画/制作:シクロワイアード